映画『花束みたいな恋をした』の印象的だった発言や、麦と絹がお互いに惹かれたもの、逆に別れを助長させたものなどをまとめました。
解説・考察
この世の全てを諦めたら、人はいつか空を飛べる
麦が燃え尽き症候群だった頃に出した引用です。
誰が言っていたのかは調べてもわかりませんでした(笑)
この後に続く「そろそろ飛べるんじゃないか?」には、麦がいかにやる気を失っているかが現れています。
押井守
押井守はアニメ映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』や『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』、『イノセンス』などで有名な映画監督です。
麦は押井守を偶然見つけた時にアニメ界の神という意味で「神」と言いますが、この時の押井守は2人にとって恋の神様になりました。
押井守きっかけで絹と麦は会話が盛り上がり、お互いの好きなものが似ていることに気付きます。
偶然お揃いの靴、映画の半券のしおり、好きな作家の類似、天竺鼠ファンなど多くの共通点を発見して運命を感じました。
天竺鼠のチケット
行けなかった天竺鼠のライブチケットを『2人がここで出会うためのチケット』と言い換えます。
それは2人の恋もまた『イベント』であり、いつか必ず終わりが来ることも暗示しています。
絹が読んでいたブログの『恋愛はパーティーのようにいつか終わる』などとも通じるものがあります。
このライブチケットは『花束』を違う物で例えているようにも感じました。
『私、山音さんの絵好きです』って言われた
初デートで、麦の絵を見た絹は「私、山音さんの絵好きです」と率直な感想を言いました。
この時の感想を、麦は「『私、山音さんの絵好きです』って言われた」と何度も復唱します。
麦は絵を褒められたことが相当嬉しくて、秘められた承認欲求が満たされた瞬間だったことを表しています。
絹「こういうコミュニケーションは頻繁にしたい方です」
ファーストキスをした時、絹は「こういうコミュニケーションは頻繁にしたい方です」と要望を伝えました。
こういうコミュニケーションとは、手を繋いだりキスだったりセックスだったり、体のスキンシップを絹が恋愛において重要視していることを意味します。
対して麦には特にそれらしい要望や刺激的な恋愛に憧れているような描写も無いことから、性欲だったり恋愛への憧れに関しては麦よりも絹の方が強いらしいことがわかります。
麦は『草食系男子』も反映されたキャラクターになっているようです。
この体のスキンシップを重要視しているかどうかにおいても、後々になって2人のズレになっていきます。
荷物を東京湾に捨てたトラック運転手
トラックの運転手が搬送していた荷物を東京湾に捨てる事件が起きます。
この運転手が捨てた荷物の中には麦の会社の商品が乗っていて、麦は対応に追われることになりました。
運悪く運転手に荷物を捨てられた人々は尻拭いさせられることになりました。
犯人は年齢も出身地も麦と一緒で、荷物を捨てた理由を「誰でも出来る仕事なんてやりたくなかった 俺は労働者じゃない」と供述しました。
それに対して麦の同期(後輩?)社員は「羨ましい気もする 逃げたくなる時もある」と同情しますが、麦は怒ったように「羨ましくなんかない 生きることは責任だ」と答えました。
絹の母が言っていたことと同じです。
麦が運転手に対する同情的な意見にいら立つのは、運転手の供述がイラストレーターを目指していた頃の麦の意見に似ていたからではないでしょうか。
沖田「海人さんも辛かったんだと思う」
海人と菜那が別れた後、菜那は海人からDVを受けていたことを明かします。
女性陣がドン引きする中、沖田(篠原悠伸)は「海人さんも辛かったんだと思う。やりたいことが世間に認めてもらえないから、つい…」と海人の暴力を擁護する発言をしました。
しかし、もし海人が菜那を殴った理由が本当に『仕事が上手くいかないから』だったのなら、暴力が許される理由にはなりません。
沖田の言う「世間に認めてもらえなくて辛かったら身近な人に暴力をふるっても仕方ない」というような価値観は倫理的にもおかしい気がするので、この発言の意図はただただ謎です。
沖田は海人を尊敬していたようなので、悪者にしたくないあまりに口走ってしまっただけなのかもしれません。
ただ沖田の発言は完全に想像で、海人本人から理由を聞いたわけではないので、本当は何が原因で別れたのかは当事者2人にしかわかりません。
最低のプロポース
絹「好きで一緒に居るのに、何でお金ばっかりになるんだろうって」
麦「ずっと一緒にいたいからじゃん!そのためにやりたくないことも…」
絹「私はやりたくない事したくない!ちゃんと楽しく生きたいよ」
麦「じゃあ結婚しようよ!結婚しよ!俺頑張って稼ぐからさ、家に居なよ。働かなくても、別に家事もしなくても。毎日好きな事してれば良いじゃん!」
絹「それってプロポーズ?今プロポーズしてくれたの?…思ってたのと違ってたな…」
麦「…忘れて」
絹「…私もごめん」
絹が転職を勝手に決めたことを知った麦が怒って喧嘩になり、麦は喧嘩の末になぜかプロポーズしました。
他の映画だったり実際に見聞きしてきたプロポーズの中でも、ワーストに入る気がします。
麦の発言は「やりたくない事したくない」と言う絹に対する当てつけや嫌味でしかありませんし、麦が『普通』になりたくて結婚したいだけであるのがにじみ出ています。
海人の死
お通夜が終わって、先輩が好きだった紅生姜天蕎麦を食べて帰った。
一晩中先輩の話をしたかったけど、彼女はすぐに寝てしまった。
一人でゲームをして、外散歩して、少し泣いたら眠くなったので寝た。
次の日の朝、彼女が話をしようとしてきたけど、何かもう、どうでも良かった」
恋人に暴力を振るったこともあった。
亡くなったことはもちろん悲しかったけど、彼と同じように悲しむことは出来なかった。そんな自分も嫌になって…。
次の朝、打ち明けようと思ったけど、もう遅かった。
なんかもう、どうでも良くなった」
写真家を目指していた麦の先輩の海人の死を通して、2人のすれ違いや着眼点の差が強調されていました。
麦と絹の味方の違いは、男女の感じ方の違いと受け取っても良いかもしれません。
麦が海人の良い所しか見えていないのは同性だったのが大きいかもしれませんが、海人はイラストレーターとしての麦を応援してくれていた人でもあり、海人の女性問題を知らなかった点も大きい気がします。
もしも亡くなったのが女性だったら、麦と絹は真逆の行動を取っていたかもしれません。
加持「恋愛は生もの」
絹が再就職した会社の社長の加持(オダギリジョー)は、絹の恋愛相談で「恋愛は生もの」「1人で感じる淋しさより2人で感じる淋しさの方がよっぽど淋しいって言うし」「別れて新しい男探しても良いんじゃない?」とアドバイスしました。
『恋愛は生もの』はこの映画のタイトルを言い換えたフレーズで、絹が読んでいたブログ『恋愛生存率』の『恋愛はパーティーのようにいつか終わる』とも通じる発言でもあります。
『1人で感じる淋しさより2人で感じる淋しさの方がよっぽど淋しい』と聞いた時、浜崎あゆみさんの曲『SURREAL』(2000年発売)を思い出したのは私だけではないと思います。
当時は激しく同意した印象的な歌詞だったので覚えてました。
ひとりぼっちで感じる孤独より
ふたりでいても感じる孤独の方が辛い事のように
浜崎あゆみ『SURREAL』の歌詞より抜粋
『2人で感じる淋しさ』とは、一緒にいる相手と心が通わず、それを淋しいと感じる状況を指します。
1人で淋しさを感じる時は『1人だから淋しい』とまだ納得できるものがありますが、2人でいても淋しさを感じる時は一緒にいる人と心が通じ合わない実感があり『1人だから』が通用しないため、より精神的にキツイものがあるのです。
しかし、苦手な人と2人だったら心が通じ合っているかどうかなんて気にならないし、孤独を感じたりもしないですよね。
つまり『2人で感じる孤独』は、一緒にいる相手が本当は心を通わせたい人だからこそ感じるもので、関係が上手くいかないジレンマに陥っている状態です。
そういう相手とうまくいかない状態が続くのは精神衛生的にも良くないです。
関係改善が見込めなそうなら、いっそ別れた方がお互いのために良いのではと加持は言っていたのでしょう。
以上です。読んでいただきありがとうございました。
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