映画『花束みたいな恋をした』の伏線的な発言や小物について解説考察しています!
キーワードが多すぎてどこまでが伏線かそうでないか線引きが難しかったですが、作中で2回以上登場した事柄について書いています。
『花束みたいな恋をした』概要紹介
あらすじ
2015年の冬に出会った大学生の山音麦と八谷絹の、約4年に渡る出会いと別れを描くヒューマンドラマです。
主要キャスト
都内の大学4年生21歳。実家は新潟県長岡市で、父親は花火師。
父は麦に後を継いで欲しいと思っているが、麦自身はイラストレーターを夢見ている。
都内の大学4年生21歳。都内の実家暮らし。
両親は広告代理店勤務で、絹を一般的な社会のレールに乗せたがるが、絹は親の価値観の押し付けに嫌気が差している。
絹自身はやりたいことが見つからず、終活に苦戦する。
加持航平(絹の会社の社長)…オダギリジョー
八谷早智子(絹の母)…戸田恵子
八谷芳明(絹の父)…岩松了
山音広太郎(麦の父)…小林薫
海人(写真家)…
沖田(麦の友人)…篠原悠伸
音楽関係者…岡部たかし
富小路(絹のデート相手)…佐藤寛太
ショーシャンクの空に…小久保寿人
実写版魔女の宅急便…瀧内公美切った男…水澤紳吾 ほか
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伏線や意味深だった描写など
意味深だったと思われる描写や伏線チックなシーンを気付いた限り拾いました。
何かとシンクロしてしまう絹と麦
2人は何かと思考回路、言動、服装や持ち物などが似通ってしまう描写がたくさんあります。
特に思考回路や言動のシンクロは、麦と絹が別れた後も続きます。
それほど2人は元々の性質や波長が似ている似た者同士なのです。
イヤホンシェアカップル
麦と絹が別れた後の偶然の再会から物語が始まります。
1つのイヤホンを片耳ずつシェアして曲を聞くカップルを見て、麦と絹は「LとRからはそれぞれ違う音が出てるから、片方ずつ聞いたら同じ曲を聞いているとは言えない」「スマホも恋愛も1人に1つずつ」と語り、「教えてあげようかな」と立ち上がったところでお互いの存在に気付き、気まずそうに元の席に戻ります。
この伏線(麦と絹がイヤホンシェアカップルに食いついた理由)は、2人の交際が始まったばかりのシーンで回収されます。
麦と絹もかつては『イヤホンシェア』をしたことがあり、たまたま近くにいた音楽関係者のおじさん(岡部たかし)に説教されました。
この時、2人はおじさんに『イヤホン片っぽだけで曲を聴くことが作り手に対してどれだけ失礼か』を叩き込まれたため、過去の自分たちと同じ過ちをおかすカップルに目が留まり、無視できなかったのです。
ミイラ展とガスタンク
絹と麦がお互いに理解できなかった趣味です。
麦は絹に付き合ってミイラ展に行き、絹は麦に付き合ってガスタンクを見に行きます。
表面上は興味を持っているように見せつつ、内心は理解出来ないとお互いに思っていました。
ミイラ展の後のファミレスで、ウェイトレスが来た時に絹が見ていたミイラの本を麦がとっさに閉じるのは、麦は他人に『変な趣味の2人』に見られるのが嫌だったからです。
理解出来ないお互いの趣味に付き合うのは、当時の2人がまだ付き合う前で『相手のことを知りたい』だったり『一緒に居られるなら何でも良い』と思えるからです。
ある程度関係が深くなって2人でいることに慣れてくると、自分が興味のないことを相手のために付き合うのが苦痛になってきます。
2人は別れた後に、ミイラとガスタンクがお互いに理解できなかったと告白します。
交際中に言える関係だったら別れなかったかもしれないなと思いました。
カラオケでの選曲
初めて会った日に行ったカラオケで、絹と麦はきのこ帝国の『クロノスタシス』を一緒に歌います。
2人がちょうど歌ってくれていた通り、クロノスタシスは時計の針が止まって見える現象の事です。
恋の予感を感じている2人には、まるで時間が止まっている気分(一緒に居るのが楽しい)になっていることを表しています。
時間が止まっていると感じる時が関係良好な感覚だとすると、2人が同棲を始めてしばらく経った頃の麦のナレーションで「時の流れを感じる日々が続いた」と語られる所からが『終わりの始まり』だったと思われます。
さわやかのハンバーグ
静岡にある有名なハンバーグ屋さんです。
絹と麦は静岡旅行に行った時にさわやかに行きますが、順番待ち中に新幹線の時間が迫ってしまい、結局ハンバーグは食べられませんでした。
その後、2人はさわやかのハンバーグをそれぞれ別の人と食べに行ったことを告白しています。
麦は会社の先輩と一緒に行き、絹は誰と行ったか明かされませんが、もし予想するなら菜那か加持のどちらかしか思い浮かびません。
お揃いのスニーカー、別々のワーキングシューズ
靴が2人の心のつながりを反映するバロメーターのような働きをします。
偶然お揃いだったスニーカーに2人は運命を感じた所から始まり、お揃いの靴は2人の心も繋がっていることを象徴します。
麦と絹が本格的に社会に出てからの靴は別々になり、それはそれぞれの世界を持ち始め、心や価値観がズレつつあることを表しています。
ベーカリー木村屋
同棲を始めてすぐ、絹と麦は焼きそばパンが美味しい個人経営のパン屋さん木村屋を見つけます。
1つの焼きそばパンを分け合って食べる瞬間は、絹と麦の尊い思い出の1つになります。
同棲3年目頃に木村屋さんは閉店してしまい、それを知った絹は麦にラインで報告して感情を共有しようとします。
しかし、その時ちょうど麦はトラック運転手の荷物遺棄で受けた被害の対応に追われていてそれどころではなく、絹のラインに苛立ちを覚えて「他のパン屋で買えばいいじゃん」と突き放しました。
恐らく麦には絹が呑気に見えて苛立ったと思われますが、この返しは絹をかなり傷つけました。
感情を共有出来なくなったことも2人が別れた大きな原因のひとつです。
トイレットペーパー
2人が出会った日、絹は母に頼まれたトイレットペーパー(長いので以下トイペ)を2袋買って持っていました。
そのまま麦と初デートすることになり、後半は麦と絹が1袋ずつ持ち、最終的に麦は絹にトイペを返すのを忘れてしまいます。
トイレットペーパーは生活感あふれる物で、中でもトイレは特にプライベートな空間です。
絹と麦は、これからプライベートを共有する関係になる(恋人になり同棲する)ことを暗示していたように見えました。
このトイペですが、2度目に登場するのは同棲開始直後です。
トイペを持っているのは麦で、絹は花束を持っています。
もし麦と絹が持っている物が『求めるもの』を象徴していたとしたら、麦は『トイペ=安定した生活』、絹は『花束=好きなもの、楽しいことにあふれた刺激的な生活』を求めていると捉えられます。
そう考えると、2人が求めるものはこの時点で既にズレはじめていたのではないでしょうか。
「きっとその人は今村夏子さんの『ピクニック』読んでも何も感じない人だよ」
2人の価値観のズレを強調する台詞として2回登場しました。
1回目は2人の価値観がマッチしていた頃に登場します。
絹が就活で圧迫面接を受けていたことを知った麦は怒ります。
絹が「偉い人だから仕方ない」と言うと、麦は「でもきっとその人は今村夏子さんの『ピクニック』読んでも何も感じない人だよ?」と答えました。
麦は価値観の合わない上司がいるような会社なら、そこで頑張って心をすり減らす必要はないと言いたかったと思われます。
絹は「こだわりが無いなら無理して就活する必要はない」と言われ、終活をやめました。
麦が絹の気持ちに寄り添った意見をくれるのが嬉しかったのです。
2回目の登場は、2人の価値観がずれ始めてしばらく経ってからです。
絹がイベント会社への転職を勝手に決めてしまった時に大きな喧嘩をになります。
麦は「取引先の社長に死ねと怒鳴られて唾を吐きかけられることもある」と言います。
すると、絹は「その社長はおかしい。きっとその人は今村夏子さんの『ピクニック』読んでも何も感じない人だよ?」とかつて麦に言われた台詞をそのままぶつけますが、麦には響きませんでした。
麦は就職してから社会性や協調性を身に着けることが大人になることだと考えるようになったので、価値観の合わない人と無理してでも協調することを美徳とすら考えるようになっていたように見えました。
2014年サッカーワールドカップ準決勝
この試合で開催国であり優勝候補だったブラジルがドイツに1-7で負けました。
ブラジルが勝つだろうと思われていただけに、歴史的に有名な試合になりました。
絹は良くないことがあった時、少しでも心を軽くするために「あの時のブラジルよりはマシ」と考えるようにしていました。
それを知った時、麦は「この試合の後のインタビューで、ブラジルの監督は『あと1歩だった』と答えていた」と語ります。
麦は何が言いたかったのかよくわかりませんでしたが、麦のプロポーズをブラジル、出会った頃の2人を彷彿とさせていたあのカップルをドイツに例えて『結婚まであと1歩だった』(あのカップルが現れなければ絹はプロポーズにOKしていた)と言いたかったのかな?と解釈しています。
じゃんけんのルール
大学生の頃の麦は「じゃんけんでパーがグーに勝つのが理解できない」「紙が石に勝つはずがない」「こんな矛盾するルールを受け入れる人類が理解出来ない」と語ります。
絹と初めて会った時、絹も「じゃんけんのルールが理解出来ない」と語ることで、麦は絹に更に運命を感じました。
2人が別れると決めた後、バロンをどっちが引き取るかをじゃんけんで決めるとき、麦はパーを出して絹に勝ちます。
「なぜパー?」と聞く絹に、麦は「大人だから」と答えました。
会社員になって社会性を身に着けた麦は、じゃんけんを『話し合いで決められない物事を決める時に使えるツールのひとつ』と捉え、内在する矛盾を無視できるようになったのです。
一方で大学生の頃の価値観のまま大人になった絹は、まだじゃんけんに抵抗を感じています。
これは別れの原因が麦の変化によるものだと表していたようにも思えます。
プレゼントのイヤホン
2人で過ごす初めてのクリスマスで、絹と麦がプレゼント交換したものは偶然にもどちらもイヤホンでした。
またシンクロが起きたことで2人は喜びますが、その後、絹がイヤホンを使っているシーンは一度も登場しません。
対して麦はイヤホンを普段使いしていて、心が離れ始めると、皮肉にも絹の生活音をシャットアウトするためにイヤホンを使います。
イヤホンに意識して見ていた方はもうおわかりですが、2人が別れて別々の人と交際を始めた後で再会した時も、麦が使っていたのは絹にもらったイヤホンでした。
統計学的にも女性より男性の方が過去の恋愛を引きずりやすい傾向があるので、麦は絹に少なからず未練があることを意味していたと思われます。
ストリートビュー(ラスト考察)
絹と出会う前の麦は、ストリートビューに自分が写っているのを発見して大学で注目を集めたことを「夢のような日々」と言い、「あれ以上の興奮がこの先あるのだろうか」ともこぼしています。
ラストでも、麦は絹と幸せ絶頂だった頃の2人がストリートビューに写り込んでいるのを見付けます。
勝手な考察ですが、麦は絹の連絡先を消していないと思われるので、興奮を伝えるために絹に連絡するのではないでしょうか。
それに対して絹がどう動くかは予測不能ですが、ヨリを戻す可能性も無くはないラストになっています。
しかし、別れた後で麦がストリートビューを見ようと思ったのは、焼きそばパンが美味しかったお店(木村屋)を探そうとしてですが、それは当時あのお店が閉店した直後に絹がラインで伝えていたのを麦が全く覚えていないことを意味します。
絹は麦のそういう所が耐えられなくなったのも別れた理由の一つだったと思われるので、復縁の可能性は低いかもしれません。
疑問:ラブホに連れ込まれていた男性は麦の会社の先輩?
ちなみに、麦が交通量カウントのバイトをしていた時、女の子に無理やりラブホテルに引っ張り込まれている男性は、後に麦の先輩となり、さわやかのハンバーグを一緒に食べた男性(宇野祥平)と同一人物だったと思われます。
同一人物であることにどんな意味が込められているのか(もしくは特に意味は無いのか)ちょっぴり疑問だったので記しておきます。
以上です!読んでいただきありがとうございました。
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感想などお気軽に(^^)
久々に映画を見返したのでこんなタイミングでのコメントすいません
個人的にはドイツ-ブラジルのあと一歩のくだりは「結局何があろうと関係を続けていくにはどこか一つ(あと一歩)が足りない運命にあった、色々なことが噛み合ってるようでほんの少しだけずれててそれが噛み合うことは無かった」的なことを意味してるんじゃないかなと思いました!
急なコメント本当にすいません!