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あらすじ④:結末
プレビュー公演の最終日。
舞台のラストは、リーガン演じる主人公は妻の浮気現場を目撃し、愛されていないことを確信して銃で自殺して終わります。
ヤキが回ったリーガンは舞台に本物の銃を持ち込んで、ラストシーンでは本当に自分の頭めがけて銃を撃ってしまいました。
迫真の演技だと勘違いした観客はリーガンにスタンディングオベーションを送りました。
数日後、リーガンは病院のベッドの上で目覚めます。
リーガンの命に別状はなく、鼻の破損だけで済んだとレズリーから知らされました。
そこに、ジェイクが大喜びで病室に入ってきて新聞をレズリーに渡します。
そこにはリーガンの舞台を観たタビサの批評記事書かれていて『無知がもたらす未知なる奇跡』という見出しでリーガンを絶賛していました。
やがてサムがお見舞いに来ると、レズリーとジェイクは病室から出て行きました。
サムは手術直後の痛々しいリーガンの顔を撮影すると「パパがバズってるから、さっきパパのツイッターアカウントを作ったの。最初にこのおぞましい写真をアップするね」と言い、一旦病室を離れました。
リーガンはベッドから出て鼻のガーゼをはがすと、病室の窓を開けてそのまま窓から飛び降りました。
病室に戻ってきたサムはリーガンを探して開いていた窓から顔を出すと、空を見上げて嬉しそうに笑いました。
解説・考察や感想など
ようやく見れました!
ワンカット風の演出や軽快なドラムがとにかくお洒落だな~という印象でした。
ラストシーンなど気になる部分がいくつかあったので考察してみます。
リーガンの超能力とバードマンの声について
(引用:https://twitter.com)
冒頭の空中浮遊から始まって物を動かしたり壊したり、リーガンが超能力を使えるかのように見えましたが、実際にはリーガンの妄想だったことがいくつかのシーンで明かされていました。
それを表していた1つ目は、リーガンが超能力で電球を割ったりバードマンのポスターを壊したりした後です。
レズリー(ナオミ・ワッツ)がリーガンの控え室に入った時、リーガンは手を怪我して手当てしています。
リーガンは電球を超能力で割ったのではなく殴って割ったということです。
2つ目は、リーガンがアパートの屋上から飛び降りて会場まで空を飛んでいくシーンです。
リーガンは優雅に降り立って会場の中に入っていきますが、その直後にタクシー運転手がリーガンを追いかけてきて代金を請求しています。
つまり、リーガンは本当に空を飛んだのではなくタクシーに乗っていたのです。
リーガンがこのような妄想をしてしまうのは恐らく、リーガンが『バードマン』で大成功した時から抱き続け、いまだ捨てきれずにいる『自分は特別で、選ばれた人間である』という意識が原因です。
一方でバードマンの幻聴は『この舞台で成功しなければならない』という強迫観念にも近い決意(願望)や、いつまでも『バードマン』から脱けだせない苦しみなどから生まれた症状だったのではないでしょうか。
どちらにしろ、心の病だったことは間違いないと思われます。
リーガンが本物の銃を使った理由
(引用:https://www.ft.com)
リーガンが舞台で本物の銃を使ってしまったのは『精神状態の悪化』に加えて『マイクの影響』と『観客や批評家の態度』に流された結果だと思われます。
プレビュー公演で使っていたおもちゃの銃をマイクが批判している場面もありましたが、何よりもリーガンは、マイクの『本物に対するこだわり』に強く影響を受けていました。
リーガンは『なぜマイクは世間から注目(称賛)されるのか』、『マイクの何がサムの心をつかんだのか』が知りたくて、必死にマイクから何かを学ぼうとしていました。
そのマイクの大きな特徴が『本物にこだわること』です。
プレビュー公演でマイクが酒を奪われて怒った時の「この舞台で本物なのはチキンだけだ!」という叫びに観客は拍手していましたから、こういう姿勢が人々の心を掴むのだとリーガンは学びました。
そしてリーガンはトチ狂って本物の銃を使用してしまいましたが、実際にその演技は観客からも批評家からも絶賛されました。
マイクのマネをして本物にこだわるために本物の銃を使うってあまりにも短絡的な気がしますが、この浅はかさがタイトルの(無知がもたらす予期せぬ奇跡)と繋がっていたと思われます。
それにリーガンは離婚した時に衝動的に自殺しようとしたとも告白していたので、心の底でくすぶっていた破滅願望が一気に爆発したのかもしれません。
『みんな本物が好きなんだろ、じゃあ本物の銃を使ってやる』みたいなやけくそ感すら漂っています。
元妻とサムから愛されていることを知って幸せになれたはずなのに、それでも死を選んだのは、恐らくリーガンは一家の主になることよりも俳優であることを選んだからだったのかもしれません。
ラストシーンの解釈
(引用:https://www.cinemarev.net)
ラストでサムが空を見上げて見せた笑顔については、多くの方が疑問に思われたのではないでしょうか。
リーガンの超能力は妄想だったはずなのに、最後のサムの笑顔は空を飛ぶリーガンを見ているかのようでした。
思い浮かぶ可能性は
①『舞台で銃を使った時にリーガンは死んだか昏睡状態で、病院で目覚めてからのシーンは死後の世界or夢の中だった』
②『サムは病院に行く前に麻薬をキメてしまい、幻覚を見ていた』
③『サムは天に昇っていくリーガンの魂を目撃した』位です。
リーガンが倒れた後のロケットの映像や、マーチングバンドの演奏と仮装した人たちの踊りの映像が流れるのも『死』を連想しましたし、ジェイクが大興奮で病室に持ってきたタイムズ誌もそうです。
記事でリーガンを高評価していた演劇評論家のタビサは、リーガンのような『映画人が大嫌い』と言っていたし、対してリーガンもタビサにかなり酷い罵詈雑言を浴びせていて、別れ際にタビサは『舞台は打ち切りよ』と念押しの捨て台詞を吐いていました。
そんな彼女がリーガンとの喧嘩によって舞台を観る気になったとしても、あそこまで高評価するかどうかは疑わしいです。
さらに、リーガンが本物の銃を使った直後、多くの観客がスタンディングオベーションを送る中、1人だけ早々と会場から出ていく女性がいます。
この女性は恐らくタビサだと思われますが、あの時点で会場から出ていたら飛び散ったのが『本物の血』だったかどうか、リーガンが本当に負傷していたかどうかも気づけなかった気がします。
長々と書いてしまいましたが、つまりタビサがリーガンを褒めちぎるのは考えにくいので、やはりリーガンが舞台で倒れた後は夢妄想の世界で、タビサの絶賛記事もまたリーガンの理想が具現化していただけのような気がしています。
バードマンは何をトイレに流したのか
(引用:https://khn.org)
リーガンがベッドから立ちあがって顔のガーゼをはがした後、バードマンがトイレに何かを流していましたよね。
あれは何を流していたのかを考えましたが、事故でもげてしまったリーガンの本物の鼻以外に思い浮かぶものがありません(笑)
リーガンを苦しめていたものは、『大物俳優としてのプライド』でした。
それがよくわかったのは、リーガンがパンツ一丁で大通りを歩いた時につぶやいた「イメージが台無し」という一言だった気がします。
つまりリーガンは大物俳優でありたかったのです。
『鼻』は『鼻をへし折る』『鼻が高い』などプライドの言い換えとしてよく登場する体のパーツです。
バードマンを横目に部屋に戻って窓を開けた時のリーガンの清々しい表情は、プライドを捨てられた爽快感を表していたのではないでしょうか。
名言紹介
最後に印象に残ったセリフを抜粋します*
名声にとって人気は尻軽な”いとこ”だ
(マイク・シャイナー)
名声と人気はよく似た言葉ですが、名声の方がよりレベルが高いと言いたいのでしょう。
芸術家になれぬ者が評論家になり 兵士になれぬ者が密告者になる
(マイク・シャイナー)
芸術家は本作において舞台俳優も含まれます。
演劇評論家を名乗る人は俳優になりたくてもなれなかった人だと嫌味を言っています。
プレビューも見てないけれど 史上最悪の批評を書く
公演は打ち切り 映画人が大嫌い
特権意識が強く利己的で甘ったれ
ロクに芝居の勉強もせず 未熟なままで真の芸術に挑戦する
アニメやポルノを作っては賞を譲り合い
週末の興収で作品評価? ここは演劇界よ
脚本、演出、監督を務め自己満足に浸ろうなんて 私が許さないわ
(タビサ・ディッキンソン)※リーガンに向けての発言です。
どこまで本当かわかりませんが、映画界を総合的に批判しています。
どんな人生経験を積めば批評家になれる?
批評してるのか?面白かった?駄作か?ちゃんと観たんだろうな?
(中略 タビサのメモを見ながら)”未熟”?ありきたりだ ”無味乾燥”?これもそう
”中身がない”だと?もっと具体的に説明しろよ
あんたはレッテルを貼ってるだけだ
かなりの手抜きだな あんたは怠けてる 怠け者だ
(花を一輪手に取って)これが何だかわかるか?わからないよな
レッテルを貼らないとちゃんと見れない
頭に浮かぶ言葉を知識だと思ってる
君の文章には技術も構成も意図もない
下らない意見を述べ さらに下らない比較を追加
君は批評を書くだけで何ひとつ代償を払わない
なんの危険も無い リスクはゼロ
俺は役者だ この芝居に全てを懸けた
よく聞けよ
このいまわしい悪意に満ちあふれたクソみたいに下手な批評を
突っ込むがいい そのシワだらけのケツの穴に!
(リーガン・トムソン)※タビサへの反論
最後の一言はよくこんな悪態を思いつくなと感心するくらいひどいですね笑
以上です!読んで頂きありがとうございました。
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