映画『ある男』のあらすじ紹介、解説、考察をしています!
ラストの意味は?谷口大祐と曾根崎義彦の正体は?などについて書いています。
鑑賞した方向けの考察記事です。まだ見ていない方はネタバレにご注意ください(_ _)
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キャスト&キャラクター紹介
城戸 章良(きど あきら)…妻夫木聡
都内に住む弁護士。谷口里枝からの依頼で彼女の亡き夫「谷口大祐」の正体を調べる。
谷口 里枝…(たにぐち りえ)…安藤サクラ
宮崎県の田舎町に住む「谷口大祐」の妻。「谷口大祐」が夫の本名ではなかったことを知り、城戸に調査を依頼する。
谷口 大祐(ある男『X』)…窪田正孝
亡くなった里枝の夫。宮崎県で伐木作業員として働いていたが、倒木の下敷きになって死亡。
死亡後、谷口大祐が本名ではないことが判明する。
城戸香織(城戸の妻)…真木よう子
小見浦憲男(元仲介屋)…柄本明
中北(城戸の弁護士仲間)…小籔千豊
谷口恭一(本物の谷口大祐の兄)…眞島秀和
後藤美涼(本物の谷口大祐の元恋人)…清野菜名
小菅(ボクシングジム会長)…でんでん
柳沢(元ボクサー)…カトウシンスケ
茜(エックスのバイト先の同僚)…河合優実
悠人(里枝の息子)…坂元愛登
初枝(里枝の母)…山口美也子
花(里枝とXの娘)…小野井奈々
伊東(役所の職員)…きたろう ほか
あらすじ紹介
あらすじ①:ある男『X』の死亡
約5年前、谷口大祐(窪田正孝)という男が宮崎県のとある田舎町に移住してきました。
突然辺鄙な田舎町に引っ越してきた寡黙な独身男の大祐を町の住民たちは最初は警戒していましたが、彼の人柄を知るにつれて住民たちは徐々に大祐を受け入れました。
大祐は移住してすぐに伐木作業員として働き始め、1年と経たないうちに文房具屋の娘でバツ1子持ちの里枝(安藤サクラ)と恋愛結婚しました。
大祐と里枝の間に女の子の花(小野井奈々)が生まれ、里枝と前夫との子の悠人(坂元愛登)、里枝の母の初枝(山口美也子)と5人で幸せに暮らします。
里枝と大祐が結婚して3年後。大祐は仕事中に自分で切った杉の木の下敷きになり亡くなってしまいました。
大祐は群馬県の実家にある老舗温泉宿の次男ですが、親兄弟と馬が合わず実家を出て宮崎に移住したと語っていました。
里枝は大祐から「俺に何があっても実家には連絡しないでほしい」と言われていたため谷口家には何も知らせませんでしたが、お墓をどうすれば良いかで困り、大祐の死から約1年後に谷口家に連絡しました。
数日後、大祐の兄の谷口恭一(眞島秀和)が里枝の所に挨拶にきた際、大祐の遺影を見たことから、死んだ里枝の夫は「谷口大祐」ではなかったことが発覚しました。
里枝は前夫との離婚の際にお世話になった城戸章良(妻夫木聡)に連絡し、亡くなった夫の正体の調査依頼と、それに関連して生じる様々な問題について相談します。
城戸は『谷口大祐』になりすましていた里枝の亡き夫を『X(エックス)』と呼ぶことにして調査を始めます。
感想や考察など
切りたくても切り離せない、呪縛のような不幸な出生や消したい過去とどう向き合うか?がテーマの映画でした。
エックスに徐々に魅入られていく城戸弁護士を演じた妻夫木聡、偽物の谷口大祐(エックス)を演じた窪田正孝の病んでる雰囲気も素晴らしく、特に冒頭で静かに泣いている安藤サクラの演技は最高で、一気に引き込まれました。
里枝はなぜ泣いていた?
冒頭で里枝は泣きながらペンの在庫補充をしていました。
彼女が泣いていたのは、幼くして亡くなってしまった悠人の弟 遼のことを考えていたからです。
遼は2歳の頃に体調を崩し、病院で検査を受けると大脳基底核という場所に悪性腫瘍が見つかります。
医師は遼の腫瘍を『ジャーミノーマ』と診断します。
ジャーミノーマは放射線治療をすればかなり高い確率で治るため、里枝は医師の言葉を信じて遼に放射線治療を受けてもらい、数ヶ月、辛い副作用に苦しむ遼をなぐさめ励ましました。
しかし、その後の精密検査で遼の腫瘍はジャーミノーマではなく『グリオブラストーマ(膠芽腫・こうがしゅ)』であることが発覚します。
グリオブラストーマは進行が非常に早いため発覚した時にはすでに手遅れである場合が非常に多く、90パーセント以上の患者が発症がわかってから5年以内に死亡してしまう悪性度の高い腫瘍です。
遼はグリオブラストーマであることがわかって間も無く亡くなりました。
里枝は放射線治療が無駄だったことを知って医師の診断を鵜呑みにしたことを後悔し、遼が生まれてきてよかったと思えるようなあらゆることをしてあげたかったと思わない日はありませんでした。
ある男「X」(窪田正孝)の正体は?
谷口大祐になりすましていた里枝の夫『X』の本名は『原 誠(はら まこと』でした。
原誠の生い立ちと、谷口大祐になるまでの経緯を整理します。
原作小説にしか書かれていない情報も混ざっているかもしれませんがご了承ください。
原誠は三重県の四日市市で生まれ、生まれた時の氏名は「小林 誠」でした。
誠の父の小林 謙吉は、誠が小学4年生の頃に強盗殺人・放火事件を起こします。
ギャンブル依存病だった謙吉は同じ町内に住む工務店の社長に金の無心に行き断られると、逆上して社長とその妻と一人息子を刺殺し、現金を奪って放火したのです。
その後、謙吉は逮捕されて死刑判決を受けました。
誠は父親が逮捕された後に母親の姓に変わって「原 誠」になり、押しかけてくるマスコミと野次馬に耐えかねて引越します。
しばらくは母親の妹の家に居候していましたが、謙吉の事件が原因で妹家族とも険悪になると母親は蒸発してしまい、残された誠は養護施設に入れられました。
誠は小学校では謙吉の息子だとバレていじめられ、中学は遠方に通ったためバレませんでしたが、誠自身が殺人犯の息子だとバレるのを恐れ内向的になり過ぎたせいでいじめられ、中学卒業後は定時制高校に通いますが、すぐに退学してしまいました。
高校退学と同時に施設を出ざるをえなくなり、しばらくホームレス同然の生活を送ります。
数年後、誠は小菅(でんでん)のボクシングジムに入会して中華料理店でアルバイトを始めます。
この中華料理店で出会ったのが茜(河合優実)です。
運動神経とセンスが良かった誠はぐんぐん成長してプロテストに1発合格し、その後の東日本新人王トーナメントで優勝します。
周囲にとっては喜ばしいことでしたが、素性を隠したい誠にとっては世間で話題になるのは避けたい事態でした。
全日本新人王決定戦の日が近づくと、誠はボクシングを始めた理由(自分をいたぶりたかった)や実父の事件を打ち明けて新人王を辞退すると言い出し、小菅と衝突しました。
小菅は「親は関係ない お前が苦しんでも殺された人は生き返らない お前はもっと人生を楽しむべきだ」と説得しようとしますが誠は納得せず、そのままボクシングジムをやめて蒸発してしまいます。
その後、誠は職を転々としながら大阪にたどり着いてブローカーの小見浦(柄本明)と出会い、戸籍交換して『曽根崎義彦』になり、その後間も無くもう一度戸籍を交換して『谷口大祐』になりました。
こうして谷口大祐となった誠(X)は宮崎に移住して伐木作業員となり、里枝と出会って結婚します。
曽根崎義彦は誰?
小説未読の方向けの解説です。
誠(X)が最初に戸籍交換をした曽根崎義彦は、全国的にも知名度の高い暴力団組員の息子でした。
『原誠』は死刑囚の息子のため戸籍交換の需要がなく、誠は相手を選べず最初はヤクザの息子『曽根崎義彦』と交換するしかありませんでした。
誠は交換の際に本物の『曽根崎義彦』と会いますが、本人の人間性が気に入らず名前を変えたくなり、また新しい戸籍を求めて谷口大祐と出会いました。
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