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結末のネタバレに触れるかもしれない内容を考察します!
プエルトリコに帰りたい男性陣とアメリカに居たい女性陣
©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
シャークスの男性陣は出稼ぎでニューヨークに出てきた人々の集団です。
ベルナルドをはじめとする男性陣は皆プエルトリコに帰って地元で家庭と仕事を持ちたいと考える一方で、アニータを代表とする女性陣はアメリカで自立した人生を築きたいという夢を抱いている様子が対照的に描かれています。
プエルトリコは元々はスペインに統治下にありましたが、1890年代の戦争でアメリカの傘下に加わった歴史があります。
そういう経緯があるため、アメリカ本土に移住したプエルトリコの人々はアメリカ国民であるにも関わらず、先住民達から移民扱いされて場合によっては人種差別の対象になったりと肩身の狭い思いをしてきました。
プロボクサーのベルナルドは知名度が上がるにつれて、差別的な批判を受けることが多くなったのかもしれません。
ベルナルドはそういった排他的な白人至上主義にうんざりして、精神的苦痛やしがらみから解放されるべく地元に戻ってアニータには主婦になってほしいと願います。
一方、ベルナルドの恋人で縫製の仕事をするアニータは、いつかニューヨークに自分の店を持つという目標があり、プエルトリコで主婦になる気は全くありませんでした。
全く正反対の理想を抱く2人を繋ぎとめていたのは『愛』だけです。
同じプエルトリコの人間にアメリカに対する両極端なイメージを抱かせることで、アメリカの良い面、悪い面を表現したかったのかもしれません。
マリアがトニーに惹かれた理由
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マリアの根底には『兄の敷いたレールの上を歩きたくない』という強い反発心がある風に描かれていました。
この兄への反抗心が、マリアにはトニーとの恋のスパイスになっていたように思えます。
兄ベルナルドがチノをマリアに紹介したのは、真面目で堅実なプエルトリコ人のチノを夫に持つことが、マリアのより安泰で幸せな将来に繋がると信じた親心からです。
しかし、マリアにとって恋人の仲介は迷惑でしかありません。
マリアはまだ18歳ですし、運命的な恋愛に憧れる年頃です。
そんな時に高身長でイケメンのトニーとあんな素敵な出会いをしたら、恋してしまいますよね〜。
マリアのトニーに対する純粋な愛情が感じられるのはベルナルドが死んだ後です。
兄を殺した男を愛せるというのは、どんな気持ちか想像もつきませんが、少なくとも生半可な愛では無いことは確かです。
アニータがトニーに嘘の伝言を伝えた理由
アニータは「マリアはチノに殺された」と嘘の伝言をトニーに伝えました。
ベルナルドを殺したのはトニーなので、アニータはトニーに恨みがありますが、一方で妹のように可愛がっていたマリアはトニーの罪を知った上で駆け落ちしようとするので、アニータも一度はマリアの気持ちを尊重しようと思います。
アニータは恐らくドラッグストアに入るまでは正直に伝言を伝える気があったと思われますが、ジェッツの男達にレイプされかけて気が変わって衝動的に嘘を伝えてしまったのでしょう。
マリアのその後
チノがトニーを撃った後、トニーが仲間達によって運ばれて行き、チノは逮捕されて話は終わります。
マリアとアニータは複雑な関係になってしまうので、今後も共同生活を続けるのは難しいのではないでしょうか。
2人ともまだ若いので、トニーとベルナルドの死を克服して新しい素敵な男性に出会って幸せになれると良いですね。
また、マリアはトニー、アニータはベルナルドの子どもを妊娠している可能性も捨てきれません。
ひとつになれない世界に、愛し合える場所はあるか?
ポスターに書かれていた問いかけです。
マリアの恋人トニー、アニータの恋人ベルナルドが死んでしまうので、答えは『無い』ということになります。
ひとつになれない世界で起きたカップル達の悲劇を描くことで、私達に差別や争いの無い平和な世界を目指して欲しいというメッセージが込められていたように感じました。
1961年版との違い
ロバート・ワイズ監督の61年版を2022年版との間違い探し感覚で見たので、違いを気付いただけ挙げていきます。
シュランク刑事が語っていた再開発の話は2022年版のみの設定で、61年版には登場しませんでした。
再開発とリメイクをかけていたのかもしれません。
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本作のリフはどこか影のある雰囲気でしたが、61年版のラス・タンブリンさん演じるリフはどこか陽気でコミカルです。(画像のベージュのジャケットの男性です)
ジェッツとシャークスが集まったダンスパーティーでは特にはっちゃけていて楽しそうでした。
トニーが働いていたドラッグストア店主は2022年版はリタ・モレノさん演じるバレンティーナでしたが、1961年版はネッド・グラスさん演じるドクという男性でした。
リタ・モレノさんは61年版のアニータ役を演じていた方でもあります。
2022年版のトニーとマリアは階段裏に隠れて人目を避けるように話していましたが、61年版のトニーとマリアは一切隠れていませんでした。
ジェッツのメンバーが『We are sick』(タイトル違っていたらすみません)の歌を披露する場所は、61年版は溜まり場でもあるドクのドラッグストアの前でしたが、2022年版は警察署の中でした。
決闘の約束をした場所は、61年版はドクのドラッグストアの中でしたが、2022年版はパーティー会場のトイレの中でした。
ちなみに61年版で決闘の約束をするときはトニーもその場に駆け付けていて、丸腰で争うように提案したのもトニーでした。
トニーとの交際に反対するベルナルドとマリアの喧嘩のシーンは61年版には無く、スピルバーグ監督版のオリジナルの演出です。
女性の自立心の強さをより強調しているように感じました。
2022年版ではトニーとマリアは電車に乗って教会でデートして結婚の約束をしていましたが、61年版はお出かけデートはしておらず、トニーがマリアの職場に現れての密会デートと婚約でした。
2022年版のリフはナイフと銃を用意してしまいますが、61年版のリフの装備はナイフだけでした。
チノがリフの銃でトニーを撃ってしまう演出はスピルバーグ監督らしさが出ている気がします。
2022年版の『Crazy Boy』(こちらもタイトル違っていたらすみません)は銃を買ったリフに対してトニーが決闘をやめるように説得する歌でしたが、61年版は決闘でリフが死んだ後、シャークスに復讐しようとするジェッツのAラブというメンバーを他のメンバーが止めた時に歌われました。
61年版は決闘の格闘シーンもダンス調でしたが、2022年版は喧嘩のシーンはちゃんと喧嘩していて、ダンスは思いっきりダンスをしてと、何となくメリハリを感じました。
どちらが良いと思うかは好き好きですが、個人的にはメリハリを感じるスピルバーグ監督版の方が好みでした。
以上です!読んで頂きありがとうございました。
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※本ページの情報は2022年2月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
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