「海よりもまだ深く」ネタバレ解説考察|町田の恩、主要人物のその後など! | 映画鑑賞中。

「海よりもまだ深く」ネタバレ解説考察|町田の恩、主要人物のその後など!

ヒューマンドラマ

この記事では映画『海よりもまだ深く』の解説、考察しています。
本作について何か疑問があった方は目を通してみてください(^^)
前半にあらすじも書いているので、あらすじは知ってる!という方は目次から飛ぶか、読み飛ばしてくださいね~

制作年:2016年
本編時間:108分
制作国:日本
監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
原案:是枝裕和

 

キャスト&キャラクター紹介

(引用:https://www.tribecafilm.com

篠田良多阿部寛
15年前に一度賞を受賞したきりの売れない小説家。
自信がない時や適当に物を言うときは3回以上返事をする癖がある。
小説だけでは生活できず興信所(探偵事務所)で働いていて、犯罪まがいの方法で小金を稼いでいるが、ギャンブルにつぎ込んでしまうため常に金に困っている。
元妻の響子に未練があり、あわよくば復縁したいと考えている。

 

(引用:https://lwlies.com

白石響子真木よう子
良多の元妻、真吾の母親。
良多が決められたとおりに養育費を払わないことを不満に思っている。
不動産屋で働き生計を立てるシングルマザーだが、彼氏の福住との再婚を検討している。

 

(引用:https://tsutaya.tsite.jp

篠田淑子樹木希林
良多の母親。夫は半年前に他界している。
団地で気ままな暮らしを楽しんでいる一方で、1人暮らしの寂しさも抱えている。
いつか分譲住宅に住みたいという叶わぬ夢がある。

 

(引用:https://blogs.yahoo.co.jp

中島千奈津小林聡美
良多の姉。和菓子屋でパートをしている。
「もうお母さんや私に頼らないで」と良多に言い聞かせる一方で、自分はちゃっかり娘の習い事のお金を出してもらったりと母親の世話になっている。

 

(引用:https://www.cinemashufu.com

白石真悟吉澤太陽
良多の息子、高校受験を控える中学生。
気が弱い所があり、習っている野球でも消極的なプレーをする一方、良多のお金のことを気に掛けたりする優しい子。
父親(良多)のようには絶対になりたくない、似たくないと思っている。
祖母の淑子が大好き。

その他のキャスト

町田健斗(良多の同僚)…池松壮亮
山辺康一郎(興信所の社長)…リリー・フランキー
愛美(興信所の社員)…中村ゆり
福住(響子の彼氏)…小澤征悦
二村(質屋)…ミッキー・カーチス
二村の妻…松本じゅん
仁井田(クラシックの先生)…橋爪功
三好(出版社の社員)…古舘寛治
安藤(依頼人)…黒田大輔
安藤未来(安藤の妻)…松岡依都美
真田(高校生)…葉山奨之
夏実(良多の幼馴染み)…峯村リエ
正隆(千奈津の夫)…高橋和也
長岡(団地の住民、淑子の友人)…立石涼子
野口(犬探しの依頼人)…福井裕子
彩珠(千奈津の子)…蒔田彩珠
みのり(千奈津の子)…一栁みのり
ニュース番組アナウンサー…戸部洋子(フジテレビアナウンサー) ほか

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ネタバレあらすじ

主人公の篠田良多は、15年前に『無人の食卓』という小説で島尾敏雄文学賞を受賞したきり、鳴かず飛ばずの小説家。
執筆活動だけでは生活できず、現在は探偵事務所の社員として生計を立てていて、周囲には「小説のためのリサーチ」と言い訳をしながら働いている。
ギャンブル好きで常に金欠、家賃も滞納しているため、時には実姉の千奈津に金を無心をしたり、母親・淑子が不在の間に実家に忍び込み、半年以上前に他界した父親の遺品を漁っては質屋に持っていくような毎日を送っていた。

また、良多には数年前に離婚した妻 ・響子と中学生の1人息子の真悟がいた。
良多はこんな生活をしていたので呆れられて離婚されたわけだが、失ってから家族の大切さに気が付いたらしく、響子に未練たらたらだった。
しょっちゅう年下の同僚・町田と共にこそこそ響子の周りをうろついては、響子が彼氏の福住と一緒にいる姿を見て「はやく別れろ」と思っていた。

月に5万円の養育費はまともに払えていないが、良多は響子と真悟に会える月に一度の面会交流の日を何よりも楽しみにしていた。

良多はその月の面会交流の日に真悟にグローブを買ってやりたくて、昔からある馴染みの質屋にカメラを売りに行った。
この時 良多は質屋の主人から、良多の父親も「息子の手術代が必要だから」と嘘をついて様々な物を売りに来ていた事を知らされた。
もちろん、良多は手術どころか入院するような病気にすらかかったことがなかった。
結局カメラは3千円にしかならず、複雑な気持ちで質屋を後にした。

金が足りないため、良多は町田と共に浮気調査の依頼人の妻(調査対象)安藤未来に会いに行き、浮気の証拠写真を見せ、旦那に嘘の報告をする代わりに金をゲットした。
良多は金に困った時は、町田とつるんでよくこういう事をしていた。
良多の『元妻の監視』や『犯罪まがいの金稼ぎ』に毎回付き合っている町田は、良多を慕っているというよりは懐いていて、良多は町田にとって『放っておけないダメ親父』のような存在だった。
町田は幼い頃に両親が離婚して母子家庭で育ったため、自分と似た境遇(離れ離れになった父と息子)の良多にどこか親しみを感じていた。
これでグローブを買うには足りる金額になったが『この金を倍にして家賃も払おう』と考えた良多は競輪場に行き、全額使った上に負けてしまった。

数日後。良多は出版社に呼び出され、漫画の脚本作りをしないかと持ち掛けられた。
テーマは良多得意の『ギャンブル物』らしく、担当者からは「結構お金にもなるので、ぜひ」と言われたが、小説家としてのプライドが邪魔をして断ってしまった。

その後、良多は町田と一緒に真悟の野球試合をこっそり見に行き、響子の彼氏の福住がすでに真悟にミズノのグローブをプレゼントしていたこと、
福住が年収1500万円は下らない不動産会社の社長だということを知った。

(響子、福住、真悟を見つめる良多と福住の経歴を確認する町田 引用:https://www.cinemacafe.net
町田が励ましがてら「向こうが再婚したら養育費を払わなくて済むじゃないですか」と言うと、良多は「そんなことしたら真悟に会えなくなる」と答えた。
町田が「会いたくなったら向こうから来ますよ、俺は20歳の時に親父に会いに行きました」と返すと、良多は「そんなに待てねえよ…」と寂しそうにつぶやいた。
良多はとりあえず、買ってやるのはスパイクにすることにした。

面会交流の日まであと数日しかない。
困った良多は姉の千奈津に金を借りに行った。
すると「お父さんもそうやって私にお金借りに来たわよ。あんた、お父さんにそっくりよ。比べられたくないなら、しっかりしなさい」と叱られてしまった。
良多は父親と比べられたり似ていると言われるのが大嫌いだったので、金を借りることなく渋々帰宅した。
この時 良多は千奈津から、淑子がへそくりをストッキングに入れて押入れの天袋に隠しているらしいという情報を耳にした。

その後、良多は安藤未来から約束していた依頼金十数万円を受け取り、さらに最終手段で、家庭教師に手を出している男子高校生から3万円を巻き上げた。
男子高校生を待ち伏せしている間、良多は「中学生の頃は公務員になるのが夢だった」と町田に語っている。
これで2か月分の養育費(10万円)とスパイクを買うお金が出来てホッとした良多だったが、実はこの男子高校生が探偵事務所の社長・山辺の警察時代の上司の息子だった。
山辺に「誰かの過去になる勇気を持つのが大人だ。もう別れた女への未練は捨てて、こんなことする位なら養育費も払うのやめろ」とまで言われて怒られてしまい、その時持っていた安藤未来からの報酬十数万円を徴収されてしまった。
落ち込んだ良多はギャンブルにかけることに決めてパチンコに行き、町田に優しくされて泣きそうになった。

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良多は養育費を用意できずに面会交流の日を迎えた。
金がないことを知ると、響子は怒ってすぐに帰ろうとしたが、良多は「金は今手元にないだけだ、俺の楽しみを奪わないでくれ!」と金のことをごまかしつつ食い下がった。
響子は「17時までに用意しておいて」と告げると仕事に行った。

良多は靴屋で店員に値切りを試みながら、真悟にミズノのスパイクを買ってやった。

(ミズノのスパイクを真悟に薦める良多 引用:https://eiga.com
モスバーガーを食べた後、宝くじ売り場に目が留まった良多は「俺の金で買ったから、当たったら山分けな」と言いながら真悟に宝くじ(10枚入り3千円のやつ)を買ってやった。
17時までに金を用意する約束をしてしまった良多だったが、その約束は到底果たせそうにない。
その日は夜までに大型の台風が来る予報だったが、良多は色々と考えて、時間稼ぎのために真悟を連れて淑子の所に行くことにし、響子には淑子の自宅まで来てもらうことにした。
良多から「今から真悟と行く」と連絡をもらった淑子は「響子さんとのこと、助けてほしいのかねぇ」と呟いた。

淑子の所に行った良多は、そこに千奈津が家族を連れて来て居たことにうんざりしつつ、千奈津一家が帰るのを待つことにした。
良多は千奈津の娘・彩珠が、淑子に金を出してもらってフィギュアスケートを習うことを知り、千奈津と嫌味の言い合いをした。

夕方になると千奈津一家は帰り、入れ替わりで響子が真悟を迎えに来た。
台風が迫っていたのと、良多の狙い(養育費の支払いを少しでも遅らせること)をわかっていた響子はすぐに帰ろうとしたが、結局 晩御飯を一緒に食べることになった。

晩御飯のカレーうどんを食べ終わった頃には暴風雨が本格的になっていたので、淑子の強い要望もあり、3人はこのまま一泊することになった。
良多は仕方なく泊まる風を装っていたが、内心は久しぶりに響子と話せるチャンスだと思っていた。
良多と響子が二人きりになると、響子は「真悟には勤勉な子になってほしいから、あなたの趣味に引き込むのはやめて」と言い、良多が真悟に宝くじを買わせた事に不満をもらした。
良多は「宝くじはギャンブルじゃない。300円で夢を買うんだ!」と対抗したが、理解してもらえなかった。

真悟は宝くじを買ったことを淑子に報告し、「宝くじが当たったら大きな家を建てて、その時はおばあちゃんも一緒に住もうね」と笑った。
淑子は「是非そうしてください」と答えながらポロリと嬉し涙を流した。

淑子は良多が使っていた部屋に布団を3つ敷き、困ったフリをする良多と嫌そうな顔をする響子に「真悟くんを間に挟んで寝ればいいし、久しぶりなんだからたまにはいいじゃない」とにこやかに言った。
真悟がお風呂に入っている間にまた二人きりになった際、響子は福住の存在を教えていないのに良多が知っていたことや、突然体を求めてきたことに呆れかえった。

(響子に福住のことを聞き出そうとする良多 引用:https://style.nikkei.com
響子は良多の手を思いきり殴ると、真悟と淑子がいる居間に行ってしまった。

深夜。良多は淑子が寝静まるのを待つと、良多の一番の狙いである、押入れの天袋を探って淑子のへそくりを探した。
ストッキングにくるまれた物はあったが、中身はチラシの裏に「残念でした!姉より」と書かれたメモだった。
一杯食わされた良多はため息をつき、仏壇の周りを探って父親が愛用していた硯を発見した。
その後「眠りが浅い」とぼやきながら起きてきた淑子と良多が話をした際、淑子は「失くしたものをいつまでも追いかけたり、叶わない夢を見ていたら毎日は楽しめないわ。
幸せは何かを諦めないと手に入らないもんなのよ。
私は海より深く人を好きになったことなんてないけど、だからこそ、こんな毎日を楽しく生きていけんのよ」と語った。
良多が「複雑だね」とコメントすると、淑子は「人生なんて単純よ」とつぶやいた。
一息ついた淑子は「私、今すごく良いこと言ったでしょ。あんたの小説に書いていいわよ!メモしなさいよ!」と騒いだ。
良多は「いいよ、もう覚えたから!」と言いながら、後に淑子が寝た後に言葉をメモした。

その後、良多は起きてきた真悟と一緒に台風の中 公園に行った。

(真悟を夜中の公園に誘う良多 引用:https://eigaland.com
その公園は良多が子どもの頃、今日みたいな台風の夜に父親と一緒に雨をしのげる遊具の中に入り、一緒にお菓子を食べた場所だった。
良多も真悟と一緒に遊具の中に入り、しけったせんべいを食べた。
良多が「将来なりたい職業あるの?」と聞くと、真悟は「公務員」と答えた。
それは奇しくも、良多が中学生時代に抱いていた目標と同じだった。
真悟の「パパはなりたかった人になれた?」という質問に、良多は「なれてない。けどそれは問題じゃない。大事なのは、そういう気持ちを持って生きてるかどうかだよ」と答えた。

同じ頃、響子と淑子も起きだして久しぶりに2人きりで話をしていた。
淑子の「あなたたち、もうダメなのかしら?」という質問に、響子は静かにうなずくと「お母さんには申し訳ないけど、良多さんは家庭を持つには向いてないと思います」と答えた。
淑子は「父親に似たのね、こちらこそごめんなさい」と謝り、「何でこんなことになっちゃったのかしらね~」と涙を流した。

その後、響子は公園まで真悟と良多を迎えに来た。
真悟に飲み物を買いに行かせている間、響子と良多は「こんなはずじゃなかった」と言い合い、響子が「もう決めたんだから、前に進ませてよ」と小さな声で言った。
良多は「わかった、いや、わかってた」と、目に涙をためながら答えた。

3人で飲み物を飲んでいた時、真悟が良多に買ってもらってポケットに入れていた宝くじを落としたことに気付いた。
良多と真悟は強風と雨に吹かれながら必死に探し、見かねた響子も一緒になって、深夜の公園に散らばった宝くじを探し回った。
宝くじは10枚全部落としていたが、7枚しか見付けられなかった。

翌朝。台風は通過して晴れ間が見えていた。
淑子の家を出た良多は響子、真悟を駅前で待たせて、父親の硯を持って質屋へ立ち寄っていた。
硯には30万円の値が付きテンションが上がったが、同時に店主から、その昔、良多の父親が『無人の食卓』の初版本を近所中に配って回っていたことを知らされた。
良多は当時の父親の思いを知って恥ずかしさや嬉しさを感じながら、店主とその奥さんに言われるがまま、硯を使って店主が父親からもらったという『無人の食卓』にサインをして店を出た。
良多は硯を売らずに持ち帰ることにした。

真悟、響子と落ち合った良多は、真悟に「宝くじはお前に全部やるよ」と告げた。
その後、次回は3か月分の養育費15万円を用意することを約束して、良多は響子と真悟と別れた。

主題歌
ハナレグミ『深呼吸』

挿入歌
テレサ・テン『別れの予感』
ジュリアード弦楽四重奏団『ベートーヴェン弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調作品131』

 

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解説、考察や感想など

町田が言っていた『良多への恩』とは?

(寝ている良多を起こしに来た町田 引用:https://www.cinemashufu.com

町田が「篠田さんには借りがある」と言っていましたが、良多は「借りなんてあったっけ?」と聞くと、町田は「わからないならそれでもいい」というようなことを答えていました。
どんな恩があるのか詳細は語られていませんでしたが、良多自体も町田の言う『借り』が何のことかわかっていなかったので、恐らく良多が具体的に町田に何かしてあげたのではなく、『良多の常日頃の行動や考え方、発言などが結果的に町田を救っていた』と考えるのが自然です。

町田は幼い頃に両親が離婚し、母子家庭で育ったことが彼の発言からわかります。
なので町田は常日頃から、息子と離れ離れになってしまった良多を自分の父親と重ねていたのでしょう。
良多の「真悟に何か買ってやりたい」とか「養育費を稼がなきゃいけない」という思いと行動を見ることで、町田は良多を通して『子どもと離れ離れになった父親の気持ち』を垣間見ることができました。
そして「俺の親父もこんなことを考えてたのかなー(そうだったら嬉しいな)」という思いが良多への共感に繋がります。
だから町田は良多になつき、仕方なく金を貸したり、汚いやり方の養育費稼ぎに協力してあげたりしていたんだと思われます。

町田が良多のアパートを訪ねた時の町田の表情は、父親と話す子どものような表情にも見えてきますし(タイトル下の画像がその時の町田です)、
良多が社長の山辺に養育費を没収された後にパチンコに来た際も、町田は「子どもの頃に親父に買ってもらったグローブをまだ持ってる」と言いながら良多にパチンコ玉をあげて、優しく元気づけようとしていた理由も理解できます。

 

良多は結局硯を売ったのか

質屋から出て響子と真悟と合流した良多は、袋に入った四角いものを大事そうに持っていました。
良多は硯を売らなかったということです。

質屋で父親の硯には30万円の値が付きましたが、同時に店主から、良多の父親がかつて良多の本を近所中に配っていた事を知らされた良多は、この時初めて父親に大切に思われていたんだということを知ったのでしょう。
いくら高値がついても、そんな話を聞いた後に父親が大事にしていた物を売れないですよね。

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伏線について

1.登場人物たちの会話

特に前半は会話のほとんどが伏線になっています。
本作には登場人物たちの身の上話などの説明は一切ありません。
しかし、彼らの日常会話の中で関係性がわかるフレーズがいくつも登場します。
例えば、町田の「二十歳のときに父親に会いに行った」というのも、町田は10代かそれよりも幼い頃から父親と離れて暮らしていたことを示すフレーズになります。
淑子の家でカレーを食べた時、淑子が「カレーはお父さんが好きだったから沢山作ってた」と言うと、良多が「まじ?!半年以上前のやつじゃん!」と文句を言います。
このセリフから、良多の父親が亡くなったのは約半年前だということが読み取れます。
こんな風に、登場人物たちの発言から関係性を読み取っていくのも楽しいですし、是枝監督ならではな感じがします。

2.おまんじゅう

冒頭で良多が実家に忍び込んだ時に食べた『おまんじゅう』です。
良多は仏壇に供えられていたお饅頭をつまみ食いした後、淑子に「姉さん、よく来てるの?」と聞きます。
これだけだと意味がよくわかりませんが、しばらく後に和菓子屋に来た良多と、店頭に並ぶ「やぶれ饅頭」(仏壇に供えてあった饅頭)と、そこで働く姉・千奈津が登場します。
このシーンを見て初めて、冒頭の良多の発言の意味が理解できます。

3.淑子のへそくりと台風

良多が千奈津に金を借りに行った時、良多は千奈津から淑子のへそくりの隠し場所が押入れの天袋だと耳にします。
そして、真悟の2か月分の養育費10万円を用意できなかった良多は、台風が来る予定であるにも関わらず真悟を淑子の家に連れていき、響子を淑子の家に呼び寄せます。
この辺から「あれ、もしかして…?」とじわじわきますねw
これは見進めていって次第にわかることになりますが、良多が淑子と響子に電話した時点で考えていたことは『淑子のへそくりを盗んで養育費にあてること』と『夜に台風の来る日に響子を淑子の家に呼び寄せて、響子(と真悟)を泊まらせて、無理やりにでも響子と2人で話す時間を作る、そしてあわよくば復縁する』ことです。
良多は台風を利用して一石二鳥(金と響子)を狙ったわけです。
しかし、頑張って探したへそくりは千奈津にすでに保護されており(もしかしたら初めからへそくりは無く、千奈津が良多の行動を予測した上であえてニセへそくりを作ったのかもしれませんが)、良多の計画の1つは失敗に終わります。
そして次の計画は響子との復縁ですが、「前に進みたい」と言われフラれてしまい、結局良多はどちらも手にすることができませんでした。

また、この『台風』自体が登場人物たちの複雑な心境そのもの(特に良多の心境)を表すものだったと解釈して良いと思います。

4.タコ公園

冒頭の辺りからタコの形をした公園の遊具が登場します。
使用禁止された状態で登場するこの遊具ですが、良多にとってこのタコの滑り台は『台風が来た夜に父親と一緒に遊具の穴の中に入り、間近で台風を見ながらお菓子を食べた』思い出があります。
「父親に似ている」と言われることが大嫌いだった良多ですが、良多は台風の夜、楽しそうに真悟と一緒にタコの遊具の所へ行き、真悟と一緒にお菓子を食べています。
このことから、良多は父親と関係が良く無かったようですが、心の中では父親との思い出を大切にしている(父親が好き)ことが伺えます。

5.良多「公務員になるのが将来の夢だった」

良多が町田と話していた時、「中学生の頃は公務員になりたかった」と語っています。
その後、良多が中学生の真悟に将来の夢を聞いた時、真悟は「公務員」と答えます。
良多が「父親に似たくない」と強く思いながらも父親と言動が似てしまっていたように、真悟もまた良多と同じように「父親に似たくない」と思っているのに、良多に思考が似てしまっていることを表しています。
あんな純真無垢な表情が印象的だった真悟が将来 良多のようになるとはあまり想像したくないですが、真悟もまた確実に良多の遺伝子を受け継ぎ、どこか似ている部分を持ちながら生きていくことを表していた伏線だったと思いました。

6.宝くじ

良多と真悟の面会交流の日、良多は真悟に宝くじを買ってやります。
購入時、良多は「俺の金で買うんだから、もし当たったら山分けだ」と言いながらお金を出して真悟に「ケチ」と言われています。
しかし台風が去った翌朝、良多は真悟に「やっぱり宝くじは全部真悟にやる」と言います。
これは良多が少しだけ大人になったというか、親の立場に立てたというか、そういう精神的な成長や心境の変化を表す場面だったのだと思います。

7.漫画の原作の依頼

良多は出版社に呼び出されて漫画の原作の依頼を受けますが、そのときはとっさにごまかして断っています。
その後この話は登場しませんが、編集者は「結構良いお金になる」とも言っていましたし、その後の良多の行動や収入源を示す伏線になっていたのではと思っています。

良多は台風の夜を経て気持ちの整理がついたこともあり、これからは汚い稼ぎ方をすることは減っていくんじゃないかなーと思います。
一度社長にバレているので、もうあまり下手な行動もとれないでしょうし(;’∀’)

覚えている伏線はこんなもんかな。また思いだしたら追記します!

 

登場人物たちのその後を予想

(団地の囲いに座る良多、響子、淑子、真悟 引用:https://spice.eplus.jp

まず良多ですが、この台風の一夜で響子への未練を断ち切ることができました。
そして父親の硯を売らなかった良多は、養育費15万円を用意するために漫画の原作の話を受けることに決めたのだと思います。
もちろん小説も書き続けるでしょう。
というか個人的にはこの後、良多が書く小説が本作『海よりもまだ深く』になるんじゃないかなーと想像しています。
探偵事務所は、漫画のお金が編集者が言っていた通り『結構良いお金』になるのであれば、山辺社長ともいざこざがあったのであまり長居はしないだろうと思われます。
事務所を辞めた後も町田との交流は続きそうです。
「漫画にするネタのリサーチ」などと言って一緒にギャンブルに繰り出す姿が想像できます(笑)

響子は彼氏の福住と結婚は恐らくしないと私は思いますが、良多とヨリを戻すこともないけど、良多、響子、真悟の関係は良好なまま続くんだろうと感じました。
福住とは結婚しなそうだと思った理由は、福住は良多と淑子のことを悪く言っていたからです。
本を酷評された時、響子はがっかりしていたように見えました。
響子は淑子のことや、小説家としての良多は尊敬しているようですし、福住の「もう元旦那(良多)とも母親(淑子)とも会わない方が良い」という言葉を無視して、淑子とお寿司を食べにいく約束をしていましたね。
なので、響子が相当金銭的な打算をしない限りは福住との結婚はないだろうなーと感じました。

真悟は「良多に似たくない」と強く思っていたようですが、なりたい職業や文才があるところなど、良多に似ているところが強調されていたので、真悟も恐らくどこかしらは良多に似た部分を持ちながら育っていくんだろうと思い、いつかは良多や響子のように『こんなはずじゃなかった』と思う日も来るんだろうなと思います。

淑子は本人や千奈津も言っていましたが、あの団地の部屋で一生を終えるのでしょう。
旦那のようにポックリいくのか、じわじわ弱っていくのかはわかりませんが、恐らく良多が希望したように、残された人生を楽しみながら徐々に弱っていくタイプなのではないかと想像しています。

 

その他感想など

ネタバレありきの感想なので、見ていない方は意味が分からない部分もあるのでご了承ください!

まず、監督のインタビュー記事を読んで、舞台となった東京都清瀬市の旭が丘団地が、是枝監督が実際に育った団地だったことに驚きました。
まぁ『そこしか撮影許可が下りなかった』という消極的な理由だったようですが、実際に育った団地で映画撮影となると、監督自身もかなり感傷に浸りながらの作品作りだったんじゃないかなぁと想像できます。

しょっぱなから脱線してしまいましたが作品の感想としては、主人公の良多と、彼を取り囲む家族との関係がそれぞれわかりやすく、リアルに描かれていて、それぞれのキャラクターに共感はあまりできなかったものの、感情移入しながら見ることができました。
作中で登場人物たちが何度も口にする「こんなはずじゃなかった」というセリフは、感じたことがある大人は多いと思いますし、実際に私も「こんなつもりじゃなかった」人生を更新中です(笑)

個人的に印象に残ったのは、小林聡美演じる千奈津のずるさというかしたたかさです。
良多に「お母さん(淑子)も私も、もう頼りにしないで!」と言いつつ、裏ではちゃっかり淑子に色々とお世話になっている所にツッコミを入れたくなります(笑)
主人公良多の、息子のグローブ代として同僚から借りた一万円をついつい母親にあげてしまったり、お金がないのに息子に高いスパイクをプレゼントをしちゃうような見栄っ張りさ加減や、それを息子に見透かされている所なんか、見ていて別の意味で泣けてきました。。

良多と淑子が言葉の端々で「あれ」と口癖のように繰り出すのも見ていてニヤッとしてしまいました。
私自身は親に似たくないと思ったことはあまりないですが、「親のこういうとこが嫌い」という思考や言動を気が付けば自分もしている時があって、たまにおぞましく思う時はあります。。orz

未鑑の方にはわからない内容で申し訳ないですが、本作で笑えたのはほぼ希林さんのおかげでした。
個人的に一番ツボだったのは樹木希林演じる淑子の「3LDK~」でした(笑)
シャツについたシミを唾で落とそうとして良多に嫌がられていたり、淑子の細かな会話ややりとりが本作をよりリアルにしていたように思います。

本作のメッセージは、樹木希林演じる淑子がほとんど語ってくれていましたが、『こんなはずじゃなかった、それでも前向きに生きていけばいつかは希望が見えてくる』、『過去にばかり目を向けていては人生楽しくない』ということです。
良多が囚われていた『過去』は別れた妻の響子や、小説家としての成功(15年前の受賞)、父親との確執でしたが、ちゃんと響子と話し合ったり父親のことを知ったりして過去に決着をつけることができました。
『過去』を『過去』にするには、まず過去と向き合わなければいけないということも本作は教えてくれました。
私自身が向き合うべき事は何なのか、そういうことを考えさせてくれるステキな作品だったと思います。

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参考記事
OURS.:是枝裕和監督インタビュー

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