『すばらしき世界』ネタバレ解説|津乃田が言おうとしたこと、三上の入れ墨の謎など考察 | 映画の解説考察ブログ

『すばらしき世界』ネタバレ解説|津乃田が言おうとしたこと、三上の入れ墨の謎など考察

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ヒューマンドラマ

映画『すばらしき世界』の解説・考察をしています!
『ラストはなぜそうなった?』『タイトルの意味』『三上が殺人を反省しない理由』、『三上の入れ墨』、『津乃田が電話で言おうとしたこと』、『小説との違い』などについて書いてます。

ネタバレありきの記事のため、まだ見ていない方はご注意ください!

すばらしき世界

制作年:2021年
本編時間:139分
制作国:日本
監督・脚本:西川美和
原作小説:『身分帳』佐々木隆三 著

 

声優&キャラクター紹介


©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会
三上正夫役所広司
殺人罪で13年間服役していた10犯6入の男性59歳。
極道と繋がりのある人生を送ってきて、人生の半分近くを少年院や刑務所で過ごすが、今回の出所後は堅気に生きることを決意する。
喜怒哀楽が激しく、間違っていると思うことは正さなければ気が済まない性格。

 

すばらしき世界
©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会
津乃田 龍太郎(つのだりゅうたろう)…仲野太賀
東京で働くTVディレクター。
小説家になる夢を叶えるためにテレビ局を退職しようとしていたが、上司の吉澤に頼まれて最後の仕事として三上の取材を引き受ける。

 

西尾久美子(三上の元妻)…安田成美
庄司勉(弁護士)…橋爪功
庄司敦子(庄司勉の妻)…梶芽衣子
井口久俊(ケースワーカー)…北村有起哉
吉澤遥(TVプロデューサー)…長澤まさみ
松本良介(スーパー店長)…六角精児
下稲葉明雅(三上の極道仲間)…白竜
下稲葉マス子(下稲葉正雅の妻)…キムラ緑子
医療刑務官…康すおん
処遇首席…井上肇
女性警察官…山田真歩
刑務官…沖原一生
女医…まりゑ
ゴリライモ…山口航太
検察官…マキタスポーツ
免許センター試験官…松角洋平
ヤンキー…奥野瑛太、田中一平
リリーさん(風俗嬢)…桜木梨奈
下稲葉の弟子…高橋周平
あかつき学園長…松浦祐也
介護士…松澤匠、三浦透子
阿部(介護アルバイト)…田村健太郎 ほか

あらすじ紹介

あらすじ①:三上正夫の生い立ち


©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

平成29年2月、殺人罪で旭川刑務所に収監されていた三上正夫(役所広司)は、12年3ヶ月の刑期を終えて出所します。

三上は出所と同時に東京のテレビ局に「私の母親を探して欲しい」という依頼と共に『身分帳』を送付しました。
三上は4歳で母親と離れ離れになり、それから一度も会えていません。
『身分帳』とは、服役した1人ずつに必ず作られる個人台帳で、生い立ちや学歴などから、身体的特徴、犯罪歴、服役中の態度などが書き込まれているノートです。
その身分帳によると、三上は10犯6入(10回受刑して6回服役した)の犯罪歴を持ち、人生の半分近くを少年院、刑務所、拘置所で過ごしています。

身分帳は刑務所が管理していて、通常なら囚人本人は見られませんが、三上は看守に頼み込んで身分帳を丸写しさせてもらい、テレビ局に郵送しました。

テレビプロデューサーの吉沢遥(長澤まさみ)を通して三上の身分帳を受け取ったディレクターの津乃田龍太郎(仲野太賀)は、三上と会ってみることにしました。

三上正夫は福岡県福岡市内で私生児として生まれました。
母親は福岡市内で芸者をしていた女性です。
彼女は未婚で正夫を産みますが、父親による認知がなされず無戸籍児として育ちました。

私生児…婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもを指します。
無戸籍児…出生届が出されず、社会的に認識されていない子どもです。

三上は4歳の時に養護施設に預けられ、そのまま施設側と三上の母親は連絡が取れなくなりました。
それから三上は11歳頃から非行に走り始めて関西の暴力団の下っ端になり、14歳の時に初めて逮捕されて京都宇治少年院に収容されました。

少年院を出てからは暴力団構成員だった時期もありましたが、極道を抜けて上京し、当時の妻 久美子と亀有でスナック経営をしていました。
しばらくは忙しい日が続きますが、三上はスナック従業員のことで暴力団員と喧嘩になり、ある日の夜に三上の自宅を襲撃してきたヤクザの男1人を返り討ちにして瀕死状態に追い込みます。
我に返った三上は自ら救急車を呼びますが、男は死亡しました。

三上は「先に襲ってきたのは相手だから正当防衛だ」と高を括っていましたが、裁判では殺人に対する反省の態度が見られなかったことから正当防衛が認められず、殺人罪で13年の実刑判決を受けました。

その後、三上と妻の久美子とは服役中に離婚が成立しています。

 

あらすじ②:東京での新生活

三上は身元引受人になってくれた弁護士の庄司勉(橋爪功)を頼って東京の上野に来ました。
三上はすぐに働きたかったものの、高血圧症の持病がある他、まだ住居も決まっていないため難しい状態でした。

庄司の勧めで三上は生活保護を申請しますが、ケースワーカーの井口(北村有起哉)は三上が元裏社会の人間だと察して拒絶しようとしたことから口論になってしまいます。
三上は頭に血が上って役所で倒れてしまい、病院に一泊することになりました。
三上は医師から「できる限り心穏やかに過ごしてください」と告げられました。


©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

入院した日の夜、病院を訪れた津乃田と三上は初めて出会いました。
三上の生い立ちを楽しそうに聞く津乃田に、三上は気を良くしてすぐに打ち解けました。

数日後。前科者でも住めるアパートを庄司が見つけてくれて新生活が始まりました。
生活保護も庄司のおかげで受け取れるようになりますが、三上は「政府の世話になりたくない」とさっそく仕事探しを始めます。

三上は自宅で1人で出来る仕事をしようと思い、入所中に覚えた剣道着作りを請け負う仕事を探しますが、そのような会社は少ない上に前科者を雇ってくれる所はありませんでした。

その後、ケースワーカーの井口と話して携帯を持っても良いと知った三上は、すぐにアイフォンを手に入れました。
三上は求人サイトなどからトラック運転手に目をつけますが、三上の運転免許証は服役中に失効していて、条件を満たしていなかったため免許の再発行もしてもらえませんでした。

その後、三上は元妻の久美子と住んでいたアパートに行ってみると、久美子は別の男性と再婚していたもののまだそこに住んでいました。
このとき三上は久美子の娘の小学生と鉢合わせ、その子の年齢から自分の子ではないことがわかり切なくなりました。

帰りに最寄りのスーパーで買い物した三上は、店長の松本(六角精児)と故郷が同じ福岡市内とわかって仲良くなります。
三上が求職中と知った松本は「免許が取れたら知り合いの運送屋に頼んで仕事を紹介する」と言ってくれました。

すばらしき世界
©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

三上はすぐに仮免許検定試験を受けますが、運転が久しぶり過ぎて沢山ミスをして不合格になってしまいました。

三上が挑戦しているのは『一発試験』と呼ばれるもので、教習所で授業や実技講習を受けずに試験だけで合格を狙う方法です。
一番高額な授業料がかからないので最も安価ですが、運転の練習が出来ないため最も難しい方法です。
ちなみに一発試験での仮免試験は1回約5000円で受けられます。

ある日、三上はテレビ局の津乃田と吉澤に呼ばれて焼き肉を食べました。
三上は吉澤と津乃田に説得されてテレビ番組の出演依頼を受けました。

焼き肉屋からの帰り、三上はおやじ狩りの現場を目撃すると、おじさんを助けてヤンキー2人と派手に喧嘩してしまいます。
三上がヤンキーを殺しかねない勢いで暴行するのを目の当たりにした津乃田は恐くなって逃げました。

翌日、三上は生活保護のしおりに『資格取得したい者には補助費が支給される』と書かれているのを見て、ケースワーカーの井口に「自動車教習所に通うため30万円支給して欲しい」と相談しますが、「もらえる可能性はゼロに近い」と即答されてしまいました。

困った三上は津乃田に電話して「番組出演料を前借りできないか」と交渉しますが、先日の三上の喧嘩が原因でテレビ出演自体を断られてしまいます。
この時に津乃田は「暴力衝動が抑えられない人は、幼少時に虐待を受けていたことが多いそうです」と母親からの虐待を暗に伝えますが、三上は怒って途中で電話を切ってしまいました。

その後、三上はボールペンから電話番号が書かれた紙片を取り出しました。
それは極道仲間に繋がる番号でした。




あらすじ③:極道に戻るか悩む

すばらしき世界
(三上と下稲葉と妻のマス子 ©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会)

三上は最後の手段として、福岡市に住む極道仲間の下稲葉明雅(白竜)に連絡を取って会いに行きました。
すると下稲葉は片足を失くして車いす生活になっていた上に、下稲葉の妻マス子(キムラ緑子)が「もう極道では食べていけない」と嘆くのも聞いて三上は悩みます。

三上が1人で海釣りしていると、津乃田から「三上さんがいた福岡の養護施設と連絡が取れて、母親の資料を探すと言ってくれている」と連絡が入りました。

三上が下稲葉の家に戻ろうとしていた時、警察が下稲葉を逮捕しようと玄関で待ち構えているのが見えました。

三上は慌てて下稲葉を助けようとしますが、物陰からマス子が出てきて「私達はもうなるようにしかならないが、あんたはまだ選べる 堅気で生きるのは辛いけど、頑張る価値はあるはず」と言い、三上に出所祝いのお金を持たせてくれました。
三上はマス子に何度も頭を下げてから静かに逃亡しました。

翌日、三上は福岡市内で津乃田と落ち合って一緒に養護施設『あかつき学園』に行きました。
しかし昔の資料はもう処分されてしまっていて、当時の運営者も亡くなっていて確かめられなかったと残念な報告を受けます。

園長はせめてものお詫びとして、当時施設の手伝いをしていたという老人の田村さんを呼んでくれていましたが、彼女からも三上の母親につながる手がかりは得られませんでした。

その日の夜、三上と同じ宿に泊まった津乃田は「俺が三上さんを小説に書いて世に残すから、もう極道に戻ったり怖い喧嘩をしたりしないでください」と頼みました。

 

あらすじ④:結末

東京に戻った三上は、ケースワーカーの井口が探してくれた介護施設でアルバイトとして働けることになりました。
三上の仕事が決まったことを、津乃田やスーパー店長の松本、弁護士の庄司などみんなが喜んで祝賀会を開いてくれました。

三上は「怒りたくなる出来事に遭遇した時は怒りをこらえて、皆のことを思い出してやり過ごす」と約束しました。

介護施設の仕事は過酷ながらも楽しく、三上は同じアルバイトで知的障害者の男性の阿部と仲良くなりました。

そんなある日、三上は阿部が介護士2人からいじめられている現場を目撃しました。
三上は激怒しますが、皆との約束を思い出して必死に我慢して、いじめを見過ごしました。

その後、三上は介護士と話して阿部がいじめられていた理由を知ります。
それは阿部が入居者を危険な状態で放置してしまうなどの行動が原因だったようですが、介護士たちは知的障害者への配慮が足りていないことに気づいていませんでした。

三上は再び介護士たちに怒りを覚えますが、約束を思い出して笑ってやり過ごしました。
勤務が終わって帰宅しようとした時、阿部は三上にコスモスをプレゼントしてくれました。

帰宅中、三上の携帯に久美子から電話がありました。
久美子も三上の仕事が決まったことを喜んでくれて、今度食事する約束をしました。

一方で津乃田は今までの取材を元に、三上を題材にした小説を書き始めました。
タイトルは『身分帳』です。

その日の夜、三上は自宅で心臓発作に襲われてそのまま亡くなってしまいます。
三上の手には、阿部からもらったコスモスが握られていました。

 

解説、考察は次のページです!

『三上が殺人を反省しない理由』、『三上の入れ墨』、『津乃田が電話で言おうとしたこと』、『小説との違い』などです。




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