映画『シャイロックの子供たち』ネタバレ解説考察｜タイトルの意味、原作小説との違い

映画『シャイロックの子供たち』の解説・考察をしています！
タイトルの意味、原作小説との違いについて書いています。

鑑賞済みの方のための記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。

制作年：2023年
本編時間：122分
制作国：日本
監督：本木克英
脚本：ツバキミチオ
原作小説：『シャイロックの子供たち』池井戸潤 著
主題歌：『yes.I.do』エレファントカシマシ

キャスト紹介

西木 雅博（にしき まさひろ）…阿部サダヲ
東京第一銀行 長原支店 営業課 課長代理。
冗談好きで馴れ馴れしいが憎めない男。
長原支店で発生した100万円紛失事件の真相を追う。

北川 愛理（きたがわ あいり）…上戸彩
西木の部下。状況証拠から100万円を盗んだ犯人と疑われる。
西木と一緒に事件の真相を追う。

田端 洋司（たばた ようじ）…玉森裕太
個人経営者を相手にする『お客様二課』の行員。
西木、北川と共に事件の真相を追う。

滝野 真（たきの まこと）…佐藤隆太
中小企業を相手にする『お客様一課』の課長代理。
営業成績が良好なので『エース』と呼ばれ期待されている。
石本の怪しい融資話に乗せられる。

石本 浩一（いしもと こういち）…橋爪功
怪しい経営者。滝野を指名して強引に10億円の融資を依頼する。

あらすじ紹介

©2023映画「シャイロックの子供たち」製作委員会

東京第一銀行の長原支店で100万円の紛失事件が起きました。

紛失したのは、お客様一課の田端洋司（玉森裕太）が取引先に届けようとしていた預金900万円のうちの100万円です。

営業課の課長代理 西木雅博（阿部サダヲ）は、部下の北川愛理（上戸彩）と一緒にゴミ置き場を探しに行きました。
この時、西木はゴミ袋の中からクシャクシャにされた振込明細を見つけました。
江島エステートという会社の東京第一銀行の口座に、他行から100万円を振り込んだ明細表で、今日の日付のものでした。
西木は違和感を覚えて明細を回収します。

100万円は見つからず、いよいよ行員全員がロッカーとバッグの中身の確認をさせられました。
この時、愛理のバッグから今日の日付の帯封（100万円の札束を束ねる紙）が出てきたため、愛理は上席陣に囲まれて尋問されました。
皆が愛理を犯人扱いする中、西木だけは愛理を信じてかばいました。

翌日、朝礼で「100万円は見つかった」という簡単な説明がなされ、事件は表向きは解決します。
不審に感じた愛理が西木を問い詰めると、九条支店長（柳葉敏郎）の発案で、長原支店上席の九条、古川副支店長（杉本哲太）、高島課長（近藤公園）、西木の４人でお金を出し合って100万円を補填したことがわかります。
無くなった銀行のお金を行員が私財で補填する行為は、東京第一銀行では『絶対禁止』とされています。
それに、犯人捜しをしないのでは愛理は疑われたままです。
愛理は怒りますが、西木は「ごめんね」と言うばかりでした。

その日の午後、愛理の同期の半田麻紀（木南晴夏）が愛理のバッグに帯封を入れた犯人だったことが発覚しました。
麻紀は昨日100万円探しをしていた時に休憩室に落ちていた帯封を見つけ、出来心で愛理のバッグに忍ばせたと白状しました。
麻紀が拾った帯封は、100万円を盗んだ犯人が誤って落としたに違いありません。

さらに、江島エステートに渡す書類を田端が直接届けに行くと、会社の住所になっていた場所はどう見ても会社ではないボロアパートでした。
その部屋のポストには社長の『江島』ではなく、『石本浩一』という人物宛ての郵便物が入っていました。
西木、愛理、田端は本格的に真犯人探しを始めます。

解説・考察・感想など

所々ありえないと思ってしまう演出がありましたが、豪華キャストだったこともあり全体的には楽しかったです。
映画館で上映中にずっと喋ってる女性2人組がいて、その人達と一緒じゃなければもっと楽しめた気はします(笑)

以下、気になった点について書き出しています。

100万円紛失の犯人と黒幕、江島エステートとの関係は？

答えから言うと、100万円を盗んだのは滝野（佐藤隆太）、黒幕は九条（柳葉敏郎）と石本（橋爪功）です。

赤坂リアルターの社長である石本と最初に出会ったのは九条で、九条は石本を赤坂支店の新規顧客に迎えています。
九条が赤坂支店から去った後、滝野が入れ替わりで赤坂支店に配属になり、石本の担当になって甘い汁を吸わせてもらっていました。
滝野は得意先を紹介してもらうだけなら健全でしたが、ある時に石本から1000万円を受け取ってしまいました。
この時、滝野は石本に弱みを作ってしまったのです。

その後、滝野は赤坂支店から長原支店に移動になりました。
移動から1か月後、石本から滝野にしつこく連絡が入り、滝野は断れず石本に会うことにします。

石本は『江島エステート』という幽霊会社を所有していました。
江島エステートは赤坂リアルターの取引先でしたが、江島エステートの社長が失踪してしまったのです。
石本は「突然失踪した」と言っていましたが、実際には江島の失踪には石本が関わっていると思われます。
滝野はこの江島エステートに10億円を融資しろと言いました。
詐欺行為になってしまうため滝野は断りますが、石本に1000万円の件で脅されて断れませんでした。

その後、とんとん拍子で融資話は進みますが、ここまでうまくいったのは九条が影でサポートしていたからです。
石本が提出した「融資に必要な書類」は九条が用意したものです。
江島エステートへの10億円の融資は滞りなく行われました。

滝野は石本から「20億円の仕事が控えている。これを成功させて返済は必ずするから、架空融資はバレない」と言われていましたが、融資してから３か月後に石本は利息（100万円）の返済をしなくなります。
石本はそもそも『20億円の仕事』など持っておらず、最初から返済する気が無いのを隠すための嘘でした。

焦った滝野が石本に電話すると、石本は「今手元にお金がないから、君が立て替えてくれ」と強引な態度で電話を切られてしまいます。
滝野は困った末に、田端（玉森裕太）が得意先に渡そうとしていたお金から100万円を盗み、他行から江島エステートの口座に振り込みました。
これが100万円事件の真相で、西木（阿部サダヲ）がゴミ置き場から拾った明細はこの時のものでした。

九条（柳葉敏郎）はなぜ石本に協力した？

九条は恐らく石本の話に乗っかる形で詐欺に協力しています。
自分の店が億単位の詐欺被害にあってしまうと、支店長である九条は出世の道が閉ざされてしまうのに、なぜ石本に協力したのでしょうか。

理由は九条が出世よりもお金を選んだからです。
九条は元々出世欲の強い男でしたが、東京第一銀行では有望な出世コースに乗っているとは言えない状況でした。
しかも九条は年齢的にも、今から頑張ったり他に転職したところでたかが知れています。
それなら、出世を諦めて違法な方法であっても大金を得て快適な老後を過ごしたいと九条は考えたのです。

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