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あらすじ④:結末
露伴が襲われたのは、黒い絵の作者の山村仁左右衛門の怨霊でした。
『ヘブンズ・ドア』も有効活用できず露伴が窮地に陥った時、どこからともなく奈々瀬が現れて仁左右衛門を食い止めてくれました。
奈々瀬に「絵に関することを全て忘れなさい それしか方法がない」と言われた露伴は自分自身に『ヘブンズ・ドア』をかけて黒い絵について書かれたページに「全て忘れる」と書き込むと、仁左右衛門の怨霊も奈々瀬も消えました。
露伴は倉庫から脱出してから左手に「さっきのページをこすれ」と書いてあるのを見つけてその通りにすると、絵に関する記憶が戻ります。
しっかり者の露伴は黒い絵に関する記憶を失くしてはいけないと思い、窮地を脱したら記憶を取り戻せるように仕掛けをしていたのです。
辰巳はモリス・ルブランの怨霊に殺され、消防士2人も過去の罪に殺されますが、エマは京香に助けられて生き延びました。
京香と合流した露伴は、京香も実は黒い絵を見ていたのに幻覚に襲われなかったことがわかり、色んな意味で尊敬しました。
その後、黒い絵を見た人たちが見た幻覚は「倉庫内に有毒ガスが溜まっていて、彼らは毒ガスを吸って幻覚を見た」と判断され、辰巳と消防士2人は幻覚に惑わされてお互いを攻撃し合って死んでしまった悲しい事故として処理されました。
日本に戻った露伴は、祖父母の元旅館の近くで大木を発見し、この木が例の御神木に違いないと思います。
その時、露伴の前に若い姿のままの奈々瀬が現れたので、露伴はすぐに彼女に『ヘブンズ・ドア』をかけて過去を確かめました。
露伴の推測通り、山村仁左右衛門と奈々瀬は露伴の祖先であり、2人は夫婦でした。
仁左右衛門は絵師の家系に生まれた長男で将軍御用達の絵師をしていましたが、こだわりが強く依頼通りの絵を描かなかったため父親と喧嘩になり、仁左衛門と奈々瀬は山村家から出て行きました。
その後しばらくは仁左右衛門が描きたい絵を描き、気に入ってもらった人に買ってもらう形で生活します。
仁左右衛門は奈々瀬も絵に描きますが、いつも「普通の黒では君の髪の美しさは表現できない もっと黒くなければ」と言い、より黒い色の元を探していました。
そんなある日、奈々瀬が重い病に侵されてしまいます。
奈々瀬の医者代と薬代で出費がかさむと貯金はすぐに底をつき、困った仁左右衛門は恥を忍んで父親に謝りに行くと、父親は「私を超える絵が描けたら戻ってきても良い」と言いました。
それから仁左右衛門は寝食を忘れて絵を描き始めます。
奈々瀬は仁左右衛門がうまくいくようにと近所の神社でお祈りしていると、その神社のご神木から真っ黒な樹液が出ているのを見つけ、もしやと思い樹液を持ち帰って仁左衛門に渡しました。
仁左右衛門はその樹液をとても気に入りますが、同時に黒にとり憑かれたようになってしまいます。
数日後、仁左右衛門はご神木の樹液を採集しているところを実の弟に見られ、役人に「仁左衛門がご神木を傷つけている」と通報されてしまいます。
弟は後継ぎの座を狙っていたので仁左右衛門には帰ってきてほしくなかったのです。
すぐに仁左右衛門はお役人に捕まりますが、役人が奈々瀬に暴力をふるったことで仁左右衛門は激怒して、その場で役人を殺してしまいました。
その後、仁左右衛門は狂ったようにご神木を刀で傷つけ、樹液を持ち帰ると真っ黒な奈々瀬の絵を描きました。
その後、仁左右衛門は死罪になり、彼の罪の意識や後悔の念が黒い絵に宿って「人を殺す絵」になりました。
奈々瀬は仁左右衛門の死後に妊娠に気付き、山村家とは縁を切って旧姓の岸辺に戻り、病に負けず子どもを産み育てました。
奈々瀬は死後も仁左右衛門を思う気持ちから成仏できず、仁左右衛門の魂を救って欲しくて露伴の前に現れていたようです。
露伴が奈々瀬に「あなたとの出会いは僕には必要な過去だ ありがとう」というと、奈々瀬は笑って消えました。
その後、仁左右衛門の人生から学んだ露伴は何でもかんでも追及し過ぎるのは控えることにして絵の具の原料の研究をやめました。
数日後、露伴は仕事前に必ず行う腕と手の体操をしていた時、窓の方から紙が落ちるような音がしたので見てみると、そこには奈々瀬が昔ハサミでめった刺しにしたはずの露伴の原稿が傷一つない状態で落ちていました。
露伴は微笑んで原稿をしまうと、いつも通り漫画の執筆に励みます。
解説・考察・感想など
蜘蛛の意味
本作にはしつこいくらい何度も蜘蛛が登場したのが印象的でした。
原作漫画では黒い絵の顔料は老木の中に住みついていた小さくて真っ黒な蜘蛛でした。
映画では樹液に変更されていたので、蜘蛛は特別出演的に登場していたのでしょう。
もう少し掘り下げると、蜘蛛は芥川龍之介の短編に『蜘蛛の糸』があるように、古くからあの世と関わりの深い虫とされています。
蜘蛛には『不吉、不運の前触れ』や『地獄からの使い』のような不吉な意味も多いですが、一方で足の長い蜘蛛には『運気上昇の前触れ』などの意味があります。
度々登場した小さな蜘蛛は黒い絵に込められた怨念が具現化したものと思われますが、露伴が若い頃に会った奈々瀬の周囲にいたのは足の長い蜘蛛だったので、彼女がこの世のものではないことや、今後の露伴先生の活躍が暗示されていたのではないかと感じました。
黒い絵はどうなった?
私が覚えている限りでは、露伴は絵を見て仁左右衛門の怨霊に襲われ、ヘブンズドアでいったん絵の記憶を消し、仁左右衛門の霊が消えた後に記憶を取り戻し、そのままZ倉庫から逃げています。
その後、絵がどうなったかは特に語られず呪い問題は解決した雰囲気になっていました。
あのあと黒い絵は自然発火した消防士の火で燃えてしまい、絵が消えたから呪いも消えたのではないかと推測しています。
こちらについてはあまり自信がないので、知っている方は教えていただけると嬉しいです!
京香が絵を見ても無事だったのはなぜ?
京香も漏れなく仁左右衛門の黒い絵を見ていたのに、彼女の身にだけは何も起こっていませんでした。
京香本人にも先祖にも罪を犯した者がいないから襲われなかったというのは考えにくいです。
京香は亡くなっている彼女の父親が近くにいた気がすると言っていたので、恐らく父親の魂に守られていたため無事だったのでしょう。
京香が持っていた写真
ドラマ最終話のラストで泉京香が写真を見ていましたが、この写真の謎は映画で明かされます。
京香の父親は彼女が5歳の時に亡くなっていて、京香が持っていた写真には、ルーヴルに旅行に行っている父親が写っていました。
京香がルーヴルに行きたがっていた理由は父親を身近に感じるためだったんですね。
京香の意外な過去もわかってちょっと切なくなりました。
原作漫画との違い
映画を見てから原作漫画を読んだので、違いを紹介します。
露伴の担当編集の泉京香はドラマ&映画版オリジナルのキャラで漫画には登場しません。
しかし、いわゆる普通の価値観を持つ京香がいることで露伴の体験に深みが増している気がします。
また、黒い絵の贋作を描いたモリス・ルブランや絵画の窃盗は漫画に登場しません。
なのでモリスが描いた黒い絵、オークションのくだり、オークションの後で露伴が絵を盗まれるくだりなどは映画オリジナルで漫画にはありません。
黒い絵を見た露伴が襲われる幻覚は映画と漫画で違います。
映画で露伴が襲われたのは山村仁左右衛門ひとりでしたが、漫画では露伴自身の先祖、一緒にいた消防士やキュレーターなどの先祖たちの霊に集団で襲われます。
その他、理由がわからない点など
本作を見て「なぜこうなったのか」がわからない部分を備忘録的に書いてます。
答えが分かる方はコメントなどで教えていただけると嬉しいです!
1、絵を盗んだ男の死について
露伴の自宅からモリスの黒い絵を盗んだ男は、過去の罪に襲われ幻覚トラックに轢き殺されています。
他の人は黒い絵を見た直後に幻覚に襲われているのに、この男はもし本物を見たなら襲われるのが遅すぎますし、本物を見ていないとしたら襲われた原因すら不明になるので気になります。
2、黒い絵を持ち込んだ男
疑問ではないですが、黒い絵をルーヴルに持ち込んだ男の情報が顔写真まであっさり出てきたのがちょっと都合が良すぎるように見えて謎でした。
3、記憶を取り戻した露伴
露伴は絵の記憶を消すことで仁左右衛門の襲撃から助かっていましたが、そのすぐ後に記憶を取り戻しても露伴が襲われなかったのはなぜなのでしょうか。
黒い絵はまだ燃えていなかったですし、奈々瀬の言う通り記憶を消すしか助かる方法が無いのなら、記憶を取り戻した露伴がもう襲われなかった理由がわかりません。
もしくは京香と同じく露伴の祖母の魂が守ってくれていたのでしょうか。
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参考サイト様一覧
感想などお気軽に(^^)
1は盗んだモリスの絵から滲み出た絵の具に触れた直後に蜘蛛が湧き、幻覚が始まったので触れた直後に死んだ、と思います。
(モリスの絵からなぜ絵の具が漏れたのかは謎です。)