映画『楽園』の「タイトルの意味」「それぞれにとっての楽園とは」「元になった事件紹介」について解説考察しています!
ネタバレありきの記事なので、まだ見ていない方はご注意ください。
本編時間:129分
制作国:日本
監督・脚本:瀬々敬久
原作小説:『犯罪小説集

キャスト:綾野剛(中村豪士)、杉咲花(湯川紡)、佐藤浩市(田中善次郎)、村上虹郎(広呂)、柄本明(藤木五郎)、片岡礼子(久子)、黒沢あすか(中村洋子)、根岸季衣(藤木朝子)、モロ師岡(洋子の恋人)、嶋田久作(リサイクル店員)、品川徹(区長、久子の父)、吉村実子(久子の母)、石橋静河(田中紀子)、渡辺哲(町民)、田中要次(刑事)、三浦誠己(ヤクザ)、諏訪太郎(町民)、テイ龍進(刑事) ほか
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※本ページの情報は2025年9月時点のものです。最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。
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タイトル「楽園」の意味
タイトルについて瀬々監督はインタビューで
「犯罪を犯す人たちも、それぞれが差別の中で生きてきて、
ボタンのかけ違いのように犯罪の世界に追い込まれていく。
みんなが実は楽園みたいなものを目指そうとしてたのではないかと思い、
『楽園』というタイトルをつけました」
「戦争が終わって新しい世の中にしようと思って生きてきたにもかかわらず、
現在はいつの間にかとんでもない時代になってしまった。
そういう意味で『楽園』というタイトルは、
いまの僕たちの実人生のヒントになるんじゃないかと思います」
と話しておられたそうです。
タイトルの楽園は、言い換えると『理想の暮らし』や『夢や目標』、場合によっては『桃源郷』という意味も内包しているようです。
それぞれにとっての『楽園』とは?
主要な登場人物が目指した『楽園』を考えていきます。
豪士(綾野剛)
豪士が求めていた楽園(目標)は、大事な人を守れる勇気のある人間になることだったのではないでしょうか。
豪士は「自分を知る人のいないどこか遠くに行きたい」という願望はありながらも、
この村から出なかったのは母親を守りたいという気持ちが強いからだったと思われます。
原作小説に、小学生の豪士が「母さんは僕が守る」と決心する場面があるからです。
しかし豪士はそんな決心とは裏腹に、いざ事件が起きると勇気よりも恐怖心が勝ってしまい、結局は誰も守ることは出来ませんでした。
そして豪士は誘拐犯と決めつけられ、追い詰められた末に焼身自殺してしまいます。
自殺はパニックの末だったのか、自殺することで無実を証明しようとしたのか、理不尽な世界に絶望したからなのかはわかりません。
豪士は自分自身も守れず死んでしまいましたが、少なくとも愛華ちゃんの遺族を救った(楽園に導いた)のは事実です。
紡(杉咲花)
紡が求めていた楽園は、誰からも責められず、罪悪感に苛まれることのない世界だったと思われます。
豪士が残したメモ「つむぎさんが悪いのではない」は紡が一番誰かから言われたかった言葉だからです。
紡はおそらく広呂と恋愛関係になるので、広呂の病気で前途多難ではありますが、これから愛を育んで2人の暖かい家庭(楽園)を作り上げて欲しいです。
善次郎(佐藤浩一)
善次郎が元気だった頃に目指していた楽園(目標)は、村おこしで村全体を元気にすることでした。
妻のいない寂しさを仕事で紛らわしたかったのでしょう。
しかし村八分にあってしまい精神を病んでからは、善次郎が選んだ楽園は妻のいるあの世に行くことに変わってしまいました。
元ネタになった事件は?
原作小説の「犯罪小説集」は、実際に起きた事件から着想を得て書かれた短編小説集です。
「青田Y字路」の事件「北関東幼女連続誘拐事件」、「万屋善次郎」の事件「山口連続放火事件」の概要を紹介します。
北関東幼女連続誘拐殺人事件
この事件は栃木県と群馬県の県境付近で1979年から1996年にかけて起きた5人の少女の誘拐殺人事件です。
1991年に容疑者として浮上した幼稚園バスの運転手Sが逮捕され無期懲役の判決を受けますが、
Sが服役中だった1996年に5件目の誘拐事件が発生したことや、
男性SのDNAと被害者の遺留品から検出されたDNAが異なっていたことが決定打となりSは冤罪だったことが確定し現在は釈放されています。
(Sの冤罪逮捕は『足利事件』と名称付けられています)
Sは警察のプロファイリングによる犯人像に合致する上に、当時の被害者の遺留品から検出されたDNAとSのDNA型が一致したという理由で逮捕されましたが、
再審の際にはより正確なDNA検査が実施された結果、DNAは一致しないという判定が出て再審で無罪が確定しました。
真犯人は逮捕されていません。
映画での犯人逮捕は、現実でもそうなるようにと希望が込められていたのかもしれません。
不信な点は、栃木県警が進めていた『近隣住民の目撃情報による捜査』が取りやめられていたことです。
1990年、誘拐された被害者とよく似た少女を連れ歩く男性の姿が近隣住民数名に目撃されており、
栃木県警は目撃証言を元に捜査を進めていましたが、その捜査は数カ月で打ち切られており、その理由は明らかにされていません。
万屋善次郎→山口連続放火事件
「山口連続放火事件」は2013年に山口県周南市にある限界集落で、
当時63歳だった男Hが村人5人を殺して彼らの自宅に火をつけた事件です。
Hが自宅の外壁に貼っていた「つけびして 煙喜ぶ 田舎者」の川柳は有名です。
Hは生まれがこの集落で、しばらく東京で働いていましたが、親の介護をきっかけに44歳の時に集落に戻ってきます。
Hの集落は8世帯14人しかおらず、そのうち10人が高齢者という超限界集落でした。
当初、Hは集落内の様々な雑用(どこかの修理や草刈りなど)をこなし、集落の行事にも積極的に参加して住人達との仲は良好でしたが、
Hの親が亡くなった後、Hが村おこしをしようと発案しますが他の住人は賛成せず、関係に亀裂が生じます。
やがてHはマネキンやダミーの監視カメラを自宅の玄関付近に設置し、周南警察署に「嫌がらせをされている」などの相談をしに行っています。
具体的には飼い犬が臭いと地区住民から苦情を言われたとか、農薬を勝手に散布されたなどです。
集落住民たちは「そこまで追い詰められていたとは思わなかった」と発言しています。
また、同じころから病院にも通い精神安定剤を服用していたようです。
Hは孤立し始めてから徐々に被害妄想を抱くようになっていたため、
Hの被害のどこまでが本当なのかは不明です。
そしてHが63歳の頃、Hはたいまつを持って地区を周り、特にトラブルが深刻だった2組の夫婦と女性1人の計5人を殺し、家屋に火をつけて全焼させました。
Hは山中で自殺しようとしたものの失敗し、逃亡中の所を警察に見つかり事件発生から6日後に逮捕されます。
取り調べの時点でHは犯行を認めていたものの、裁判が始まると一貫して犯行を否定し無罪を主張しています。
また、被害者や遺族、地区住民に対しては「謝罪するつもりはない むしろ謝ってほしい」と発言していたそうです。
裁判の結果、2015年にHに死刑判決が下ります。
それからHは何度も再審請求をしていますが、2025年の1月に最高裁への再審請求が棄却されて死刑が確定しています。
2025年9月時点でHの死刑はまだ執行されておらず、現在も服役しています。
以上です。読んでいただきありがとうございました(^^)
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