映画『楽園』の「愛華を誘拐したのは誰?」「豪士は何を隠してた?」について解説考察しています!
ネタバレありきの記事なので、まだ見ていない方はご注意ください。
本編時間:129分
制作国:日本
監督・脚本:瀬々敬久
原作小説:『犯罪小説集

キャスト:綾野剛(中村豪士)、杉咲花(湯川紡)、佐藤浩市(田中善次郎)、村上虹郎(広呂)、柄本明(藤木五郎)、片岡礼子(久子)、黒沢あすか(中村洋子)、根岸季衣(藤木朝子)、モロ師岡(洋子の恋人)、嶋田久作(リサイクル店員)、品川徹(区長、久子の父)、吉村実子(久子の母)、石橋静河(田中紀子)、渡辺哲(町民)、田中要次(刑事)、三浦誠己(ヤクザ)、諏訪太郎(町民)、テイ龍進(刑事) ほか
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※本ページの情報は2025年9月時点のものです。最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。




愛華を誘拐した犯人は誰?
(C)2019「楽園」製作委員会
愛華を誘拐した犯人が誰だったのかは明らかにならないままですが、
恐らく12年後にも起きていた少女誘拐の犯人と同一人物と思われます。
12年後に誘拐された方の少女は見つかって、犯人らしき男も一緒にいたと村人たちが話していたので犯人は逮捕されたのでしょう。
犯人だった可能性が一番高いのは、青い車で子犬を捨てに来ていた男です。
なぜ犬を捨てたのかはわかりませんが、
他に誘拐した少女が子犬を連れていて一緒にさらっていたのかもしれません。
村の住人だった豪士(綾野剛)が特に怪しいような匂わせ描写がありましたが、
個人的には豪士は愛華の誘拐犯ではないものの、
愛華が誘拐される瞬間を目撃していたのではないかと思っています。
原作小説にも豪士が怪しいと思わせる描写が多々あり、
同じ位犯人ではないと思わせる描写もあって悩みますが、
個人的に豪士は犯人じゃないと判断した部分を紹介します。
豪士は幼い頃、同級生数人が自宅に石を投げて母親をいじめていた時、ただ怯えて少し離れた場所に隠れています。
豪士は母親を守らなきゃと思ったものの、結局はただ怯えて隠れていることしかできなかった時に無意識に雨蛙を潰してしまいます。
これは、豪士の心にある「立ち向かう勇気や度胸」が、恐怖心に押し潰されてしまったことを暗示する表現だったのかなと感じます。
これとよく似た表現が、豪士が愛華を追いかけて行ったシーンでも使われています。
豪士は愛華を追いかけた時、愛華がくれた花冠を無意識に踏み潰してしまいます。
それは、この時にも豪士の「勇気」が恐怖心で押しつぶされてしまうような出来事が起きていて、その出来事に対して豪士は「何もできなかった」ことを暗示していたのではないかと思います。
豪士は追いかけて行った先で愛華ちゃんが誘拐される場面に出くわしたものの、怖くて何もできなかったということです。
そもそも発達障害、パニック障害など心の問題を多く抱え、とりわけ賢いわけでもない豪士が
本当に愛華ちゃんを殺して遺体をどこかに隠したとしたら
12年経った今でもランドセル以外の物が一切見つからず、
豪士の部屋からも犯罪を仄めかす物が何も出ないというのは不自然な気がします。
ちなみに本作に関するインタビューでは、
『豪士が愛華ちゃんの事件の犯人だと思いますか?』という質問に対して
杉咲花さんは『わからないけど、違うと信じている』、
佐藤浩市さんは『豪士がやったと思う』と違う回答をされていたそうです。
豪士は何を隠していた?
(C)2019「楽園」製作委員会
豪士は恐らく愛華ちゃんを誘拐した犯人ではないものの、何かを隠していたのは明らかでした。
豪士が怪しいと思われる描写と、そこに潜む真相を推測します。
菅原が「豪士は殺人犯だ」というのは、「豪士が愛華ちゃんを殺した」という意味です。
この村では殺人が関わる事件と言えば、愛華ちゃんの事件以外にないからです。
菅原は、洋子と豪士が事件当時の聞き取り調査でアリバイについて嘘をついたことを知っていて、そのことを理由に豪士を犯人だと言っていたと原作小説に書かれています。
逆に言うと菅原はアリバイ証言が嘘だと気付いただけで、具体的な証拠などは何も掴んでいません。
愛華ちゃん事件の数年後、菅原が豪士が犯人だと言い回って町で噂になり、
噂を聞き付けた警察が菅原と豪士に何度か調査をしたようですが、
豪士が逮捕されることはありませんでした。
ラストの豪士が愛華を追いかけていくシーンは紡の想像なので、実際にはどうだったのかわかりません。
本当に豪士が愛華ちゃんを追いかけていたとしたら、
母親以外で優しくしてくれた人は愛華が初めてだったので
ただお礼が言いたかっただけ、もう少し話したかっただけ
などの純粋な理由じゃないかなと私は思います。
ただ豪士が愛華を追いかけたなら、やはり豪士は拉致される瞬間や犯人を目撃していると思われます。
そのことを誰にも言わなかったのは、
愛華が見知らぬ男に話しかけられ、車に乗せられるのをただ見ていたことを
愛華ちゃんの家族に知られたら責められるどころではすまないと思ったからではないでしょうか。
愛華ちゃんがいなくなる直前、豪士は川に何かを投げ捨てようとしていました。
あの時は子犬がいて捨てるのをやめましたが、
豪士は実際にあそこから何かを投げ捨てたことが何度かあるのではないでしょうか。
偽ブランド品(商品)とか、見つかったら誰かに怒られるような物を捨てていたかもしれません。
また、個人的にはこれが辻褄が合うと思っているのですが、ランドセルを川に捨てたのは本当に豪士だったのかもしれません。
ランドセルが落ちていたということは、誘拐したとき犯人は多少強引に愛華ちゃんを車に乗せた可能性があります。
豪士は「誘拐の瞬間を見た」ということをなかったことにしたい気持ちから
衝動的にランドセルを川に捨てていたとしたらどうでしょうか。
川で愛華ちゃんを探したとき、
豪士はランドセルが見つかって警察に調べられて豪士の指紋が出たら疑われると思うと怖くなり、ランドセルを隠そうとしていたのではないでしょうか。
ただ、この回想は紡の記憶または想像なので、Y字路に本当に豪士がいたのか、何をしていたのかはわかりません。
もしランドセルが川に落ちていたことと豪士が何の関係もないとしたら、
単純に紡の父親が勝手に勘違いしただけだった可能性があります。
豪士と紡の父がペアになって川を捜索していた時、
紡の父は何度か滑って豪士にぶつかっていたのに、
豪士がちょっと滑ると「しっかりしろよ!」みたいなことを怒鳴ってました。
狭い村なので恐らく紡の父も豪士を顔だけは知っていたでしょうから、元々豪士に「頼りない人物」というイメージを持っていたのかもしれません。
あのとき豪士は紡の父が転ばないように支えていただけで、紡の父が勝手に押されたと勘違いして犯人と決めつけたのだとしたら怖すぎます。
豪士は愛華ちゃんが誘拐される直前にY字路にいたようですが、
警察には「ずっと母親と一緒にいた」と言っていて
洋子もまた同じ証言をしていました。
豪士は愛華ちゃんの誘拐の瞬間を見ていたと思われるので
それなら正直に警察に打ち明けるべきですが、
疑われるのを恐れて嘘をついたのでしょう。
恐らく洋子は豪士が愛華ちゃんに関して何か知っていることに気付いていました。
しかしやはり下手に情報提供すると逆に豪士が疑われると考えて
「何も知らない」で貫き通していたのではないでしょうか。
この親子は人間の冷酷さや集団心理の恐ろしさを、経験から誰よりも知っています。
そんな親子にとっては犯人はどうでもよくて、
自分たちの身を守ることが第一だと考えるのは自然なことではないでしょうか。
この会話は原作小説にはありませんが、豪士の怪しさというか二面性を感じさせるためのやり取りだったように感じます。
個人的な見解ですが、この会話の意味は
「なぜあんなこと?」=「なぜ疑われるようなことをした?」
「生きて死ぬ理由が答えられる?」=「自分にもなぜかわからない」
なのかなと思います。
漠然としすぎていて意味がいまいち掴めませんが、豪士の答えは受け取り方によっては快楽殺人者の発言ぽくも聞こえて何となく不気味です。
②に続きます。
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