容疑者達とアームストロング事件との関わり
13人も居たのでついて行くのが中々大変でした。
名前すらうろ覚え状態なので、原作小説の違いと交えて彼らとアームストロング事件との関わりを整理します。
キャロライン・ハバード夫人
© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
ハバード夫人(ミシェル・ファイファー)の正体は元舞台女優のリンダ・アーデンでした。
彼女は事件が原因で衰弱死してしまった大佐の妻ソフィアの母親で、この事件の黒幕です。
赤いガウンを着てポアロに背中を見せたのは彼女でした。
原作小説でも凶器が出たのは彼女の部屋からでしたが、肩を刺される偽造は映画オリジナルです。
エレナ・アンドレニ伯爵夫人とアンドレニ伯爵(ダンサー夫婦)
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エレナ(ルーシー・ボイントン)は事件の被害者ソフィアの実の妹であり、リンダ(ハバード夫人)のもう1人の娘です。
彼女は姉ソフィアの死後 心を病み、薬を飲んでいないと何もできないほど恐怖に捕われていました。
彼女が「全てが怖い」と言うのは、世界のどこかで生きているカシェットにいつか殺されるかもしれない恐怖心や、家族が死んでカシェットはのうのうと生きていると思うとこみ上げる絶望感からだったのでしょう。
恐怖に怯え続ける彼女を安心させるために、ミス・デブナムはカシェット殺しを決意しました。
ラチェット氏に盛られた薬は恐らく彼女のバルビタール(睡眠薬)です。
また、映画では曖昧でしたが、小説では赤いガウンは彼女の物だったと明らかにされています。
彼女が本名の『ヘレナ』を隠そうとしていたのを「ハンカチのイニシャルと名前が原因で犯人と疑われても困るから」と言っていましたが、真実はヘレナがソフィアの妹であることを隠すためでした。
犯人が13人で刺し傷が12か所だったのは、彼女はラチェット殺しの現場に出てこれず、夫のアンドレニ伯爵(セルゲイ・ポルーニン)が彼女に変わってラチェットを刺したからです。
ポアロが最後まで2人に聞き取り調査しなかった(出来なかった)のは、アンドレニ伯爵が外交官だったからです。
メアリ・デブナム(家庭教師)
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ミス・デブナム(デイジー・リドリー)をはヘレナの家庭教師だった人物で、ラチェット殺しの発案者です。
彼女はヘレナの恐怖の原因を取り除いてやるためにラチェット殺しを思いつき、リンダ(ハバード夫人)に相談したのではないかと思われます。
ポアロが全員犯人だと思い至ったのも、オリエント急行に乗る前に、たまたまデブナムとアーバスノット医師が親しそうにしているのを目撃したからでした。
アーバスノット医師
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アバースノット医師(レスリー・オドム・ジュニア)は元軍人で、アームストロング大佐の元部下でした。
事件が起きた時代は人種差別の風潮が根強く、黒人である彼が医師になれたのは彼自身の才能と頭脳はもちろんですが、アームストロング大佐のおかげでもありました。
犯行現場に落ちていたパイプクリーナーは恐らく彼の物です。
原作小説では、アーバスノットは医師にはなっておらず軍人でした。
小説にはコンスタンティンという医師が別にいますが、本作には登場していません。
ナタリー・ドラゴミロフ公爵夫人
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ドラゴミロフ公爵夫人(ジュディ・デンチ)はハバード夫人の親友で、カシェットに誘拐されて殺された女の子デイジーの名付け親でもありました。
犯行現場に落ちていた『H』の刺繍付きの高級ハンカチは彼女の物で、彼女のファーストネーム『ナタリー』の頭文字がロシア語表記されたものでした。
原作小説では、彼女はデイジーではなくソフィアの名付け親でした。
また、彼女の容姿について『ヒキガエルを思わせる小さく醜い顔』と表現されていて、個人的には想像しにくかったです(笑)
ヒルデガルド・シュミット(メイド)
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ドラゴミロフ公爵夫人のメイドのメイドのシュミット(オリヴィア・コールマン)は、元料理人で、アームストロング家でシェフとして働いていました。
事件の後はドラゴミロフ公爵夫人に拾われてメイドをしていたようです。
ポアロが彼女が料理人と気づいたのは、料理を注文する際のセンスの良さからでした。
ヘクター・マックィーン(ラチェットの秘書)
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ラチェット氏の秘書だったマックィーン(ジョシュ・ギャッド)は、アームストロング事件の裁判で検察側の責任者だった人物の息子です。
マックィーンの父は名の知れた州検事でしたが、事件解決を焦るあまり、アームストロング家のメイドだったフランス人女性を不当逮捕の末に自殺に追い込み、激しく非難されて失脚しました。
ラチェットは父親の復讐を果たすため事件に関わりました。
彼自身も弁護士資格を持っていたので、過去にアメリカで弁護士として働こうとしたものの、アームストロング事件と父親の失脚の影響でうまくいかなかったのではないでしょうか。
エドワード・ヘンリー・マスターマン(ラチェットの執事)
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マスターマン(デレク・ジャコビ)は戦争中にアームストロング大佐の当番兵として出会い、戦後は大佐の執事をしていました。
本作のマスターマンは高齢で癌に侵された人物でしたが、原作小説のマスターマンは39歳で、虫歯以外は健康でした。
ピラール・エストラバドス(宣教師)
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宣教師のエストラバドス(ペネロペ・クルス)は2年前まではアームストロング家のベビーシッターでした。
デイジーが誘拐された日は夫妻が留守で、彼女が子守と留守番をしている間にカシェットが侵入してデイジーを攫いました。
彼女はカシェットを撃退出来なかったことへの罪悪感から宗教にすがり、宣教師になりました。
彼女がボクシングを始めたのも、カシェットに腕力で負けたことが理由なのでしょう。
原作小説での名前はグレタ・オルソンで、職業は学校の寮母でした。
ゲアハルト・ハードマン(大学教授)
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ニューヨークにある探偵事務所所属の探偵ゲアハルト・ハードマン(ウィレム・デフォー)は、ポアロと同じく元警察官でした。
彼の本名はサイラス・ベスマン・ハードマンで、アームストロング事件を担当した刑事であり、アームストロング家のメイドだったフランス人女性の恋人でした。
事件の裁判で社会の理不尽さを目の当たりにして警察をやめ、探偵に転職しています。
ビニアミノ・マルケス(イタリア人)
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元囚人のマルケス(マヌエル・ガルシア=ルルフォ)は、アームストロング大佐に拾われて雇われ運転手をした後、大佐が保証人になって自動車販売店の経営を始めて成功した人物です。
原作小説での名前はアントニオ・フォスカレッリでした。
ピエール・ミシェル(車掌)
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車掌のミシェル(マーワン・ケンザリ)は、不当逮捕されて自殺したフランス人メイドの兄でした。
ミシェルがラチェットを殺すタイミングを見計らって合図しています。
ポアロについての疑問
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ポアロが真実を告げなかったのはなぜ?
ポアロは悩みに悩んだ末に駆け付けた現地警察には真実を告げず、「犯人は逃げてしまった」と説明して13名の殺人犯を見逃しました。
ポアロは「どんな理由があっても殺しは罪」という意識を持っていましたが、殺されたラチェットの過去、ラチェットに苦しめられてきた13人の心情に思いを馳せて、この事件だけに関してはポアロも14人目の共犯者になることにしたのでしょう。(ブークも入れると15人)
ポアロ自身も、当時大佐から直接依頼の手紙を受け取っていた間接的な関係者でもありました。
彼らを刑務所に入れるか、ようやく始められる彼らの新しい人生を応援するか、どちらが正しいのか考えてポアロは後者を選びました。
写真の女性カトリーヌとは?
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ポアロが大切に持ち歩いていた写真の女性が誰なのかは、ケネス・ブラナー監督版ポアロ オリジナルの謎になっています。
ポアロの特別な女性の存在は原作小説には登場しません。
彼の恋愛関係のプライベートは独身ということ以外は謎に包まれています。
ブラナー監督はインタビュアーで「カトリーヌとポアロの関係は次作で明らかにするつもり」という趣旨の発言をしているので、『ナイル殺人事件』で明らかになるのを楽しみにしています!
(映画『デッド・アゲイン』のエマ・トンプソン 引用:https://www.blu-ray.com)
ちなみに、写真の女性はエンドロールに名前がなく、ネットで検索すると「ケネス・ブラナーの前妻エマ・トンプソンではないか」という記事がわりと出てきます。
ハリーポッターシリーズで占いのシビル・トレローニー先生を演じられていたのが個人的に印象的な女優さんです。
見れば見るほど似てる気もするし違う人にも見えてわからない(笑)
ほんとに彼女なら、前妻の写真を使うとはどういう心理なのかそれこそ謎です。
以上です!読んで頂きありがとうございました。
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