『NOPE/ノープ』ネタバレ解説考察|チンパンジー、馬の暴走の意味、隠されたメッセージ、ナホム書など | 映画の解説考察ブログ - Part 2

『NOPE/ノープ』ネタバレ解説考察|チンパンジー、馬の暴走の意味、隠されたメッセージ、ナホム書など

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ノープ SF

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ゴーディー、馬、Gジャンの暴走を通した社会批判

作中で描かれたゴーディーや馬、Gジャンなど動物たちの暴走にはどのようなメッセージが含まれていたのでしょうか。

動物たちと人間が上手く付き合っていくには、私たち人間側が動物の習性を理解する必要がありますが、理解したからと言って人間が完全に動物をコントロールするのは不可能です。
作中の動物たちの暴走には、自然を操ろうとする人間の傲慢さや愚かさが表現されていたように見えました。

また、ゴーディーは人間に飼い慣らされ、テレビ出演もさせられていたチンパンジーだったので、最近の人々の『自分のペットを収益化したがる傾向』を批判していたようにも感じました。
さらに、動物には明らかに不必要なネイルをしたり体毛を染めてみたり、見ていて可哀そうになる位ペットが太っていたり、水が苦手な子に水泳を強要して怖がる様子をネタにSNSにアップしている写真や動画が私は嫌いなんですが、そういった動物の気持ちや健康を顧みない自分本位な飼い主に対する批判も含まれていたように思えます。

また、ピール監督の映画で必ず取り上げられる人種差別の面も踏まえると、安直ですがゴーディーにはかつて欧米人がアジア人を揶揄する時に使った差別用語『イエローモンキー』も含まれているのかな?とも思います。

 

直立していたシューズ

ノープ

©2021 UNIVERSAL STUDIOS

ジュープは直立したシューズに注目していてゴーディーと目を合わさずにいられたため、襲われずに済みました。

あのシーンは、ジュープはあの時あの瞬間、シューズに注目していてゴーディーと目が合わなかったことがポイントだと思うので、シューズが直立していたのは『偶然の産物(奇跡)』だったのではないかと思っています。

もし全く別の深い意味があったとしたらすみません。




ゴーディーが拳を差し出した意味

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©2021 UNIVERSAL STUDIOS

猿が仲間同士で使うサインとしての『握り拳を前に突き出す行動』は見つかりませんでしたが、ジュープとゴーディーは挨拶だったり友情を確かめる時にグーを突き合わせる仕草をしていました。

スタジオでの惨殺事件の時にゴーディーがジュープに向けて握りこぶしを差し出したのは、恐らくジュープがゴーディーと目を合わせなかったことでジュープが落ち着きを取り戻し、いつもの仕草をしようとしたのです。

ゴーディーはジュープとも目が合えば襲い掛かるつもりで近づいたと思われますが、ジュープは靴に気が行って目を合わさなかったので、ゴーディーは『ジュープに敵意は無い』と判断して落ち着いたのです。

しかし、ジュープは目を合わせないという行為に意味があったとは気づかず、「ゴーディーは俺にだけは本当に懐いていたから襲わなかったに違いない」「俺は動物に好かれる才能があるに違いない」と勘違いしてしまいました。

ジュープは自らの才能にうぬぼれ、Gジャンも飼いならそうとしたことがジュピターズ・クレームでの悲劇に繋がってしまいました。

 

チンパンジーが人間を殺す事件は実話?

チンパンジーは実は結構凶暴で残虐な動物です。
日本で有名なチンパンジーのパン君ですら、女性を襲って怪我をさせた事件は有名ですよね。
野生のチンパンジーになると下剋上を狙うオスが群れのボスを殺して共食いしたり、痴情のもつれが殺し合いに発展するなど、驚いてしまう姿が目撃されています。

ゴーディーが人間を虐殺した事件に類似する事件が2006年に西アフリカのシオラレオネ共和国で起きていたことをご存じでしょうか。

前知識として、シオラレオネでは現地人が野生のチンパンジー親子を捕まえて、親は殺して食料にし、子どもはペットとして売るという商売が行われていました。
人間を殺したチンパンジーのブルーノも、元は親を殺されてペット用に売られていた子猿でした。

1988年、動物の保護活動に熱心な夫婦が村の市場で衰弱した子どものチンパンジーを保護するために購入し、『ブルーノ』と名付けて育てました。
ブルーノは最初の数年間は夫婦の自宅で育てられ、動物保護地が完成すると他のチンパンジーと一緒にブルーノを保護地に放します。
成長したブルーノはまさかの身長180cm以上、体重90kg以上あり、一般的なチンパンジーの大きさ(身長85cm前後、体重50kg前後)の2倍近くありました。
ここまでくるとブルーノはほんとは別の種類の猿なのか、もしくは夫婦が変な薬を与えたのではないかと疑ってしまいます。

とにかくブルーノは圧倒的な体格差と優れた頭脳で群れのリーダーになりました。
ブルーノの頭の良さは、人間と一緒に暮らした経験が大きな要因だろうとされています。
実際に、子供の人間と子どものチンパンジーを同じ部屋で一緒に育てると、人間の子ども動物らしくなり知能と言語の発達が通常よりも遅れ、逆にチンパンジーは通常と比べて知能の発達が早く、人間らしく育ったという実験結果があるようです。

夫婦は施設にスタッフを雇い体制を整え、生育地には複雑なカギを設置していましたが、ブルーノはスタッフを観察してカギの開け方を覚え、2006年に仲間30匹と共に脱走しました。

ブルーノの群れは見つからず、飼い主夫婦は「そのうち野生に還るだろう」と楽観的で捜索は早めに打ち切られました。
しかし脱走から数か月後、5人が乗っていたタクシーが早朝の藪の中でブルーノの群れと遭遇し、悲惨な事件が起きてしまいます。
あまりに残酷なので詳細は省略しますが、ブルーノはタクシー運転手の男性をなぶり殺しにし、その際に男性の顔面は食いちぎられていました。
※詳細が知りたい方はWikipedia:ブルーノ(チンパンジー)をご覧ください(__)

また、ブルーノの仲間のチンパンジーも逃げた乗客の1人を捕まえて腕に重傷を負わせ、その方は生き残りましたが、腕は切断しなければなりませんでした。

この事件から、ブルーノたちは現地の黒人に憎悪や敵対心を抱いているらしいことが判明します。
ブルーノ達が襲った2名はともに現地の黒人で、無傷だった乗客は黒人ではなかったからです。
保護地で保護されていたチンパンジーは皆、親を殺されています。
野生のチンパンジーを捕まえる仕事をするのは多くが現地の貧困層の黒人です。
ブルーノの犯行の残虐さから、ブルーノたちは親を殺された復讐をしているのではないかと言われています。

逃げたチンパンジーは全部で31匹でした。
彼らは野生にかえると思われていましたが、人間に育てられたブルーノ達は野生の群れに馴染めませんでした。
逃げた内の27匹が自発的に戻ってきたり捕まったりして保護地に戻されましたが、ブルーノを含む残りの4匹は現在も行方不明のままです。
ブルーノが人間を殺したと報道があったのはこの1度きりで、他にも被害にあった人がいるかどうかはわかりません。

チンパンジーの寿命は40~60歳とされています。
ブルーノは1986年生まれなので、今も生きている可能性は十分あります。
通常の2倍のスペックを持つブルーノなので、もしかしたら寿命も?と思わずにはいられませんが、とにかく現在は仲間と一緒に人間とは無縁の世界で幸せに生きていることを願うばかりです。

 

ジュープのショーの会場に居た女性は誰?

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©2021 UNIVERSAL STUDIOS

ジュープがGジャンを利用したショーを行おうとしていた時、会場には顔面の損傷が激しい女性メアリーが座っていました。

ジュープは『元共演者で僕の初恋の人』と紹介していたので、恐らく彼女は『ゴーディーズ・ホーム』時代にジュープと共演していた女性(お姉さん役っぽかった人?)ではないかと思われます。

彼女はゴーディーに襲われて顔面を食いちぎられてしまいましたが、生きていたんですね。

 

ホルスト監督、ヘルメットの男の死に方

ホルストと、シルバーのフルフェイスで顔が全く見えなかった記者のライダーは、撮影したいあまりに自らGジャンに近づいて餌食になってしまいました。
この死に方は、近年増加して問題視されている『火山の噴火など危険な自然現象を撮影しようとして亡くなった方々』や、『バズりたい一心で危険な場所で危険な行為をする瞬間を撮影しようとして亡くなった方々』などを彷彿とさせています。




ラスト考察:OJは死んでいた?

ラスト、エムがGジャンに巨大バルーンを捕食させて死ぬのを見届けた後、ラッキーに乗ったOJと再会して本編が終わります。

しかし、エムがバイクで『ジュピターズ・クレーム』に走っていく途中でOJはGジャンの気を引いて吸い込まれそうになっていました。
なので、ラストでエムの前に現れたOJはエムが見た幻だったのではないかという意見もあります。

ただ、OJはGジャンが吸い込みたくない物を知っているので事前に何か対策していた可能性も高いですし、Gジャンがバルーンを吸い込んで倒れるのもすぐでしたし、Gジャンが人間を吸い込んだ後はしばらく悲鳴が聞こえた(しばらく生きていた)ことから、OJはもし吸い込まれていたとしても生きている可能性が高いと個人的には思っています。

 

5セント硬貨

OJとエムの父の死因となった5セント硬貨は、Gジャンが巨大バルーンを飲み込む瞬間をとらえた巨大ポラロイドカメラを動かすためにも使われました。

この写真は恐らくマスコミに売りさばいてOJとエマの再出発の資金になるのでしょう。

降ってきたコインによって大切な家族を失った兄妹が、同じコインのおかげで救われる(再出発の資金を得る)描写には『死と再生』のような哲学的な要素だったり、お金は使い方次第で人生は豊かにもなるし不幸にもなり得るということを暗示していたようにも感じました。

 

OJとエムのその後は?

もし生きていたらOJとエムは、その後Gジャンの捕食写真『オプラ・ショット』や、もし回収出来れば監視カメラの映像やホルストのカメラの映像を売ったお金で牧場業を復興し、さらに管理者不在のジュピターズ・クレームを買い取ってGジャンに関する展示施設にするのではないでしょうか。

ジュープのようにやり過ぎて破滅しないことを願うばかりです。

 

エンドロール後の絵の意味は?

エンドロール後に映った『ジュピターズ・クレーム』の宣伝用ポスターは『ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドにジュピターズ・クレームのアトラクションを作ったからみんな来てね!』という宣伝です。
日本にも来てくれるならめっちゃ行きたいですが、来てくれなそう(笑)

以上です!読んで頂きありがとうございました。
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参考サイト様

映画『NOPE/ノープ』公式サイト

感想などお気軽に(^^)

  1. クリス より:

    とてもスッキリしました!ありがとうございます!特にゴーディ関連が全然ピンと来なかったのでありがたかったです。

    まだ1点引っかかってるのは、ゴーストの役回り。あの子はなんだったのでしょうか。

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