映画『神は見返りを求める』の解説・考察をしています!
田母神、優里、梅川について、覆面Youtuberペーパーマリオの正体について書いています。
鑑賞済みの方のための記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。
本編時間:105分
制作国:日本
監督・脚本:吉田恵輔
主題歌、挿入歌:『サンクチュアリ』『かみさま』空白ごっこ
キャスト紹介
田母神 尚樹(たぼがみ なおき)…ムロツヨシ
イベント会社で働く中年男性。
数合わせで参加した合コンで優里と出会い、恋をする。
川合 優里(かわい ゆり)…岸井ゆきの
「ユリちゃん」として活動する底辺YouTuber。コールセンターで働いている。
田母神に動画作成を手伝ってもらっていたが、たまたま人気Youtuberと共演出来て人気が出ると、次第に田母神を邪険に扱い始める。
梅川 葉…若葉竜也
田母神の後輩社員。不仲になった田母神と優里の間を取り持つと言いながら、どちらにも同調して関係を悪化させていく。
村上 アレン…柳俊太郎
優里が人気Youtuberから紹介してもらった若手デザイナー。
若者のニーズを理解して優里を成功に導く。
カビゴン(マイルズ)…淡梨
コールセンター職員…青山ヒカル、土山茜、さいとうなり、中島美美乃
田母神と村上の同僚…前原滉、田村健太郎、中山求一郎
ペーパーマリオ(覆面Youtuber)…下川恭平
居酒屋店主…平山繁史
南場慎介(自殺した男)…廣瀬祐樹
人気アーティスト…福田一華、川崎帆々花
チンピラ…湊祥希
チンピラの女…野田美桜
石を投げるおじさん…三島ゆたか
車の所有者…田本清嵐
絡むおじさん…二ノ宮隆太郎
パリピ…庄村聡泰、平野夢来 ほか
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※このページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。
あらすじ紹介
あらすじ①:
イベント会社で働く中年独身男性の田母神尚樹(ムロツヨシ)は、ある日 数合わせで参加した合コンでYoutuberの川合優里(岸井ゆきの)と出会います。
合コンから数日後、優里が田母神に「着ぐるみを貸してほしい」と頼んだことがきっかけで、田母神は優里の運営する『yurichannel』の活動を率先して手伝うようになりました。
それは動画編集や小道具の用意、撮影現場への送迎など本格的で、優里は田母神を『神様』と絶賛しました。
田母神の貢献もむなしくユリチャンネルは鳴かず飛ばずでしたが、ある月に動画の再生回数が少しだけ伸びて1500円の収益が入りました。
優里は田母神に「収益金を分けよう」と言いますが、田母神は「僕は見返りを求めて手伝ったわけじゃないから大丈夫」と断りました。
やがて田母神は本業が忙しくなり、あまり優里の手伝いができなくなりました。
優里は1人で企画を考えて、田母神に紹介してもらった居酒屋で食レポ動画を作りましたが、優里が取り上げたのは裏メニューの『生レバ刺し』で法律で禁止されている食材だったため、居酒屋は営業停止に追い込まれてしまいます。
田母神は居酒屋に謝罪し、尻拭いを手伝いました。
優里は田母神に何かお返ししようと肉体関係を迫りますが、田母神は優しく断りました。
あらすじ②:
ある日、優里は勉強のために人気Youtuberコンビ『マイルズ』のチョレイ(吉村界人)とカビゴン(淡梨)のトークイベントにお客さんとして参加します。
優里はこのイベントを担当していた田母神の後輩の梅川(若葉竜也)と再会しました。
(優里と梅川は先日の合コンで知り合っています)
優里は梅川からマイルズを紹介してもらうと、優里はとんとん拍子でマイルズのチャンネルにゲスト出演出来ることになりました。
優里が上半身裸になってボディペイントする動画がアップされると、若者にウケてユリチャンネルは登録者数が爆発的に増えました。
優里は喜んで田母神に報告しますが、田母神は優里が裸になったことに反感を抱いていたため冷たくあしらい、ボランティアでしていた動画編集も多忙を理由におろそかにするようになります。
傷ついた優里はマイルズに紹介してもらった若手デザイナーの村上アレン(柳俊太郎)と仕事をするようになりました。
優里が村上と作った動画は編集の仕方も可愛くて内容も面白いため、ユリチャンネルは一気に知名度が上がります。
田母神は優里と仲直りするために再びボランティアで撮影に参加しますが、村上ともダンサーの女の子からも嫌われていてうまくいきませんでした。
優里自身も村上に影響されて田母神を邪険に扱うようになりました。
しばらくすると、優里はアルバイトしていたコールセンターを辞めてYoutubeに専念できるようになりました。
そんな中、田母神の元同僚の南場という男が自殺してしまいました。
田母神は南場の借金の連帯保証人になっていたため、南場に代わって400万円の支払いをさせられることになります。
梅川に「優里はかなり儲けているはずだし、請求する権利がある」と言われた田母神は優里にお金を要求してみますが「見返りは求めてないって言いましたよね」と断られてしまいました。
その後、優里は村上と一緒に動画出演して、村上を「この方が『神様』です」と紹介としました。
さらに、その動画で優里と村上は『センスの悪い人』の話で盛り上がりますが、それは明らかに田母神のことでした。
あらすじ③:
堪忍袋の緒が切れた田母神は、優里をファミレスに呼び出して「売れてなかった頃に色々してあげたし、撮影で使ったお金も俺が負担してたんだから、売れてるなら少しは返してくれても良いじゃないか」と迫りますが、優里は「あなたは見返りを求めないと言ったんだから返すつもりはない」と答えて帰ってしまいました。
後日、優里は梅川に事情を話して「田母神を止めてほしい」と頼みました。
梅川は田母神を説得しようとしますが余計に怒らせてしまい、ついに田母神は『GOD.T』(通称ゴッティー)という名前でYOUTUBEチャンネルを開設し、優里を個人攻撃する暴露動画を量産します。
優里も対抗してゴッティーに反論する動画をアップします。
この喧嘩は大きな反響を呼び、田母神は本名と住所を特定されて晒されてしまい、会社からも長期休暇を命じられました。
一方、優里は周囲のアドバイスでゴッティーとの対決を『炎上商法』にして、ゴッティー関連の動画をあげ続けます。
ある日、優里はマイルズの2人と組んでゴッティーと直接対決する様子を撮影しました。
しばらく口論が続くと、田母神は怒るのをやめて和解モードになりましたが、優里は結局逃げてしまいました。
その後、優里のファンから「喧嘩動画ばかりでつまらない」「前の方が良かった」という声が上がり始めると、優里は冷静になって「楽しい動画を作りたい」と村上に提案してみますが、ゴッティーでまだ稼げると考える村上は許してくれません。
優里は村上の提案で、田母神がくれた着ぐるみ『ジェイコブ』をお祓いして燃やす動画を撮影しますが、燃えていくジェイコブを見ていられなくなった優里は慌てて消火しました。
村上は「これじゃ使えない」と怒り、優里に「お前が成功したのは俺のセンスのおかげ」「お前は誰にでも出来ることをただやってるだけなんだから調子に乗るな」と説教しました。
あらすじ④:結末
数日後、優里の握手会に田母神がお客さんとして現れました。
田母神は優里に「見返りはもう良い。これからも頑張って」と声をかけて去りました。
田母神が居酒屋でご飯を食べて店を出ると、外で覆面Youtuberのペーパーマリオが待ち伏せしていました。
ペーパーマリオは突然 田母神を撮影しながらエアガンを連射します。
怒った田母神はペーパーマリオを自転車で追いかけていると、チンピラカップルと衝突してしまいました。
田母神はチンピラカップルにビール瓶で頭を殴られ、仕返しの暴行を受けます。
すると、ペーパーマリオが戻ってきて今度はチンピラにエアガンを撃ちました。
チンピラはペーパーマリオに標的を変えたため、田母神は何とか帰宅しました。
帰宅した田母神は、頭から血を流しながら無言でダンスを踊る動画を投稿します。
そのダンスは、田母神が優里と初めて動画撮影した時に踊ったダンスでした。
この動画を見たチョレイやカビゴンは気味悪がりますが、優里だけはダンスの意味が分かって微笑みます。
数日後、田母神はゴッティーのアカウントと動画をまるごと削除しました。
その後、田母神はイベント会社を辞めて引っ越し運送屋に転職しました。
一方、優里はYoutuberを続けて、その日はマイルズとコラボして屋外で動画を撮影しました。
優里は田母神への和解の印として、田母神が以前作ってくれたパーカーを着用して撮影に臨みます。
しかし、マイルズがイタズラで仕掛けていた花火が優里に引火してしまい、大やけどを負って救急車で病院に運ばれました。
優里が緊急手術を受ける中、病院まで付き添ったチョレイとカビゴンは病院の中でも実況動画撮影を続けていました。
テレビニュースで優里の件を知った田母神がお見舞いに行ってみると、ペーパーマリオが病室に入り込んで優里を撮影してしていました。
怒った田母神はペーパーマリオのマスクをはいで顔を撮影すると「気が向いたらお前の顔をネットに晒す。せいぜい怯えて生きろ」と脅しました。
田母神は病室に戻り、ペーパーマリオと同じように優里をスマホで撮影すると、優里は「私、やっぱりあなたが嫌い。でも、ありがとう」と言いました。
数日後。田母神は自宅アパート前でペーパーマリオに襲われ、傘で背中を刺されてスマホを奪われました。
田母神は背中から血を流しながら歩き、スマホが装着されていない自撮り棒をかざしながら優里と踊ったダンスを踊りました。
解説・考察・感想など
目も当てられない醜い喧嘩だったはずなのにサラッと見れてしまう不思議な映画でした。
田母神と優里のどちらの言い分も間違ってないように思えて、すれ違いが加速していくのがもどかしく、どういう風に決着がつくのか目が離せなくなりました。
直接対決の時に田母神と優里が振りかざすのが自撮り棒なのも「今」っぽくて良かったです。
田母神と優里の関係が悪くなったのはなぜ?
田母神と優里はなぜ仲が悪くなってしまったのでしょうか。
最初のきっかけは、優里がチョレカビと共演するにあたって『NG無し』と宣言して上半身裸になったことでした。
そもそも田母神は陰キャなので、パリピや陽キャが盛り上がるようなチャラチャラした雰囲気が嫌いでした。
田母神は、彼の嫌い(苦手)な要素を寄せ集めたような存在だったチョレカビの動画に優里が出演したことも、優里が勢いで脱いでしまったこともすべてが気に入らなかったのでしょう。
田母神は陽キャ側には絶対に行けない、いわば『真性陰キャ』なので、簡単にそっち側に入ってしまえた優里への不満や嫉妬もあったと思われます。
一方で優里は底辺YouTuberだった頃は陰キャ寄りでしたが、陽キャの素質のある陰キャでした。
優里が初めてチョレカビと梅川と話した時、彼らは田母神を「じじくさい」「センスが古い」とけなします。
恐らく優里は田母神と動画を作っていた時も心のどこかでは「センスが古い」と感じていたと思われますが、「頑張ってくれているし、やってもらってるんだから不満を持ってはいけない(あれこれ言える立場ではない)」と考えていたのでしょう。
一方、チョレカビは商魂逞しいのでビジネスに情けは不要だとわかっていますし、それが徹底できているからこそ売れたコンビです。
チョレカビは「ビジネスライク」に慣れているので「この人の仕事が気に入らないなら別の人に頼めば良い」と、田母神をバッサリ切り捨てます。
本物の商売人(チョレカビ)と話した時が、優里の中で「正直になっていいんだ」「これはビジネスだ」と感じられた瞬間であり、価値観が変わった瞬間だったのではないでしょうか。
田母神はどんなところが神だった?
『神様』は感謝されたり大切にしてもらったりすることで 大切にしてくれる人や地域が好きになり、お礼としてご利益をもたらしてくれます。
つまり神様が求めているのは人々の温かい気持ちです。
逆に、神様は大切にされていないと思うと怒り、邪神になったり悪霊と呼ばれる存在になってしまいます。
神話や昔話でも、邪険に扱われて怒った神様から罰を受けたり、貧乏神のような幸福とは無縁そうな神様でも、大切にすると良いことが起こったりする話がたくさんあります。
田母神の行動はまさに神様そのもので、優里が田母神に感謝を忘れず大切にしている間は、田母神は優里を守ってくれる存在でしたが、優里が田母神を邪険に扱うと、激怒して悪霊のようになってしまいました。
優里にとって田母神はまさに神様そのものだったのです。
梅川(若葉竜也)について
今まで結構人の価値観とか、そういうのに影響与えてると思うな
元々心理学とか好きだし、常に人を見てるからね 趣味も人間観察だったり
梅川は童話『卑怯なこうもり』のまさにコウモリのような男で、誰とでも上手くやろうとし過ぎて失敗している悲惨なタイプでした。
たまにいる『イラッとする人』の特徴を凝縮したようなキャラクターでしたが、関係を悪化しかさせていないのに、その自覚が無いとこまでくると「ここまでやばい奴はあんまり見たことない」と思ってしまい現実感は薄れました。
良い奴だと思われるために平気で嘘をついたり、良く思われたいはずなのに、自分をあげるために他人を落とす行為を素でやってしまいます。
田母神と優里に「嫌い」と言われたことで梅川も何かが変われば良いなと思いますが、田母神に言われたことを自覚するところからなので先が長いですね(笑)
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