『ぼくのエリ 200歳の少女』ネタバレ解説|ラストの解釈、オスカーのその後、ガラスの意味など考察 | 映画の解説考察ブログ

『ぼくのエリ 200歳の少女』ネタバレ解説|ラストの解釈、オスカーのその後、ガラスの意味など考察

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ダークファンタジー

映画『ぼくのエリ 200歳の少女』の解説、考察をしています!

スウェーデンに暮らす12歳の少年とヴァンパイアの純愛物語。
物語の結末に触れているので、未鑑賞の方はご注意ください。

ぼくのエリ 200歳の少女

原題:LET THE RIGHT ONE IN
制作年:2010年
本編時間:115分
制作国:スウェーデン
監督:トーマス・アルフレッドソン
脚本:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
原作小説:『MORSE-モールス-』ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト著
本作はPG-12の年齢制限があります。
理由は肉体損壊等刺激的な暴力描写がみられるためです。(映倫HP参照)

 

主要キャスト紹介

僕のエリ
©EFTI_Hoyte van Hoytema
オスカーカーレ・ヘーデブラント
12歳の少年。両親は離婚していて母親と2人暮らし。
学校でイジメられているが、母親には打ち明けられずにいる。
隣に引っ越してきた謎の少女エリと交流する内に彼女に恋心を抱く。

 

ぼくのエリ
(引用:https://cthulhusbookshelf.wordpress.com
エリリナ・レアンダーソン
オスカーの住む団地の隣に越してきた少女。
正体はヴァンパイアで、同居人ホーカンが調達してくれる人間の血を飲んで生きている。

 

ホーカン(エリの保護者)…パー・ラグナル
コンニ(いじめっ子)…パトリック・リドマーク
ジミー(コンニの兄)…ラズマス・ルザンダー
ヴィルギニア(近所住民)…イカ・ノード
オスカーの母…カリン・バーグクィスト
エリック(オスカーの父)…ヘンリク・ダール
イェースタ(猫好き、目撃者)…ベルント・エーストマン
ラッケ(近所住民)…ピーター・カールバーグ
ヨッケ(近所住民、被害者)…ミカエル・ラーム
マーティン(体育教師)…ミカエル・エーハードソン ほか

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ヴァンパイアの伝承について

作中でヴァンパイアにまつわる伝承がいくつか登場しますが、説明なしで突然発動するので登場したものを書き出します。

・「入っていい」と言われるまで部屋に入れない

ヴァンパイアは人間が居る空間には、口頭で「入っていいよ」と言われるまで入るれない習性があります。
エリが習性を破ると体の全ての穴から血が吹き出していました。
この伝承は原題の『Låt den rätte komma in』(正しいものを招き入れよ)に通じています。

・日光を浴びると死ぬ

これは日本でも有名なヴァンパイアの弱点です。
ヴァンパイアは日光を浴びると灰になって死んでしまいます。

・猫に嫌われる

日本では馴染みのない伝承ですが、本作では猫がヴァンパイアを嫌う習性が描かれています。

・ヴァンパイアに噛まれるとヴァンパイアになる

人間がヴァンパイアに噛まれても死なずに生き延びると、噛まれた人間もヴァンパイアになります。
他にもヴァンパイアの血を飲むとヴァンパイアになるなど聞いたことがありますが、本作では噛まれるとそうなっていました。
唾液が体内に入るとヴァンパイアになるのかなと思いましたが、エリとキスしたオスカーはヴァンパイアになっていなかったので、傷口から唾液が入ることが条件なのかもしれません。




あらすじ前半

舞台はスウェーデンのストックホルムです。
ある真冬の深夜、12歳の少年オスカーの住む団地の隣の部屋に、中年男性ホーカンと少女のエリが引っ越してきました。

2人は親子を装っていますが、エリは子どもの姿のまま長年(タイトル通りなら200年)生き続けているヴァンパイアで、ホーカンはエリのお世話係です。
ホーカンはエリのために定期的に人を殺し、彼女の食事となる人間の血を集めてきます。

ホーカンは引っ越し早々に郊外で男性を捕まえると、逆さ吊りにして首を切って血を回収しました。
しかし、殺した男の家族に見つかりそうになったホーカンは、慌てて逃げだして血を入れたボトルを現場に置き忘れてしまいました。
ホーカンは無事に帰宅しますが、食事抜きになってしまったエリは怒ります。

その後、空腹に耐えかねたエリは近所住民の男ヨッケを襲い、血を吸って殺してしまいました。
エリの犯行を、ヨッケの知人で猫好きの男イェースタが目撃していました。
イェースタは近所住民が憩いの場にしている飲食店に走り、仲間を連れてヨッケが襲われた場所に行きますが、そこに死体はなく血だけが残されていました。

エリが死体を放置したことを知ったホーカンが、すぐにヨッケの遺体を回収して池に捨てたのです。

『血を抜かれて殺された男性』と『ヨッケの行方不明』の相次ぐニュースで、今まで平和だった町に不穏な空気が流れました。

ぼくのエリ
(引用:http://www.josephsusanka.com

主人公の少年オスカーは一見普通の大人しい男の子ですが、心に深い闇を抱えています。
学校ではクラスメイトのイジメっ子コンニと2人の取り巻きにイジメられていて、友達は居ません。
いつか復讐したいという気持ちだけはありますが、勇気が無く実行出来ずにいます。

復讐心が高じてか、猟奇殺人事件などの新聞記事をスクラップしたり、コンニに言い返したい台詞をつぶやきながら木をナイフで刺したりして鬱憤を晴らしていました。

そんなオスカーとエリは団地の中庭で出会って何となく仲良くなり、オスカーはエリの不思議な雰囲気に惹かれ、いつも1人でいることに親近感を覚えて2人は徐々に親密になっていきます。
2人はモールス信号を覚えて、壁越しに簡単なメッセージのやり取りをするようになりました。

オスカーは母親には言えずにいる学校でのイジメを、エリにはすんなり打ち明けることが出来ました。
エリは「私も手伝うからやり返そう」と励まし、勇気づけられたオスカーは体育教師に頼んで放課後特訓してもらい、体力作りに励むようになります。

初デートの日、オスカーはエリを抱きしめて愛を告白します。
エリが「私が女じゃなくても好き?」と聞くと、オスカーは迷わず「当たり前だ」と答えました。

ホーカンは夜の学校で不良学生を捕まえて血を採集しようとしますが、殺す前にターゲットの仲間達に見つかってしまいました。
逃げ場が無くなったホーカンはエリを守るためにと前もって用意していた硫酸を自ら顔にかぶり、逮捕されて生きたまま病院に運ばれました。

状況を把握したエリは、その日の夜ホーカンの病室に忍び込むと、同意の上でホーカンの血を吸って殺しました。

エリはそのままオスカーの部屋に行き、一緒のベッドで眠ります。
「恋人同士になろう」と言うオスカーに、エリは「私は女じゃないけど、それでもいいなら」と答えて付き合うことになりました。

 

あらすじ後半

翌朝、オスカーが目覚めるとエリは帰っていましたが、机の上に『ここを去って生き延びるか 留まって死を迎えるか 君のエリより』と手紙が残されていました。

その日、オスカー達生徒は学校行事で凍った池に行きました。
池でコンニに絡まれた時、オスカーはついにやり返してコンニを棒でひっぱたいて大泣きさせてやりました。
コンニが耳から血を流しながら泣き叫ぶ姿を見て、オスカーは不思議な高揚感に満たされました。

同じ時、他の生徒が凍った池の中に男の死体を発見します。
それはエリがこの町で初めて殺した男ヨッケの遺体でした。

その日の放課後、オスカーはコンニに仕返ししたことをエリに報告して褒めてもらいました。
興奮冷めやらぬオスカーは、ナイフで自分の手を傷つけて「血の誓いを交わそううよ」とエリに迫ります。

エリは我慢できずにオスカーの血を舐めてしまい、我に返って逃亡しました。

その後、お腹が空いたエリが近所住民の女ヴィルギニアを襲って血を吸った時、ヴィルギニアの愛人ラッケに見つかって顔を見られてしまいました。
ラッケがエリを追い払ってヴィルギニアは生還しますが、彼女もまたヴァンパイアになってしまいます。

状況を悟ったヴィルギニアは、2日後に日光を浴びて自殺しました。

その日の放課後、オスカーはエリからヴァンパイアだと告白されると、驚くこともなく妙に納得しました。

翌日、エリがオスカーの部屋を訪ねてきた時、オスカーは彼女が『ヴァンパイアの伝承』をちゃんと守っている様子がおかしくてからかいます。
怒ったエリが伝承を破ると、彼女の顔が苦痛に歪み、体中から血が溢れ出ました。

オスカーが慌てて謝ると、エリは「私のことを理解してほしい」と真剣に告げてお風呂に入りました。
エリの服は血まみれなのでオスカーのママの服を着てもらっていた時、オスカーは彼女の股間に『男性器の切除跡』があるのを見てしまいました。

翌日、エリが殺した男ヨッケの友人で、ヴィルギニアの愛人でもあった男ラッケがエリの自宅を特定しました。
危険を察したオスカーがとっさにエリに危険を知らせると、エリはラッケを殺して血を吸いました。
エリはオスカーに感謝のキスをした後、荷物をまとめて姿を消しました。

ラッケの死から数日後。
学校を休んでいたオスカーに、クラスメイトの男の子が「先生が放課後の特訓だけでも受けないかと言ってるよ」と電話をくれました。
オスカーは心配してもらえたことが嬉しくて学校に行きますが、それはいじめっ子のコンニとコンニの兄ジミーが仕組んだ罠でした。

プールでオスカーの特訓が始まると、コンニとジミーは校庭で火事を起こして教師陣を追い払い、オスカーにナイフを突きつけて「3分間潜水できたら許してやる」と言い、頭を掴んでプールに沈めました。

オスカーの息が限界に近づいた頃、男の子たちの悲鳴が響いてオスカーの頭を押さえつけていた手が離れました。
オスカーがプールから顔を出すとそこにはエリが居て、イジメっ子たちは全員惨殺されていました。

翌朝。オスカーは荷物を持って汽車に乗っていました。
エリはオスカーの隣にある大きなカバンの中に潜んでいます。
2人はモールス信号でやり取りしながら、どこか遠くに旅立ちました。




解説・考察、感想など

10年ぶり位に再鑑賞しました。

笑顔が可愛い美男子のオスカー君がなぜ豚呼ばわりされるのかだけは理解に苦しみましたが、彼が心に秘める狂気が開花する様子や、思春期特有の感性みたいものが美しく描かれていて、北欧映画の金字塔と言われるのも良くわかります。

以下、エリとオスカーを主に考察します。

エリとホーカンの関係

ぼくのエリ
(引用:http://www.let-the-right-one-in.com

もしエリがタイトル通り200年以上生きているヴァンパイアだとしたら、ホーカンはエリの両親や兄弟ではなく元々は赤の他人で、エリの恋人だった可能性が高いです。

ホーカンが「あの男の子に会わないでほしい」と言ったのは嫉妬からだろうと解釈したからです。

エリはホーカンに頼らなくても1人で狩りができていましたが、彼女は死体を隠そうとしたりなど身を守る行為を全くしませんでした。
そうするとすぐに捕まってしまうので、ホーカンが頑張って血の収集と死体の隠蔽係を担当していたようです。

ホーカンの職業は謎でしたが、引っ越しを繰り返していると定職を探すのは難しそうなので、恐らく彼は無職で殺した人物から奪った所持金で生活していたのではないでしょうか。

次のページに続きます!

2ページ目は『ホーカン殺害の理由』、『股間のモザイク』、『オスカーと硝子』、『エリがオスカ-を仲間にしない理由』、『ラストとオスカーのこれから』についてです。




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