アニメ映画「イノセンス」あらすじネタバレ・解説|引用の意味や名言もまとめました

劇場版アニメ『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)の続編。
前作で草薙素子が失踪してから3年後の出来事を描いている。
前作の監督だった押井守が、本作では監督と脚本も手掛けている。

制作年:2004年
本編時間:100分
制作国:日本
監督:押井守
脚本:押井守
原作:漫画/士郎正宗『攻殻機動隊

声優&キャラクター紹介

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(引用:http://blog.livedoor.jp

バトー大塚明夫
公安9課のメンバーの、戦闘特化型の大男。
体はほぼ完全に電子化しており、目には義眼レンズを着け、前作で吹き飛んだ右腕は新たに武器を搭載している。
事件解決のために無茶な行動をとることが多く、この男と組んで支障がなかったのは草薙素子だけだった。
素子を愛しており、彼女の失踪にも手を貸した。
3年たった今もどこか寂しげで、常に素子を探している。
自宅でガブリエルという名の愛犬を飼っている。

 

(引用:http://blog-imgs-41.fc2.com

トグサ山寺宏一
草薙素子が本庁から引き抜いた元刑事の男で、
現在の9課リーダーであり、バトーの相棒。
体や脳は人間のままの部分が多い。
素子失踪後、様子が変わったバトーを心配している。

 

(引用:https://getnews.jp

草薙素子(少佐)…田中敦子
※画像は前作のもので、本作で素子本人の姿は登場しません。
公安9課の元リーダーであり、プロのハッカー。
3年前に”人形使い”と呼ばれた自我のあるプログラムと融合し、
その後バトーの力を借りて失踪した。
政府は素子の行方を追っているが、いまだに発見されていない。

・その他のキャスト

荒巻部長(公安9課)…大木民夫
イシカワ(公安9課)…仲野裕
コガ(公安9課)…平田広明
アズマ(公安9課新人)…寺杣昌紀
謎の少女…武藤寿美
鑑識課長…堀勝之祐
ハラウェイ検死官…榊原良子
キム…竹中直人
ガブリエル…Ruby
ほか

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あらすじ前半(長文です)

9課の元リーダー草薙素子の失踪から約3年。
9課はその後 運営方針を変えつつあった。かつての少数精鋭のやり方から
有能な人員を増やし、1人にかかる負担を軽減しつつあった。
素子の失踪後、荒巻部長は新しいリーダーをトグサに任命した。

バトーは1人暮らしだが、この3年の間に犬を飼い始め、ガブリエルという名前をつけてとても可愛がっていた。
ご飯はドライフードではなく、日持ちしない生タイプのペットフードを決まった店で買い、美味しいご飯を作ってやるのが日課だった。
同僚のイシカワは、行動をパターン化しないようにとバトーに忠告していたが、バトーは言うことを聞かなかった。

そんなある日。街では『ハダリ』という名のロクス・ソルス社製のガイノイド(少女型のアンドロイド)
が、持ち主を殺害するという事件が多発していた。
ロクス・ソルス社とは、北端の地にあるロボットメーカーだ。

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(ハダリ 引用:http://yoh-sk.hatenablog.com

ガイノイドは持ち主を殺害した後は、自身を破壊して電脳を初期化していた。
不思議なのは、被害者らの家族からの告訴は1件も無く、
全てロクス・ソルス社との示談で速やかに解決していた。
また、被害者の家族全てに政治家、公安関係の退職者が1名ずつ含まれていた。
荒巻はテロの可能性が少なからずあるとみて、この件を9課が受け持つべきかどうかの判断を下すため(テロリスト絡みかどうか)の捜査を開始。
ガイノイドの調査をバトーとトグサに命じた。

まず2人は、検視官に話を聞くことにした。
検視官は事件に関する手がかりをつかむため、破壊されたガイノイドを復元しようとしていた。

・ガイノイドは『人間に危害を加えない』という条件下で作られ、
人間に危害を加えた人形は自らを破壊するようにプログラムされていた。
見方を換えれば、人間に危害を加えるために人形たちは自壊したとも捉えられるが、ガイノイドは自分の意思を持たないため、その可能性は低いとトグサは感じた。

・人間を襲った原因の可能性としては
細菌感染や接触異常による電脳の誤作動まど様々な理由が考えられるが、これと言った原因は不明。

・ハダリはメイド用に作られた量産型であるが、事件を起こしたハダリだけは特殊仕様になっており、
それは生殖器が付いている(セクサロイド)ことだった。
それが、遺族たちが告訴を取り下げた理由だった。

・自壊したハダリのうち1体に「助けて」とささやく音声ファイルが残されていた。

以上のことがわかった。

検視官の元を去った直後、ガイノイドの出荷検査官が殺害されるという事件が起き、バトーとトグサは現場へ直行した。

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出荷検査官の男ジャック・ウォーカーソンは、休暇中にレンタルハウス内で殺されていた。
その手口から、犯人は暴力団関係者とみて捜査が進められた。
このときバトーはハウス内で、本に挟まれていた1人の少女の写真を発見した。

翌日。ウォーカーソンを殺害したのは、状況から、ヤクザ『紅塵会(こうじんかい)』の一味の仕業の線が濃厚になった。
紅塵会は、麻薬から人身売買まで違法な商売には一通り手を出している組だ。
ここの組長がハダリの被害者となっており、報復の可能性があったのだ。
しかも、この紅塵会は組長が殺されると、次期組長が前組長の敵を討つという掟があった。
荒巻部長は紅塵会の調査をするようバトーとトグサに命じた。

「話を聞くだけ」という約束で紅塵会に乗り込んだ2人だったが、バトーはヤクザたちが素直に言うことを聞かないと判断するなり組長以外を皆殺しにしてしまった。
2人は許可も無くヤクザたちを殺したことで説教を受け、トグサは「あんたと一緒だと命がいくらあっても足りない!」と、バトーが約束を破ったことを怒った。
全身義体で脳さえ傷つかなければ問題ない(いくらでも替えが効く)バトーと
ほとんど生身のトグサでは、身体に対する思い入れが違うのだ。
バトーは「地味にやってても埒が明かない」と反省するそぶりを全く見せず、紅塵会を派手に叩いた理由を明かした。
それは、もしもロクス・ソルス社に後ろ暗いところがあれば(警察などに調べられたら困るような事情があるのなら)社は必ず動き出すというものだった。
荒巻もバトーの狙いを理解していた。

その日の夜。バトーの狙い通り”動き”は起こった。
バトーがいつもペットフードを買う雑貨店に入ると、草薙素子の忠告のささやきが聞こえた。
バトーは警戒しながら買い物を済ませようとしたが、何者かにゴーストハックされて一般人を殺しかけ、イシカワに動きを制御されてそのまま気を失った。

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(イシカワに動きを制御されるバトー 引用:http://joaquin2010.hatenablog.com

いつからかは不明だが、バトーは荒巻の指示でイシカワに見張られていた。
そのおかげでイシカワが素早く対処することができたのだった。
バトーは腕に何発も弾丸を受け、あげくゴーストハックまでされた。
犯人の狙いは恐らく、紅塵会を襲ったバトーを『気が狂った男』に仕立て上げることだった。
バトーを狂人だと思わせることでロクス・ソルス社と紅塵会の関係が明るみになるのを回避しようとしたのだ。

バトーを襲ったのはロクス・ソルス社だろうが、この男にここまで攻撃を食らわせることは並のハッカーに出来る芸当ではなかった。
とにかく、バトーは殺人は犯さなかったが一般の店舗で暴れたのは大きな打撃だった。
何とか犯人を挙げなければ、危険因子とみなされて9課の存続が危ぶまれる。
9課は捜査を続行し、バトーとトグサはバトーを襲った犯人探しのため、ロクス・ソルス社のある北端の地へ乗り込むことにした。

ロクス・ソルス社があるのは、かつて『情報集約型都市』として栄えていたエトロフ経済特区だ。
この区は今では多国籍企業や犯罪組織の巣窟と化し、ネットポリスなども手出しができず、もはや無法地帯となっていた。
バトーとトグサはヘリでエトロフ経済特区に降り立った。

以降はネタバレ含みます。
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あらすじ後半(長文&ネタバレあり)

犯人捜しのため、バトーのレンジャー時代の知人でハッカーのキムという男に会いに行った。
キムは人家から離れた湖の真ん中に建てられた屋敷にいた。
湖上にかけられた橋を渡り、2人はキムの屋敷に潜入した。
屋敷の中は大理石やステンドグラス、ブリキなどで作られた、美しく幻想的な内装だった。
2人はキムから話を聞こうとして、疑似体験の迷路(無限ループ)の罠にかけられてしまう。
素子からの無言の警告をいち早く察知していたバトーがループからの脱出に成功、トグサを助けた。
キムの狙いは2人をゴーストハックすることで、雑貨店でバトーを襲った犯人もキムだったことが判明した。
キムはロクス・ソルス社に雇われていたのだ。

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(キムを捕まえたバトー 引用:https://wired.jp

キムを捕まえて屋敷から出た後。
バトーはキムに罠を仕掛けられるとわかっていながらわざと罠にはまったことをトグサに伝えた。
雑貨店でバトーを襲った犯人はキムだと最初からバトーはふんでいたが、確証がなかった。
それを確かめるために、バトーはわざと疑似体験にかかったのだ。

キムの電脳にある記憶だけでもロクス・ソルス社を逮捕はできるが、これだけでは”9課に対する業務妨害”と”電脳倫理違反”しか立証できない。
ガイノイドの件の刑事責任を問うためには物的証拠が必要だった。
バトーと違って生きて帰ることが最優先のトグサは「キムの電脳だけで何とかしよう」と拒んだが、バトーの足はもうロクス・ソルス社へ向いていた。

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バトーは1人でロクス・ソルス社の船に乗り込み、トグサは別場所でキムの電脳に回線を繋いで船内の情報をバトーに送るなどのフォローに回った。
バトーが船内に侵入するとすぐ、社は侵入者とハッキングを感知。
やがてキムの脳は焼かれ、トグサはフォローができなくなった。
そしてバトーの前には何体ものハダリが襲い掛かった。
バトーが応戦していると、いつの間にかバトーの隣で他のハダリたちを銃で撃っているハダリがいた。
これはハダリの1体をハッキングしてバトーを助けに来た素子であり、こうしてバトーと素子は再会を果たした。

船のシステムを停止するため、2人はこの先にある緊急端末へ走った。
(証拠隠滅を防ぐためと、ハダリの攻撃をやめさせるため)
ハッキングのプロである素子が緊急端末からメイン端末へアクセスし、無事にシステム停止が完了した。
船は自動運転で司法の及ぶ近郊の国へ南下、到着予定の国の護衛艦へも連絡済みで、この船自体を証拠品として押さえることができた。

バトーと素子は、ハダリが殺人を犯した原因を見に行くためにさらに奥へ進んだ。
2人は、人の顔が浮かび上がっているマシンが大量に並べられた部屋に入った。
これらはゴーストダビングのマシンで、要は魂をコピーするのだ。
かつての動物実験では劣化したものしか作れず、しかもオリジナルの脳は破壊されることから禁止となった技術だ。
ロクス・ソルス社は紅塵会を通じてこのマシンを手に入れ、さらに人身売買で子どもを手に入れ洗脳し、ダビングした魂をハダリに吹き込んでいたのだ。
これがロクス・ソルス社のガイノイドが人気の秘密だった。
部屋の中に「助けて」とささやいている1体のマシンがあった。
バトーが声が聞こえるマシンを開けると、中から人間の少女が出てきた。
これは殺された検査部長の男の部屋でバトーが見つけた写真の少女だった。

殺された検査官は、ゴーストダビングのことを知っていた。
子どもたちを助けようと倫理行動のプログラムに参加し、
そのことが社にバレて紅塵会の組長殺しの和解案として差し出されたのだ。

女の子は、ロボットが事故を起こせば誰かが自分たちに気付き、いつか助けてもらえると信じてこの事件を起こしたのだと嬉しそうに語った。
その様子を見たバトーは
魂を吹き込まれた人形が犠牲になることは考えなかったのか!
と女の子に怒りをぶつけた。
女の子は
「だって、私は人形になりたくなかった!」
と叫び、泣き出した。

その後、素子はバトーに
あなたがネットにアクセスするとき、私は必ずあなたのそばにいる
と伝えると、ネットの中に消えていった。

こうして事件は無事解決し、バトーはガブリエルと再会。
トグサも愛娘を抱き上げることができた。
自分は孤独ではないと知ったバトーの表情や声色は、以前よりどことなく穏やかだ。

主題歌:伊藤君子『Follow me』

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簡潔なあらすじ

長文が苦手な方はこちらをどうぞ☆

草薙素子が消えてから3年。新リーダーはトグサになり、バトーは素子を失って自暴自棄になっていた。
素子は今や体を持たず、意識のみでネットの海をさまよう新しいタイプの生命に進化していた。
ある時、近ごろ巷で密かに流行っているロクス・ソルス社の少女型メイド用アンドロイド(生殖器付き)が、購入者を殺して自身も自壊するという事件が頻発する。
真相を突き止めることになったバトーとトグサは、このアンドロイドの人格形成に、誘拐された人間の子どものゴースト(魂)のコピーが使われていて、これこそが人気の理由だったことを突き止めた。
バトーは突如助けに現れた素子と協力してロクス・ソルス社の中枢を機能停止し、警察に引き渡すことで事件は解決した。
バトーは素子から「いつもあなたを見守っている」と言葉をもらい、孤独感から解放された。

解説・考察や感想など

 

・対照的な性格のトグサとバトー 

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(引用:http://fujiinsatu.web.fc2.com

本作ではトグサとバトーの対照的な性格が描かれています。
人間味の強いトグサと、人形(サイボーグ)に近いバトー。
トグサの人間らしい一面が描かれることで、バトーの孤独や人形らしさが際立ちます。

一方で、バトーが犬を飼っていることや、素子を思う発言にはバトーにまだ人間らしさが残っていることも垣間見えます。

 

・草薙素子はどこに行ったのか 

前作で失踪した草薙素子(少佐)は子どもの義体の姿で旅立ちました。

バトーは素子について
あいつは行っちまったのさ
均一なるマトリクスの裂け目の向こう
広大なネットのどこか
その全ての領域に融合して
自分が生きた証を求めたいなら
その道はゴーストの数だけあるのさ

と発言しています。
素子は義体を捨て、体はもうこの世界にないということです。
恐らくバトーは、素子が警告をくれる際に、自分自身の姿で現れないことなどから『体』をもう持っていないのだと感づいていたのでしょう。

素子がもういないと知って、トグサはバトーがなぜこんなにも死を恐れないのか納得がいきました。
トグサもバトーにとって素子が特別であることを知っているからです。
そして「俺は生きて家に帰りたい」とバトーに念押ししています。

 

・ロクス・ソルス社の社員をハダリが攻撃する 

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(草薙素子がハッキングしたハダリ 引用:https://happyeiga.com

バトーが船に侵入したことに気付いたロクス・ソルスの社員たちが武装してバトーの居場所へ向か途中、1体のハダリが社員たちを襲い、全員倒します。
このハダリは、ハダリをハッキングした素子だと思われます。
そうでなければ、まだゴーストの入っていない人形が命令に背いて社員たちを襲うのは不自然です。

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・人形になりたくなかった女の子

バトーがゴーストダビングマシンの中の少女を救い出します。
この子は人身売買のために拉致された女の子です。
次のステージに行った友達は、話しかけても反応せず、喋らなくなった
という女の子の発言から、ゴーストダビングされた子供たちは脳に損傷を受けてだんだん廃人になっていくようです。

助けられた女の子は事件を起こした理由と、こうして助けてもらえたことをバトーに嬉しそうに語りますが、バトーは人形の立場に立って怒り出します。
女の子は「私は人形になりたくなかったんだもの!」と叫び、泣き出します。

このときに女の子が言った『人形』というのは、魂を人形に入れられて人形になる、ということよりも
脳がダメージを受け、廃人になった状態を人形と表しているのだと思われます。
何も聞こえず、口もきかなくなった友人を見て、こんな風になりたくないと感じたのでしょう。

 

・素子と再会した後のバトー

 

関連画像

(引用:https://www.youtube.com

バトーは素子が消えてからいつもどこかふてくされ、気分が沈んでいました。
それは荒巻部長をはじめ、他の9課メンバー全員が心配するほど明らかでした。
バトーは人間なので、どうしても”幸か不幸か”などの、人間特有の価値観で自分を見てしまい、バトーにとって素子がいない状態は不幸だったでしょう。
押井守監督が「バトーは前作で素子にフラれてふてくされていた」と説明していたように、バトーは素子が旅立ってからずっと孤独を感じ、ある意味ふさぎこんでいました。
ガブリエルを飼い始めたのも、恐らく孤独を紛らわすためでしょう。

今回の事件でバトーは素子と再会し
あなたがネットにアクセスするときは、いつもあなたの傍にいる
という言葉をもらいました。
素子はバトーにとって守護霊的な存在になっていました。
素子は今や、ネットの世界の中に住む、特定の体を持たない形のない存在です。
ネットがつながる場所であれば、どこへでも行けます。
直接会ったり会話をすることはなくても、素子はいつもバトーを見守っているのでしょう。
それは、もしかしたらバトーがあまりにも寂しそうだったので、少しでも心を軽くするためにかけた言葉だったかもしれません。
それでも、この言葉はバトーを孤独の闇から救いました。

 

・その他感想や考察など

ストーリーの流れは前作よりかなりわかりやすかったように感じました。
それでもセリフを必死に追わないとわからないことも多々ありました。

ヒューマンドラマの面は、素子がいなくなってからバトーはずっと孤独や寂しさを感じていたけれど、再会した素子から言葉をもらい、孤独ではないことに気が付く。
考えるだけで繋がれるような感覚に近いでしょうか。
直接会えなくても、見守ってくれる存在をいつでも感じられるって良いですね。

以下、引用やわかりづらかったセリフなどを頑張ってまとめましたので
理解する上での参考にしてくだされば幸いです!

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イノセンス|引用された言葉たち

本作には、これでもかというほど引用が多数登場します。
押井守監督によれば「できるものなら100%引用でセリフを作りたかった」とのこと。
監督、考えるだけでめまいがします。
その数々の引用の意味がほとんどわからなかったので調べました。

 

ロクス・ソルス
意味:人里離れた場所
引用元:レーモン・ルーセル(小説家・詩人)『ロクス・ソルス

事件の中心となる会社ロクス・ソルス社という社名は
レーモン・ルーセルという小説家の本「ロクス・ソルス」のタイトルです。
この本の内容は、パリ郊外に住む発明家が、数々の発明品を招待客に見せる。
その発明品の数々はとても変わっていて奇妙なものばかりであるが、それらを説明する発明家は機械のように淡々と、説明書を読み上げるかのように説明していく
という変わったストーリーです。
登場する発明品の一部が表紙に書かれており、
”ガラスの死体蘇生装置”
”血文字をかく雄鶏”
”糸の先に吊られた脳”などがあるようです。
(すみません未読です)

 

柿も青いうちは鴉も突つき申さず候
意味:柿が実っていても、熟れないうちはカラスでさえ手を出さない
引用元:徳田秋声(小説家)

バトーとトグサが鑑識に話を聞きに行ったとき、所轄の男が2人に投げかけた言葉です。
「普段は所轄に見向きもしないくせに、自分たちに利益がある時だけのこのこやって来てうっとうしい」
というような意味でしょうか。
男は自分たちの手柄が公安に横取りされるのを不満に思って嫌味を言ったのです。

 

自分の面が曲がっているのに、鏡を責めて何になる
意味:自分の顔が歪んでいるのに、鏡を責めたってどうしようもない
引用元:ニコライ・ゴーゴリ(小説家)『検察官』

所轄の男の嫌味にいら立った理由を、トグサは「昔の自分を見ているみたいだった」と言っています。
それを聞いたバトーがつぶやいた引用です。
これはかなりわかりやすい方ですね。
男を怒っても仕方がないという意味です。

 

鏡は悟りの具ならず、迷いの具なり
意味:鏡を使って自分を知ろうとしても、難しくなるばかりである
引用元:斎藤緑雨(小説家)『緑雨警語

「自分の面が~」の言葉にトグサが返した引用です。
「鏡は自分を知るための道具にはならない」
と言いたいのでしょうか。
とにかく、バトーの言葉を聞いて考え直したようです。
ちなみにこの部分が含まれている文の全文は以下です。

鏡を看よといふは、反省を促すの語也。
されどまことに反省し得るもの、幾人ぞ。
人は鏡の前に、自ら恃み、自ら負ふことありとも、遂に反省することなかるべし。
鏡は悟りの具ならず、迷いの具なり。
一たび見て悟らんも、二たび見、三たび見るに及びて、少しづヽ、少しづヽ、迷はされ行くなり。

 

人間に危害を加えない条件下において自らの存在を維持せよ。
引用元:アイザック・アシモフ(作家・生化学者) 『われはロボット

ハラウェイ検視官がガイノイドのことを説明する際の内容です。
ガイノイドが人間に危害を加えることを禁じています。

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春の日やあの世この世と馬車を駆り
意味:温かい春の日は、あの世にもこの世にも行き来する美しい妖精たちの姿が見えるようだ
引用元:中村苑子(俳人)『水妖詞館』

ハラウェイ検視官のところから出た直後に、ハダリに関する新たな事件が起きたことを知り、バトーがつぶやいた引用です。
バトーが言いたかった深い部分はよくわかりませんが(理解力不足ですみません。。)
「またガイノイドが誰かを殺した」ということでしょうか。
この句は幻想的で結構好きです。

ガイノイドたちは少女の姿でありながら、どこか妖艶に描かれていて、まるで妖精のようです。
そんなガイノイドをたくさん目にした直後だったからこの句が出てきたのかもしれません。

 

シーザーを理解するためにシーザーである必要はない
引用元:マックス・ウェーバー(政治学者・社会学者・経済学者)

荒巻部長がトグサにバトーの様子を訊ねたとき、トグサは「俺はサイボーグや電脳ではないからわからない」と答えます。
この答えに対して荒巻が返した引用です。
意味は分かりやすいので省略します。

 

人はおおむね自分で思うほどには幸福でも不幸でもない。
肝心なのは望んだり生きたりすることに飽きないことだ。
引用元:ロマン=ロラン(作家)『ジャン・クリストフ

こちらもバトーの様子をトグサに訊ねたときの荒巻部長の引用言葉です。
素子がいなくなってからバトーは元気がないので心配しています。
この後半部分は簡単なようで、落ち込んでいる時などには難しいですよね。

 

孤独に歩め 悪をなさず 求めるところは少なく 林の中の象のように
意味:林の中の像のように、悪いことをせず、欲望は少なく、孤独に生きていけ
引用元:ブッダ

こちらも荒巻部長が出した引用です。
話の後半に草薙素子もこの引用を言っています。
このくだりの前には

良い伴侶を得られれば、その者と共に歩めばよい。
しかし、愚か者を道連れにしてはならない。
もし、良い伴侶が得られないのであれば

という文があり、そして「孤独に歩め…」と続きます。

バトーにとって『良い伴侶』というのは素子のことです。
しかし、素子はどこかに行ってしまってバトーとは共に歩めません。
なので、ひとりで生きていけばいいという意味です。
素子は「自分は1人で生きていく」という意味でこの言葉を言っています。

この孤独は悪い意味ではなく、ポジティブな孤独です。
孤高と言っても良いと思います。
実際、孤独を肯定するようなブッダの言葉は多く見られます。

 

個体が作り上げたものもまた、その個体同様に遺伝子の表現型だ
引用元:リチャード・ドーキンス(生物学者)『延長された表現型 自然淘汰の単位としての遺伝子

(引用:http://ccoe.blog60.fc2.com

エトロフ経済特区に向かうヘリの中で、街を眺めながらバトーが出した引用です。
この後にトグサが「それってビーバーのダムやクモの巣の話だろ?」と聞いています。
ビーバーのダムにも、その作り方は遺伝子が記憶しているからこそ
作れたものであり、そこに遺伝子が確かにあるという意味です。
人間が作った都市にもまた、人間の遺伝子が表れていると言いたいのだと思います。

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その思念の数はいかに多きかな 我これを数えんとすれども その数は砂よりも多し
引用元:旧約聖書 詩編139節

エトロフ経済特区を見ながらバトーと会話しているときにトグサが出した引用です。
人間の思いや念の数は砂の粒よりも多くて数えられないという意味です。

 

彼ら秋の葉のごとく群がり落ち 狂乱した混沌は吼えたけり
意味:彼らは秋に木から落ちる葉のように群れになって落ちていき、理性を失いぐちゃぐちゃになった彼らはどなり、わめいていた。
引用元:ジョン・ミルトン(詩人)『失楽園

この詩は神によって地獄に落とされたサタンとその仲間達が神への呪いを叫びながら地獄に落ちていく様子を記したものです。
トグサは 神=荒巻、サタン=トグサ&バトー、地獄=ロクス・ソルス社、エトロフ経済特区
に例えているのだと思います。
敵の本拠地に乗り込むのがイヤだったのでしょう。

 

忘れねばこそ思い出さず候
意味:忘れることもないが、思い出すこともない
引用元:高尾太夫(遊女)

エトロフ経済特区に乗り込んだバトーとトグサ。
2人はここでバトーのレンジャー時代の知人の男と会います。
この男からキムの居場所を聞き出すときのバトーの引用です。

 

信義に二種あり 秘密を守ると 正直を守ると也 両立すべき事にあらず
意味:信義には二種類ある。秘密を守ることと正直を貫くこと。これは両立するべきことではない。
引用元:斉藤緑雨(小説家)『緑雨警語

1つ上と同様、バトーが武器商人の男に出した引用です。
男をまくしたてています。

 

秘密なきは真なし
意味:秘密がないことは真実がないことと同じだ。
引用元:斉藤緑雨(小説家)『緑雨警語

バトーの言葉を受けて武器商人の男が返した引用です。
1つ上の「信義に二種あり~」とこちらはセットになっている文章のようです。

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生死去来 棚頭傀儡 一線断時 落落磊磊
意味:生と死が繰り返される。棚に吊った傀儡(あやつり人形)が、糸を切ればあっさりと崩れ落ちるように。
引用元:月菴宗光(臨済宗大應派の僧)『花鏡

哲学的な言葉ですね。
生命の生と死が繰り返される様子を操り人形に例えた言葉です。
この古語は作中後半にいたるところで登場します。

 

人の上に立つを得ず 人の下に就くを得ず 路辺に倒るるに適す
意味:出世することも、誰かに仕えることもできない人間は、道端に倒れる(落ちこぼれる、行き倒れる)のがお似合いだろう。
引用元:斉藤緑雨(小説家)『緑雨警語

キムがどんな人物なのかをトグサに説明する際にバトーが出した引用です。
人と一緒に働くことができずに落ちこぼれ、今はハッカーに落ち着いているそうです。

 

ロバが旅に出たところで馬になって帰ってくるわけではない
引用元:西洋のことわざ

こちらもバトーがキムのことを説明するときに出た引用です。
ロバは西洋では「馬鹿・愚か者」という意味で使われることがあります。
愚か者がビッグにになろうと思って旅に出ても、本質が変わらない限り、何をしても変われるはずがないという意味です。
バトーはキムに対してかなり辛口ですね。。

 

寝ぬるに尸せず(いぬるにしせず)
意味:死んだように眠ってはいけない
引用元:孔子『論語

バトーとトグサがキムの屋敷に侵入し、死んだふりをしていたキムにバトーがかけた言葉です。

 

未だ生を知らず 焉んぞ死を知らんや
意味:まだ生について十分に理解していないのに、どうして死を理解できるだろうか。
※こちらの訳は右記ブログ様より引用させていただきました。 引用元:ちょんまげ英語日誌引用元:孔子『論語

バトーとキムの会話でキムが出した引用です。
死を理解することは難しいとバトーに訴えています。

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多くは覚悟でなく愚鈍と慣れでこれに耐える
人は死なざるを得ないから死ぬわけだ
引用元:ラ・ロシュフコー(文学者)『箴言集

バトーとキムが死について話していた際にキムが出した引用です。
1行目は難しいですが、2行目が訳してくれています。

 

人体は自らゼンマイを巻く機械であり 永久運動の生きた見本である
引用元:ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリー(哲学者・医師)『人間機械論

キムの屋敷で2度目の無限ループに陥った際にバトーが出した引用で人間を人形や機械に例えた一文です。
ゼンマイとは食べることや寝ることなどの動く(生きる)ために必要な動作で、このゼンマイを人間は自分で巻き、命が尽きるまで永久運動しているということです。

 

神は永遠に幾何学する
引用元:プラトン(哲学者)

無限ループにはまったトグサの脳内でバトーが出した引用です。
神様はずっと哲学的なことを考えているよね、といった意味でしょうか。

 

理非なき時は 鼓を鳴らし 攻めて可なり
意味:どうすれば良いかわからないときは、激しく攻めて良い。
引用元:孔子『論語

ロクス・ソルス社へ乗り込む前にバトーが出した引用です。
非常にバトーらしい言葉ですね。

 

鳥は高く天上に隠れ 魚は深く水中に潜む
引用元:斎藤緑雨(小説家)『緑雨警語

こちらもロクス・ソルス社へ乗り込む前のバトーの引用です。
最後に映る鳥は、素子がバトー(とトグサ)を見守っている描写だと思われます。

バトーは恐らく、素子を思いながら言っているので
鳥=素子(ネットの世界を自由に旅している)、魚=バトー(決して表には出ない9課の人間)と捉え、
お互いがいるべき場所にいるということでしょうか。

ちなみに全文は

鳥は高く天上に蔵れ、魚は深く水中に潜む。
鳥の声聴くべく、魚の肉啖うべし。これを取除けたるは人の依怙なり。

意味は
『鳥は空高くに、魚は深い水中に隠れながら生きている。
鳥は鳴き声を聴くために生かされ、鳴かない魚は殺して食べる。
このように物事によって扱いを変えるのは、人間のエゴで決められる。』
のような感じになると思います。
全文を読むと、いつも素子を探し求めているバトーは
「会いたいと思うこと自体がエゴなのか?」と自問自答しているようにも感じます。
そうは言っても好きなんだから会いたいですよね~。

 

聖霊は現れたまえり
意味:聖霊が現れた
引用元:聖歌『Veni Sancte Spiritus』

バトーがロクス・ソルス社の船に潜入し、素子と再会したときにバトーが出した引用です。
単純に、やっと素子(聖霊)と会えたという意味だと思います。

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何人か鏡を把りて 魔ならざる者ある
魔を照すにあらず 造る也
即ち鏡は 瞥見す可きものなり 熟視す可きものにあらず

意味:どんな人でも鏡を持つと心に魔がとりつく
鏡は魔を映し出すものではなく 魔を作るものだ
よって鏡は少しだけ見るのが良く じっと見つめるべきものではない
引用元:斉藤緑雨(小説家)『緑雨警語

132819700

(引用:https://happyeiga.com

ハダリたちを倒しているときに素子がつぶやいた引用です。
次々に現れる同じ顔の人形たちを見て思い出したのかもしれません。
こちらを攻撃してくる同じ顔の人形たちは、同じハダリの姿の素子にとっては『魔』そのものです。
この鏡(ハダリ)をよく見てしまうと、自分も魔にとりつかれそうな気分になったのかもしれません。

 

鳥の血に悲しめど 魚に加えて魚の血に悲しまず 声あるものは幸福也
意味:鳥は声をあげるので殺すのを悲しまれるが、魚は声がないので誰も悲しまない。声があるものは幸せだ。
引用元:斎藤緑雨(小説家)『緑雨警語

ロクス・ソルス社で助けた女の子がバトーに怒られて泣き出したとき、素子が出した引用です。
鳥=人間、魚=人形に例え、言葉で意思表示ができる子どもたちが幸せであり、
動くことも、喋ることもできない人形たちがいかに可哀そうかを語っています。
が、女の子に聞こえるように話していたかは不明です。

引用は以上です!

 

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イノセンス|名言や小難しかった言葉たち

名言だと感じた言葉や、言葉で聞いていたら頭がこんがらがりそうだったセリフを文字にしました。

荒巻:理解なんてものは おおむね願望に基づくものだ

バトーが「(事件の概要を)理解した」と言ったことに対し荒巻部長が返した言葉です。
(会話の流れ的に屁理屈や説教っぽくも聞こえましたが)
『人間は信じたい事しか信じない』というような言葉があるように(ソースは忘れました、すみません)、理解もまた個人の願望に基づくものだということです。
理解できたかどうかは問題じゃない、とにかく働けという意味でもあるかもしれません。

 

ハラウェイ検視官:
人間とロボットは違う でもその種の信仰は
「白が黒でない」という意味において 人間が機械ではないというレベルの認識に過ぎない
工業ロボットはともかく 少なくとも愛玩用のアンドロイドやガイノイドは
功利主義や実用主義とは無縁の存在だわ
なぜ彼らは人の形 それも人体の理想形を模して造られる必要があったのか
人間はなぜこうまでして自分の似姿を作りたがるのかしらね
(中略)
『子ども』は常に『人間』という規範から外れてきた
つまり確立した自我を持ち 自らの意思に従って行動するものを『人間』と呼ぶならばね
では『人間』の前段階としてカオスの中に生きる『子ども』とは何者なのか
明らかに中身は人間とは異なるが 人間の形はしている
女の子が子育てごっこに使う人形は 実際の赤ん坊の代理や練習台ではない
女の子は決して育児の練習をしているのではなく
むしろ人形遊びと実際の育児は似たようなものなのかもしれない

トグサ:一体何の話をしてるんです?

ハラウェイ検視官:
つまり子育ては 腎臓人間を作るという古来の夢を一番手っ取り早く実現する方法だった
そういうことにならないかと言っているのよ

トグサ:子どもは人形じゃない!

(引用:https://www.disney.co.jp

ハラウェイ検視官は、人形の自壊を「自殺」と表現したり
「人形は使い捨てされるのがイヤで怒っている」と意見したり
上記に書き出している、子どもは人間ではなく人形に近い
というような発言から、人形(アンドロイドやガイノイド)と人間の区別があいまいで、どちらかと言えば人形の肩を持つタイプの研究者です。

また、ハラウェイ検視官がいるラボはマシンなどの品質保持のためか、温度が非常に低く保たれています。
トグサは寒がってコートを首元まで上げていますが、バトーとハラウェイ検視官は寒がる様子を一切見せません。
これは、ハラウェイ検視官もバトーと同様に、体をほぼ完全に義体化していることを表しています。

ハラウェイ検視官は、バトーの”人間と人形”の考え方をより顕著に表しているキャラクターと言えるでしょう。
トグサの「子どもは人形じゃない」という意見に対して
「デカルトは、幼くして死んだ娘の名前を人形に付けて生涯溺愛したらしい」
と、ハラウェイ検視官を応援するような発言をしています。

関係ないですが、ハラウェイ検視官はラボで煙草を吸いながら話します。
温度管理も徹底しなければいけないこの部屋でタバコなんて吸って大丈夫なの?
ヤニ汚れとか着いたら厄介そうだけど…
と単純に疑問に思ってしまいましたw
恐らく、この煙草を吸うという行為がハラウェイ検視官が人間だということを強調するためだったのだとは思いますが…

 

バトー:生命の本質が遺伝子を介して伝播する情報だとすると
社会や文化もまた膨大な記憶システムに他ならないし
都市は巨大な外部記憶装置ってわけだ

バトーがエトロフ経済特区に来た際に、その街並みを見たバトーの言葉です。
外部記憶って難しい言葉ですが、授業の内容をノートにしたり、何かを忘れないようにメモに残したりすることは外部記憶です。
ノートやメモが装置ですね。
人間が作った社会や文化、都市までも、そこに生きていた人々が作り上げた外部記憶装置で
その社会や文化、都市の中に、人間の遺伝子が作り上げた仕組みや情報が残されてる、ということですかね。

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キム:人間はその姿や動きの優美さに いや 存在においても人形にかなわない
人間の認識能力の不完全さは その現実の不完全さをもたらし
そしてその死の完全さは 意識を持たないか 無限の意識を備えるか
つまり 人形あるいは神においてしか実現しない
いや 人形や神に匹敵する存在がもうひとつある

バトー:動物か

キム:シェリーのヒバリは 我々のように自己意識の強い生物が決して感じることのできない 深い無意識の喜びに満ちている
認識の木の実をむさぼった者の末裔にとっては 神になるより困難な話だ

キムとバトーの会話の一部です。
キムは人形を神と並べて崇拝していますが
人形や神に加え、動物もそれらと似たような存在だと説明しています。

 

バトー:生身の人形は死を所与のものとしてこれを生きる

引用だらけなのでこれも引用ぽく思いましたが、これはちゃんとバトーの言葉のようです。
”生身の人形(アンドロイド)は死を与えられて生きている”という意味になるのでしょうか。
キムが『魂を持たない生身』の美しさを伝えるために、死を恐れる人間の醜さを説明します。
そして、バトーが「言いたいことはわかった」という意味で上のセリフを言いました。
生身の人形は魂を持たない=生物に置き換えれば、『死』とも言える。
なので、人形は『死』を生まれつき与えられてこの世に存在している、という意味なのかと思います。

 

キム:外見上は生きているように見えるものが 本当に生きているのかどうかという疑惑
その逆に 生命のない事物がひょっとして生きているのではないかという疑惑
人形の不気味さはどこから来るのかといえば 
それは 人形が人間の雛形であり つまり 人間自身に他ならないからだ
人間が簡単な仕掛けと物質に還元されてしまうのではないかという恐怖
つまり 人間という現象は本来 虚無に属しているのではないかという恐怖

生命という現象を解き明かそうとした科学も この恐怖の情勢に一役買うことになるな
”自然が計算可能だ”と言う信念は ”人間もまた単純な機械部品に還元される”という結論を導き出す

バトー:人体は自らゼンマイを巻く機械であり、永久運動の生きた見本である

キム:18世紀の人間機械論は 電脳化と義体化の技術によって再び蘇った
コンピューターによって記憶の外部化を可能にしたときから
人間は生物としての機能の上限を押し広げるために 積極的に自らを機械化し続けた
それはダーウィン流の自然淘汰を乗り越え 自らの力で進化論的闘争を勝ち抜こうとする意思の表れであり
それ自身を生み出した自然を超えようとする意思でもあり
完全なハードウェアを装備した生命という幻想こそが この悪夢の源泉なのさ

バトー:神は永遠に幾何学する

キムの屋敷の無限ループ2回目の会話です。
哲学的な内容ですが、トグサとバトーが疑似体験の迷路に入っているの暗に伝え、からかっています。

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バトー:幸運が三度姿を現すように 不運もまた三度兆候を示す
見たくないから見ない 気がついても言わない 言ってもきかない
そして破局を迎える

無限ループにはまっていたトグサをバトーが助けた際にかけた言葉です。

幸も不幸も、その出来事が起きる前に3度前触れがある。
不運の場合はその前触れを無視した結果、最悪の結果になる
というような意味です。

西洋には「三つの兆候によって死を迎える」というお話があります。
死神と契約した男が、死神に
「お前をあの世へ連れて行く前に、必ず三つの警告を示す。」
と言われ、男は死神と別れます。
それから男は年を取り、ある日死神が男をあの世に連れに現れます。
男にとっては死神は突然現れたので
「約束が違う」と怒りますが、死神は
1 男の足腰が弱ったこと
2 耳が遠くなった
3 目がかすんで見えにくくなった
これら三つが兆候だったことを伝え、男をあの世へ連れていきます。

日本でもなじみ深い『見ざる聞かざる言わざる』も絡めてありますね。
しかしこの場合は、見ざる聞かざる言わざるの結果、破局(まんまと騙される)を迎えることになるという意味です。

 

バトー:騙してやろうと待ち構えている奴ほど騙しやすいもんさ

キムの疑似体験の迷路を突破したときの言葉です。

 

バトー:そう囁くのさ 俺のゴーストが

ゴーストを信じないキムに対しての言葉です。
有名ですが、前作では素子が同じセリフを言っています。

 

キム:人間もまた生命という夢を織り成す素材に過ぎない
夢も知覚も いや ゴーストさえも
均一なマトリクスに生じた裂け目や歪みなのだとしたら…

バトー:俺もお前と同じくだらねえ人間だが
俺とお前じゃ履いてる靴が違う
ゴーストが信じられねぇようなヤローには
狂気だの精神分裂だのと結構なもんもありゃしねぇ
お前の残り少ない肉体は 破滅することもなく
”分相応な死”ってやつが迎えに来るまで 物理的に機能するだろうよ

キムがバトーに捕まる直前の会話です。
キムはまだ悪あがきをしていますが、バトーの言葉で抵抗を諦めました。
「ゴーストが信じられねえような~」以降は、キムは精神異常などで無罪を訴えても無駄で、残りの人生は刑務所で大人しく過ごせというような意味でしょうか。

 

バトー:思い出をその記憶と分かつものは何もない
そしてそれがどちらであれ 
それが理解されるのは常に後になってからのことでしかない

キムの屋敷から出たトグサが
「本当に疑似体験から抜け出せたのかどうかわからない」
と不安を見せた際に答えた言葉です。
思い出と記憶はほぼ同義語です。
もしも記憶と事実が違っていたとしても、それは後になってからでないとわからない、という意味でしょうか。
つまり、まだ疑似体験の中なのかどうかは今考えても仕方ないとトグサを慰めているのだと思います。

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バトー:昔の人はいいこと言ったぜ。
『理非無きときは鼓を鳴らし攻めて可なり』ってな。
談判破裂して暴力の出る幕だ!

上の引用文の所にも載せましたが、バトーらしくて好きだったので名言としてこちらには全文を載せます。
談判破裂は交渉決裂とほぼ同じ意味だと思って良いと思います。

 

バトー:ひとつ聞かせてくれ。
今の自分を幸福だと感じるか?

素子:懐かしい価値観ね。
少なくとも今の私に葛藤は存在しないわ。
孤独に歩む 悪を成さず 求めるところは少なく…

バトー:林の中の象のように…

素子:バトー、忘れないで。
あなたがネットにアクセスするとき、私は必ずあなたのそばにいるわ。

事件が解決し、素子がネットの世界に戻る直前のバトーと素子の会話です。
人形使いと融合し、9課や自分の元から去った素子の素直な気持ちをバトーは知りたかったのです。
しかし、素子はすでに人間ではなくなっています。
幸か不幸かなどの、人間特有の価値観や悩み、葛藤からはもう解放されているのでしょう。

万が一、素子が「不幸」と答えていれば、バトーは素子に戻って来いと言っていたかもしれませんが、
素子の答えを聞いて、もうお互いに住む世界が違うのだと悟ったのでしょう。

続けて、冒頭で荒巻部長が出したものと同じ引用を素子も口にしています。
「孤独に歩め」を「孤独に歩む」と言い換えていることから
(もしかしたら聞き違いかもしれませんが「歩む」と聞こえました)
素子は誰とも寄り添ったりせず、ひとりで生きていく決意をしていることをバトーに伝えたのだと思われます。

名言紹介は以上です。

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前作↓

・参考記事

・ことわざ・慣用句の百科事典
https://proverb-encyclopedia.com/robagadabi/

・ちょんまげ英語日誌
http://blog.mage8.com/rongo-11-12

・YATABLOGUE
http://yotablogue.jugem.cc/?eid=61

・そうだ!バトーさんに聞いてみよう!
http://batomotoningyou.cocolog-nifty.com/batousannnikiitemiyou/

・150年目の移民
https://immigrantofthe150thyears.hatenablog.com/entry/2019/02/03/150107

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