『インセプション』ネタバレ解説|ラストの解釈、モルについてなど14の考察 | 映画鑑賞中。

『インセプション』ネタバレ解説|ラストの解釈、モルについてなど14の考察

SF

映画『インセプション』の解説、考察をしています!

他者との夢の共有が可能になった近未来。夢に侵入してアイディアを盗むプロのドム・コブは、アイディアを他者に植え付ける仕事を受けることになった。

原題:INCEPTION
制作年:2010年
本編時間:148分
制作国:アメリカ
監督・脚本:クリストファー・ノーラン

キャスト&キャラクター紹介


(引用:https://www.independent.co.uk

ドム・コブ…レオナルド・ディカプリオ

他人の夢から深層心理に入り込み、アイディアを盗む『エクストラクト』のプロ。
最愛の妻のモルを亡くしてから精神バランスを崩し、仕事に支障をきたしている。
現在コブはアメリカで指名手配中の身で国外逃亡中だが、本人は子ども達と再びアメリカで暮らすことを切望している。


(引用:https://i2.wp.com

サイトー…渡辺謙

石油関連会社の社長。コブの指名手配を取り下げさせる約束をして仕事を依頼する。

Inception: Explained | The World According to Xenocrates
(引用:https://xenlogic.files.wordpress.com

モル…マリオン・コティヤール

死んだコブの妻。コブの心の中で生きていて、夢の世界にのみ登場する。
コブの持つダークサイドが反映されているため、コブに都合の悪いように行動することがある。

 

・その他のキャスト

アーサー…ジョセフ・ゴードン=レヴィット
アリアドネ…エレン・ペイジ
イームス…トム・ハーディ
ユスフ…ディリープ・ラオ
ロバート・フィッシャー・ジュニア…キリアン・マーフィー
ブラウニング(会長秘書)…トム・ベレンジャー
マイルス教授…マイケル・ケイン
マウリス・フィッシャー会長…ピート・ポスルスウェイト
ナッシュ…ルーカス・ハース
タダシ(新幹線の日本人)…タイ=リー・リー
日本人護衛…トオル・マサムネ、ユージ・オクモト
地下の老人…アール・キャメロン
フィリッパ…クレア・ギアテイラー・ギア
ジョーンズ…マグナス・ノーランジョナサン・ギア ほか

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あらすじ前半


(引用:https://www.npr.org

ターゲットの夢の中からアイディアを盗み出す『エクストラクト』のプロ ドム・コブ(レオナルド・ディカプリオ)は、サイトー(渡辺謙)という石油関連会社社長のアイディア泥棒に失敗して逃走を図ろうとしていたところ、サイトーから仕事の依頼を受けた。
それは、ターゲットの夢の中に入り込んで特定のアイディアを植え付ける『インセプション』という作業だった。
サイトーの要望は、彼のライバル会社の会長の息子で次期会長のロバート・フィッシャー(キリアン・マーフィー)が、会長就任後に会社を手放すように仕向けることで、コブの仕事はロバートの深層心理に『会社を確実に手放す動機』を植え付けることだった。
現会長のフィッシャー氏(ピート・ポスルスウェイト)は、すでに高齢で癌を患い、いつ死んでもおかしくない状態だった。

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サイトーは、コブの指名手配を取り消してアメリカにある自宅に帰れるようにしてくれると言うため、仕事を遂行できる自信があったコブはふたつ返事で承諾した。

コブは作戦を完璧に遂行するため、建築学を先行する大学生のアリアドネ(エリオット・ペイジ)、コブの元仕事仲間で、心理戦で相手を欺くのが得意な偽造師のイームス(トム・ハーディ)、天才的な薬の調合師ユスフ(ディリープ・ラオ)を仲間に引き入れた。


(夢の世界で作戦会議 引用:http://hellotailor.blogspot.com

ロバートが抱える父との確執を上手く利用して『親に敷かれたレールの上を歩きたくない』という思いをロバートに抱かせれば会社を手放すはずだと考え、コブは夢の世界の第3階層まで潜って深層心理にインセプションを行うことに決めた。
コブとユフスの説明では、夢の中に入るとユスフの睡眠薬の効果で脳が活性化され、時間の流れが現実世界の20倍になるという。
計画ではロバートを最低でも10時間眠らせる予定のため、第1階層は現実の10時間が約8日、第2階層は約半年、第3階層は約10年の時間を体験することになる。
夢から覚める方法は『キック』と呼ばれ、三半規管に大きな振動を与えれば1つ上の階層に戻ることが出来る。
ロバートは仕事で10時間を超える飛行機移動をすることがあるため、サイトーが航空会社を買収し、6人は綿密な計画と練習を重ねながらロバートが飛行機を予約するのを待った。

その後、フィッシャー氏が死去し、ロバートがフライトの予約を取るという絶好のタイミングが訪れた。
ロバートと同じ飛行機のファーストクラスに乗ったコブ達6人は、ロバートをユスフの薬で眠らせて夢を共有する装置に繋ぎ、それぞれが睡眠薬を飲んで夢の世界の第1階層に入った。


(飛行機に乗ったコブとロバート 引用:https://www.fanpop.com

夢の世界はオフィスビルが並ぶロサンゼルスの路上だった。
ロバートは夢の中にいることに気付いていない。
6人はロバートをタクシーで拉致して目的地の廃工場に連れて行く途中、武装した謎の男達に襲われた。
男達は、ロバートがエクストラクトに対する自衛訓練を受けていたために出現した防御システムだった。
6人とロバートは廃工場に着くも、サイトーが胸を撃たれて重症を負った。

通常なら夢の中で死んだら現実に戻るが、コブは他の4人に内緒でユスフにとても強力な薬を用意させていたので、夢の中で死ぬと現実に戻るのではなく、更に深い階層の『虚無』に落ちてしまい、ちゃんと現実に戻れるかわからない(植物状態になるかもしれない)と打ち明けた。
アーサー、イームス、アリアドネは激怒したがもう後戻りはできず、いつまでも怒っている暇はなかった。

アリアドネがサイトーに応急処置をしている間に、コブ達は計画通りロバートを監禁し、イームスはフィッシャー氏の秘書で会社の実権を握る男ブラウニング(トム・ベレンジャー)に化けて一緒に捕まったフリをして、ロバートに「フィッシャー氏が残した君宛ての遺言状が金庫の中にある。そこには会社を解体しても良いと書かれているはずで、お前は会社を継ぐか潰すか選べる」と告げた。

第1階層での目的『ロバートに父親との関係を意識させる』を達成したので、6人はロバートをバンに乗せて再び睡眠薬で眠らせて、夢のホストであるユスフ以外の6人が眠り、夢の第2階層に入った。


(ホテルで眠った仲間を守るアーサー 引用:https://www.vulture.com

第2階層は高級ホテルの中だった。
ここでの目的は、ロバートに『自分自身の力で何かを始めたい』と思わせることだった。
そのために、イームスが再びブラウニングに化けて裏切り者を演じる予定だったが、ロバートの意識の投影としてのブラウニングが登場し、コブたちに都合良く裏切り者になってくれた。
投影のブラウニングは「ロバートより先に遺言状を見付けて始末するつもりだった。会社は私の全てだ。潰すなど絶対に許さない」と語った。
目的を達成したので、第2階層にアーサーを残し、残る5人(コブ、アリアドネ、イームス、サイトー、ロバート)が第3階層に潜った。

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あらすじ後半


(第3階層 引用:https://adsheehan.files.wordpress.com

第3階層は雪山とシェルターだった。
シェルターの中にはロバートの金庫(深層心理)がある。
コブ達がロバートに金庫を開けさせようとした時、コブの亡き妻モル(マリオン・コティヤール)が現れてロバートを射殺してしまった。
諦めかけた時、「もう一度眠った先の世界にロバートが居るはずだから、キックで助けだせば良い」とアリアドネが提案した。
イームスと瀕死のサイトーを第3階層に残し、コブとアリアドネが眠った。

虚無の世界では、海沿いの都会の街が崩壊を続けていた。
この世界はかつてコブがモルと一緒に作り上げていた世界だったが、現在はコブの精神状態が投影されているせいか崩壊し続けている。
コブは、モルが死んだ経緯を語りながら歩いた。
かつてコブとモルは、夢の共有装置で2人きりの時間を過ごす夢デートに熱中していた時期があった。
2人は夢に深く潜るうちに虚無にたどり着き、何も無かったその世界にお気に入りの場所や思い出の場所を再現した2人だけの町を作り出し、50年以上をそこで過ごした。(現実世界の約2時間半)
ロバートはそろそろ現実世界に戻らなければいけないと感じたが、モルは夢の世界の居心地の良さに囚われて現実に戻ることを拒否した。
ロバートは悩んだ末に、モルの深層心理に『ここは夢の世界だ。現実に戻るには死ななければならない』というアイディアを植え付けた。
ロバートはモルにインセプションをしたのだ。


(モルを抱き寄せるコブ 引用:https://twitter.com

やがてモルは現実に戻りたいと考え直し、一緒に電車に轢かれて現実に戻ったが、現実でもモルはコブが植え付けたアイディアに囚われたままで現実世界も夢だと思いこんでいた。
コブが何度言ってもモルは納得せず、ついにホテルの窓から身を投げて自殺してしまった。
コブは妻殺しの容疑者にされてしまい、逃亡を余儀なくされたのだった。

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その後、2人はビルの一室でモルと遭遇する。
モルがロバートをどこかに隠していたので、コブがモルと話してロバートを出現させた。
その後、モルが憎しみの末にコブをナイフで襲ったので、アリアドネはとっさに銃でモルを撃ち、ロバートをバルコニーから突き落としてキックを与え、第3階層に戻した。
コブは「もうすぐサイトーがこの世界に来る。彼を救ってから戻る」と告げた。
アリアドネは頷くと、バルコニーから飛び降りて第3階層に戻った。

第3階層に戻ったロバートが巨大な金庫を開けると、中はベッドに横たわるフィッシャー氏と小さな金庫があった。
小さな金庫の中には、ロバートが幼い頃に父親と遊んだ風車と遺言状が入っていた。
フィッシャー氏は「私と同じ道を歩もうとするな。自分の道を切り開くんだ」と言い残して息を引き取った。


(ロバートの深層心理 引用:https://listelist.com

その直後、イームスが仕掛けていたキックとなる爆弾が爆発してイームス、アリアドネ、ロバートが第2階層に戻ると、すぐにアーサーが用意していたキックが発動してアーサー、アリアドネ、イームス、ロバートが第1階層に戻ってユスフと合流した。

ロバートは、ブラウニングに化けたイームスに「父の言う通り、会社を畳んで自分の道を探す」と語った。

虚無の世界に残ったコブがモルの死を受け入れると、投影のモルは二度と現れなくなった。
その後、サイトーの居場所を突き止めたコブは、彼にこの世界が夢であることを知らせ、一緒に現実に戻ろうと告げた。

同じ頃、現実世界で10時間以上が経過し、飛行機の客室乗務員がコブ達を起こしに来た。
無事に全員が意識を取り戻し、コブがサイトーに視線を送ると、サイトーは約束を果たすために慌てて携帯電話を取り出した。

飛行機から降りると、仕事を終えた6人はそれぞれの帰路についた。
コブは入国審査を問題なく通過し、大学時代の恩師でモルの父のマイルス教授(マイケル・ケイン)に空港で迎えられて自宅に戻った。
不安になったコブは夢かどうかを確かめるため、いつも持っている小さなコマ(トーテム)を回した。
コブの子どものフィリッパとジェームズが現れると、コブはコマが止まるかどうかを確認するのをやめて笑顔で2人を抱き上げた。

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感想、解説や考察など

SFの世界特有の複雑な設定が背景にあるので、状況を理解するのが大変でごっちゃごちゃになりました。
3つの階層が慌ただしく変わるので、状況の理解も大変でしたが面白かったです。
まだ混乱していますが、情報の整理と疑問点を考察します。

夢の仕組みについて


(引用:https://foryourviewingpleasures.files.wordpress.com

夢の世界の設定をおさらいします。

多層構造
夢は3つの階層に分かれていて、1、2、3と進むにつれて、より深層心理に近づきます。
階層が変わって世界が変わっても、前の階層の世界は消えるわけではなく同時進行しています。
3つの階層とは別に『虚無』という性質の異なる世界も存在しています。(後述)

コブ達がロバートにインセプションするために入った階層と目的を整理します。

■第1階層
ホスト:ユスフ(尿意で雨が降っていた描写から)
場所:ロサンゼルスのオフィス街
目的:ロバートに父親との関係を意識させる
■第2階層
ホスト:アーサー(「夢の主は俺だ」と発言している)
場所:高級ホテル
目的:ブラウニングの裏切りから自分自身の今後の目標を意識させると共に、父の遺言状に執着を持たせる。
■第3階層
ホスト:ロバート(「ロバートの夢に入る」と発言している)
場所:雪山とシェルター
目的:父の遺言通り、ロバートが会社を継がずに自分自身の道を探す決意をさせる。


ホスト

夢の主です。夢の共有は、装置に繋いだメンバーの中の誰か1人の夢に他のメンバーが入る形で共有します。
ホストがいなくなってしまうと世界が崩壊するので、次の階層に行く際はホストが残る必要があります。
例えば1階層から2階層に行った際、1階層のホストはユスフだったので、ユスフは1階層に残って世界の維持とキックの準備をするのが重要な仕事になります。

キック
夢から覚めるための行動です。
眠っているときも三半規管(平衡感覚を認識する器官)は働いていて、平衡感覚が不安定になると目覚めます。
各階層ごとにキックが必要なため、階層に残ったメンバーがそれぞれキックの準備をしていました。

夢の中の死
夢の世界で死ぬと、通常は目が覚めて現実に戻りますが、眠りに入るために薬を使用していて、薬の効果が切れる前に夢の中で死んでしまった場合は虚無の世界に入ってしまいます。

メンバーたちの役割について

彼らの役割についても整理します。

設計師
夢の世界で必要に応じて町の風景や建設物の構造を作る人物です。
ロバートのインセプションの際は大学生のアリアドネが担当しています。
サイトーにエクストラクトを仕掛けた際はナッシュという男が担当していて、彼はサイトーに捕まって始末されてしまいました。

偽造師
夢の世界でターゲットのキーパーソンに化けてターゲットを騙す人物です。
ギャンブル詐欺で生計を立てていたイームスが担当しています。
サイトーへのエクストラクトの際は偽造師らしき人物はいなかったため、仕事の内容によって必要とされないケースもあるようです。

調合師
全員が同時に夢に入るためのトリガーとなる液体の睡眠薬を調合する人物です。
天才調合師のユスフが担当しています。
コブとユスフの会話から、調合師がターゲットの夢に一緒に入ることは稀なケースのようです。
普通は恐らく調合師がコブ達のような仕事に関わることはなく、事前に薬を購入しておくだけなのでしょう。

アーサーの役割
アーサーはコブの相棒のような存在でした。
コブの補佐と、夢のホストになることが多かったようです。
サイトーへのエクストラクトの際も、夢のホストはアーサーが担当していました。
コブは精神不安定だったので、精神状態の安定しているアーサーの夢の中の方が仕事がやりやすいからでしょう。

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夢と調合薬

階層が深くなるほど深層心理に近くなり、アイディアの植え付けをしやすくなりますが、わずかな刺激でも目覚めやすい(もしくは階層が浅くなってしまう)と説明がありました。

コブがユスフに強力な睡眠薬を調合させたのは、確実に第3階層まで行きついて仕事をするために、簡単な刺激では起きないようにするためでした。
コブは強すぎる睡眠薬の危険性を承知していましたが、アーサー達が確実に反対すると分かっていたため、あえて秘密にします。
ロバートが夢を武装していなければ武装集団は現れなかったので、睡眠薬を強力にしていた事を隠し通せていたでしょう。

ユスフがコブの指示通りに強力な睡眠薬を作ったのは、自分の腕に自信があったからと、コブに多額の報酬を約束されていたからです。
そして、コブが仕事の遂行に執着するのは、全てサイトーに約束を果たしてもらい、自宅に帰るためです。
それほどコブは子どもたちに会うことを切望していたということです。

地下で眠る老人達


(引用:https://www.themoviedb.org/

コブがユスフを訪ねた際、ユスフはコブ達に自身の薬の効果を確認させるため、地下で眠る老人達の部屋に案内しました。
あの老人達は全員が夢の共有装置に繋がれていたので、ユスフの調合薬で眠り、1つの夢の中にいたようです。
彼らは恐らく現実世界では動き回れる体力が無いため、夢の中を活動拠点にすることを選んだ老人達です。
1人だけ起きていた老人は彼らを起こす役目のため、眠らずに彼らを見守っていました。
毎日3時間程眠っていると言っていたので、条件通りに夢が現実時間の20倍になるとして、第1階層で過ごしているとしたら、毎日60時間を夢の中で過ごしていることになります。

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夢の中の武装集団

夢の中でロバートが身の危険を感じた直後、周囲に武装した男たちが現れてコブたちを攻撃します。
護衛達は、ロバートがエクストラクトから身を守るために特殊な訓練を受けて夢を武装化していたからだと説明がありました。
男達はロバートの自衛本能が具現化した存在で、ロバートを夢から目覚めさせることが目的なので、彼らの第一目標はロバートを射殺する(目覚めさせる)ことです。
ロバートが殺されると計画が失敗してしまうため、コブ達は必死でロバートを男たちから守りました。

Mr.チャールズ作戦


(引用:https://www.imdb.com

第1階層でロバートの護衛たちに襲われたコブは、第2階層で『Mr.チャールズ作戦』を決行しています。
この作戦は、ターゲットに夢の中にいることをあえて知らせた上で目的を果たす方法を意味しています。

第2階層に行っても護衛たちに邪魔されることを予測したコブは、ロバートにあえて夢の中であることを知らせて混乱させ、自衛意識を弱めて護衛を減らそうとしたのです。
夢の中で夢だと気付くためにはある程度訓練が必要なようで、ロバートは夢の武装化はしていたものの、夢が夢であると自ら気付くほどには訓練されていなかったようです。

夢だと気付くとターゲットが自殺を図ったり世界が不安定になる危険があるため普通なら知らせませんが、ロバートがコブに心を開く必要もあったため、コブ自身がロバートの防衛本能の投影された存在だと偽り味方を装って、ロバートの本物の護衛を『エクストラクトしようとしている何者か(敵)』だと思い込ませています。

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投影という存在

 

夢の世界は構成も人物も、ほとんど全てが夢を見ている人の心境や潜在意識が反映されています。
ここでは場所は置いといて、投影の人物について考えます。
一番重要なのは、投影の人物は『本物』ではないということです。

たとえば、第2階層に登場した『ロバートの投影のブラウニング』は、1階層で起きた誘拐の黒幕が彼自身だと告白していました。
これは、ロバートがブラウニングに対して少なからず不信感を抱いていたからこそ発生した状況で、もしロバートがブラウニングを疑う気持ちが無ければ起こっていません。
言いたいのは、『ロバートの投影のブラウニング』は『ロバートが夢の世界で創造したブラウニング』で、本物のブラウニングではないということです。
実際に現実世界でブラウニングがロバートをどうしようとしているのかは、本物のブラウニングしかわかりません。

ロバートの深層心理の金庫の中にいたフィッシャー氏も、やはり『ロバートが創造した父』であり、本物の父ではありません。
ロバートが現実世界で唯一聞き取れたフィッシャー氏の最期の言葉は『dissapointed(失望)』でした。
ロバートの投影のフィッシャー氏は「親と同じ道を歩むつもりなら失望する。自分の道を切り開きなさい」と改めて最後の言葉を伝えていましたが、あれはあくまでもロバートがフィッシャー氏にかけてもらいたかった言葉で、本物のフィッシャー氏の言葉ではありません。
本物のフィッシャー氏がどういう意味合いでロバートに「失望」が含まれる最期の言葉を残したのかは、彼が亡くなった今、もう知る術はありません。

このようで、夢に登場する人物の行動やアイテムを見るとキャラクターの心理がわかりやすいです。
印象に残っていた投影を書いていきます。

・金庫の中の風車と遺言状
→風車と遺言状の金庫はフィッシャー氏のもので、ロバートの『父に愛されたい』という思いの投影。(父の心の中の金庫にあるのは自分であってほしい)

・第3階層の雪山とシェルター
→ロバートが抱える孤独や寂しさの投影。巨大な金庫やシェルターは、自身の悩みや苦悩を悟られてはならないという思いの強さの投影。

虚無の世界


(引用:https://xenlogic.wordpress.com

『虚無』は日本語字幕で使用されていた表現ですが、原語では『limbo』と言っています。
『limbo』はキリスト教用語で『天国でも地獄でもない場所』を意味します。
日本人にはあまり馴染みのない言葉だと思います。(キリスト教徒であれば別でしょうが)
この他にも『中間』、『忘却のかなた』などの意味があるようです。

『虚無』の世界については『形のない夢』、『潜在意識しか存在しない場所(落ちた者が何か残していれば別)』、と発言があります。
つまり、第3階層より下は虚無の世界で、そこは夢の中で死んで現実に戻れなかった者がたどり着く共通の世界ということになります。
虚無の世界の時間経過については明言されていませんが、単純に4階層目だと仮定すると、虚無は現実世界の10時間が200年になります。

虚無の世界に建物や景色があったのは、コブとモルが虚無の世界に住み着き、50年かけてお気に入りの町を作り上げたからです。

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コブが自宅に帰れなかった理由

コブはモル殺しの容疑者になってしまい、アメリカで指名手配されていました。
理由は、モルが自殺する直前に『夫に命を狙われている』という旨の手紙を弁護士に送っていたからです。
なぜそんなことをしたのか理由は明言されませんが、モルが現実を夢だと思い込んで精神錯乱していた点、コブに一緒に来て欲しがっていた点を考えると、モルはコブに信じてもらえないのを半ば恨めしく思い、『どうせ夢だから』という気持ちで安易に起こした行動だったのかもしれません。

コブの投影としてのモル


(引用:https://www.reddit.com

コブの投影として度々夢に現れたモルについて考えます。
投影の存在は少し上でも説明しているので、被る内容があったらすみません。

アリアドネが『罪悪感がモルを生みだした』と言っていたように、モルはコブが抱える罪の意識が具現化した存在だったようですが、彼女は『勝手に生まれた』のではなく、コブが『生み出そうとして生み出していた』存在だったことが、「似せてみたけど本物とは違う」という発言で発覚します。
モルの死を受け入れられなかったコブは、虚無の世界で街を作ったように、モルも作ったということです。

しかし、投影のモルはやはり『コブが生み出したモル』でしかないことは、彼女の言動全てが物語っています。
コブは本物ではない(モルの魂が宿っているような存在ではない)ことに気付き、たとえ夢の世界でも彼女と生きることはもう不可能だと悟り、モルの死を受け入れ、現実世界で子供たちと生きる道を選んだのではないでしょうか。
子どもと生きることが2番目の選択肢のようになってしまいますが、恐らくコブの優先順位はモルと一緒に生きる道が1番だったはずです。
もし投影のモルが本物の彼女そのものの存在だったとしたら、コブは現実を捨てて虚無の世界に残っていたのかもしれません。

個人的にモルは、映画『マシニスト』のアイバンに似ているな〜と思いました。

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老人になったサイトー


(引用:https://www.imdb.com

虚無の世界にはコブの方が先にいて、サイトーが後から落ちていたはずなのに、コブがサイトーを見つけた時、コブは若いままなのに対してサイトーはよぼよぼの老人でした。

コブが若いままだったのは、恐らくコブが夢を夢だと認識していたからで、サイトーが年老いたのは夢の中で死んでしまったせいで夢を現実だと思い込んでいたからです。
また、コブと再会したサイトーが老人だったのは、モルがロバートを隠していたように、サイトーもどこかに隠していて、隠し場所を教えずに死んで(消滅)しまったからで、コブは彼を見つけるのにそれほどの年数がかかってしまったことを表していたんだと解釈しています。
モルの望みは夢の世界でコブとずっと一緒にいることだったので、コブが現実の自宅に戻れる手段を持っていたサイトーをモルが放置するわけがありません。

隠されていたサイトーを見つけるのに何年もかかったのはまだ理解出来ますが(サイトーの見た目年齢からしても時間がかかり過ぎていた気もします笑)、コブは漂流した挙句偶然たどり着いたみたいになっていた理由がわかりません。
虚無の世界に街を作ったコブなら、交通手段を作ることも可能なはずだからです。
漂流に至った経緯にもう少し説明が欲しかったです。。

 

フィッシャー家の企業

ロバートは深層心理に『親とは別の道を歩む』というアイディアを植え付けられたので、会社から離れるのは確実です。
ですが、サイトーの希望だったロバートの代で会社を畳むまでにはならないんじゃないかなと個人的には思いました。
現在、会社を動かしていたのはブラウニングだったようですし、ロバートが後継者を辞退してブラウニングに譲るのが一番自然な流れになる気がします。
もしかしたらロバートはサイトーも恐れるような経営手腕を持っていて、ロバートさえ抜ければ後は思いのままだと考えていたのなら、サイトーの希望通りになったと言えるんでしょうが、どうなんでしょう。地味に気になります。

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子どもの顔を見ようとしないコブ


(引用:https://visualculture.blog.ryerson.ca

夢の世界で、コブが子どもの顔を頑なに見ようとしない理由を考えてみます。
自信のある答えは思い浮かびませんでしたが、コブはモルを結果的に自殺に追い込んでしまった罪悪感を常に抱き続けています。
『投影のモル』と一緒に現実を捨てて夢の中で暮らすことも検討しましたが、やはり本物じゃないと意味がありませんでした。

そんな中で、コブの唯一の生きる希望(心の拠り所)となるのはフィリッパとジョーンズです。
2人の子ども達だけが、コブが現実世界を生きる意味になります。
コブが夢の中で子ども達の顔を見ようとしないのは、コブを現実とつなぐ唯一の存在の価値(本物の子どもに対する愛と執着)を守りたかったからではないでしょうか。
夢の中に出てくる子供たちは、当然コブの投影の子ども達なので、愛おしい存在です。
可愛い当時のままの子どもたちを直視してしまえば、現実世界を生きてコブの帰りを待っている本物の子どもたちに対する執着(=現実に対する執着)が薄れてしまう可能性があります。
言い変えると現実への執着が薄れることを恐れて、フィリッパとジョーンズの顔を見たくなかったのかな、と解釈しています。

ラストの解釈


(引用:https://www.express.co.uk

ラストはコマが止まるか止まらないか微妙なところで終わるので、『夢のまま』と『現実に戻った』で意見が別れるようですが、私は『現実に戻った』と解釈しています。

数年ぶりに自宅に戻ったコブは、家の中の雰囲気に全く変化が無かったため、不安になってトーテムのコマを回しますが、その直後に現れたフィリッパとジェームズを見た瞬間、コマから目を離してすぐに駆け寄っていきます。

これはコブが夢か現実かを気にすること自体をやめた(放棄した)わけではなく、目の前に現れた子どもたちが成長しているのがひと目でわかり、現実だと確信したからコマが倒れるのを確認する必要がなくなったんだろうと思いました。

コブの記憶の中の子どもたちは最後に見た時の年齢のままも止まっているので、もし夢だったら子どもたちは恐らく最後に見た時そのままですが、彼らがちゃんと成長していたので、コマを見るまでもなく現実だと確信したのではないでしょうか。
それにコマの回り方が夢の中の回り方とは違っていた点と、夢の世界でコブが着けていた指輪が無い点も、現実だと物語っていたように思います。

子どもたちの成長でコマを見るのをやめたと考えたのは、幼い姉弟と、成長した姉弟と、それぞれ別の子が演じていたことにエンドロールを見て知ったからです。
映像だけでは違いが微妙過ぎてわかりませんでした。。

コブの子どもたちを演じたのはラストネームが同じだったので本物の3人姉弟の子役達だったらしく、プチ驚きでした。
ちなみに赤ちゃんのジェームズ役はノーラン監督の実のお子さんだったそうで、こちらも驚きでした。

以上です!お読みくださりありがとうございました(__)

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