映画『鳩の撃退法』ネタバレ解説考察|津田、秀吉、倉田、鳩、偽札、ラストについてなど | 映画の解説考察ブログ - Part 2

映画『鳩の撃退法』ネタバレ解説考察|津田、秀吉、倉田、鳩、偽札、ラストについてなど

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クライムドラマ

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ラスト、秀吉と倉田が一緒にいた理由


©︎2021「鳩の撃退法」製作委員会 ©︎佐藤正午/小学館

津田が見た最初の新聞には『幸地一家が失踪した記事』が載っていて、その後、可奈子(坂井真紀)がまえだに送ってもらった新聞には『ダムから男女の遺体発見』の記事でした。

そしてラスト、津田が見たのは『幸地と倉田』でした。
恐らくダムで見つかった男女の遺体は晴山と奈々美で、幸地は倉田が2人を殺すのを止められなかったけれど、茜だけは許してもらえたのでしょう。

幸地が倉田と一緒に居たのは、これまで通り倉田と生きる道を選んだのか、逃げられないという諦めからなのかはわかりませんが、表情からすると後者なのかもしれません。

 

津田が小説にした結末と、そうした理由

鳩の撃退法
(引用:https://www.cinemacafe.net

津田が小説に書いたのは、晴山が暴走している隙に、幸地は奈々美と茜を連れて倉田一味から逃亡したという結末でした。

これは、津田が小説の帯『別の場所でふたりが出会っていれば 幸せになれたはずだった』を見た時の「だったら別の場所で出会わせてやれば良い。小説家に出来るのはそれくらいだ」という発言に由来しています。

カフェで『ピーターパンとウェンディ』をパラ見した幸地が『ウェンディを助けるために手を叩く』という描写から「今度、どうしようもなくなった時は手を叩いてみる」と言っていたのを小説の中で実現し、幸地が手を叩いた結果、奇跡が起きて3人とも助かったというラストにしました。
津田は小説の中で幸地一家を幸せにすることが、幸地に出来る唯一の応援だったのでしょう。

上記は津田が幸地秀吉に対して友情のような思い入れがあった前提で考えていますが、よくかんがえたら津田と幸地はたった1回会話しただけの薄い関係です。

もし善意からではなく全て津田自身のための結末だったとしたら、それは本当に推理した内容とは違う結末を書くことで、倉田が津田に抱く「真実を知っているのでは?」という疑いを晴らしたり、幸田にとって嬉しい結末にすることで倉田と近い存在である幸田を味方につけて、いざとなったら幸田が倉田を止めてくれるか、津田を助けてくれる効果を期待してのことだったかもしれません。




つがいの鳩が飛んでるのを見なかったか?

津田が大河内(浜野謙太)に本と金の入ったキャリーケースを渡した時、津田は大河内を通して倉田から「つがいの鳩が飛んでるのを見なかったか?」と聞かれました。

後に鳥飼の推理で『鳩=ニセ札』だろうということで落ち着いていましたが、この場面であえて倉田がニセ札を鳩に例えて聞くのは違和感を感じますし、遠回し過ぎて意味が通じません。

鳩=偽札という推測以前に、鳩には一般的なイメージとして『平和の象徴』、つがいの鳩には『カップル』の意味があります。
なので、直感的には『つがいの鳩=奈々美と晴山』となり、そうなると倉田が聞きたかったのは『奈々美と晴山を見たか?』という質問になり、意味合いとしては『幸地一家失踪事件の真相を知ってるならお前も殺す』だったのではないかと個人的には思います。

 

津田はなぜ幸地秀吉に話しかけた?

鳩の撃退法
(引用:https://cinecitta.co.jp

そもそも、なぜ津田はレストランで幸地に話しかけたのでしょう。

恐らくですが、幸地は帰宅した時に「本、やっと話回り始めた」と発言しています。
これは、幸地も駆け出しの小説家であり、彼が持っていた小説『蝶番』は幸地自身が執筆した本だったことがわかります。

津田は幸地をレストランで何度も見かけていたようなので、監察して同業者と勘付いて話してみたくなったのではないでしょうか。
あえて幸地が「俺も小説家だ」と言わないし、津田が「君も小説家だろ」と言わなかったのは、幸地はまだ小説家を名乗れる程の業績も知名度も無かったからで、津田自身もそれを察していたからなのでしょう。

 

ダムで発見された男女はなぜ殺された?

可奈子が富山から取り寄せた新聞記事には、ダムで男女の遺体が発見されたと書かれていました。

それはほぼ間違いなく幸地の妻 奈々美と不倫相手の晴山の遺体です。

2人が殺されてしまった理由は、倉田健一郎が『幸地に家族は必要ない』と判断したからです。
倉田も幸地もこの町で生まれ育った孤児でした。
2人の年齢は明かされませんが、倉田演じる豊川悦司さんは撮影当時58~59歳、幸地演じる風間俊介さんは37~38歳なので、年の差からしても幸地は倉田を親代わりに育ってきたことがわかります。

ニセ札を世に出してしまったのは幸地のミスですが、倉田は幸地が仕事出来なくなった原因になった奈々美と晴山を罰しました。

倉田は冷酷な男でしたが、倉田自身と同じ境遇に育った幸地をある意味家族のように思っていて、仲間意識や情から捨てられなかったのではないでしょうか。
情抜きで考えても、幸地は真面目で賢く仕事も出来るタイプで倉田にとって幸地が理想的な部下だったことも彼が生かされた理由です。

「家族が居ないからこそ家族が欲しい」と言っていた幸地でしたが、いざ家族を持つと妻に不倫されまくってなぜ離婚しないのか不思議な程でしたし、幸地にはもっと良い女性が居る気もしますが、『家族』に固執する幸地にとって離婚はまた家族を失うことになるので勇気が出なかったのかもしれません。

 

津田がニセ札を燃やしているシーンは何?

津田が駅の券売機で贋札かどうかを確認した後、お金を燃やしているシーンがあります。

その後ニセ札は3枚ともありますし、3億円も寄付金財団の男(濱田岳)にちゃんと渡っているので、あのニセ札を燃やすシーンは津田と鳥飼が小説の構想を練っている時に出てきたたひとつのアイディアで、ただの想像だったと思われます。

 

タイトル『鳩の撃退法』

津田はラストで幸地が無事でいて、倉田と一緒に居るのを見た直後にタイトルを『鳩の撃退法』にすると決めました。

津田は幸田が生きていたことを確認して『男女の遺体』が晴山と奈々美だったと確信し、上に書いたことも加味して幸田が倉田から逃げて幸せになるラストにしようと決めたのでしょう。

小説家の津田に出来ることは、小説を使って倉田を遠ざけることです。
タイトル『鳩の撃退法』は津田にとって『倉田の撃退法』を言い変えたものであり、倉田と幸地に絶対に読んでもらえるようなタイトルとして津田が思いついたいわばキャッチコピーだったのではないでしょうか。

以上です。読んで頂きありがとうございました。
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映画『鳩の撃退法』公式サイト

感想などお気軽に(^^)

  1. 匿名 より:

    3000万円を燃やすシーンは編集者の女性による小説の展開予想ですよね
    すぐ否定されてますけど

    • mofumuchi より:

      匿名 さん
      微修正しました。ご指摘ありがとうございました(__)

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