宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」の『嵐の後は死後の世界説』『ポニョのその後は』『フジモトの計画とは?』『巨大な月』について書いています。
鑑賞済みの方向けの記事です。まだ見ていない方はネタバレにご注意ください。
制作年:2008年
本編時間:101分
制作国:日本
監督・脚本・原案:宮崎駿
「武部聡志プロデュース『ジブリをうたう』コンサート」が≪U-NEXT≫で配信中!31日間無料キャンペーン実施中。
※このページの情報は2025年8月時点のものです。最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。
嵐の後の世界=死後の世界説
© 2008 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NDHDMT
ポニョが起こした嵐で島が海に飲み込まれて、翌日には宗介の家以外はすべて海に沈んだ状態になっています。
嵐の翌日の世界は、まさに『死後の世界』そのものに見えます。
宗介とポニョが船で出てから最初に出会った、赤ちゃん連れの夫婦のお母さんが「避難した」と言っている割には服装がやけにお洒落だったり、
その後に会った大人たちも、呑気に宗介とポニョを応援しています。
ちなみに赤ちゃんにポニョがサンドイッチをあげるシーンは、今まで他人のことは考えず自分の願望に忠実だったポニョが宗介と過ごす中で他者に対する思いやりを持つようになっているのが印象的です。
話を戻します。
嵐の翌日が死後の世界に思える極めつけは『ひまわりの家』の老婦人たちが歩けるようになっていることです。
「あの世も良いわね」というニュアンスの発言までしています。
歩けなかった老人が走れるようになるのは、一応「魔法の力」という理由付けはありますが、死後の世界かと思ってしまいますよね。
走れるのがひまわりの家にいた人たち(グランマンマーレの魔法で守られていた範囲)だけならまだわかりますが、
フジモトから逃げて東屋に居たトキさんも歩いていましたし。
本作のプロデューサーである鈴木敏夫氏は、本作を「生と死の物語」ともコメントしていたので、
嵐の後の世界=死後の世界という解釈は間違っていないんだと思います。
「生」を表していたのは、宗介とポニョがトンネルに入る部分になると思われます。
トンネルは一般的には「産道」の暗喩ですが、
その後に行くクラゲで囲まれた海の中のひまわりの家が子宮を連想させるので、ここではトンネルは卵管だと考えるのが妥当かなと思います。
そしてひまわりの家から出てきた後が、生まれ変わった宗介たちということになります。
本作は子どもにとっては理屈抜きで、ただ純粋に「海の世界」や「宗介とポニョの冒険」を楽しめる作品として作られている一方で、
死後の世界を描いている作品でもあるようです。
ダークファンタジーの要素もあり、純粋に可愛いお話に見える面もある不思議な作品です。
フジモトの計画はどうなった?
(魔法の液体の便を持つフジモト 引用:https://twitter.com)
ポニョの父親フジモトが金庫の中の井戸に魔法の液体をためて「これがいっぱいになれば海の時代が来る」という発言をしていました。
フジモトは人間の時代を終わらせて、海の時代を再来させることを目指して魔法の液体を日々精製していたようです。
フジモトが溜めていた魔法の液体はポニョが海に拡散してしまい、計画は中途半端に遂行されて失敗しています。
この液体の効果についてはほとんど語られませんが、既定の量を溜めてから海に放てば強力な魔法の力で時間をデボン紀まで遡らせる力があったのでしょう。
逆に言えば、魔法で時間を遡って人間が地球を汚した過去を無かったことにするしか、地球環境を綺麗にできる方法が無かったのかもしれません。
巨大な月について
島が月に近づいている(月が大きくなっている)場面がチラッと出てきてフジモトが慌てていますが、月に関しては説明がなさ過ぎて私個人の感想になってしまいますが、
月に近づいているのは島の住民が「死」に近づいていることを表していて、
グランマンマーレの魔法のおかげで死を回避した(もしくは生まれ直した)ということなのかなと解釈しています。
ポニョの本名ブリュンヒルデの由来とポニョのその後
ポニョの本名である『ブリュンヒルデ』という名前は、北欧神話に登場する戦の神の1人であるブリュンヒルデ(ブリュンヒルド)から来ています。
ブリュンヒルデの神話をざっくり紹介します。
神ブリュンヒルデは戦争で死んだ兵士の魂を別世界にある「神の世界の戦場」に連れていく役割を担っていました。
ある日、ブリュンヒルデは人間の男性と恋に落ちて結婚の約束をしますが、
婚約者の男は王族の人間に薬を盛られて記憶喪失になり、記憶が戻らないまま国王の妹と結婚してしまいます。
その後、国王が「ブリュンヒルデを妻に欲しい」と言いだして、元婚約者は国王に協力してブリュンヒルデと国王は結婚します。
元婚約者が記憶喪失になっていることを知らないブリュンヒルデは、権力欲しさに元婚約者に裏切られたのだと思い、怒りから国王をそそのかして男を処刑してしまいます。
元婚約者が処刑された直後に真相を知ったブリュンヒルデは絶望し、元婚約者を火葬している炎に飛び込んで自殺したという話です。
かなりざっくりしか書いていませんが、詳細はかなりドロドロな悲劇なので気になる方は書籍など読んでみてください。
こんなドロドロの逸話のあるブリュンヒルデをポニョの本名にしたのは、どんな意味があるんだろうと考えてしまいます。
宮崎監督は「ポニョはハッピーエンドだが、本当にハッピーかどうかは見る人によって違う」とコメントしています。
宗介とポニョのその後は、このブリュンヒルデの神話に沿うことになるのか、
もう一つの原案となるアンデルセン童話「人魚姫」も、王子は別の女性と恋に落ちて人魚姫は泡になってしまうお話なので、
どちらにしてもポニョと宗介は結ばれず、ポニョは消えてしまう未来が待っているのかと思うと切なくなってしまいます。
以上です!読んで頂きありがとうございました。
この記事がお役に立てていたらハートボタンを押してくださると嬉しいです(^^)
「武部聡志プロデュース『ジブリをうたう』コンサート」が≪U-NEXT≫で配信中!31日間無料キャンペーン実施中。
※このページの情報は2025年8月時点のものです。最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。
・「崖の上のポニョ」のその他の記事
・参考サイト様
Light in June:「ポニョ」インタビュー(宮崎駿)
感想などお気軽に(^^)
サイトを見て納得がいきました
月が降りて皆死んでしまうなら、月経を表してる(生理)のではないでしょうか
全てはグランマンマーレのお腹の中のお話で子宮(クラゲ)や卵管(トンネル)、住人は達とコースケが精子、ポニョが卵子
コースケ(精子)がポニョ(卵子)を連れてクラゲへ(子宮)に到着(着床)→生まれ変わって人間にって事なのかなと思いました