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聖杯の正体とシオン修道会が守っていたもの
シオン修道会が守っているものは、聖杯と機密文書とイエスの末裔でした。
聖杯の正体について映画での説明をまとめると
・聖杯の情報が隠されているとされるダ・ヴィンチの絵『最後の晩餐』では、イエスとイエスの右隣に座っているマグダラのマリアらしき人物の間の不自然な空間が、女性を意味する『V』の形になっている。
・マグダラのマリアはイエスの妻であり、イエスの子を宿している。
これらの証拠から、イエスの子を宿したマグダラのマリアが王家の血脈(子孫)を宿した聖杯だという結論に至りました。
マグダラのマリアはイエスの弟子ということ以外は正体がよくわかっていない人物ですが、実はイエスの妻で、イエスとの間に子どもがいたという説や、娼婦だという説があり、カトリック教会ではマグダラのマリアを「罪深い女」としています。
映画では機密文書はロスリン礼拝堂の地下に、聖杯であるマグダラのマリアの遺体はルーブル美術館の地下に安置されていました。
キー・ストーンのパスワード
キー・ストーンは、バラの紋章が描かれた木の小箱に入っていた鍵付きの石『クリプテックス』のことです。
ラングドンが木の箱から見付けたメモには以下の文章がありました。
彼の者の労苦の果は神の怒りを被る
その墓を飾るべき球体を探し求めよ
それは薔薇の肉と種宿る胎とを表す
1行目の『教皇の葬った騎士』をテンプル騎士団だと考えたラングドン、ソフィー、リーは、テンプル騎士団の幹部陣が祭られているロンドンにあるテンプル教会に行きます。
しかし、テンプル教会にあったのはお墓ではなく彫像でした。
その後、教会から逃げてバスに乗ったラングドンとソフィーは、若者から携帯を借りて『ポープ(教皇)』を検索すると、アレクサンダー・ポープという人物名がヒットしました。
アレクサンダー・ポープはシオン修道会の総長だったアイザック・ニュートンの葬儀を執り行った人物です。
ヒントのメモにあった『ポープ』は教皇という意味ではなく、人物名でした。
ラングドンとソフィーはニュートンの墓があるウェストミンスター寺院へ行きます。
ウェストミンスター寺院は戴冠式などの伝統行事が行われるほか、歴代の王や女王、政治家などイギリスの要人が埋葬されている寺院です。
ラングドンは2~4行目の『彼の者の労苦の果は神の怒りを被る その墓を飾るべき球体を探し求めよ それは薔薇の肉と種宿る胎とを表す』とニュートンとを関連付けて考えた結果、『APPLE(りんご)』がクリプテックスを開けるキーワードだと気づきました。
ニュートンが万有引力の法則に気付いたのはリンゴが木から落ちるのを見たのがきっかけだったという逸話は超有名ですし、リンゴはバラ科の植物です。
リンゴの丸いフォルムは見ようと思えば妊娠中の女性のお腹を思わせますし、リンゴの実に種が入っている点でも4行目の文章と繋がります。
3行目の『墓を飾るべき球体』は、ニュートンの墓にはリンゴを飾ってやるべきだと思うが、飾られていないというソニエールの個人的な感想混じりのヒントだと思われます。
ちなみに原作小説ではクリプテックスは入れ子構造になっていて、1つ目のクリプテックスはギリシャ語で『英知』を意味し、ソフィーの名前と響きが似ている『ソフィア(SOFIA)』がパスワードでした。
1つ目のクリプテックスを開けると中から一回り小さなクリプテックスが出てきて、そちらが『APPLE』で開く仕掛けになっていました。
クリプテックスの中身
クリプテックスの中に入っていた紙には以下の文章がありました。
匠の芸術に囲まれて
剣と杯がそれを守る
それは輝く星空の下で眠りにつく
ラングドンとソフィーは『ロスリン』という文字から、スコットランドにある『ロスリン礼拝堂』に行きます。
ロスリン礼拝堂はテンプル騎士団設立初期の総長だったセントクレアが建てた礼拝堂です。
ラングドンとソフィーは礼拝堂の地下室で歴代総長に関する秘密資料が保管されているのを見つけました。
そしてそこにあった新聞記事から、ソフィーの元々の苗字がサン=クレールだったことや、報道ではソフィーも事故で亡くなったことにされていたことがわかります。
サン=クレールはイエスとマグダラのマリアの血族を表す苗字であり、ソフィーはイエスの末裔でした。
ソフィーの死が偽装されているところを見ると、カトリック教会はソフィーの一家を事故に見せかけて暗殺しようとしたのです。
ソニエールは本当の祖父ではなく、シオン修道会の方針で守られて育てられたのです。
なお原作小説ではソニエールはソフィーの本物の祖父であり、ソフィーが養子だったという設定は映画オリジナルです。
また、映画ではソフィーの弟は登場しませんが、原作小説ではソフィーと同じく世間的に死んだことにされただけで実際には生きていて、ロスリン礼拝堂でソフィーと再会しています。
ロスリン礼拝堂にはマグダラのマリアの棺が置かれていたらしき場所はあったものの、そこに棺はありませんでした。
パリのホテルに戻ったラングドンは、『ロスリン』は『ローズ・ライン』でもあったのではと考えました。
ロスリンのつづりは現在は『ROSSLYN』ですが、クリプテックスに入っていたメモには古いつづりの『ROSLIN』であり、その語源は『ROSELINE』だからです。
ラングドンはたまらず外に出て、ルーブル美術館に辿りつきました。
『古のローズ・ライン』の上に建ち『匠の芸術』『剣と杯』がある場所はそこしかありません。
聖杯であるマグダラのマリアの遺体はルーブル美術館の地下に入れられていて、館長だったソニエール自らが守っていたのです。
リー・ティーヴィング(イアン・マッケラン)の正体は?
ラストで黒幕がリーだったことが明らかになりますが、説明がサラッとし過ぎていてハテナが残るところが多かったので原作小説に書かれている内容とあわせておさらいします。
映画と小説の内容がごっちゃになっているかもしれませんがご容赦ください。
まず、リーは謎の人物だった『導師』の正体でした。
リーはシオン修道会が隠していた秘密を世間に公表するためにオプス・デイを利用したのです。
リーは潤沢な資金を利用してシオン修道会に関する情報を集め、ソニエールら守護者4人を特定して彼らの自宅と勤務先を盗聴しますが、キー・ストーンの在りかは掴めずにいました。
同じころ、オプス・デイは近いうちに教皇庁の管轄から外されると内示を受けて代表のアリンガローサは危機に立たされていました。
オプス・デイという組織は教皇の名の下にあらゆる特権を行使できていたので、教皇庁から外されることは特権のはく奪を意味します。
アリンガローサのピンチを知ったリーはすかさず匿名で連絡を取り、『導師』と名乗って『シオン修道会の秘密の奪還計画』を持ち掛けました。
シオン修道会の秘密をオプス・デイが手に入れれば、秘密を明るみにされると困る教皇はオプス・デイに従わざるを得なくなります。
リーはアリンガローサにシオン修道会の守護者4人の情報と暗殺計画を教え、計画を実行するタイミングを見計らっていました。
そしてある日、リーはソニエールがラングドンと会う約束をしたことを盗聴で知ります。
ソニエールがラングドンに会うことにした理由は恐らく、出版社が勝手にソニエールに送ったラングドンの原稿がシオン修道会の秘密に触れていたため、ラングドンに直接会って口止めしようとしたのです。
ラングドンがソニエールの頼み通りに本の内容を変えれば、また秘密は秘密のままになってしまいます。
リーは怒り、ラングドンとソニエールが会うのを阻止するためにも暗殺計画を実行することにしました。
アリンガローサはシラスに守護者4人を殺させてキー・ストーンを追わせます。
リーの当初の計画では、ソニエールがソフィーに何らかの形でキー・ストーンを託すことは予想がついたので、ソフィーがキー・ストーンを手に入れたらシラスに奪わせて、シラスからリーが奪う(レミーに奪わせる)予定でしたが、ソニエールは死の間際にラングドンの名前を残して2人を引き合わせました。
ラングドンを邪魔だと判断したリーは、アリンガローサ経由でファーシュ警部に「ラングドンを逮捕しろ」と命じます。
ラングドンとソフィーはリーの思惑通りにキー・ストーンを持ってリーの屋敷に現れたので、リーはこの時にキー・ストーンを奪おうとしていましたが、予想以上に開錠が難しかったため、リーは一旦ラングドンとソフィーを追っ手から守って時間を稼ぎ、2人がクリプテックスを開けるのを待つことにしました。
クリプテックスが開くまでの間、シラスが通報されたことでアリンガローサとファーシュがリーに利用されていたことに気付き、ファーシュがリーを追いはじめました。
リーは口封じのためにレミーを殺し、ラングドンの仲間のフリをする時間もなくなったため、脅してクリプテックスを開けさせようとします。
リーはクリプテックスの中身を手に入れ次第逃亡するつもりでしたが、間に合わずファーシュに逮捕されました。
ちなみに、逮捕された後のリーがひどく興奮して騒いでいたのは、心神喪失による無罪放免を狙って既に演技を始めていたからかもしれないとされています。
カトリック教会とマグダラのマリア
カトリック教会は創立当初から男尊女卑の傾向が強く、女性を神聖視したり、マグダラのマリアがイエスの妻であることを暗示する絵画や文献を否定しています。
男性優位のカトリック教会において、イエスがマリアを後継者にしていたことや、マリアには子どもがいた(しかも女の子)という証拠はカトリック教会の『イエスは神である』という根本概念を覆し存続を揺るがします。
そのため、カトリック教会はマグダラのマリアの力から身を守るために、彼女に『罪深い娼婦』というイメージを定着させました。
上の項で五芒星が角度によって意味が変わると言いましたが、星の頂点が真下に来る五芒星が悪魔のシンボルのイメージになったのも、女性を虐げようとするカトリック教会が印象操作したと噂されています。
悪魔のシンボルは女性を意味する『V』の部分が真上にあり、男性を意味する『Λ』は真下になります。
五芒星がこの角度になることをカトリック教会はひどく嫌いました。
女性のシンボルが真上になることは女性が権力を持つことを想像させるからです。
カトリック教会は『Λ』が真上にある角度の五芒星(男性が頂点に立つ世界)こそが正しいキリスト教の姿であるとして、『V』が真上にある五芒星を悪魔の象徴に貶めたのです。
また、マグダラのマリアが娼婦だという噂そのものが、カトリック教会が流した噂である可能性もささやかれています。
カトリック教会は女性が権力を持つことを嫌い、古くから女性を貶めて男性優位になる社会を作ろうと暗躍してきたとされています。
その一環が、リーが持っていたカトリック教会出版の雑誌『マレウス・マレフィカルム(魔女の鉄槌)』だったり、中世のヨーロッパで行われていた魔女狩りなどです。
ソフィーが目撃したソニエールの儀式は?
ソフィーがソニエールと絶縁したのは、ソニエールが怪しい儀式をしていたのを目撃したことが原因でした。
その儀式では、数人の男女が仮面をつけてローブを着て立っていて、中央ではソニエールが女性とセックスしていました。
ソニエールが行っていたのは『ヒエロス・ガモス(聖なる婚姻)』と呼ばれる儀式です。
同じ儀式が描かれる映画はスタンリー・キューブリック監督の『アイズ・ワイド・シャット』が有名です。
ヒエロス・ガモスは元々性交は男女が神に触れるための営みであり、男性は神秘的で崇高だと感じられる性交によって神の知恵を授かることが出来るとされていました。
瞑想の達人はセックスに頼ることなく精神的オーガズムの境地に至るとも言われています。
ソフィーのように知識の無い人が儀式だけを見てしまうと怪しく汚らわしい儀式に見えますが、ヒエロス・ガモスは歴史ある神聖でおごそかな儀式だったのです。
セックスが神と交流できる手段だという概念は、『カトリック教会を信じることが神との唯一の接点である』と定めていた教会にとっては脅威でしかありません。
そこでカトリック教会はセックスを罪深く忌まわしい行為とし、信者には『性欲は悪魔の誘惑である』と教えて禁欲を命じ、神父が結婚を許されなかった理由にもなっています。
ラングドンはなぜソニエールに選ばれた?
ラングドンとソニエールはほぼ面識がなかったはずなのに、ソニエールがダイイングメッセージにラングドンの名前を書いたのはなぜだったのでしょうか。
映画で明確な答えは描かれませんが、原作小説にはヒントになる情報が載っていました。
ラングドンは女神崇拝の歴史に関する本を執筆していて、原稿を出版社に送っていました。
ラングドンの研究はシオン修道会やダ・ヴィンチの絵画についても言及していたので、出版社は意見を求めるためにラングドンの原稿をルーブル美術館の館長であるソニエールに送っていたのです。
ラングドンの原稿はソニエールが「信頼できる」と思えるような内容だったため、ソニエールはラングドンを信用しました。
ソニエールは死の間際、ソフィー1人だけではオプス・デイに命を狙われながらキー・ストーンの秘密やソフィーの家族についての秘密を解き明かすのは難しいだろうと考え、ソフィーが知るべき情報を持っていたラングドンがナイト(騎士)になってくれることを信じて2人を引き合わせたと思われます。
ちなみに原作小説ではラングドンとソフィーは恋愛関係になり、ラングドンもイエスの家族になってシオン修道会の一員になる未来が暗示されます。
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