映画『ダ・ヴィンチ・コード』の解説・考察をしています!
ダイイングメッセージの意味、ラングドンが名前を書かれた理由、組織の対立構造、クリプテックスの解説、リーの正体、マグダラのマリアなどを書いています。
鑑賞済みの方のための記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。
制作年:2006年
本編時間:149分
制作国:アメリカ
監督:ロン・ハワード
脚本:アキヴァ・ゴールズマン
原作小説:ラングドンシリーズ『ダ・ヴィンチ・コード』ダン・ブラウン著
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キャスト紹介
ロバート・ラングドン…トム・ハンクス
ハーバード大学に勤める大学教授。専攻は『宗教象徴学』。
ルーブル美術館の館長が殺され、フランス警察から捜査協力を求められて同行するが、容疑者にされていると気付き逃走する。
協力者のヌブー刑事と共に真犯人と目的を捜査する。
ソフィー・ヌブー…オドレイ・トトゥ
フランス警察 暗号解読課の女刑事。
殺された館長ソニエールの孫娘。
ファーシュ警部がラングドンを犯人と決めつけていると知り、逃亡を助ける。
ファーシュ警部…ジャン・レノ
フランス警察の警部。
逃げたラングドンとソフィーを追う。
アリンガローサ…アルフレッド・モリナ
ローマを拠点とするカトリック教会の保守派組織『オプス・デイ』の代表。
信者のシリスを使ってシオン修道会が守っている秘密を破壊しようとする。
リー・ティーヴィング…イアン・マッケラン
ラングドンの友人の聖杯オタク。大富豪。
ラングドンとソフィーが聖杯の謎を解き明かすために助けを求める。
シラス(暗殺者)…ポール・ベタニー
レミー(リーの護衛)…ジャン=イヴ・ベルトルート
コレ警部補…エチエンヌ・シコ
ヴェルネ(銀行の人)…ユルゲン・プロホノフ ほか
あらすじ紹介
舞台は2006年のフランスです。
ルーブル美術館の館長ジャック・ソニエールが何者かに銃殺されました。
ソニエールは閉館後の美術館で撃たれてから死ぬまでの間に、別の部屋に移動してダイイング・メッセージを残していました。
ハーバード大学で宗教象徴学を教えるラングドン教授(トム・ハンクス)は、フランス警察から協力要請を受けてルーブル美術館に行きます。
ラングドンはソニエールが殺された夜に彼と会う約束をしていましたが、ソニエールは約束の場所に現れなかったという経緯がありました。
ラングドンはフランス警察のファーシュ警部(ジャン・レノ)に案内されてソニエールの死体と現場を見ると、ソニエールは全裸になって胸に血で五芒星を描き、手足を広げてダ・ヴィンチの『ウィトルウィウス的人体図』と同じポーズをとって死んでいました。
床にはブラックライトペンで一見意味不明な数列とメッセージが残されています。
ラングドンが戸惑っていると、フランス警察の女性刑事ソフィー・ヌヴー(オドレイ・トトゥ)が現れました。
ラングドンはソフィーに「ファーシュはあなたを逮捕しようとしてる 詳しいことはトイレで話しましょう」と言われ、半信半疑でトイレに行きます。
ヌヴーは、ソニエールのダイイングメッセージの最後の行にはラングドンの名前が書かれていたが、ファーシュは写真を撮って最後の行を消してからラングドンを呼びよせたと言います。
ファーシュは最初からラングドンを捜査協力者としてではなく容疑者として犯行現場に呼び、ラングドンに自白に近い証言をさせようとしていたのです。
このままではラングドンは冤罪で逮捕され、冤罪が認められるまで長期間拘束されるか、最悪の場合は冤罪が認められられず殺人者にされてしまう可能性もあります。
ラングドンはソフィーを信じて逮捕の手から逃れることに決めました。
解説・考察・感想など
キリスト教や芸術作品の隠喩にまつわる伝説や仮説がうまく繋げてあり、キリスト教に馴染み深いアメリカ、イギリス、フランスなどでは大ヒットした映画ですが、日本ではキリスト教の知名度は高いもののそんなに身近ではないため難しく感じた方が多いのではないでしょうか。
映画を理解しながら見るには原作小説を読んでおく必要があると思います。
ここでは映画の要になった組織のおさらいや、殺されたルーブル美術館の館長ソニエールのメッセージの解説を書いています。
シオン修道会とは?
ソフィーの祖父ソニエールが代表を務めていたシオン修道会をおさらいします。
シオン修道会はキリスト教に関する重大な秘密を守っているとされる秘密結社で、結成は11世紀ごろまで遡り、歴代の総長には著名人物が名を連ねていたとされる組織です。
映画では、このシオン修道会が実在していた前提で、ダ・ヴィンチも過去にシオン修道会の会長だったとして物語が進みます。
そしてテンプル騎士団は、シオン修道会が作った聖者の集団です。
現実としてのシオン修道会という組織は、匿名で寄付された機密文書がフランス国立図書館に保管されていて、その中には600年代にキリスト教会と密接な関わりがあったフランス王家の貴族ダゴベルト家の隠された血筋にプランタール一族の名前がありました。
1962年にシオン修道会発足の届け出をしたプランタール氏がダゴベルト家の末裔とされていましたが、プランタールは1990年代にインサイダー取引関与の疑いで家宅捜索されたとき、シオン修道会関連の文書が大量に発見されました。
取り調べでプランタールは文書の捏造を認め、シオン修道会そのものは最初から存在せず、プランタールの巧妙な偽装だった可能性が濃厚とされています。
オプス・デイとは?
アリンガローサ(アルフレッド・モリナ)が代表を務めていたオプス・デイはキリスト教のローマ・カトリック教会の組織のひとつです。
実在する有名な組織のため、この映画では悪い組織のように描かれていたことでも物議をかもしました。
ちなみに『オプス・デイ』はラテン語で『神の御業』という意味で、彼らはカトリック教会の立場を守るために行動します。
映画の中でのオプス・デイはカトリック教会を守るためにソフィーのような『イエスの血を引く者』を見つけては暗殺し、シオン修道会が守っている秘密を破壊しようとしてきました。
ジャック・ソニエールのダイイングメッセージの意味
ルーブル美術館の館長であり『宝物』の守護者の1人だったジャック・ソニエールは、シラスに撃たれた後でソフィーとラングドンにダイイング・メッセージを残して亡くなりました。
ソニエールのダイイング・メッセージが何を伝えようとしていたのかを整理します。
五芒星
まず、ソニエールは自ら裸になって胸に五芒星を描き、ダ・ヴィンチの『ウィトルウィウス的人体図』と同じポーズをとっていました。
正しい五芒星は星の頂点が上にありますが、逆さ(真下)にある五芒星は悪魔崇拝(サタニズム)のシンボルとして有名です。
ラングドンいわく元々五芒星は女神のシンボルだったり女性の神聖さを称えるマークであり悪魔とは無関係だったようです。
五芒星が悪魔のシンボルにされた理由は後述します。
ソニエールが五芒星を胸に描いたのは、アリンガローサの組織オプス・デイがソフィーを殺そうとしていることや、その理由がカトリック教会が古くから女性を虐げ権力を持たせぬようにしてきた理由と同じであることを暗示していました。
ソニエールが全裸で横たわったのには大きく2つの意味があり、1つは体でも五芒星を模して二重にすることでメッセージの意味を強めているのと、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品に秘密が隠されていることをラングドンとソフィーに知らせるためです。
またこれは原作小説からの情報ですが、ダ・ヴィンチの『ウィトルウィウス的人体図』はソフィーのお気に入りの絵画でした。
ソニエールはシラスに襲われる数日前から危険を察知していて電話と手紙でソフィーに危険を知らせようとしていましたが、ソフィーはソニエールを避けていたため連絡をことごとく無視していました。
ソニエールはソフィーの気を少しでも引くために好きな絵の真似をしたことと、好きな絵を覚えていると証明することで愛情も示していたと思われます。
数列と暗号
ソニエールが書き残していたメッセージは以下の文章でした。
O, Draconian devil! おお、ドラコンのごとき悪魔め!
Oh, lame Saint! おお、役に立たぬ聖人め!
(P.S. Find Robert Langdon) 追伸 ロバート・ラングドンを探せ
1行目の数字はフィボナッチ数列の順番を入れ替えたもので、キー・ストーンが保管されていた銀行の暗証番号でした。
フィボナッチ数列は、左から3つ目以降の数字はどれも、前2つの数字を足した合計になる規則を持つ数列のことです。
なので、数字の正しい順序は『1-1-2-3-5-8-13-21』になります。
2行目と3行目はアナグラムになっていて、アルファベットの順番を入れ替えると別の意味の文字になります。
↓アルファベットを入れ替えると
Leonardo Da Vinci! The Monalisa!
レオナルド・ダ・ヴィンチ! モナリザ!
死ぬ直前にこんなに複雑なアナグラムを考えつくことは出来るのかと不思議になりますが、ソニエールはソフィーが幼い頃はよくアナグラムを作ってソフィーに謎解きさせていたらしいので、元々考えていたものだったと思われます。
モナリザの周辺に書かれていたメッセージは
人の欺瞞はかくも邪悪なり
でした。こちらもアナグラムになっていて、入れ替えると
MADONNA OF THE ROCKS(岩窟の聖母)になります。
モナ・リザも岩窟の聖母も異教の象徴が多く隠されている絵画で、研究家の間では特に有名な作品です。
サン・シュルピス教会とローズ・ライン
アリンガローサの使徒だった色素欠乏症の男シラスは、シオン修道会の守護者4人を脅してキー・ストーンの在りかを聞くと、守護者は4人とも口をそろえて「ローズ・ラインにある」と言いました。
ローズ・ラインはフランスが定めた北極と南極を結ぶ子午線のことです。
『ローズ・ライン』が一般的に使われる呼び方なのかどうかはわかりません。
パリを通過するローズ・ライン上にサン・シュルピス教会が建っています。
シラスは守護者の証言を元に教会内を走るローズ・ライン上の床下から『ヨブ記 38:11』と刻まれた石を発見しました。
ヨブ記38章11節には『ここより先へ進むべからず』とありました。
シオン修道会はシラスのような襲撃者に備えてあらかじめ間違った答えを用意していて、守護者4人は取り決めに従ってシラスに間違った答えを教えたのです。
ソニエールは後継者となるソフィーに正しいキー・ストーンの隠し場所を教えようとして上記のダイイング・メッセージを残しています。
シオン修道会とテンプル騎士団の関係
テンプル騎士団は1100年代初期にフランスがイスラエルの首都エルサレムを征服した直後、エルサレムを巡礼する人々を保護する目的で設立した組織で、団員は全員が聖職者であり戦士でした。
映画の設定ではテンプル騎士団を設立したのはシオン修道会であり、騎士団による巡礼者の守護は建前で、本当の目的はエルサレムにある廃墟になった神殿に隠されているとされる秘密文書を見つけることでした。
十数年後、テンプル騎士団は廃神殿で『何か』を見つけてローマに戻り、教皇から計り知れないほどの富と無限の権力を授かります。
彼らが具体的に何を見つけたのかは明らかになっていません。
テンプル騎士団は勢力を一気に拡大させますが、14世紀に入ると、彼らを脅威とみなした当時のローマ教皇はフランス国王と手を組み、1307年10月13日の金曜日、ヨーロッパ全土に『テンプル騎士団は悪魔崇拝団であり、これら異端者の浄化は神の使命である』と宣言しました。
それからあっという間にテンプル騎士団は壊滅し、現在でも『13日の金曜日』が不吉とされるのはこの歴史が元になっています。
教皇の目的はテンプル騎士団が保有しているはずの秘密文書でしたが、生き残りが居ないため隠し場所がわからず見つかりませんでした。
実際には秘密文書はシオン修道会が保有し隠していましたが、同会は秘密組織であり決して表に出なかったため、その存在が知られることはありませんでした。
その後の研究から、テンプル騎士団が見つけてシオン修道会が保有していたのは文書だけではなく聖杯とセットだったことがわかります。
次のページに続きます!
次は『聖杯の正体』『カトリック教会とマグダラのマリア』『ソフィーが目撃したソニエールの儀式は何?』『リー・ティーヴィングの正体』『ラングドンがソニエールに選ばれた理由』です。
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