映画「カポーティ」ネタバレ解説|欲望と友情の間に生まれた葛藤 | 映画鑑賞中。

映画「カポーティ」ネタバレ解説|欲望と友情の間に生まれた葛藤

ヒューマンドラマ(ノンフィクション)

「ティファニーで朝食を」の著者で知られるトルーマン・カポーティが、最後の長編小説となる「冷血」を執筆する過程を描く。

制作年:2005年
本編時間:114分
制作国:アメリカ
監督:ベネット・ミラー
脚本:ダン・ファターマン、カイル・マン
関連作品:トルーマン・カポーティ『冷血』

冷血 [ トルーマン・カポーティ ]

感想(17件)

キャスト&キャラクター紹介

 


(引用:https://www.democratandchronicle.com

トルーマン・カポーティフィリップ・シーモア・ホフマン

1924年ニューオリンズ生まれの小説家。
1948年の『遠い声 遠い部屋』や、1958年の『ティファニーで朝食を』が大ヒットしてセレブ作家に仲間入りした。
当時は珍しく、ゲイであることを公表している。
カンザス州一家殺人事件の犯人であるペリー・スミスと奇妙な友情関係を築き、事件とペリーを題材に小説を書くため、あちこち取材して回る。

 


(引用:https://twitter.com

ペリー・スミスクリフトン・コリンズ・Jr

カンザス州一家殺人事件の犯人。
逮捕されてから死刑執行までの間、カポーティと多くの時間を過ごした。
絵を描くのが好き。

 


(引用:https://www.cbsnews.com

ネル・ハーパー・リーキャサリン・キーナー
カポーティーの幼馴染みの親友で、彼女自身も作家である。
癖の強いカポーティーの中和剤的役割を果たしている。

 


(引用:https://www.netflixmovies.com

アルヴィン・デューイ(KBI)…クリス・クーパー

カンザス州捜査局の刑事で、「カンザス州一家殺人事件」の担当刑事。
カポーティーに事件に関する情報を与える。

 

・その他のキャスト

ジャック・ダンディ(カポーティーの恋人)…ブルース・グリーンウッド
リチャード・ヒコック(犯人)…マーク・ペルグリノ
ウィリアム・ショーン(ザ・ニューヨーカー編集長)…ボブ・バラバン
マリー・デューイ(デューイの妻)…エイミー・ライアン
デューイの息子…アヴェリー・ティプレディナザリー・デムコウィッツ
ローラ・キニー(第一発見者)…アリー・ミケルソン
アヴェドン(写真家)…アダム・キンメル
ピート・ホルト(クラッター家族を知る人)…ジョン・デストリー
クラッチ所長…マーシャル・ベル
リンダ(スミスの姉)…ベス・メイヤー
裁判官…ジョン・マクラーレン
NY誌リポーター…ロバート・ハクラック
ドロシー(保安官の妻)…アラビー・ロックハート
夜行列車の乗務員…クウェシ・アメヤウ
朗読会の参加者…ノーマン・アーマー
カーレンタルの受付…アンドリュー・ファラーゴ
ロイ・チャーチ(刑事、安物帽子)…R・D・レッド
ハロルド(刑事、襟巻)…ロバート・マクラフィン
牧師…ジム・シェパード
サンダーソン保安官…ハリー・ネルケン
ジュリー・フォアマン(陪審員)…ジェレミー・デンジャーフィールド
クルーザー(カポーティを見ていた男)…ウィル・ウォイトウィッチ
ウォレス(囚人)…C・アーンスト・ハーシュ
ダニー・バーク(ローラの友人)…カー・ヒューイット
クリストファー(セレブ)…クレイグ・アーチボルド
バーバラ(セレブ)…ブロンウェン・コールマン
ローズ(セレブ)…ケイト・シンドル
グレイソン(セレブ)…デイヴィット・ウィルソン・バーンズ
ハーブ・クラッター…マンフレッド・マレツキ
ナンシー・クラッター…ケルシー・ステファンソン
ケニヨン・クラッター…フィリップ・ロックウッド
ボニー・クラッター…ミリアン・スミス ほか

スポンサーリンク

あらすじ前半

1959年。35歳のトルーマン・カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は小説家として大成し、NYの社交界ではアイドル的存在として騒がしい毎日を送っていた。

そんなある日の同年11月14日、『カンザス州一家殺人事件』が起こる。
カンザス州の田舎町に暮らす4人家族全員が猟銃で殺された悲惨な事件だ。
被害者は16歳の長女ナンシー、15歳の長男ケニヨンと、その両親だった。

NYタイムズの記事で事件を知ったトルーマンは引き寄せられるように興味を持ち、ザ・ニューヨーカー誌編集長のショーン(ボブ・バラバン)に取材の許可を取ると、その日のうちに親友のネル(キャサリン・キーナー)と共にカンザス行きの夜行列車に乗った。
※参考までに、ニューヨークのマンハッタンからカンザスシティまでは、現代でも公共交通機関を使って行くと2日程度かかります。

カンザスに着いた2人は、カンザス州捜査局へ行き、事件の担当刑事アルヴィン・デューイ(クリス・クーパー)に取材を申し込んだ。


(刑事にマフラーを褒めてもらおうとするトルーマン 引用:https://blog.goo.ne.jp

トルーマンは「犯人逮捕には興味がない。事件が町に与えた影響や、住民の反応を取材して記事にしたい」と捜査の邪魔をしないことを強調したが、デューイ刑事は「私にとっては犯人逮捕こそが重要だ。住民にとってもそうだ。」と答えて取材を拒否した。
その後、開かれた記者会見を見学したトルーマンとネルは、事件の第一発見者で被害者の友人ローラ・キニー(アリー・ミケルソン)の存在を知った。
また、西カンザス農場委員会は『有力な情報に1000ドルの賞金を支払う』と公表した。

記者会見の後、トルーマンとネルはローラ・キニーを取材するため彼女の学校へ足を運んだ。
そこでトルーマンがローラを見付けて話しかけたけが無視されてしまう。
ネルは1人でローラの家を探すと言うので、トルーマンはその間に被害者が安置されている教会へ行き、棺を開けて中を覗き見た。

その日の夜。トルーマンは11歳年上の恋人ジャック(ブルース・グリーンウッド)に電話して「※誰も僕と話そうとしない」と愚痴った後、棺の中を見たことを打ち明けて「あまりに恐ろしいものに直面すると、心が休まる」と心中を語った。
※トルーマンが住民から避けられたのは、田舎町には不釣り合いな高級服を着ていたから。

翌朝。トルーマンとネルはローラ・キニーの自宅を訪ねて話を聞き、被害者であるナンシーの日記を見せてもらった。
日記の最後の行は『ダニーと映画を見た 私は本当に彼を愛してる』と書かれていた。


(取材内容を思い出すトルーマン 引用:https://girlschannel.net

翌日。デューイ刑事の妻マリー(エイミー・ライアン)が小説好きだと知ったトルーマンーは、彼女に連絡を取りデューイ刑事の自宅を訪問した。
マリーは「夫はあなたと会った後、『ティファニーで朝食を』を読んでるわ」と笑った。
ディナーをごちそうになった際、トルーマンは『ティファニーで朝食を』の裏話や、母親の自殺の話をしたり、得意の話術でデューイ夫妻を魅了した。
その後、デューイ刑事はトルーマンに事件発覚直後の被害者の写真を見せてくれた。
写真を見ながら「息子を撃ち殺す前になぜ頭の下に枕を?」「娘にはなぜ毛布をかけた?」と犯人にしか答えがわからない疑問を口にした。
トルーマンは、例え執筆が完了しても事件が解決するまでは出版しないことをデューイ刑事に約束した。

スポンサーリンク

トルーマンはジャックに電話して、事件が決着するまでニューヨークに戻れずクリスマスを一緒に過ごせないことを謝り、代わりに「来春スペイン旅行に行こう」と約束した。
また、ネルの著書『アラバマ物語』の出版が決まり、トルーマンとネルはホテルの部屋で祝杯を上げた。

クリスマスの夜、トルーマンとネルはデューイ家とディナーを共にしていた。
デューイの様子が変だったので心配していると、マリーが「犯人がわかったの。カンザスシティでニセの小切手を使った二人組の男で、部下が駆けつけたけど逃げた後だったらしい。
犯人の刑務所仲間が賞金欲しさに情報を流したのよ」と教えてくれた。
犯人の名前を知りたかったが、デューイはピリピリしていて何も聞けなかった。

数日後の晩、ラスベガス署の刑事からデューイ宛に電話があった。

1960年1月6日、容疑者としてペリー・スミス(クリフトン・コリンズ・Jr)、リチャード・ヒコック(マーク・ペルグリノ)という若いチンピラ2人が逮捕された。


(連行されるペリー、付き添うデューイ刑事 引用:https://www.comingsoon.net

裁判の前、犯人を見るためにトルーマンが保安官住宅を訪ねると、ペリーは女囚用の檻に入れられていた。
ペリーは「アスピリンを持ってるか?脚が痛むんだ」と聞かれたが、トルーマンは持っていなかった。
その後の裁判で、被告人2人は予審の権利を放棄した。

トルーマンは鎮痛剤を持って再び保安官住宅を訪ね、ペリーに予審放棄の理由を聞くと「裁判官への印象が良いから放棄しろと弁護士に言われた」と答えた。
檻のそばに、保安官夫人がペリーのために置いたトルーマンの『遠き声 遠き部屋』(トルーマンが夫人にプレゼントしたもの)があった。
背表紙の写真を見て、ペリーは「ひどい写真だ。印象が悪くなる」と笑った。
短い会話しかできなかったが、トルーマンはペリーに言いようのない魅力を感じた。

トルーマンはすぐにNY誌のプロデューサーに電話をして「この事件のことを記事にするつもりだったが、やめて小説にする」と告げ、追加の援助金と写真家のアヴェドンを手配するよう頼んだ。

アヴェドン(アダム・キンメル)が到着するとすぐにペリーとヒコックを撮影し、入れ墨を撮ったり、トルーマンとペリーのツーショットもカメラに収めた。

その後の陪審員裁判で、2人ともに4人の殺人で有罪、死刑が宣告された。


(裁判を見守るトルーマンとネル 引用:https://girlschannel.net

ペリーがランシングにあるレブンワース連邦刑務所に移送される日、トルーマンはニューヨークに戻ることにした。
「僕を必ず面会者リストに入れて欲しい。ヒコックにも同じように伝えてくれ」とペリーに頼んだ。

NYに帰宅後、セレブのパーティーでトルーマンは、まだ書き始めてもいないのに「世紀のノンフィクションが出来る」と言い、ペリー・スミスと話した時の印象や、写真で見た被害者家族のことを周囲に語った。

NY誌の取材で「この3ヶ月、あらゆる事件関係者と話した。犯人とも話したし、これからも話す。この事件を通して僕の世界観が変わった。僕の本を読む人も変わるだろう」とアピールした。

ペリーが刑務所に投獄されて1ヶ月。
このまま何もしなければ、6週間後にペリー・スミスとリチャード・ヒコックの死刑が執行されることになる。
トルーマンは彼らのために弁護士を雇うつもりだと打ち明けると、ジャックは怪訝そうな顔をしたが、トルーマンの意思を尊重して見守った。


(散歩するトルーマンとジャック 引用:https://www.allocine.fr

数日後。トルーマンはレブンワース連邦刑務所へ行き、クラッチ所長(マーシャル・ベル)にペリーとの面会を求めた。
この時 所長から、ペリーは入所してから何も食べず、現在は栄養点滴していることを知らされる。
所長は「彼に自殺する権利はない。彼を殺す権利は住民にある」と語った。
トルーマンは所長に小切手を渡して、ペリー、ヒコックといつでも面会出来る権利を買収した。
 
ヒコックとペリーは隣同士の檻に入れられていて、ヒコックは元気そうだったがペリーは寝たきりでやせ細り見るに耐えない状態だった。
トルーマンは近くのドラッグストアで離乳食を買ってきて、スプーンでペリーに与えた。

数日後にはペリーは座って喋れるまでになり、トルーマンとペリーは自分たちの育った環境を打ち明け合った。
ペリーは幼い頃に母親がアルコール中毒が原因死に、兄弟は自殺して施設で育った。
トルーマンは幼い頃に両親が離婚して母親に育てられたものの、夜はいつも母親は男と出かけ、トルーマンはホテルの部屋に置き去りにされて閉じ込められる毎日だった。
毎晩夜が恐ろしく、意識がなくなるまで泣き叫んでいたと語った。
ペリーはトルーマンの身の上話を興味深そうに聞いていた。


(刑務所で交流を深めるトルーマンとペリー 引用:https://emmakwall1.files.wordpress.com

身の上話も終わり、トルーマンは「自殺する気は無いよな?」と聞いたが、ペリーは質問には答えず「リチャードを信用するな。虚言癖があるし、100ドル持っててもガムを盗むようなやつだ」と言った。

トルーマンは「本を書くにあたって君の日記を読ませてほしい。世間から怪物扱いされるのは嫌だろう?」と説得し、ペリーの日記を貸してもらった。
興奮しながらネルに電話をして「彼は僕を信用してる。親身になってくれる人を求めてる」と言うと、ネルは「あなたは親身になってるの?」と聞いた。
少し黙ったあと、トルーマンは「彼は金脈だ」と答えた。

スポンサーリンク

数日後、トルーマンはデューイ刑事と会った。
「タイトルを『冷血』にしようと思ってる。男性的で良いだろ?」と言うと、デューイは「それは犯行のことか、犯人と親しくして本を書いてる君自身の事か?」と聞いた
トルーマンは「色々あるけど前者だよ」と答えた。
トルーマンが「捜査ノートを見せてほしい」と頼むと、デューイ刑事は「君が雇った弁護士が最高裁で審理を取り付けた。
もしあの2人が釈放されたら、私は君を許さない。捜査ノートはロイに頼め」と答えて立ち去った。

その後、ペリーに会いに行くと、ペリーは「裁判で君の本を使いたい」と言い出した。
「心神喪失を強調して死刑を免れるために使いたい」と言うが、トルーマンは「まだ何も書いてないんだ」と答えた。

春が近づいて来た頃、ジャックが「スペインで執筆活動するから君も来い」と言った。
トルーマンは渋ったが、ジャックが許さなかったので引っ越しを決意した。

スペインに引っ越す直前、トルーマンは刑務所を訪れたがペリーが寝ていたので、持ってきた本にスペインの住所を書いた。
隣の檻からヒコックが「君の本に『計画的ではなかった、家族を殺すつもりはなかった』と書いてくれ」と頼んでいたが、無視した。
するとペリーが目を開けたので、「引っ越すからここに手紙をくれ」と住所を渡して足早に刑務所から出た。

トルーマンはスペインのコスタ・ブラバに移住してジャックと生活し、執筆活動に専念することにした。

スポンサーリンク

あらすじ後半※ネタバレしてます。


(スペインの自宅に届いたペリーからの手紙を読むトルーマン、ネル、ジャック 引用:https://www.imdb.com

1年が経ち、小説は途中までしか書けていないが、未完の原稿を読んだNYタイムズの編集者は大絶賛した。
「早く書き終えてほしい」と急かす編集者に、トルーマンは「ペリーがどうなるか見届けるまでは完成しない。秋になったら刑務所を訪ねるつもりだ」と答えると、編集者は「控訴が棄却されたから、秋までに死刑は終わるはずだ。必要なら今すぐ行け。
秋の朗読会に出て、冬には出版したい」と告げた。
トルーマンは控訴が棄却されたショックでその後の会話がままならなかった。

その後、ペリーから『会いに来てほしい』という旨の手紙が届き、ジャックが本格的に嫉妬しだした。
「君は彼を利用しようとしているが、愛してもいる」と言われ、トルーマンは「利用しようとする人間を愛しているはずがない」と反論した。
2人の喧嘩を知ったネルは、トルーマンに「ジャックを大切にしなきゃだめよ。彼は良い人だから」とアドバイスした。

9月に開かれた秋の朗読会で、トルーマンが『冷血』の冒頭部分を朗読すると、スタンディングオベーションが起こった。
その後の控室では、会に参加していた初対面の中年男性に「犯人の描写が素晴らしすぎて震えた」と褒められて、トルーマンは「彼を帰すな!あの人は僕のパパに違いない!」と騒いで周囲を笑わせた。


(冗談で笑いを取るトルーマン 引用:https://www.filmaffinity.com

ショーン編集者には「10月までに書き終えて欲しい」と念を押されたが、トルーマンの働きかけで連邦裁判所での再審が決まったため死刑は延期になった。

死刑の延期を直接知らせるために刑務所を訪れたトルーマンに、ペリーは大喜びした。
興奮しながら裁判での戦略について提案しようとするペリーに、トルーマンは「僕が何故君に会うのか改めて言っておくと、僕は君が犯行していた最中の話が聞きたいからだ。仕事なんだよ。
事件の夜のことを言う気になったら連絡をくれ。」と冷たく立ち去った。

トルーマンはその足で、ペリーの姉リンダに取材するため飛行機でタコマへ飛んだ。
リンダは、彼のことを「ペリーと最後に会ったのは10年前よ。昔は可愛がっていたけど、今は彼が怖い。
弟に騙されないで。繊細な面を見せるけれど、握手するように人を殺すわ。」と語った。
トルーマンがペリーの写真を1枚借りても良いか聞くと、「全部あげるわ。要らないの」とアルバムごと渡された。

スポンサーリンク

再びペリーに会いに行ったトルーマンは、檻に入るなり「本のタイトルは何だ?」と聞かれた。
ペリーはどこかから朗読会の新聞記事を手に入れて、小説のタイトルが『冷血』だったことに怒っていた。
トルーマンは「それは記者が勝手に決めた仮のタイトルだよ。君から事件の話を聞かずにタイトルを決められるわけがない」と嘘をついた。
「俺のことを友達だと言ってくれたのはウソじゃないよな?」と尋ねるペリーに、トルーマンは「僕は本当に君と友達になりたいと思っているよ。だからまたここに来たし、事件の夜のことは、僕は知りたいけど、君が話したくないなら話さなくて良い」と答えた。
さらに「お姉さんは君に会いたがってたよ」と嘘をついてペリーとリンダのツーショット写真を見せると、ペリーの表情が明るくなった。

機嫌を直したペリーは事件の夜のことをトルーマンに語った。
どこかからクラッター家に1万ドルがあると噂を聞いたペリーとヒコックは、深夜にクラッター家に強盗に入った。
そして家族を縛って家中探したが、金は無かった。
ヒコックは信じずしつこく探して回ったが、結局金は見つからなかった。
金が無いとわかると、苛立ったヒコックがナンシーに暴行しようとしたので止めさせた。
ヒコックは「目撃者は全員殺せ」と言うが、ペリーは殺したくなかった。
主人のクラッター氏を安心させようとしたが、彼はペリーを『殺人鬼を見る目』で見ていた。
ペリーはクラッター氏を『善良な人』と感じたので、『善良な人』から恐れられていると思ったら恥ずかしくなった。
その後、結局リチャードの意見に従って猟銃で全員殺した、と涙ながらに語った。
クラッター家にあったのは40〜50ドルだけだった。

事件発生から4年以上経ち、再び死刑の延期の連絡を受けたトルーマンは失望した。
ジャックに「結末が書きたいのにまだ結末がわからないなんて、精神的苦痛だ」とぼやいた。
その日、ペリーから弁護士を催促する手紙が届いたが、トルーマンは『残念だが弁護士は見つからなかった。幸運を祈る』と返事の手紙を送った。


(『アラバマ物語』の試写会に向かうトルーマンとジャック 引用:https://www.imdb.com

その後、ネルの著書『アラバマ物語』が映画化され、トルーマンは試写会に招待された。
試写会でネルに調子を聞かれたトルーマンは、「最悪だ」と答え、ペリーとヒコックが最高裁に控訴したことを明かして「まるで拷問でも受けてるようだ。控訴が認められたらどうにかなってしまうよ」と心中を語った。
ネルが立ち去った後、トルーマンは「映画は騒ぐほどの出来じゃないね」とつぶやいた。

4月1日の朝。ペリーから電話がかかってきて話したトルーマンは、最高裁への控訴が棄却されて死刑が4月14日に決まったことを知った。
トルーマンはカンザスに移動してホテルに滞在していたが、ショックでベッドから起き上がれなかった。
4月14日になると、死刑執行直前のペリーから電話がかかってきたが、トルーマンは出られなかった。
その後、ネルからの電話でペリーから電報が届いたと知らされた。
トルーマンの所にも同じものが届いていたが、トルーマンは読んでいなかった。
そこにはトルーマンとネルへ、執行の日に会いに来なくても責めないことや、2人への感謝の言葉が書かれていた。
電報を聞いてトルーマンはベッドから起き上がり、刑務所に向かった。


(処刑直前のペリーとヒコック 引用:https://www.imdb.com

刑務所に着くと、5分間の面会を許された。
落ち着いた様子のペリーとヒコックは、ヒコックが死んだ後に眼球を移植提供をすると話した。
トルーマンは涙を堪えられなり「出来る事は全てやった。救えなくて申し訳ない」と涙声で言うと、ペリーは「わかってるから気にするな」と答えた。
ペリーが死刑執行の時は友達に近くに居てほしいと言ったので、トルーマンは執行を見学した。

執行の時間になった。
デューイ刑事が「最期に言いたいことはあるか」と聞くと、ペリーは「家族にメッセージを残したいが、何を言いたいのか忘れた」と答えた。
順調に刑は執行され、ペリーとヒコックは死んだ。

トルーマンはネルに電話して「立ち直れそうにない。僕は彼らを救えなかった」と涙ながらに話すと、ネルは「あなたは彼らを救いたくなかったのよ」と答えた。

スペインに戻る飛行機の中でペリーの日記を開くと、彼が描いたトルーマンの絵が挟まっていた。
トルーマンはそっと日記を胸に抱いた。

スポンサーリンク

感想や考察など


(引用:https://chrishallamworldview.online

とにかくフィリップ・シーモア・ホフマンの表情の演技が見物です。
ホフマン氏を覚えたのは『その土曜日、7時58分』(’07)でした。
『ザ・マスター』(’12)での教祖役も最近見たので記憶に新しいのもあって、冷徹なキャラクターを多く演じられてる印象が強いです。

トルーマン・カポーティが冷血を執筆した背景を通してトルーマン自身が崩壊していく様子が緻密に描かれていました。

『ティファニーで朝食を』で揺るがぬ地位を手に入れたのに、ここまでの熱意を持って活動出来たのは、やっぱり彼が生粋の文筆家だったからですよね。
彼が取材中にメモや記録を全く取らず、後で記憶だけを頼りに自称『94%』の完成度で書き起こしが出来るのがすごいです。天才だったんですね。

『冷血』は未読なんですが、読みます。

カポーティの葛藤とは


(引用:https://www.sporcle.com

殺人事件の犯人と仲良くなって本音や事件の詳細を聞き出して、それを本にする、というのは冷酷じゃないと出来ない仕事だと思います。
カポーティはペリーを友達としてではなく、あくまでも客観的にただの『殺人鬼』として描こうとしていたので、信頼を裏切る形になります。
カポーティがペリーに頑なに本の一節すら読ませずタイトルも教えなかったのはそのためです。

じゃあ何故彼らのために弁護士を雇ったのかと言うと、ジャックに話していたように、純粋に『もっと話したい、生きていて欲しい』と感じていたのと同時に『情報を引き出すためにもっと時間が必要』とも考えたからだと思います。

ペリーの機嫌を取ったり信頼関係を守るために平気で嘘をつく冷酷な一面がある一方で、死刑の日が決まって落ち込む様子は、カポーティも完全に冷酷ではなかった証拠です。
計算づくめで生きてきたカポーティにも人間的な感情があったからこその葛藤だったのでしょう。

スポンサーリンク

カポーティがペリー・スミスに魅力を感じた理由


(引用:https://www.advocate.com

そもそも何年も同じ人物に取材を続けるなんて、取材対象が好きじゃないと難しいです。

作中で「僕たちは同じ家に居て、彼は裏口から出て、僕は表玄関から出た」というような発言をしているように、カポーティのペリーに対する思い入れの強さがうかがえます。

ペリーに取り入りつつ、内心は『あくまでも取材対象』として線引きしていたはずなのに、いつの間にかペリーに心の一部を持って行かれていたのは、カポーティも育った環境による不安定さが原因だと思います。

保安官住宅で大した話もしていないのに、プレゼントした『遠き声 遠き部屋』の写真を酷評されてグッと興味を持っていたように見えました。
事実はさておき作中の描写から判断すると、いつも褒められたがっていたカポーティが写真を『酷い』と言われて心奪われたのは、ペリーの感想がカポーティの心境を言い当てていたからなのではないでしょうか。

印象的だったのは、ペリーは絵を描くのが好きだったことです。
カポーティも芸術家肌だったので、お互いに惹かれ合うものがあったに違いありません。

スポンサーリンク

弁護士を探さなかった理由

最高裁の審理が棄却されたペリーから、トルーマンに「弁護士を探してほしい」と嘆願する手紙が来ますが、トルーマンは文書で「見付けられなかった」と返事をしただけで、恐らく弁護士を探してもいません。
この時、トルーマンは本を完成させたかったのは当然ですが『これ以上ペリーの生き死に介入してはいけない』という思いから弁護士を探さなかったのではないかと推測します。
裁判に関わり過ぎると客観性に欠けてしまい、本の質に影響が出るからです。

『冷血』読みました。

本作を見て興味を持ち『冷血』を読みました。
『冷血』はカポーティが行った取材内容を元に、被害者、加害者、周辺人物の事件前後の状況や心境を一部想像で補完しつつ書き上げたものです。

本書を読んで新たにわかった内容としては、ペリーと右脚の怪我についてです。
映画の中で、カポーティが初めてペリーに言われたのは「アスピリン持ってない?」でした。
ペリーは事件を起こす数年前にバイク事故を起こし、右膝に重傷を追っていて、アスピリンが手放せなかったようです。
カポーティと会ったときに持っていなかったのは、切らしていたか没収されたのでしょう。

また、カポーティがアスピリンを渡した時、ペリーが錠剤をラムネのようにボリボリ噛んでいたのは『アスピリン錠剤の味が好きだった』と記されていました。

 

カポーティのその後

カポーティは『冷血』が完成した後から徐々に精神バランスを崩し、アルコールと薬物依存になり命を落とします。
本作でも後半になるにつれてアルコールが少しずつ増えていく様子が描かれていました。

『冷血』の後に取り組んだノンフィクション小説『叶えられた祈り』では、セレブ界の光と闇を浮き彫りにしようとしますが、懇意にしていたセレブの友人たちから反感を買い、社交界を追い出されてしまいます。
ペリーの死刑執行後、トルーマンは『小説完成のためにペリーを殺した』と自責の念に駆られます。
ネルに「もう立ち直れそうにない」と言っていたように、彼は本当にペリーの死から立ち直ることが出来なかったのではないでしょうか。

 

映画『カポーティ』関連作品

コメント

タイトルとURLをコピーしました