『哀愁しんでれら』解説|ラスト考察、童話との関連、点滴の意味など | 映画の解説考察ブログ

『哀愁しんでれら』解説|ラスト考察、童話との関連、点滴の意味など

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哀愁しんでれら サスペンス

映画『哀愁しんでれら』の解説・考察をしています!
ラスト考察、童話との関連、伏線回収などについて書いています。

鑑賞済みの方のための記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。

哀愁しんでれら

制作年:2021年
本編時間:114分
制作国:日本
監督・脚本:渡部亮平

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キャスト紹介

福浦 小春土屋太鳳
児童相談所に勤める20代後半女性。
10歳の頃に母親に捨てられた経験から、特に子育てに無責任な親を忌み嫌う。
怒涛の不幸が続いた直後に大悟に出会い、恋に落ちる。

泉澤 大悟田中圭
泉澤クリニックを運営する開業医。
線路上で倒れていたところを小春に助けられる。
前妻は事故で亡くなっている。

泉澤ヒカリCOCO
大悟と前妻の娘8歳。
小春によくなつき、小春と大悟の結婚にも大賛成してくれたが、実は性格に問題があることが徐々にわかってくる。

福浦正秋(小春の父)…石橋凌
千夏(小春の妹)…山田杏奈
千春の祖父…ティーチャ(めいどのみやげ)
泉澤美智代(大悟の母)…銀粉蝶
千春の友人…安藤輪子、金澤美穂
小春の上司…中村靖日
亀岡(校長)…正名僕蔵
ヒカリの担任…兵藤公美
ワタル(ヒカリのクラスメイト)…阿久津慶人
来実(〃)…野澤しおり
ヒロム(小春の彼氏)…水石亜飛夢
白石(小春の先輩)…綾乃彩
患者…清水伸
女の子の母親…桝田幸希
モンペ…枝元萌 ほか

 

あらすじ紹介

児童相談所に勤める26歳の福浦小春(土屋太鳳)は、10歳の頃に母親が出て行ってから父の正秋(石橋凌)、妹で高校生の千夏(山田杏奈)、祖父との4人で仲良く暮らしています。

ある春の日、小春の祖父が倒れて自宅が火事になって彼氏ヒロムの浮気が発覚するという最悪な出来事が立て続けに起きました。
小春が絶望に打ちひしがれながら外を歩いていると、踏切の真ん中で酔いつぶれて倒れていた泉澤大悟(田中圭)を見かけます。
小春が思わず大悟を助けると、大悟は小春にお礼を言って別れ際に名刺をくれました。

名刺から大悟は開業医の医師だとわかり、小春は友人2人に勧められて大悟とデートすることにします。
小春が最近起きた不幸な出来事を大悟に打ち明けると、大悟は恩返しにと父 正秋の再就職先を紹介し、倒れた祖父には高額な医療サービスを無料で提供し、大学受験を控えた妹 千夏には無償で週1の家庭教師をしてくれることになりました。

小春と大悟は瞬く間に恋に落ち、出会ってからたった1ヶ月でスピード結婚しました。
現代のシンデレラのように開業医の妻になった小春でしたが、徐々に大悟と連れ子のヒカリ(coco)の価値観や性格に違和感を感じるようになります。

 

解説・考察・感想など

モラハラ男の田中圭、サイコパスのCOCO、正義感の強すぎる土屋太鳳と見応えはありましたが、絡めてある童話が多かったり伏線らしきもの、意味深に聞こえる発言が多かったり、家族や親子関係に関するテーマらしきものなどとにかく盛沢山でごちゃごちゃしてしまっていた印象でした。

映画を観て感じたことなどを書いていきます。

小春が訪ねたシングルマザーのアパート

冒頭で小春が先輩と一緒に訪ねた母子家庭のアパートでは、子どもは元気そうでどちらかというと母親の方がしんどそうに見えたのに、小春は「女の子の目に光が無かった」と的はずれな感想を言いました。

この発言から、小春自身が『子ども側の目線』でしか物事を考えられない思い込みの激しい性格であることがわかります。
小春は母親への恨みが強すぎて母親側の事情を考えられず、親子関係を客観的に見ることはできていません。

 

『子どもの幸せは、その母親の努力によって決まる』

小春と大悟が知っていたこの格言はフランスの初代皇帝ナポレオン1世(1769~1821)のものです。
ナポレオンの母マリアは賢くやり手でナポレオンの出世に大きく貢献したらしく、そんな母親を褒めたたえる発言だったようです。

ただしナポレオンは貴族のため、マリアが頑張ったのは『社会的な立ち振舞い』であり、日々の子どものお世話はメイド任せだったはずなので、育児についての発言ではないのです。

しかし小春も大悟もこの格言の意味を取り違えていて『子育ては母親の仕事』のような古い価値観を肯定するものと勘違いしています。

小春はシングルマザー宅訪問後にこの格言を引用しますが、そこには家庭状況や母親の事情を無視した『正論の押し付け』が詰まっていたように感じますし、小春や大悟のような子育ての大変さを知らない人が使う言葉ではないように感じます。




筆箱盗難事件の真相は?

ヒカリは筆箱を「ワタル君に盗まれた」と言いましたが、これはヒカリがワタルと接触したすぎてついた嘘でした。

小春と大悟はヒカリの嘘を信じて行動していましたが、その後フデバコは自宅トイレから出て来たのでヒカリがウソをついていたことがわかります。
恐らくヒカリは「小学生の頃は好きな人にイジワルする」を彼女なりに実践していて、ワタルに意地悪することで好意を伝えようとしていたのかもしれません。

ヒカリが小春お手製の筆箱をこんな風に使ってしまったのも「親に心配されたい(愛されているか確かめたい)」からなのでしょうが、メンヘラが強すぎて怖くなります。

 

小春が実家に戻らなかったのはなぜ?

小春は大悟に追い出されて真っ先に実家に行きますが、千夏、父、祖父の様子を眺めただけで結局実家には戻りませんでした。
小春が実家に戻れなかったのは、恐らく3人が小春がいなくても楽しそうにしていたのと、彼らに事情を説明してもわかってもらえないと思ったからではないでしょうか。

小春が家出した要点をまとめると「小春はヒカリを殴り、大悟が怒って小春を追い出した」ので全面的に小春が悪く、大悟が正しいと多くの人は思うはずだからです。
小春の父も祖父も大悟信者なので事情を説明するとむしろ小春が非難されるでしょうし、千夏からは「やっぱりこうなった」と言われてしまうかもしれません。

 

ヒカリは本当に来実を殺した?

哀愁シンデレラ

©2021『哀愁しんでれら』製作委員会

ヒカリは机の上に立っている来実に近づきましたが、実際に突き飛ばす瞬間は映りませんでした。

監督いわく『眼鏡の女の子が小春に渡した手紙「ヒカリちゃんは殺してない 皆知ってるよ」は真実である』とコメントされていたようなので、あの時ヒカリは来実を突き飛ばそうと思って(あるいはワタルが見たくて)近づいたとき、来実が勝手にバランスを崩して落ちてしまったというのが真相ではないでしょうか。

そうなると、ワタルの発言「ヒカリが突き飛ばした」は嘘だったことになり、ワタルは筆箱泥棒にされた仕返しをしたか、来実が死んだ悲しみや怒りをヒカリを悪者にすることで憂さ晴らししていた可能性が濃厚になります。

ヒカリが来実の死を「罰が当たった」などと言ったり全く悲しんでいないように見えるあたり、やはりヒカリは人間として大切な何かが欠落しています。

次のページに続きます!

2ページ目は『童話との関係』『ラスト考察』『その他細かい疑問や伏線』です。




感想などお気軽に(^^)

  1. 伊藤凛香 より:

    今まで見た、哀愁シンデレラの考察をしている人の中で一番腑に落ちました。物語の中に織り込まれている伏線が綺麗に解けて、映画を見終わったあとに感じていたもやもやが消えました。もう一回この映画を見て、この記事を書いてくださった方の考察と見比べながら映画を楽しもうと思います。本当にありがとうございます。

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