「愛にイナズマ」ネタバレ解説考察|花子に落ちたイナズマとは?大島について、ライオンの意味など | 映画の解説考察ブログ

「愛にイナズマ」ネタバレ解説考察|花子に落ちたイナズマとは?大島について、ライオンの意味など

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愛にイナズマ ヒューマンドラマ
©︎2023『愛にイナズマ』製作委員会

映画「愛にイナズマ」のあらすじ紹介、解説考察を書いてます!
「込められたメッセージ」「花子の落ちたイナズマ」「花子はなぜ嫌われた?発言振り返り」「大島が降板した理由」「大島はなぜ自殺した?」などについて書いています。

鑑賞済みの方のための考察記事です。まだ見ていない方はネタバレにご注意ください。

愛にイナズマ

制作年:2023年
本編時間:140分
制作国:日本
監督・脚本:石井裕也 ※代表作:映画「舟を編む」など
主題歌:「ココロのままに」エレファントカシマシ

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キャスト紹介

折村 花⼦松岡茉優
映画監督を夢見る27歳。
ウィキペディアに名前があることが唯一の誇り。
念願叶って映画監督デビューが決まるが、業界人との価値観の違いに苦しむ。
※松岡茉優の他出演作…映画「勝手にふるえてろ」、映画「劇場」など

舘 正夫窪田正孝
食肉加工工場で働く青年。あべのマスク愛用者。
空気を読むのが苦手で子どものような純粋さを持つ。
行きつけのバーで花子と出会い恋に落ちる。
※窪田正孝の他出演作…映画「マイ・ブロークン・マリコ」、映画「東京喰種 トーキョーグール」など

折村 治佐藤浩市
花子の父親。傷害の前科持ち。
癌を患い余命宣告もされたことを子供たちに言いたくても言えずにいる。
※佐藤浩市の他出演作…映画「Fukushima 50」、映画「64」シリーズ など

折村 誠一池松壮亮
花子の兄33歳。都内にあるホテルの社長秘書。
「長男だから」が口癖で兄妹の中でも一番の口達者。
父親に呼ばれて10年ぶりに実家に戻る。
※池松壮亮の他出演作…映画「シン・仮面ライダー」、映画「セトウツミ」など

折村 雄二若葉竜也
花子の兄、誠一の弟。神父。
消極的で神父らしからぬ闇を感じる。
父親の病気を唯一聞かされていた。
※若葉竜也の他出演作…映画「街の上で」、映画「愛がなんだ」など

落合(俳優志望の青年)…仲野太賀
原(映画プロデューサー)…MEGUMI
荒川(映画助監督)…三浦貴大
ホテル社長(誠一の上司)…高良健吾
運送会社社長(治の上司)…北村有起哉
携帯ショップ店員…趣里
則夫(海鮮レストラン店主)…益岡徹
鬼頭三郎(大御所俳優)…中野英雄
バーの店主…芹澤興人
佐々木(花子の母の再婚相手)…鶴見辰吾(声のみの出演) ほか

 

あらすじ紹介

あらすじ①:

都内でアパート暮らししながら映画監督を目指す折村花子(松岡茉優)は、某映画会社のプロデューサー (MEGUMI)に将来性を見込まれて映画監督デビューさせてもらえることになりました。

花子が考案した映画「消えた女」は花子が幼い頃に蒸発した実の母親を題材にした物語で、脚本も花子が書きました。
待ちに待ったチャンスに大喜びの花子でしたが、原が選んだ助監督の荒川(三浦貴大)と花子はどうにもウマが合わず、事あるごとに意見が衝突します。

花子は尋常じゃないストレスを感じますが、金銭的にも後がないのでできるだけ荒川の意見を受け入れながら上手くやろうと頑張ります。

そんな中、花子は立ち寄ったバーで常連客の館正夫(窪田正孝)と出会います。
人間観察が日課の花子は一方的に正夫を知っていたため思わず声をかけ、共通の知人もいたことで意気投合して酔った勢いでキスまでしてしまいました。

花子と正夫の共通の知人は俳優の卵の落合(仲野太賀)で、落合と花子は「消えた女」のオーディションで出会い、落合には「花子の兄の役」で出演をお願いしていた人物です。
落合と正夫は地元が同じ友人です。
落合と正夫はルームシェアしていて、落合はアルバイトしながらオーディションに励み、ようやく「消えた女」の出演が決まり夢と希望に満ち溢れています。

映画の本格的な撮影準備が始まった頃。
花子は何かと文句を付ける荒川とどうしても上手くやれず、最終的に原からも見放されて制作チームから外され、荒川が監督にすげ替わりました。

花子の降板理由は表向きには「体調不良」とされ、荒川は花子の脚本をイチから練り直し、落合で決まっていた役も別の俳優を起用してしまいます。
降板が決まると、落合は「神も仏もない」と言い残して自殺してしまいました。

 

あらすじ②:

落合の葬式で原と再会した花子は「『消えた女』の原作者は私なので、私を降ろすならそちらで作る映画はタイトルも内容も全く別物にして欲しい」と頼みますが、原は「上が決めたことだから無理」の一点張りでした。

花子は原作者としての権利も認められず、ギャラもゼロで放り出されてしまいます。
人生が積んで泣いていた花子に、正夫はコツコツ貯めた70万円が入った通帳を渡しました。
この70万は正夫が探している「将来の夢」のためのお金でしたが、正夫は花子に恋をして花子の夢に投資したくなったと言います。

花子は迷った末に正夫から70万円借りることにして、原と荒川が驚くような「消えた女」を作ってやろうと誓います。
正夫は花子のアシスタントに専念するために工場のアルバイトを辞めました。

花子は長らく疎遠にしていた実家に正夫と行き、父親の(佐藤浩市)を撮影してドキュメンタリー風で作ろうとしますが、面白い映像が撮れず花子は発狂しかけます。

花子を助けたくなった治は、10年近く疎遠にしていた長男の誠一(池松壮亮)と次男の雄二(若葉竜也)を「大事な話がある」と言って実家に呼びました。

実は治は胃癌が最近わかって1年の余命宣告も受けていたものの、治は子ども達から嫌われているため言い出せずにいました。

花子たちが治を嫌う理由は、治はむかし傷害事件を起こした前科者で、家でもしょっちゅう暴れていたからです。
治は家族に手を上げたことはありませんでしたが、花子たちの母親が消えたのは治のせいだとみんな思っています。




あらすじ③:

こうして家族4人が10年ぶりに集まりますが、映画撮影どころかお互いの恨み辛みをぶつけ合う喧嘩になってしまいます。
正夫が必死になだめて喧嘩が落ち着くと、せめて晩御飯は一緒に食べようとなりました。

晩御飯の最中、花子は治に「お母さんが出て行った本当の理由を教えて」と頼みます。
花子は「お母さんは病気になって海外に行って死んだ」と聞かされていましたが、信じられるはずもなくモヤモヤしたまま生きてきたと打ち明けました。

話し合いの結果、花子たちの母親は他に男を作って出て行ったことがわかりました。
このことは誠一も雄二も知っていましたが、当時幼かった花子に真実を伝えるのは酷だと思い悩んでいた治に、誠一が「花子には嘘をつこう」と言い出したそうです。

治は元妻の携帯番号を知っていたので、思い切ってかけてみることにします。
電話に出たのは母親の不倫相手で再婚相手でもある佐々木(声:鶴見辰吾)でした。
花子たちの母は3年ほど前に癌で他界し、骨は彼女の意向で折村家の近くにある港のフェリーから海に散骨したそうです。
彼女が今まで一度も子どもたちに連絡しなかったのは、佐々木がそうして欲しいと頼んだからだそうです。

全部嘘の可能性もありましたが、佐々木の話を信じることにした一家は翌日5人で港に行って母親のお参りをしました。

 

あらすじ④:結末

その後、むかし母親と行った海鮮レストランで食事していると、店主の則夫(益岡徹)は、花子たち兄妹が知らなかった『治が起こした傷害事件の真相』を話してくれました。
則夫には娘がいましたが、悪い男に捕まって若くして自殺してしまいました。
激怒した治は則夫の娘を自殺に追いやった男を探し出して半殺しにして逮捕され、男への慰謝料1500万円をつい最近支払い終わった所でした。

何も知らなかった花子たちの母は治が豹変したことに耐えられなくなってしまったのです。
さらに花子たちはこの時に治の病気と余命の件も知っていたたまれない気持ちになりました。

その後、折村一家は「若者を食い物にする方法」を話していた4~5人の男たちに我慢できなくなり、折村家を代表して誠一が喧嘩を売りに行って怪我を作って戻ってきました。

帰宅すると、お互いを理解して一致団結した折村一家と正夫は酔っぱらって楽しく騒いで眠りました。

解散した折村一家は再びそれぞれの生活に戻りますが、ホテルで社長秘書をする誠一は、社長(高良健吾)に妹をバカにされたことにキレて退職しました。

約1年後。治は亡くなり、骨は母親と同じ場所に散骨しました。
散骨が終わると、花子は「私の映画のタイトルは『消えた女』じゃなくて『消えない男』に変える」と言い、皆で父を偲んで泣きました。

神父の雄二の前に治の幽霊が現れて「最後に皆でハグしたい」と言うので、雄二は港に花子と誠一と正夫を呼びました。
ハグするかしないかで騒いでいると、正夫が1年前に撮っていた動画を見返して「もう皆さんハグしてますよ」と笑います。
その動画には、酔っぱらった治を布団に連れて行こうとする花子、誠一、雄二と、子どもたちに囲まれて嬉しそうな治(ついでにハグもしている)が映っていました。




解説・考察・感想など

映画館に向かう途中にも帰りにもきれいな雷が見れたので興奮しました!

折村一家は全員ひと癖あるような人たちでしたが、総合的にバランスが取れているのがやっぱり家族なんだなとほほえましくなりました。

「愛にイナズマ」のテーマは愛と夢

折村一家と周辺人物の生きざまからは、愛する人を理解し、理解してもらおうと努力する姿勢の大切さや、夢を持つことの重要性と同時に、夢に固執してしまう危険性が描かれていたように感じました。

花子、誠一、雄二は治を暴力男だとばかり思って嫌っていましたが、蓋を開けて見ると治の事件や暴れっぷりは彼が情に厚いからこそ起きたことでした。

治の元妻は治が事件を起こした理由を知らなかったようなので、自分から何も言わない治も良くないですが、ちゃんと打ち明けられていたらまた違っていたんじゃないかと考えてしまいます。

また、花子や大島の夢を追い続ける姿勢は素晴らしいですが、ひとつの夢に執着しすぎると失敗してしまった時に大島のように絶望してしまったり、花子はたまたま正夫がいてくれてラッキーでしたけど、もし1人だったら花子も大島と同じ運命を辿っていたように思えてなりません。

夢にも候補をいくつか持っておくことだったり、だめだった時にとことん落ち込むのは悪くないですが、次の目標に向かう切り替えの早さも生きていく上では大事なんだろうなとしみじみ感じました。

 

イナズマ①:花子と正夫の出会い

一つ目のイナズマは花子と正夫の出会いです。
原と荒川に理解してもらえず落ち込んでいた花子の前に、花子の意見を理解してくれる正夫が現れました。

正夫(理解者)の登場は花子にとって奇跡そのものであり、マスクに染みている血すらも「赤くて素敵」に見える位のイナズマが花子に落ちているのがわかります。

このイナズマは、友人でも恋人でも「理解者」と出会えることの重要性を訴えていたように感じます。

 

イナズマ②:治の暴力沙汰の真相

海鮮居酒屋の店主(益岡徹)が話してくれた治の暴力沙汰の真相は、花子、誠一、雄二にとって青天の霹靂でした。
今まで花子たちにとって治は「暴力的な性格で人生失敗した情けない父親」でしたが、真相を知って「人生を棒に振る覚悟で正義を貫いた父親」に180度見方が変わります。

このイナズマにより、折村一家はようやくお互いの存在を理解しあい誇りに思うことが出来ました。

このイナズマは、肩書きや前科など表面的な情報だけで相手を理解したつもりになってはいけないと言われたように感じました。

次のページに続きます!

2ページ目は「花子が原と荒川に嫌われた理由」「大島について」「花子の価値観考察」です。




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