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あらすじ⑦:久子と益三郎
久子と憲一の出会いは、憲一が警察の風紀係をしていた頃でした。
狩り込みから逃げていた久子と佐知子を、憲一はアメリカ軍人からこっそり逃がしてくれたのです。
その後、憲一は今の会社に転職して金沢勤務になった直後に久子と再会して恋愛関係になり、一軒家を借りて同棲しましたが、憲一は久子に『曽根益三郎』と名乗り本名を明かしていませんでした。
金沢に赴任して2年後、憲一は禎子との婚約と東京本社に戻るタイミングで久子の前から消えました。
憲一の兄 宗太郎は憲一と久子の関係を知っていました。
禎子と憲一が婚約した日、宗太郎は久子を訪ねて「益三郎は東京で結婚することになったから別れて欲しい。彼の名前も実は偽名なんだ」と告げます。
しかし久子は宗太郎と初対面だったこともあり、宗太郎の言うことを信じませんでした。
その後、益三郎は遺書を残して自殺してしまい、久子が途方に暮れていた所に室田儀作が現れて彼女を雇いました。
その後、久子は宗太郎と本多を殺した容疑者になり、佐知子に匿ってもらいながら逃亡しようとしています。
あらすじ⑧:事件の真相
一方、佐知子は大隈ハウスから出た後は一般企業でバリバリ働いていました。
そんな中で佐知子は室田儀作に見初められて室田の会社に転職し、室田の妻の死後、佐知子は室田と結婚しました。
その後、佐知子は室田の会社に営業に来ていた鵜原憲一と再会します。
いつもならこの手の営業マンは追い返してしまう室田ですが、憲一のことは自宅に呼ぶほど気に入ってしまいます。
佐知子と憲一は戸惑いながらもお互いに他人のフリを続けていました。
憲一の結婚が決まった直後、佐知子は憲一から「ある女性の仕事を世話して欲しい」と頼まれました。
この時、佐知子は憲一と久子が恋愛関係だったとは知りませんでしたが、憲一が今の女を捨てて東京で別の女と結婚しようとしていることを悟り、憲一に嫌悪感を抱きました。
佐知子は思い付きで「今の女との別れ方に悩んでいるのなら、自殺を偽装したらどう?」と憲一に提案します。
『曽根益三郎』は死んだことにして、東京で本名の『鵜原憲一』として生きれば良いと言うと、憲一は佐知子の計画に乗りました。
その後、憲一は佐知子の指示で久子宛てに遺書を書き、一緒に能登金剛に靴と遺書を置きに行きました。
その時、佐知子は憲一に対して急激に殺意が湧き、気が付いたら彼を崖から突き落としていました。
パンパンだった過去を消したい佐知子にとって、憲一が彼女の過去を知る人物だったことも動機です。
憲一を崖から落とした後で、佐知子は憲一の内縁の女が田沼久子だったと知りました。
宗太郎と本多を殺したのも佐知子です。
2人とも事件を調べていて佐知子の正体を知ったので、佐知子は久子に成りすまして2人を殺しました。
そして、佐知子は久子を匿うフリをして車で久子を崖に連れて行き殺そうとします。
佐知子が犯人だと知った久子は「あんたは生き延びて、私の分まで生きればいい」と言うと、崖に自ら身を投げました。
佐知子は証拠隠滅のために久子のカバンも処分しようとしたとき、荷物の中に母子手帳が入っているのを見てむせび泣きました。
久子は憲一の子を妊娠していたのです。
あらすじ⑨:結末
同じ頃、禎子は金沢行きの列車の中で、今までの証拠などから事件の流れを整理して佐知子が犯人だと気付きました。
禎子は金沢駅からタクシーに乗った時。車内ラジオで田沼久子も死んだことを知りました。
同じ頃、室田は佐知子を守るために「宗太郎と本多を殺した」と警察に話して自首していました。
室田は『田沼久子は私の愛人だった。だから鵜原憲一を殺し、それに気づいた鵜原の兄と本多も殺した』と証言して警察に連行されますが、警察官の隙をついて銃を奪い、自殺しました。
佐知子は弟の了(崎本大海)を連れて選挙会場にいます。
禎子が選挙会場に到着するとほぼ同時に、上条保子が当選したことがわかりました。
記者会見で、佐知子は上条に求められて壇上に立ちます。
禎子は会場の拍手に合わせて大きな声で「マリー!」と叫びました。
その瞬間、佐知子の表情は凍り付き、声の主が禎子だとわかった瞬間に気絶しました。
控室で意識を取り戻した佐知子は、マスコミを避けて裏口に禎子を呼びました。
禎子は佐知子に強烈なビンタをお見舞いします。
佐知子は「鵜原さんは『あの人となら生まれ変わることができる』と言ってたわ。
鵜原さんは間違いなくあなたを愛してた」と伝えると、禎子は泣き崩れました。
一週間後。室田佐知子の遺体が海で発見されたと報道がありました。
禎子は東京の実家に帰り、供養もかねて憲一の私物を焼きながら「憲一が田沼久子と室田佐知子の家の写真を持っていたのは、2人を忘れたくなかったからだろう」と思いました。
解説や感想など!
禎子が「マリー」と叫んだ理由
事件の真犯人が佐知子だとわかった禎子は、佐知子がスピーチをしている会場で佐知子に向かって「マリー!」と叫びます。
佐知子が憲一を殺したのは、彼女自身がパンパンだった過去が明るみになるのを恐れてしたことでした。
それが分かった禎子は、佐知子にとっての大事な演説の場面で彼女のパンパン時代の呼び名だった『マリー』という名前を叫ぶことで、佐知子へのせめてもの仕返しと、過去は消せないと思い知らせてやろうとしたのではないでしょうか。
タイトル『ゼロの焦点』
松本清張の小説はちょっと変わっていてタイトルと内容の関係がよくわからない作品も多いですが、本作のタイトル『ゼロの焦点』は、禎子が金沢で最初に見た死体が『憲一がどうなったのかを暗示する大きな伏線』になっていたので、スタートとゴールが一緒という意味でタイトルに繋がる気がしました。
また、憲一、佐知子、久子が死んだのは地球に生命が誕生した母なる海でもあることから、生命が生まれた場所で死ぬ=ゼロに還るという風にも捉えられるかな?とも思いました。
以上です!読んで頂きありがとうございました。
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