映画『八日目の蝉』ネタバレ解説考察|希和子は薫に何を渡した?タイトルの意味、小説との違いなど | 映画の解説考察ブログ

映画『八日目の蝉』ネタバレ解説考察|希和子は薫に何を渡した?タイトルの意味、小説との違いなど

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八日目の蝉 クライムドラマ

映画『八日目の蝉』のあらすじ紹介、解説考察をしています!

父親の不倫相手に誘拐され4歳まで育てられた女の子が、誘拐犯の日々の記憶をたどるうちに本当の愛に気付く物語。

この映画をまだ観ていない方はネタバレにご注意ください(__)

八日目の蝉

制作年:2011年
本編時間:147分
制作国:日本
監督:成島出
脚本:奥寺佐渡子
原作小説:『八日目の蝉』角田光代 著
主題歌:『Dear』中島美嘉
挿入歌『Daughters』John Mayer

 

主要キャスト

八日目の蝉
©2011 映画「八日目の蟬」製作委員会
秋山 恵理菜井上真央
幼少時…渡邉このみ
0歳~4歳まで誘拐犯に育てられた元被害者。
誘拐事件のことは忘れるようにして生きてきたが、大学2年生で作家志望の千草と出会ったことで、

 

八日目の蝉
©2011 映画「八日目の蟬」製作委員会
野々宮 希和子永作博美
0歳だった恵理菜ちゃんを誘拐した誘拐犯。
恵理菜の父 秋山丈博の元不倫相手で、丈博の妻が出産したことを知り衝動的に犯行に及んだ。
丈博と交際中に子どもを堕ろして子供が生めない体になっている。
安藤千草(記者)…小池栄子
秋山恵津子(恵理菜の母)…森口瑤子
秋山丈博(恵理菜の父)…田中哲司
岸田孝史…劇団ひとり
沢田久美(エステル)…市川美和子
エンゼル(エンジェルホーム主催者)…余貴美子
裁判官…宮田早苗
仁川康枝(希和子の友人)…吉本奈穂子
サライ(エンジェルホームメンバー)…安藤玉枝
雄三(久美の父)…平田満
昌江(久美の母)…風吹ジュン
滝(写真屋)…田中泯
刑事…吉田羊
タクシー運転手…徳井優
井上肇 ほか

あらすじ紹介

あらすじ①:赤ちゃんの誘拐、エンジェルホームに逃げ込む

八日目の蝉
©2011 映画「八日目の蟬」製作委員会

ある雨の日。野々宮希和子(永作博美)という20代後半の独身女性が、都内に住む秋山夫妻の自宅に侵入して生後約半年の赤ちゃんを誘拐しました。
希和子は赤ちゃんの父親である秋山丈博(田中哲司)の元愛人で、彼女は丈博との交際中に子どもを身ごもって中絶し、子供が生めない体になりました。

丈博は妻の恵津子(森口瑤子)と離婚して希和子と再婚するつもりと言って不倫関係を続けていましたが、希和子が堕胎した後に恵津子の妊娠が発覚し、不倫もバレて別れることになった過去があります。

希和子は赤ちゃんに『薫』と名前を付けて育てますが、育児しながらの逃亡生活に限界を感じ、逃亡していた名古屋で偶然目にした『エンジェルホーム』という女性と子ども限定の施設に逃げ込みました。

 

あらすじ②:エンジェルホームを逃亡、小豆島に逃げる

八日目の蝉
©2011 映画「八日目の蟬」製作委員会

エンジェルホームは行き場のない女子ども限定の駆け込み寺のような施設ですが、教祖様らしき人もいて、新興宗教と勘違いしてしまいそうな謎の集団です。
代表のエンゼル(余貴美子)は希和子が誘拐犯だと察した上で匿ってくれたため、希和子は世間から隔離されて安全な暮らしが出来ました。

エンゼルから希和子は『ルツ』、薫は『リカ』という通り名をもらい、ホームではこの名前で過ごしました。

希和子はエンジェルホームで約2年半の集団自給自足生活を送りますが、ある日エンジェルホームの調査が行われることが決まります。
どういう組織が来るのかは教えてもらえませんが、警察が来るかもしれないと思った希和子は、薫を連れてエンジェルホームから逃亡します。

逃げる直前、ホームで仲良くなった久美(市川美和子)が彼女の実家の住所を教えてくれたので、行き場が無かった希和子は薫を連れて久美の実家がある香川県小豆島に行きました。

小豆島で久美の両親に会えた希和子は『宮田京子』と偽名を名乗り、久美の両親が経営するそうめん屋さんの裏方として住み込みで働かせてもらえることになりました。
薫は久美の両親からも孫のように可愛いがってもらえ、島の子ども達とも仲良くなって幸せな日々が続きますが、そんな暮らしも1年ちょっとしか続きませんでした。

小豆島の夏の伝統行事『虫送り』で観光客が撮影した写真がコンテストに出品され、行事に参加している希和子と薫が映り込んだ写真が佳作を受賞して全国紙に載ってしまったのです。

その日の夜、希和子は薫と島から出ようとしましたが、船乗り場は既に警察に包囲されていました。
希和子と薫は引き離され、希和子は逮捕、薫は秋山夫妻の元に返されました。

 

あらすじ③:成長した恵理菜

薫は希和子から引き離された後、自分の本当の名前が『恵理菜』だと教えられ、本当の両親である秋山夫妻に育てられます。
世間的には一件落着ですが、当時4歳だった恵理菜は状況が理解できず、その後も恵理菜は『薫』と名乗ったり、希和子を求めて警察に駆け込んだりして秋山夫妻を困らせました。
恵津子は希和子を恨み、度々ヒステリックを起こしてその度に恵理菜を怯えさせました。

希和子の逮捕から時が経ち、恵理菜は大学進学を控える年齢になりました。
恵理菜は秋山夫妻に心を開けず、居心地の悪さから大学進学を機に東京での一人暮らしを希望します。
すると母 恵津子に「一人暮らししても良いけど生活費は出さない」と脅されますが、恵理菜はアルバイト三昧で何とか生活費を稼ぎながら一人暮らしを続け、大学2年生になりました。

恵理菜はアルバイト先で出会った年上の既婚男性 岸田孝史(劇団ひとり)と不倫関係にあります。
恵理菜は岸田と別れなければと思い努力しますが、岸田が会いにくると恵理菜はどうしようもなく嬉しくなり、ついデートに応じてしまう状況が続いていました。

 

あらすじ④:誘拐事件の回顧

ある日、恵理菜の前にライターの卵の安藤千草(小池栄子)が現れて「誘拐事件を取材させて欲しい」と頼まれました。
恵理菜は何となく千草を無視できず、誘われるがまま一緒にお酒を飲むうちに仲良くなりました。

ある程度打ち解けると、千草はかつて『マロン』という名前で恵理菜と一緒にエンジェルホームで暮らしていたと恵理菜に告げます。
当時、恵理菜は2歳位で記憶がほぼありませんが、千草は4~5歳で当時のことをかなり覚えていました。

そんな中、恵理菜に妊娠が発覚します。
恵理菜が岸田に「もし私が妊娠してたらどうする?」と聞くと、岸田は「嬉しいけど、今は無理だ。子供は俺が離婚してから作ろう」と答えました。
この答えは、かつて希和子が丈博(恵理菜の父)の子を妊娠した時、丈博が希和子に堕胎を促した時の言葉と全く一緒でした。
恵理菜はやっと本気で決心がつき、岸田に別れを告げました。

恵理菜は子どもを堕ろそうと病院に行きますが、逆に愛が芽生えてシングルマザーになる決意をします。
実家に行き、母 恵津子と父 丈博に「大学を辞めてシングルマザーになるからお金を貸して欲しい」と頼みました。

恵津子は子どもの父親が既婚者だと知ると「今すぐ堕ろせ」と激怒しました。
恵理菜が「私は『がらんどう』になりたくないし、子どもを盗みたくないから、産みたい」と言うと、恵津子は「あなたは私の子なのに、なぜあいつ(希和子)に似るの?」と泣き崩れます。
『がらんどう』は、当時丈博と希和子の関係を知った恵津子が、子どもを堕ろした後の希和子に浴びせた罵倒でした。

 

あらすじ⑤:結末

恵理菜は大学を辞め、千草と一緒に当時希和子の逃亡先を順に周ります。
最初に行ったエンジェルホームは、希和子が逃げてから数年後に代表エンゼルが死に、その後、幹部の1人が運営資金を持ち逃げして廃業し、現在は廃墟同然になっていました。

恵理菜は希和子がエンジェルホームから逃亡した後、一緒に夜道を歩いて綺麗な星を見て、希和子が坂本九の『見上げてごらん夜の星を』を歌ってくれたことをおぼろげに思い出しました。

恵里菜と千草は小豆島に行きました。
希和子が働いていたそうめん屋は休みで、知人に偶然会うこともありませんでしたが、恵里菜は当時、希和子と島の自然を探検したり、お社巡りをしたことを思い出します。

その後、恵里菜は当時希和子と写真撮影したことを思い出し、島の写真館に行ってみました。
写真館の店主は変わっておらず、恵里菜の顔を見ると保存していたネガを出してくれました。
店主から、今から5年前位に希和子も来て、同じ写真を求めたと聞きました。

写真で希和子の顔を改めて見た恵里菜は、当時の希和子の発言や行動を鮮明に思い出し、希和子が本当に愛情を持って恵里菜を育ててくれていたことを悟り、今までの希和子に対する憎しみが愛に変わって号泣しました。

恵里菜は小豆島に心奪われ、この島で希和子が育ててくれたように、愛情いっぱいに子育てしようと決心しました。




解説・考察・感想など

 

日野OL不倫殺人事件との関連

この映画と原作小説は、1993年に実際に起きた『日野OL不倫殺人事件』をヒントに創作されたフィクションです。

この事件は、勤務先の上司と不倫関係にあった20代の女性Aが、不倫相手の既婚男性Bと妻Cが不在の間にB宅に侵入し、家に居た子ども2人に放火して焼き殺したという酷過ぎる事件です。
小説ではA=希和子、B=丈博、C=恵津子に相当します。

Aは1990年からBと不倫関係に陥り、Cにバレて別れるまでの間にBとの子どもを2度堕ろしています。
Bは妻と別れる気は無かったにも関わらず、Aに「Cと別れて君と再婚する」と言い続けて関係を継続してきました。

AはBが離婚する気は無いと知ると共にCから執拗な嫌がらせや脅迫を受けたことで精神を病み、Aには2度も堕胎させておきながらCとは2人子どもを設けていることに激しく嫉妬し、子どもを失う絶望感を思い知らせてやろうと思い犯行に至ったとされています。
罪のない子どもを焼き殺せる感性が怖すぎます。。

映画では希和子の刑は懲役6年ですが、実在するAさんは無期懲役の判決を受けています。

『八日目の蝉』は、現実では殺されてしまった子どもがもし生きていたら、Aさんが子どもに対する愛を持っていれば、というifの世界を描いた、現実よりも希望のある作品だったように感じました。

事件の詳細はWikipedia様をどうぞ→『日野OL不倫殺人事件

 

恵理菜が子どもを産むことにした理由

八日目の蝉
©2011 映画「八日目の蟬」製作委員会

恵理菜は岸田との子どもを堕ろそうと思い産婦人科に行きますが、逆に産む決意をします。

産むことにしたのは恵理菜に母性が芽生えたことも大きな理由の一つですが、その他の理由として、恵理菜は両親に「私はがらんどうになりたくない」「子どもを盗まずに済むように、たとえシングルマザーになっても産みたい」と言います。

この発言は母 恵津子への当てつけではなく、希和子が欲しくても生めなかった子どもを恵理菜が代わって産み、子どもが親の夢を叶えるように希和子の願いを叶えることで、希和子が与えてくれた愛に応えようとしていたように感じました。
恵理菜が親だと感じている存在はやはり希和子だということがにじみ出ています。

 

エンジェルホームの純粋培養とは?

八日目の蝉
©2011 映画「八日目の蟬」製作委員会

恵理菜と千草が廃墟になったエンジェルホームを見て回った時、千草は「エンジェルホームは純粋培養の女の子を求めていて、希和子をホームに入れたのは薫が欲しかったからではないか」と語りました。

エンジェルホームは有能な後継者を育てるために、エンジェルホームを生家のように育ち、幼少時からホームの理念や価値観を当然のものとして教育され、完全にエンジェルホームの色に染まる『純粋培養(0歳から洗脳して育てること)』の女を求めていたのです。

そのため、希和子が連れて来た女の子の赤ん坊(薫)は、エンジェルホームが求めていたものでした。
また、冒頭の裁判で希和子が語っていた『希和子の父の遺産』もホームは欲しかったため、入居を許されたのではないかと千草は推測していたのです。

次のページに続きます!




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