映画「ゼロの未来」について解説、考察しています!
「ゼロの定理」「エンティティ解析」とは?、コーエンが「我々」と呼ぶ理由、ラスト考察などについて書いています。
ネタバレありきの解説考察記事です。まだ見ていない方はご注意ください。

制作年:2013年
本編時間:107分
制作国:アメリカ、ルーマニア
監督:テリー・ギリアム
脚本:バット・ラッシン
主題歌:『CREEP』Kren Souza
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キャスト&キャラクター紹介
(引用:http://actoroscar.blogspot.com)
コーエン・レス…クリストフ・ヴァルツ
マンコム社の優秀なプログラマーのアラフィフ男性。
火事で焼けた教会に住んでいたり、自分のことを「我々」と呼んだりする変わり者。
昔に一度だけかかってきた『生きる意味を教えてくれる電話』がまたかかってくるのを待ち続けている。
©2013 ASIA & EUROPE PRODUCTIONS S.A. ALL RIGHTS RESERVED.
ベインズリー…メラニー・ティエリー
コーエンがパーティーで出会った美女。
変わり者なコーエンに興味を持つ。

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ボブ…ルーカス・ヘッジス
ハードウェアのプロでマンコム社の社長の1人息子。
面倒くさがりでジャンクフードが大好き。

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ジョビー…デヴィッド・シューリス
コーエンの上司で管理職員。
能天気でお祭り騒ぎが大好き。


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マネージメント…マット・デイモン
神出鬼没なマンコム社の社長。
光学迷彩のスーツを着ていて独特な雰囲気がある。
・その他のキャスト
シュリンク・ロム博士(精神科医)…ティルダ・スウィントン
医師…ピーター・ストーメア、ベン・ウィショー、サンジーヴ・バスカー
CMタレント…グウェンドリン・クリスティー、ルパート・フレンド、レイ・クーパー、リリー・コール
ボブを届けに来た男…エミール・ホスティナ、パブリック・ネメス
宅配ピザの女…ダナ・ロゴス ほか
あらすじ紹介
あらすじ①:運命の電話を待つ男

仕事中のコーエン ©2013 ASIA & EUROPE PRODUCTIONS S.A. ALL RIGHTS RESERVED.
舞台は近未来の12月です。
中年男のコーエン・レス(クリストフ・ヴァルツ)は、マンコム社の『存在意義リサーチ部』で『エンティティ解析』を担当するプログラマーです。
コーエンは数年前に神らしき存在から電話がかかってきたことがあり、その電話がもう一度かかってくるのを今も待ち続けています。
コーエンは普通の会社員ですが、本当は自宅で24時間電話を待っていたいので在宅勤務を強く望んでいました。
希望を上司のジョビー(デヴィッド・シューリス)に言いますが、「マネージメント(社長)に直談判しろ」と断られてしまいます。
コーエンはマネージメント(マット・デイモン)に会うために大嫌いなパーティーに参加して
マネージメントに在宅勤務を切望すると、マネージメントはコーエンに特別なプロジェクトを任すことを条件に認めてくれました。
この夜、コーエンはパーティーで妖艶な美女ベインズリー(メラニー・ティエリー)と出会います。
ベインズリーは電話番号をコーエンに教えますが、コーエンは結局電話しませんでした。

ペインズリーと出会ったコーエン ©2013 ASIA & EUROPE PRODUCTIONS S.A. ALL RIGHTS RESERVED.
翌日。コーエンはジョビーから『完全な管理下での在宅勤務』の説明と、新しい仕事について研修を受けました。
コーエンに課された特別なプロジェクトは『ゼロの定理の証明』というもので、今までに成功したプログラマーはいないそうです。
この時、コーエンは『ゼロの定理の証明』に挑戦する社員のサポートをしているという天才プログラマーの青年ボブ(ルーカス・ヘッジス)と知り合いました。
ボブはコーエンを一目見るなり「君は2週間持たないね!」と笑いました。
あらすじ②:

(クリスマスも仕事に打ち込むコーエン 引用:http://shamelesspile.blogspot.com)
コーエンは自宅に会社のパソコンを設置してもらい、念願の在宅勤務が始まりました。
コーエンのミッションは現在93%完成している『ゼロの証明』の解析を100%にすることです。
コーエンは自宅に引きこもり、電話を待ちながら仕事と食事と睡眠を繰り返すだけの日々が続いて2月になりました。
93%台だったゼロの証明は97%台になりましたが、解析作業が難しすぎてコーエンはこれ以上パーセンテージを上げることが出来ずにいます。
疲弊したコーエンは、医療AIのシュリンク・ロム精神科医師(ティルダ・スウィントン)のプログラムを受診しますが、心は晴れませんでした。
そんな日々が続いて約半年後。
コーエンはとうとう発狂して会社のパソコンと電話を叩き壊すと、その日はしばらくぶりに熟睡できました。
翌朝、ジョビーがパソコンの修理に現れました。
コーエンが「もう辞めたい」と訴えると、ジョビーは「君は神経過敏になってるだけだ。こんな時にピッタリの友人を紹介してやるよ!」と言って帰っていきました。

©2013 ASIA & EUROPE PRODUCTIONS S.A. ALL RIGHTS RESERVED.
その日の夜、ジョビーの手配でコーエンの自宅にエロ看護師のコスプレをしたベインズリーが現れました。
ベインズリーはパソコンを消すと、部屋の掃除をしてくれました。
この時、コーエンはベインズリーに電話を待っている理由を打ち明けます。
コーエンはその昔、自宅にかかって来た電話からとても神秘的なパワーを感じ、神様から電話がかかってきたのだと思いました。
コーエンは電話の相手が「人生の意味や使命」を教えてくれるに違いないと思いましたが、興奮のあまり受話器を落として電話が切れてしまったそうです。
それからコーエンはまた同じ電話がかかってくるのを待ち続けていました。
話を聞いたベインズリーは「すぐ戻るから待ってて!」と言い残して出て行きました。
あらすじ③:

(ベインズリーの帰りを待つコーエン 引用:http://lecerclerouge.jp)
結局ベインズリーは戻ってこず、翌朝になると天才プログラマーのボブが来ました。
ボブは「頼まれて来た」と言うと、パソコンで何やら作業を始めます。
この時、ボブはマネージメントの1人息子だったことが発覚しました。
コーエンがボブに「退職したい」と頼むと、ボブは「君は優秀だから手放したくない。もし仕事を続けてくれるなら、例の電話の主を僕が探してあげる」と言います。
信じがたい話でしたが、コーエンは仕事を続けてみることにしました。
話が終わるとボブは「明日の朝また来る」と言って帰りました。
ボブとほぼ入れ替わりでベインズリーが戻ってきて、コーエンにケーブルの付いた真っ赤なフィットスーツを渡しました。
それはVR体験用のスーツで、マネージメントが準備してくれた物だそうです。
ベインズリーは「これを着て夜に私のサイトにアクセスして」と言いすぐ帰ってしまいました。

(VRスーツを着たコーエン 引用:https://blog.goo.ne.jp)
その日の真夜中。コーエンがVRスーツを着てベインズリーのサイトにアクセスすると、いつの間にか疑似空間のビーチに水着姿で寝転んでいました。
そこに水着姿のベインズリーが現れて、2人はビーチでランチデートを楽しみキスをしました。
翌朝、コーエンはボブから「親父は今あんたに夢中だ。あんたはいつか僕らの前に現れると予言された人なんだ」と言われました。
コーエンは話の意味がわかられず「やっぱり辞めたい」と頼みますが断られました。
ボブが帰った後、コーエンは仕事のやる気がどうしても出ないので、疑似空間でベインズリーと会いました。
ベインズリーが「今日はビーチ以外の場所に行きたい どこでも想像してみて」と言うので、コーエンは目をつぶって他の場所を想像してみました。
目を開けると、2人は暗い宇宙に裸で浮いていました。
ベインズリーははしゃぎますが、コーエンは無限に広がる暗闇に恐怖を感じます。
しばらくすると2人はブラックホールに飲み込まれ、いつものビーチにいました。
興奮したコーエンがベインズリーに抱き着くと、ベインズリーは「マネージメントが見てるからやめて」とコーエンを突き飛ばしました。
その勢いでパソコンからケーブルが抜けてしまい、コーエンは現実に戻りました。
翌日。またボブがやってきて、VRスーツとケーブルを持って行ってしまいました。
その日の夜、コーエンはベインズリーのサイトを覗いてみますが、アクセス拒否されていました。
あらすじ④:結末
翌日。落ち込むコーエンの所にまたボブが来ました。
ボブはVRスーツを『魂を探す装置』に改造したと言い、部屋に置いていきました。
その直後、真剣な表情のベインズリーがコーエンに会いに来ました。
ベインズリーは「今からこの町を出る。あなたが好きだから一緒に来てほしい」と誘います。
ボブは「親父から逃げるチャンスだぞ」と喜びますが、コーエンはなぜか断ってしまいました。

(ベインズリーの告白を拒絶するコーエン 引用:http://lecerclerouge.jp)
ベインズリーが行ってしまうと、ボブはコーエンを外に連れ出します。
コーエンは若かった頃に結婚と離婚を経験し、恋愛はもうこりごりだとボブに打ち明けました。
その日から、コーエンは自然に自分のことを『私』と呼べるようになりました。
(今までずっとコーエンは自分のことを『我々』と言っていました)
その後、ボブは突然体調を崩して気を失ってしまいます。
コーエンはボブをソファに寝かせた時、自宅の至る所に監視カメラが仕掛けられていることに気付き、カメラを全て壊してボブの隣で眠りました。
翌朝。マネージメントの部下がボブを連れて出て行きました。
コーエンは何もやる気が起きず、倒れ込むように眠りました。
翌日。ジョビーがコーエンに会いに来ました。
ジョビーはコーエンの管理責任を問われて会社をクビになったらしく、コーエンに愚痴を吐き出してどこかに行ってしまいました。
その後、コーエンはVRスーツを着てケーブルをパソコンに繋いでみると、エラーが出てケーブルから火花が散りました。
次の瞬間、コーエンはパジャマ姿でマンコム社の中枢『ニューラル・ネット・マンクライヴ』のそばに立っていました。
目の前にあるいくつものモニターには、昨日のコーエンやボブ、ベインズリーが映っています。
コーエンが混乱していると、突然マネージメントが現れました。
コーエンが「なぜゼロの定理の証明にこだわるのですか?」と聞くと、
マネージメントは「ゼロの定理は金儲けの手段の1つにすぎない 君は人生に崇高な目的を求めるあまりに電話を待ち続ける無意味な人生を送った 残念だよ 君はクビだ」と答えて消えてしまいました。
コーエンは怒り狂い、落ちていたハンマーで『ニューラル・ネット・マンクライヴ』を思い切り叩くと、装置は震えて爆発しました。
すると、壊れた装置から無数のホログラム写真が飛び出します。
それはボブ、ベインズリーなど、コーエンが今まで会ったことのある人間全員の写真でした。
さらに爆発の衝撃でブラックホールが生まれ、無数のホログラム写真が吸い込まれていきます。
コーエンは慌てて逃げようとしますが、思い直して自らブラックホールに飛び込みました。

(ブラックホールに飲み込まれるコーエン 引用:http://mralansmithee.blog.fc2.com)
気が付くと、コーエンはベインズリーと過ごした疑似空間のビーチに全裸で立っていました。
ベインズリーは居ませんが、一緒に遊んだビーチボールや食事したレジャーシート、彼女の水着などは残っています。
コーエンが沈まない太陽に手をかざすと、太陽は沈んで夜になりました。
コーエンは夜空を見上げ、満足気な表情でビーチに立ち尽くしました。
解説・考察や感想など

©2013 ASIA & EUROPE PRODUCTIONS S.A. ALL RIGHTS RESERVED.
ずっと気になっていたものの、難しそうでなかなか手が伸びずにいた映画のひとつです。
ラストは特に何がなんだかわからなくてポカーン状態でした。
ラストの意味を中心に、監督が伝えたかったことなど考えてみようと思います。
『エンティティ解析』とは?
コーエンは仕事内容について「エンティティ解析」と答えていましたが、意味が分かりませんでした。
これはストーリーにはあまり関係ないとは思いますが、気になって調べたので残しておきます。
エンティティ(entity)は『実体、存在』というような意味を持ち、データ上で何かをジャンル分けしたりする時に使う『枠組み』を指す英単語でもあり、プログラミング用語だったりもするようです。
言葉だけだとわかりにくいのでもう少し具体的に示すと
・アーノルド・シュワルツェネッガー
・ユアン・マクレガー
・トーマス・マッケンジー など
・スヌーピー
・ピングー
・ちいかわ など
↑このように見やすくするために使った『赤色の線(枠組み)』がエンティティです。
この『枠組み(ただの区切り線)』を解析することに意味があるとはとても思えません。
つまり、コーエンの仕事は『無意味な作業』と言い換えても良いかと思います。
コーエンにとって仕事は『電話を待つ傍らにしていること』であり『価値が低いもの』なのです。
ちなみにベインズリーが言っていた『遠隔的タントラ・インターフェイス』ですが、
『タントラ』は『性欲の解放』を意味するヒンドゥー教の言葉で、
『インターフェイス(interface)』は『接点、境界面』という意味のIT用語です。
つまり、ベインズリーのエッチなサイトを難しい言葉で言い換えただけです。
『ゼロの定理』とは?

©2013 ASIA & EUROPE PRODUCTIONS S.A. ALL RIGHTS RESERVED.
ゼロの定理についてはボブが説明してくれていので、抜粋します。
宇宙はなんの意味もないことを証明しようとしてる
全ての物質 エネルギー 何もかもは 一度のビッグバンによる偶然の産物だ
膨張し続ける宇宙はやがてブラックホールに飲み込まれる
あまりに強い重力で 全ては0次元である『点』に収集されて 空間 時間 生命 来世 何もかも消える
何もない ゼロだ
全ての生物は輪廻転生を繰り返すという説がある一方で、死んだ後は来世も何も無く、ただ『無』になるという説も存在します。
そういう死後の世界の一説の話をしているようにも感じました。
それに『生まれたことそのものが偶然で何の意味もないです』なんて言われたら、生きる意味を探しているコーエンみたいな人にとっては酷ですよね。
それに死後の世界や、もしも宇宙がブラックホールに飲み込まれたらどうなるか、なんて実際にそうなってみないとわかりません。
つまり『ゼロの定理の証明』は、『答えが出ない問いの答えを出せ』と言っているのと同じです。
だから今まで誰も証明に成功した人が居なかったのです。
マネージメントが「ゼロの定理の証明は金儲けの1つだ」と言っていたのは、「死後の世界は存在するのか」「生まれてきた意味はあるのか」などの
誰もが「答えがあるなら知りたい」と思う問題を研究しているとアピールすることで、
答えを知りたいと思う人達からお金をもらうようなシステムをマネージメントが構築していたと思われます。
「もし答えが出たら教えます」と言って研究費を募っていたはずですが、ゼロの定理の証明は不可能なので、答えを知りたい人たちに希望を持たせ続けられさえすれば半永久的にお金がもらえていたのではないでしょうか。
次のページに続きます!
2ページ目は『コーエンが我々と呼んでいた理由』、『コーエンがペインズリーを振った理由』、『ラストの解釈』です。
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