映画「ター」ネタバレ解説|ラスト考察、ターは何をした?意味深なシーンの解釈など | 映画の解説考察ブログ

映画「ター」ネタバレ解説|ラスト考察、ターは何をした?意味深なシーンの解釈など

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ター ヒューマンドラマ

映画「ター」のあらすじ紹介、解説考察を書いてます!
「チャットの相手は誰?」「原稿を口パクする秘書」「講演会にいた赤毛の女性」「男子生徒の貧乏ゆすり」「本の送り主は誰?」「迷路のような落書きの意味」「新人オルガについて」「暴漢に襲われたというウソ」「吐いた理由」「ラスト考察」などについて書いています。

ター

制作年:2022年
本編時間:158分
制作国:アメリカ
監督・脚本:トッド・フィールド

キャスト、あらすじ紹介

キャスト紹介

リディア・ターケイト・ブランシェット
オーケストラの最高峰ベルリン・フィルの世界初の女性指揮者。
仕事は指揮者だけでなく大学講師や作曲など多岐にわたる。
振る舞いや喋り方は男性的で、レズビアンであることを公言している。
※ケイト・ブランシェットの他出演作…映画「キャロル」「ベンジャミン・バトン 数奇な運命」シリーズなど

フランチェスカ・レンティーニノエミ・メルラン
指揮者の卵でターの秘書。
ターのわがままに振り回されている。
※ノエミ・メルランの他出演作…映画「恋する遊園地」「燃ゆる女の肖像」など

シャロン・グッドナウニーナ・ホス
ターの妻。バイオリン奏者でターのオケの一員でもある。
ターの自由過ぎる生活ぶりに不満はあるが、我慢している。
※ニーナ・ホスの他出演作…映画「あの日のように抱きしめて」など

ホイットニー(ターのファン)…シドニー・レモン
マックス(指揮者を目指す学生)…ツェトファン・スミス・グナイスト
ペトラ(シャロンの娘)…ミラ・ボゴエヴィッチ
セバスチャン(副指揮者)…アラン・コーデュナー
オルガ(チェロ奏者)…ソフィー・カウアー
エリオット・カプラン(指揮者仲間)…マーク・ストロング ほか

 

あらすじ紹介

主人公のリディア・ター(ケイト・ブランシェット)はオーケストラの最高峰と言われるベルリン・フィルで世界初の女性指揮者になった著名な指揮者です。
指揮者の他にも音楽大学の講師や作曲活動、指揮者を志す若者のための支援団体の代表など毎日多忙に過ごしています。

ターは素晴らしい経歴の持ち主ですが、独善的な態度で周囲を翻弄します。
中でも若手指揮者でターの秘書をしているフランチェスカ(ノエミ・メルラン)は、ターのわがままに振り回されながらも仕事は真面目にこなしていました。

そんなある日、ターの元教え子の駆け出しの指揮者クリスタという若い女性が自殺しました。
クリスタの死をきっかけに周囲のターへの態度が徐々に変化していきます。

 

解説・考察・感想など

映画の内容は始終ジメジメしていて嫌な雰囲気でしたが、モラセクハラおじおばさんという色々詰め込みまくりなキャラクターを見事に演じたケイト・ブランシェットの演技力が輝いていました。

以下疑問点や思ったことをまとめました。

寝ているターを撮影しながらチャットしていたのは誰?

ター

©MMXXII FOCUS FEATURES LLC. © GAGA Corporation. All Rights Reserved.

映画の冒頭、誰かがビデオライブチャットで仮眠しているターの様子を映しながら誰かとチャットしているシーンがあります。
話の進行が時系列通りだとすると、この時はターがNYフィルの講演会出演のためにプライベートジェットでベルリンからNYに移動中のシーンです。

そうなると飛行機に同乗してターを撮影していたのは秘書フランチェスカで、チャットの相手はクリスタ(秘書)かオルガ(新人チェリスト)のどちらかです。

私は最初、このシーンはターが自叙伝本の宣伝のためにオルガを連れてNYに行く時の様子が切り抜かれていた(ターの服装や座る位置がよく似ていたので、冒頭だけ時系列が入れ替わっていた)のかなと思っていて、寝るターを撮影していたのはオルガでチャットの相手はフランチェスカかなと思っていたのですが、そうなるとチャットで「まだ愛してるのね」とオルガが言われるのは変なので、時系列は変わってないと判断しました。

この時のやり取りと、この後に出てくるレコードを選ぶシーンでターの足と触れていた女性の足の主はフランチェスカだと想像できます。
つまり直接的には描かれていませんが、フランチェスカもターと恋愛関係にあったことがほのめかされています。
そうすると講演会の後にターがファンの女性を口説いていた時にフランチェスカがイライラしていた理由も、クリスタが死んだ時にフランチェスカが「抱きしめて欲しい」と甘えようとした理由も納得できます。

 

秘書フランチェスカが番組の原稿を口ずさんでいた意味

ターのNYフィルでの講演会の時、司会者が話すターの経歴紹介をフランチェスカが丸暗記していることがわかる描写があります。

あの口パクには経歴紹介文を作成したのは番組側ではなくフランチェスカだということを意味していたと思われ、そうなるとターも紹介文の作成に関わったことになり、フランチェスカは原稿を丸暗記できる程何度も練り直したということです。

あの紹介が長ったらしく栄光の数々が余すところなく詰め込まれていたのは、恐らくターがそうさせたからです。
それでいて講演会時のターはこの紹介の後に「今どき”多才”は誉め言葉ではない」などと謙遜していたのはターの凄さを見せつけるための自作自演だったことになり、ターのいやらしさや自己顕示欲の強さがよく分かるシーンです。

 

NYフィルの講演会にいた赤毛の女性は?

ターの講演会の時に後姿がアップで映された赤毛の女性の正体はクリスタです。
クリスタの顔は出てきませんが自殺後のネット記事に指揮をしている彼女の写真が登場し、髪の色は髪型の雰囲気が同じです。

同じ女性がターが滞在したNYのホテル前にも立ちすくんでいる姿が映っています。




ドミンゴの部屋?

フランチェスカらしき人物がターの控室をビデオチャットで映し、チャット相手の誰か(恐らくクリスタ)が「ドミンゴの部屋みたい」とコメントするシーンがあります。

ドミンゴとはスペイン出身のオペラ歌手で指揮者のプラシド・ドミンゴという人物のことです。
この人物はオペラ歌手として成功して音楽界を賑わせていましたが、2019年にセクハラで11人の女性から訴訟を起こされて音楽界を干されてしまいました。

チャットでの会話は、ターとドミンゴを悪い意味で重ねたブラックジョークです。

フランチェスカが控室をネタにしたのは、恐らく控室がターにはもったいないほど豪華だというのを伝えたくて配信したのかな?と思われます。

 

カプランとのランチ

ター

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ターは指揮者仲間カプラン(マーク・ストロング)とランチしていました。
2人の会話からわかるのは、ターとカプランは女性指揮者を支援する財団を持っていることと、売れっ子のターとそこまでではないカプランとで微妙な上下関係があったことです。

カプランはターから学びを得ようと必死な一方、ターは娘の話やその辺の男性がどうとか、音楽と関係ない雑談しかしたがりません。
ターの態度にはカプランを見下しているのがにじみ出ていて、カプランはターの態度に内心プライドを傷つけられながらも頑張って動じないふりをしています。

ターは自分の能力を過信するあまり仕事仲間に敬意を払えていないのです。

 

男子生徒マックスの貧乏ゆすり

ター

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ターが大学で講義をしていた時、男子生徒のマックスは貧乏ゆすりしながら授業を受けていたのが強調されていました。
マックスが貧乏ゆすりしていたのはターの発言と態度に苛立っていたからです。

授業の内容を聞けば納得ですが、ターはマックスが通う大学院を見下してみたり、彼が挑戦中の曲について「調弦しているような曲」「料理のレシピみたい」とジョークのつもりなのかバカにしていて、その後ターに執拗に絡まれたマックスは怒って教室を出ていってしまいました。

ターがマックスに執拗に絡んだのは、マックスが不満そうなのが目についてマウントを取ってやろう(説き伏せてやろう)という気分になったからだったように私には見えました。
ターとしては「高名な指揮者の私がこうして直々に教えてやっているのに、この生徒は何が不満なのか」とでも思ったのではないでしょうか。

この時の話題に出てくるターの「音楽家の肌の色や人間性で曲を聞くか聞かないか決めるのは愚かだ」という意見は皆で話し合う価値のある深い議題ではありますが、ターの態度には「社会的に成功している私の考え方が絶対に正しい」のような傲慢さがにじみ出ていたので、周りは素直に聞けなくなるのもよくわかります。
しかもターは正論を振りかざしつつマックスを侮辱しているようにも聞こえる過激な言い回しで説き伏せようとしていたので、話を冷静に聞いてもらえるわけがありません。

このシーンではターの傲慢さや他人への気配りの出来なさに加え、たとえまともな意見でも態度を間違えると誰にも聞いてもらえないというのが詰め込まれていたように感じました。

 

「CHALLENGE」の本を送ったのは誰?

ターに送られてきた「CHALLENGE(挑戦)」というタイトルの本を、秘書フランチェスカは「送り主不明 ホテルのフロントに預けられてた」と言っていましたが、送り主は恐らくクリスタです。

フランチェスカがホテルに入った時にホテル前にクリスタらしき女性が立っているのも映っています。

本を受け取ったタイミングはクリスタが亡くなる直前位です。
この本はターへの恨みと復讐の意志を表していて、タイトルの「チャレンジ」には、本に描かれていた模様の意味も踏まえると、「死んで復讐してやるから覚えとけよ」的な意味が込められていたのではないかと想像しています。

ちなみに本の送り主はフランチェスカだった可能性も否定できませんが、この時点ではフランチェスカはまだターに好意があったと思われるので、消去法でクリスタだと思っています。

次のページに続きます!

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