映画『そして、バトンは渡された』ネタバレ解説考察|タイトルの意味、親たちの嘘と秘密?原作小説との違い | 映画の解説考察ブログ

映画『そして、バトンは渡された』ネタバレ解説考察|タイトルの意味、親たちの嘘と秘密?原作小説との違い

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そして、バトンは渡された ヒューマンドラマ

映画『そして、バトンは渡された』のあらすじ紹介、解説、考察をしています!

鑑賞済みの方向けの解説考察記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。

そして、バトンは渡された

制作年:2021年
本編時間:137分
制作国:日本
監督:前田哲
脚本:橋本裕志
原作小説:『そして、バトンは渡された 』 瀬尾 著

 

主要キャスト

優子永野芽郁
みいたん(幼少時)…稲垣来泉
実の母が幼い頃に亡くなり、両親の再婚や離婚で中学生までに名字が4回変わった女子高生。

田中 梨花…石原さとみ
優子の2人目の母親。優子の実の父 水戸の再婚相手。
自由奔放で、お金はあるだけ使ってしまうため生活費に困ることしばしば。
優子の母親として日々奮闘する。

森宮 壮介田中圭
東大出身で一流企業に勤める30代の会社員。
優子の3人目の父親で、優子と一緒に住んでいた年月が最も長い。

早瀬 賢人岡田健史
優子の中学、高校の同級生で優子の初恋の人。
天才的にピアノが上手く、両親と周囲からプロへの道を期待されているが、本人は過度な期待にうんざりしている。

水戸さん(優子の実の父)…大森南朋
泉ヶ原茂雄(優子の2人目の父)…市村正親
吉見さん(メイド)…木野花
早瀬の母…戸田菜穂
優子の同級生…萩原みのり、中井千聖
美人先生…朝比奈彩
優子の担任…原 扶貴子 ほか

 

あらすじ紹介

あらすじ①:水戸 優子→田中 優子

主人公の水戸優子(永野芽郁)は産まれて間もなく母親が亡くなってしまい、父親の水戸(大森南朋)は男手一つで幼い優子を育てました。

優子が小学校低学年の頃、水戸は職場で出会った梨花(石原さとみ)と結婚し、彼女が優子の新しいママになりました。
水戸は仕事に打ち込むようになり、数年後、水戸は自分のカカオ豆農場を持つ夢をかなえるためにブラジル移住を勝手に決めてしまいます。

水戸は梨花も優子も喜んでブラジルについて来てくれると思い込んでいましたが、梨花は「行きたくない」と大反対しました。
水戸と梨花は離婚することになり、優子は水戸とブラジルに行くか梨花と日本に残るか選ぶことになります。
悩んだ末に、優子は友達との約束もあったので梨花と日本に残ることを決意しました。

水戸は1人でブラジルに行ってしまい、優子の氏名は梨花の旧姓の『田中 優子』になりました。

 

あらすじ②:田中優子→泉ヶ原優子

梨花は家賃の安いアパートに引っ越して子育てと仕事で忙しい日々を送ります。
梨花は金遣いが荒く家計はいつも火の車でしたが、優子は梨花と一緒で幸せでした。
優子はブラジルにいる水戸に毎週手紙を書いて梨花に渡していましたが、水戸からの返事は1度もありませんでした。

優子が小学校高学年頃になると塾や習い事に通う子が多くなり、優子は放課後に友達とあまり遊べなくなり寂しさを覚えます。
そんなある日、優子は下校途中にある一軒家から聞こえて来たピアノの音色に夢中になりました。

梨花の収入ではピアノを買う余裕などないことは小学生の優子でもわかっていましたが、優子は軽い気持ちで「いつかピアノがほしい」と梨花に言ってみました。
梨花は優子が自分から何かを学びたがる姿勢に喜んで「時間がかかるけど、待っててね」と答えて婚活雑誌を読み始めました。

数か月後。梨花は泉ヶ原茂雄さん(市村正親)というお金持ちの男性と結婚し、ピアノのある大きな一戸建てに引っ越し、優子は『泉ヶ原優子』になりました。
優子は戸惑いつつ「本当に泉ヶ原さんが好きで結婚したの?」と聞くと、梨花は「良い人だし、お金持ちだし、ピアノがあったから」と答えるので、優子は疑問を抱きながらも泉ヶ原家で新生活を始め、ピアノも習わせてもらいました。

 

あらすじ③:泉ヶ原優子→森宮優子

泉ヶ原家では家事も掃除も全てメイドの吉見さん(木野花)が行い、結婚してから主婦になっていた梨花は徐々に時間を持てあますようになります。
数か月後、梨花は優子を置いて数日間家出し、それからは週末にしか帰ってこない状態が続きます。
優子が「寂しいから戻ってきて」とお願いしても、梨花は「この家は息が詰まる」と嫌がりました。

そしてさらに数か月後には、梨花は新しい彼氏と再婚することを優子に告げました。
優子は泉ヶ原家に残るか梨花について行くか選択することになり、泉ヶ原さんには悪いと思いつつ、結局梨花を選びました。
泉ヶ原はあまりにもあっさり離婚に応じ、優子にも「またいつでもおいで」と声をかけてくれました。

次の梨花の相手は森宮壮介(田中圭)という高校時代の同級生です。
森宮は東大出身で一流企業に勤めているインテリですが、発想や発言がどこか変わっていて、ルックス的にも派手好きな梨花とは不釣り合いな地味なタイプでした。

優子は梨花の結婚観に対するモヤモヤがぬぐえないまま『森宮優子』として森宮のマンションで暮らし始めます。




解説・考察・感想など

水戸、泉ヶ原、森宮と、父親がコロコロ変わるのに全員良い人過ぎるのが若干疑問でしたが、ラストで梨花が良い親になる素質のある男性ばかりを選んでいたからだったんだな~とわかって梨花の愛の深さに泣きました。

『命がけの嘘と秘密』とは?

ポスターやDVDのパッケージに書かれていた
2つの家族。親たちがついていた命がけの嘘と秘密とは?』という問いかけについてです。

まず『親たち』と複数なのは、泉ヶ原と水戸も梨花の病気を知っていたからです。
何も知らされていなかったのは森宮だけですが、森宮は嘘をつくのが苦手なキャラクターだったので、優子のためにも仕方なく黙っていたのでしょう。

『命がけの嘘と秘密』は、梨花や泉ヶ原が病気を隠すために付いていた嘘と秘密の数々を指します。
梨花は優子を悲しませたりしないように、また、もし突然入院することになっていなくなったりしても過度に不安にさせたりしないように自由奔放なキャラクターを過度に演出していました。
また、梨花が「痩せて綺麗になったでしょ?」と笑うのも、本当は病気で痩せたことを優子に気付かせないために、美意識の高さからダイエットしたのだと優子が思うように印象付けていました。

泉ヶ原も梨花が入院したことや森宮との再婚の理由を知っていましたが、真実を隠すために梨花に話を合わせていました。

梨花が優子に隠していたもうひとつの大きな秘密は、優子が書いた水戸への手紙や水戸から来た手紙を隠していたことです。
梨花は優子がいつか「お父さんと暮らしたい ブラジルに行きたい」と言うのを恐れていました。
ブラジルは日本ほど医療が進歩していないので、梨花は付いていけません。
しかし優子が実の父親と暮らしたいと思ってしまうと、実の親でない梨花は法的にも止められません。

だから梨花は優子と水戸を引き離すために手紙を隠していました。
梨花はもしも優子がいなくなると生きる意味を失ってしまうようで耐えられなかったのです。

 

タイトル『そして、バトンは渡された』の意味

そして、バトンは渡された

タイトルの意味について考えます。
原作小説の表紙の絵を見てもらえればわかりやすいので張ってますが、『バトン』は『優子(子ども)』のことであり『親としての愛情』を意味します。

優子の親権が 優子の実の母→水戸→梨花→泉ヶ原→森宮と渡っていく様をリレーバトンに例えることで、バトンの受け渡しのために奔走する梨花の苦労や真剣さも彷彿とさせる素敵なタイトルだと思います。

ただ原作小説と映画ではバトンの意味合いが少し変えられていたように感じます。
小説の『バトン』は上に書いたような『親から子供へ引き継がれていく愛情』を表していたように感じました。
小説のラストでバトンは優子本人の手に渡り、これからは優子が将来生まれる子どもに愛情を与える側になることが暗示されていました。

映画ではラストでバトンを早瀬が渡されたような形になっているので、映画の『バトン』は『優子という人物1人に対する愛情や守る義務』だったように感じられました。

次のページに続きます!




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