映画『パルプ・フィクション』の解説・考察をしています!
タイトルの意味、ケースの中身、突き落とされた男の真相などについて書いています。
鑑賞済みの方のための記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。
制作年:1994年
本編時間:154分
制作国:アメリカ
監督・脚本:クウェンティン・タランティーノ
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キャスト紹介
ヴィンセント・ヴェガ…ジョン・トラボルタ
アムステルダム帰りのマフィアの一味。
ボスのマーセルスから彼の妻ミアの世話を頼まれ、嫌な予感がするも断れず引き受けてしまう。
ジュールス・ウィンフィールド…サミュエル・L・ジャクソン
ヴィンセントの相棒。マフィアから足を洗おうか悩んでいる。
ミア…ユマ・サーマン
マーセルスの妻。元女優志望でテレビドラマのパイロット版に出演したことがある。
ブッチ・クーリッジ…ブルース・ウィリス
落ち目のボクサー。マーセルスから八百長試合を持ち掛けられ、金欲しさに引き受けてしまう。
ハニー・バニー(〃)…アマンダ・プラマー
マーヴィン(黒人青年)…フィル・ラマー
ブレット(白人青年)…フランク・ホエーリー
ロジャー(〃)…バー・スティアーズ
マーセルス・ウォレス…ヴィング・レイムス
ジョディ(ピアスの女)…ロザンナ・アークエッド
ランス(麻薬の売人)…エリック・ストルツ
ギャルソン…スティーブ・ブシェミ
クーンツ大尉(ブッチの父の友人)…クリストファー・ウォーケン
エズメラルダ(タクシー運転手)…アンジェラ・ジョーンズ
ファビアン(ブッチの恋人)…マリア・デ・メディロス
メイナード(銃砲店の店主)…デュアン・ウィテカー
ゼッド(警察官)…ピーター・グリーン
ジミー(ピットの友人)…クエンティン・タランティーノ
ウルフ(掃除屋)…ハーヴェイ・カイテル ほか
時系列順のあらすじ
この映画の面白さのひとつは物語の時系列の入れ替えで一見関係なそうなシーンが実は繋がっていてラストに近づくにつれて発見があり、入れ替え方も複雑過ぎずわかりやすい所だと思います。
簡単に時系列順のあらすじを紹介します。
あらすじ①:ヴィンセントとジュールス

©1994 MIRAMAX FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.
ある日の午前7時22分。舞台はロサンゼルスです。
殺し屋のヴィンセント(ジョン・トラボルタ)とジュールス(サミュエル・L・ジャクソン)は、ボスであるマーセルスの物を盗んだ青年たちの隠れ家に行き、アタッシュケースに入れられたマーセルスの物を回収すると、裏切り者5人のうちの1人を残して全員銃で撃ち殺しました。
この時ジュールスは、反撃してきた青年が撃った銃が全て逸れたことから神の存在を本気で信じます。
↓↓『THE BONNIE SITUATION』↓↓
マーセルスの所に向かう車の中で、ヴィンセントは証人として生かしていた黒人青年マーヴィンをうっかり撃ち殺してしまいます。
車は血まみれになり、警察に見つかると言い逃れは出来ません。
8時20分頃。ジュールスはたまたま近所に住んでいた友人ジミー(クウェンティン・タランティーノ)の自宅に避難しますが、血まみれの車と死体を見たジミーは激怒して「今の状況を妻ボニーに見られたら間違いなく離婚される。彼女はあと40分で帰ってくるからそれまでに出て行け」と命じます。
ヴィンセントがマーセルスに相談すると、マーセルスは裏社会の『掃除屋』ミスター・ウルフ(ハーヴェイ・カイテル)をジミーの家に派遣してくれました。
ヴィンセントとマーセルスはウルフの指示に従ってテキパキ車と死体を処理して事なきを得ますが、着ていたスーツを血でダメにしてしまい、ジミーの私服のダサいTシャツとショートパンツに着替えるハメになりました。

©1994 MIRAMAX FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.
ミスター・ウルフと別れた後、ヴィンセントとジュールスは朝食を食べるためにレストランに入ります。
ジュールスは以前からマフィアをやめようか悩んでいて、今朝の銃弾が逸れて命拾いした件で神に感謝し、マフィアを辞めて放浪の旅に出るとヴィンセントに語りました。
ヴィンセントはジュールスが本気だとわかり動揺し、落ち着くためにトイレに行きました。
↓↓プロローグ↓↓
同じレストランの別席では、強盗カップルのパンプキン(ティム・ロス)とハニー・バニー(アマンダ・プラマー)が「銀行強盗をやめて今日からレストラン強盗になろう」と言い出すと、銃を取り出して「強盗だ!」と叫びます。
↓↓ラストシーン↓↓
ハニー・バニーが客と店員を見張り、パンプキンはレジの金を奪うと店内の客から所持品を奪って周ります。
パンプキンはジュールスからも財布とアタッシュケースを奪おうとしますが、ジュールスはアタッシュケースだけは「人の物だから」と断固拒否しました。
ジュールスは隙をついてパンプキンに銃を突きつけると、動揺したハニー・バニーはジュールスに銃を向け、トイレから出てきたヴィンセントはハニー・バニーに銃を向けて膠着状態になりました。
ジュールスは「俺の所持金1500ドルとレジの金はやるから、客の命と所持品は諦めて大人しく出ていけ」と説得し、パンプキンとハニー・バニーを帰らせた後、ヴィンセントと一緒にレストランを出ました。
あらすじ②:ヴィンセントとミア
↓↓『VINCENT VEGA & MARSELLUS WALLACE’S WIFE』↓↓
ヴィンセントとジュールスがマーセルスの居るバーに行くと、マーセルスはボクサーのブッチ・クーリッジ(ブルース・ウィリス)に八百長試合を持ち掛けていました。
ブッチはマーセルスから大金を見せられると、八百長に了承して金を受け取って出ていきました。
翌日。今日はヴィンセントがマーセルスの妻ミア(ユマ・サーマン)のお世話を任されている日です。
ヴィンセントはジュールスから「前に『世話係』をした男は、ミアにフットマッサージをしたらマーセルスが怒って4階から突き落とされ、死ななかったが脳に障害が残った」という話を聞いて「面倒な仕事を任された」と思っていました。
ヴィンセントは麻薬の売人ランスから上物のヘロインを購入し、薬をキメてからミアに会いに行きます。
ヴィンセントはミアが予約したレストランに行き、他愛もない話をしながら食事をして、レストランの催しのダンス・バトルに参加して優勝トロフィーをゲットするなど楽しく過ごして帰宅しました。
ミアに魅力を感じたヴィンセントはトイレにこもって「ミアに指一本触れず帰る」と自分に言い聞かせてからトイレを出ると、ミアはヴィンセントが買っていたヘロインを大量摂取してしまい、中毒を起こして倒れていました。
ヴィンセントは慌ててミアを連れてランスの自宅に行くと、ランスはアドレナリンをミアの心臓に直接注射するようにヴィンセントに命じました。
やけくそになったヴィンセントがミアの胸に注射を突き刺すと、ミアは無事に意識を取り戻しました。
ヴィンセントはミアを自宅に送りとどけると、ヘロインの件はお互いに内緒にする約束をして別れました。
あらすじ③:ブッチの金時計
↓↓『THE GOLD WATCH』↓↓
ボクサーのブッチはマーセルスから次の試合での八百長を頼まれてお金もすでに受け取っていましたが、試合の相手に勝つどころか殴り殺してしまい、試合が終わるとすぐに会場から逃げてタクシーに乗りました。
ブッチは最初からマーセルスを裏切るつもりで逃亡の準備をしていました。
ブッチは恋人ファビアンとモーテルに隠れ、翌日の午前11時の汽車でロサンゼルスを離れる予定でしたが、その日の朝、ファビアンがブッチの形見の金時計を持ってき忘れていることに気付きました。
ブッチは急いで自宅アパートに戻って金時計を回収すると、トイレから出て来た殺し屋ヴィンセントを撃ち殺してから素早くアパートを出ました。
ブッチは上機嫌でファビアンの所に戻ろうとしますが、最初の赤信号を待っていた時にマーセルスに見つかってしまいます。
ブッチはとっさにマーセルスを車で轢いて逃亡しようとしますが、ブッチ自身も電柱に激突して車が大破しました。
ブッチとマーセルスは血まみれで追いかけっこを続けて銃砲店に駆け込みますが、銃砲店の店主メイナードはブッチとマーセルスに恨みを持っていたらしく、2人は捕まってしまいました。
メイナードはブッチとマーセルスを椅子に縛り付け、仲間の警察官ゼッド(ピーター・グリーン)を呼びます。
ゼッドとメイナードは気に入らない人間を地下室の拷問部屋でなぶり殺しにする趣味がありました。
2人は「1人ずついたぶろう」と言い、まずはマーセルスを拷問部屋に連れて行きます。
取り残されたブッチは自力で縄をほどいて1人で逃げようとしますが、考えなおして店内にあった日本刀を持って地下室に戻りました。
ブッチが拷問部屋を覗くと、ゼッドはマーセルスを強姦している真っ最中でした。
ブッチはメイナードを切り殺してマーセルスを助けると、マーセルスは助けてもらったお礼に八百長試合に背いた件は水に流すと約束してくれました。
マーセルスは部下を呼び、これからゼッドに十分に仕返ししてから殺すつもりです。
ブッチはゼッドのバイクを盗み、モーテルに戻ってファビアンと一緒に急いで駅に向かいました。
解説・考察・感想など
窓から突き落とされた男の噂の真相は?

©1994 MIRAMAX FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.
ヴィンセントがジュールスから聞いた噂は、「ミアの足をマッサージした男はマーセルスに窓から突き落とされた」というものでした。
ヴィンセントがミアに真相を聞くと、ミアはまず「彼とエフワーク(FUCK)したから」と言い、マーセルスが怒った原因は『足のマッサージ』ではないと否定します。
しかしヴィンセントが「本当は何があった?」と追及してもミアは答えませんでした。
ミアの言い方からすると、恐らくミアはマーセルスの部下と浮気をしてしまい、マーセルスにバレたのではないかと個人的には思います。
マーセルスは部下に妻を寝取られたと知られては立場がないので、ヴィンセントの時のようにミアと真相は言わないと『約束』していたのではないでしょうか。
マーセルスもミアも『エフワーク』が具体的に何なのかを明かさなかったため、『”F”ワーク=FUCK』ではないだろうと思った部下の誰かが『”F”ワーク=Footmassage』と予想して、それが広まっていたのではないかと勝手に思っています。
真相はさておき、ヴィンセントとジュールスは『妻にフットマッサージをした部下に切れるのはアリかナシか』という議論で盛り上がります。
ジュールスは『マッサージはエロくないから噂が本当ならマーセルスは気が短すぎる』と言うのに対し、ヴィンセントは『フットマッサージはエロいからマーセルスが怒るのもわかる』と言います。
この議論では、ヴィンセントの「男にもマッサージするのか」という質問にジュールスが答えなかったため、ヴィンセントに軍配が上がりました。
ジュールスが本当にマッサージがエロくないと思っているのなら、マッサージをする相手の性別は関係ないはずだからです。
馬鹿馬鹿しい話題なのに、ヴィンセントとジュールスの会話は面白かったです。
世の中には秘密は秘密のままの方が妄想や議論が膨らんで面白いことも沢山あるということなのかもしれません。
マーセルスのアタッシュケースの中身は?

©1994 MIRAMAX FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.
ヴィンセントとジュールスが青年たちから取り戻したアタッシュケースの中身は何だったのでしょうか。
一部のファンの間では『アタッシュケースの中身はマーセルスの魂だったのでは』という推理があるようです。
この推測はマーセルスが首の後ろに大きなカットバンを貼っている点と、アタッシュケースの開錠番号がヨハネの黙示録に登場し、悪魔だったり欲深い人間を意味するとも言われる謎めいた数字『666』だからです。
タランティーノ監督は中身について『あなたが望むものが入っている』とコメントしているので、答えは個人の想像にお任せされています。
個人的にはカバンを開けた時の色味だったり、パンプキンが中を見た時の表情などから、ありきたりでつまらないですが『金の延べ棒』なんじゃないかなと直感的に思いました。
ジュールスはどうなった?

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ジュールスはマフィアから足を洗って旅に出るとヴィンセントに話していて、バーでトイレに入った後のジュールスは登場しませんでした。
マフィアを辞めるのは簡単ではないと思うので、ジュールスがどうなったのかはわかりませんが、ブッチの自宅で待ち伏せしていたのがヴィンセントだけだったので、ジュールスは穏便退職して旅に出ていることを祈ります。
次のページに続きます!
2ページ目は『メイナードとゼッドの恨みとは?』『タイトルの意味』『その他の豆知識』などです。
2ページ目
メイナードとゼッドがブッチとマーセルスに怒っていたのはなぜ?

©1994 MIRAMAX FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.
ゼッドとメイナードがブッチたちを恨んでいたのは、恐らく例の八百長試合でゼッドとメイナードが大損したからです。
ブッチが電話ボックスで弟に電話しているシーンから、ブッチは八百長を利用して大儲けしていたことが判明します。
ブッチは自分自身のオッズを上げるために、恐らく八百長の噂を意図的に広めました。
自分の試合で自分に賭けることはできないので、ブッチは弟だけに計画を打ち明けて、弟が代わりに大金をブッチに賭けて、払戻金を山分けする予定だったのです。
そうすればブッチはマーセルスから受け取った八百長代金と、ボクシング試合の賭けで得られるお金のダブルで儲かります。
そして、ブッチの計画の被害者になったのがメイナードとゼッドです。
この2人は恐らくブッチが試合に負ける八百長話を聞きつけて、勝つ予定だったボクサーの方に結構な金額を賭けて損してしまったのでしょう。
タイトル『パルプ・フィクション』の意味は?
(1)柔らかく湿った形状の無い物体
(2)質の悪い紙に印刷された扇情的な出版物
冒頭、『パルプ(pulp)』という単語そのものの意味が明記されます。
もう少し補足すると、パルプは紙製品に広く使われる植物繊維でもあります。
『フィクション』は『創作』『作り話』という意味があり、映画や小説好きなら目にする機会が多い単語です。
登場人物の中で最も『パルプ』に触れていたのはヴィンセントでした。
『柔らかく湿った形状の無い物体』は具体例が思い浮かばないので置いときますが、ヴィンセントがトイレで読んでいた本は、本の表紙の雰囲気からして『扇情的な出版物』だと思われます。
(2)に注目すると、タイトルはヴィンセントの生きる世界だったり、多くの登場人物たちの雰囲気そのものを表していたように感じました。
主人公ヴィンセントやマーセルスは裏社会にどっぷり浸かっていますし、ミアは裏社会のボスと結婚していて麻薬がやめられず、ゼッドとメイナードなどカタギな職業のはずの彼らには裏の顔があったり、ブッチは私欲に溺れて裏の裏をかく悪だくみをしてみたり、”F”ワードが頻繁に飛び交うなど、広い意味で彼らは『質の悪い扇情的な世界(パルプな世界)』に生きています。
そういう目で見ると、本作のDVDの表紙も『パルプ(扇情的な本)』を意識して作られていることに気付きます。
そんな中、ジュールスだけはパルプな世界から脱却しようと努力していました。
ジュールスは生きていることを神に感謝し、強盗(パンプキン)に銃を突きつけられた時は、今までなら迷わず返り討ちにしていたところでしょうが、殺意をこらえてパンプキンを説得し、有り金を全部渡してパンプキンの命を買ったことにしてお互い無傷で店を出ています。
ジュールスはまともに生きる決心をしたので、パルプの世界から抜け出したのです。
だからジュールスはトイレに入って以降登場しなかったのではないでしょうか。
逆にヴィンセントがトイレから出た直後にブッチに撃たれてあっさり死んでしまうのは、パルプな世界に染まり切った人間の末路が暗示されていたように思います。
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