映画「おまえの罪を自白しろ」のあらすじ紹介、解説考察を書いてます!
「清治郎の罪振り返り」「若鷺議員との利権争い」「木美塚幹事長との話し合いの意味」「原作小説との違い」などについて書いています。
鑑賞済みの方のための考察記事です。まだ見ていない方はネタバレにご注意ください。
制作年:2023年
本編時間:113分
制作国:日本
監督:吉田大八
脚本:吉田大八、植野一郎
原作小説:「おまえの罪を自白しろ」真保裕一 著
主題歌:「Dark Rainbow」B’z
キャスト紹介
宇田 晄司…中島健人
衆議院議員の宇田清治郎の次男であり秘書。
父の跡を継ぐのが嫌で東京で自ら会社を興したが、失敗して清治郎の秘書になる。
晄司の姪の柚葉が誘拐され、救出と犯人捜しに奔走する。
※中島健人の他出演作…「黒崎くんの言いなりになんてならない」シリーズ、映画「桜のような僕の恋人」など
宇田 清治郎…堤真一
埼玉15区の衆議院議員。
孫娘を誘拐され、犯人から「罪の自白」を強要されて政治家生命を脅かされる。
※堤真一の他出演作…ドラマ「やまとなでしこ」、映画「容疑者Xの献身」など
平尾 宣樹…山崎育三郎
柚葉の誘拐事件の担当になった埼玉県警捜査一課の刑事。
過去に清治郎絡みの汚職事件を担当したが、もみ消され泣き寝入りさせられた過去がある。
※山崎育三郎の他出演作…「イチケイのカラス」シリーズ、ドラマ「あいの結婚相談所」など
宇田揚一郎(晄司の兄)…中島歩
神谷美咲(ジャーナリスト)…美波
緒形恒之(麻由美の夫)…浅利陽介
牛窪(清治郎の秘書)…山崎一
高垣警視正(平尾の上司)…三浦誠己
平尾の上司…尾美としのり
寺中初美(緒形恒之のボランティア職員)…尾野真千子
初美の弟…柏原収史
柚葉…佐藤恋和
刑事…中村歌昇、藤本隆宏
大橋彰(清治郎の秘書)…アキラ100%
若鷺(清治郎と対立する政治家)…池田成志
安川総理…金田明夫
官房長官…升毅
草川(清治郎の名誉後援会長)…平泉成
木美塚(党幹事長)…角野卓造
城山議員(官房長官の使い)…矢柴俊博
小菅議員(〃)…橋本じゅん
初美の父…春海四方 ほか
あらすじ紹介
あらすじ①:
主人公の青年 宇田晄司(中島健人)は、埼玉15区で衆議院議員を務める宇田清治郎(堤真一)の実の息子です。
晄司の兄の揚一郎(中島歩)も、義理の兄の緒形恒之(浅利陽介)も政治家です。
晄司は政治の世界を嫌い、父の反対を押し切って東京でデザイン系の会社を興しましたが失敗し、半年前から実家に戻って清治郎の秘書をしています。
清治郎はいま世間を騒がせている『上荒川大橋建設に関して安川総理の友人の会社が優遇された疑惑』について野党やマスコミをはじめとする世間全体から真相の告白を求められていますが、知らぬ存ぜぬを貫き通しています。
そんなある夏の夕方、晄司の姪っ子にあたる3歳の緒形柚葉が誘拐される事件が起こります。
柚葉がいなくなって数時間後、清治郎のスケジュール管理アプリがハッキングされて誘拐犯らしき人物から脅迫状が届きました。
それは「宇田清治郎は明日の17時までに記者会見を開き、政治家として犯してきた罪を自白しろ」という内容でした。
警察はすぐに捜査本部を立ち上げ、捜査一課の平尾(山崎育三郎)たちは「清治郎に恨みを持つ者の犯行」と見て捜査を始めますが、清治郎は職業柄恨まれやすく、犯人像や動機も推理が難しく捜査は難航します。
清治郎は記者会見を開くしかなくなりますが、胸を張って法を犯したことはないと言える政治家でもありません。
清治郎はこの大ピンチを切り抜けるべく、安川総理大臣(金田明夫)に「指揮権発動」を打診します。
指揮権とは法務大臣が検察官に対して特別な働きかけができる権限で、平たく言うと指揮権が発動すれば清治郎は法に触れる罪を自白しても逮捕されません。
しかし安川は何かと理由をつけて返答を後回しにします。
あらすじ②:
刑事の平尾は誘拐の動機は宇田清治郎への怨恨の線が強いと見て、清治郎の再開発計画が進めば被害を被ることになる上荒川沿いの青少年研修センターに話を聞きに行きます。
聞き込みの結果、この研修センターの職員も、センターの利権を握る若鷺議員も再開発に猛反対していることはわかり、さらに誘拐事件が起こる直前に研修センターの駐車場から白い軽自動車が盗まれていたこともわかりますが、平尾には利権争い程度で誘拐まで発展するとは思えず捜査は難航します。
そうこうするうちに犯人が指示した時間になり、清治郎は指揮権発動の確約をもらえないまま1回目の記者会見を開きます。
清治郎は記者会見で2つの罪を自白します。
1つは『約7年前に清治郎の資金を着服した当時の秘書をリンチして全治1カ月の重傷を負わせて解雇した件』
もう1つは『約4年前に清治郎が福島県のバイパス道建設に関わった際、清治郎の友人の会社を密かに優遇していた件』でした。
マスコミも晄司たち身内も、例の『上荒川大橋の件』で清治郎が真相を打ち明けることを期待していたので、清治郎が当たり障りのない自白しかしないことに憤ります。
追い打ちをかけるように犯人から脅迫文が届きます。
『他にも罪があるはずだ 明日もう一度記者会見を開いて罪を自白しろ ちゃんと自白しなければ柚葉の命は無い』と書かれていました。
あらすじ③:
清治郎のあくまでも安川総理を守ろうとする姿勢に焦りを感じた晄司はあるアイディアを思いつき、そもそも上荒川大橋と総理の件を野党にリークした人物を追いかけて木美塚幹事長(角野卓造)にたどり着きます。
木美塚は次期総理の座を狙い、安川総理を解任に追い込もうと暗躍しています。
晄司は木美塚と2人きりで話す場を設けてもらうと、「宇田一族は木美塚幹事長のために安川現総理を解任に追い込む手助けをします その代わり、総理になった暁には宇田一族を助けてほしい」と密約を交わしました。
これで清治郎は安川を守る理由がなくなりました。
犯人の指定通りに2度目の記者会見を開いた清治郎は、上荒川大橋の真相を暴露します。
それは『清治郎は安川総理に頼まれて、橋の建設ルートを総理の友人の会社の土地を買収するルートに強引に変更した 総理は見返りに出世を約束してくれた』という内容でした。
2度目の記者会見の後、誘拐犯から柚葉を返すと連絡があり、柚葉は上荒川の河川敷で無事に保護されました。
清治郎の暴露会見の影響で清治郎は辞職、安川は総理解任に追い込まれました。
あらすじ④:
晄司は柚葉を誘拐した犯人の狙いは、清治郎の再開発計画を白紙にするためだったのではないかと推理して平尾刑事に犯人逮捕に関する協力を求めます。
その後、晄司、清治郎、揚一郎(晄司の兄)、緒方恒之(晄司の義理の兄)は3度目の記者会見を開き『揚一郎が清治郎の跡継ぎとなり、再開発計画を実現させる その第一歩として研修センターの地盤調査を自費で行う』と発表しました。
数日後の深夜。研修センター付近に多くの警察官と晄司が張り込む中、怪しい2人組が黒いバンで現れ、研修センター裏の河川敷を掘り始めました。
警察が2人を取り押さえると、1人は恒之のボランティア職員の寺中初美(尾野真千子)、もう1人は初美の弟のいさお(柏原収史)でした。
柚葉を誘拐して清治郎に脅迫文を送ったのはこの姉弟であり、河川敷から掘り出そうとしていたのは2人の実の父親の死体でした。
今から十数年前に上荒川大橋の建設計画が立った際、初美の父親が経営する工場は最初の建設予定地内にありました。
父親といさおは工場を移設ついでに拡大しようと考え、政府からもらえる予定の補助金をあてに借金して移設用の土地を購入しました。
しかしその後、橋の建設予定地が変更になり工場は予定地から外されて寺中親子は借金地獄に陥ります。
父親といさおはもみ合いの喧嘩になり、父親が階段から落ちて死んでしまう事故が起きました。
逮捕を恐れたいさおと初美は研修センター裏の上荒川河川敷に父親の死体を埋め、警察には捜索願を出して失踪扱いにすることで完全犯罪にしようとしました。
それから10年以上が経ち、死体を埋めたことも忘れかけた頃に清治郎が再開発計画を発表します。
その再開発で研修センターをいじることを知った初美といさおは、清治郎が失脚すれば再開発計画は白紙になるに違いないと考え、清治郎の孫である柚葉の誘拐を企てました。
清治郎も平尾刑事も、すべてを解決して丸く収めた晄司の賢さに舌を巻きました。
その後、次の選挙で木美塚が新総理に就任し、晄司は議員に選ばれました。
晄司は政治家としての頭角を現しめきめき出世していきます。
解説・考察・感想など
豪華キャストに惹かれて見に行ってきました。
思っていたより複雑で私のような政治にうとい者には特に複雑で混乱したので、宇田清治郎が自白した罪をメインに内容を整理します。
上荒川大橋に関する問題
映画冒頭で、清治郎は上荒川大橋の建設予定地の変更が総理と友人企業の癒着ではないかと問い詰められていました。
上荒川大橋の建設予定地は清治郎の働きかけで建設開始直前に5kmずれた場所に変更になりました。
変更後の土地には総理の友人の会社の土地があり、この会社には売値相場の何倍もの大金が舞い込みました。
清治郎は知らぬ存ぜぬを貫いていましたが、この案件は誘拐をきっかけに清治郎の政治家声明を脅かすことになります。
清治郎の孫誘拐と脅迫状に対する政治家たちの反応
清治郎は記者会見を開く前に総理に指揮権の発動を要求しますが、総理は検討中と返事したまま放置します。
指揮権が発動すれば、清治郎は罪を公表しても逮捕されません。
内閣側は清治郎が会見で何を言うつもりなのか確かめてから判断しようと使者を送って聞き出そうとしますが、清治郎は使者に詳細を話すことを拒みました。
内閣側としては清治郎の罪の内容によっては世間から大きな批判を受けることになるため傍観者に徹します。
また、指揮権を確約しないことで清治郎が上荒川大橋について暴露するのを防ぐ意味もあったと思われます。
清治郎の言い分は「今まで総理のために汚れ仕事を引き受けてきたのでこう言う時こそ助けてほしい」でしたが、総理に無視されてしまったということです。
宇田清治郎の罪1:元秘書への暴行
清治郎が1度目の記者会見で暴露した罪です。
7年前、清治郎は当時の秘書だった井上という男を殴って全治1ヶ月の重傷を負わせました。
井上は当時開かれた祝賀会で入場券を無断で水増しした上、支援者から代理で受け取った献金を誰にも報告せず合計数百万円を着服したからです。
清治郎は井上が着服した金を退職金と治療費代わりに与えてクビにしました。
宇田清治郎の罪2:福島のバイパス道
こちらも1度目の記者会見で清治郎が自白した罪です。
4年前、当時復興副大臣だった清治郎は福島県で復興予算を投じてバイパス道が建設された際、青柳建設の子会社が所有する駐車場を買い上げるルートに強引に変更しました。
清治郎は青柳建設の社長とは大学の先輩後輩の関係で、青柳の会社が経営難だと聞かされて青柳に利益が入るように動いたようです。
清治郎と若鷺の対立
刑事の平尾(山崎育三郎)は清治郎の後援会長の草川(平泉成)から話を聞き、清治郎と対立関係にある若鷺議員を調べます。
清治郎は埼玉県下にある競艇場を老朽化を理由に、現在青年研修センターのある場所に移設して、競艇場のある場所には巨大複合施設を建てる計画を進めていました。
その際、青年研修センターは潰す予定になっています。
この研修センターの利権は若鷺議員が握っていたため、若鷺は清治郎の計画に大反対していましたが、内々の話では清治郎の計画は確定したと言われていました。
清治郎が失脚したら競艇場と複合施設の計画が白紙になるため、若鷺は清治郎がいなくなれば一番得する者として疑われますが、真犯人は別にいました。
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2ページ目は「晄司が木美塚(角野卓造)に接触した目的」「上荒川大橋の真相」「犯人と動機振り返り」「原作小説との違い」です。
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映画の進みが早くてイマイチ理解できていなかった部分が、記事のおかげで腑に落ちました!
本当にありがとうございます。