映画『空白』ネタバレ解説|タイトルの意味、痴漢の真相、青柳のウソ、草加部の正義など考察! | 映画の解説考察ブログ

映画『空白』ネタバレ解説|タイトルの意味、痴漢の真相、青柳のウソ、草加部の正義など考察!

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ヒューマンドラマ

映画『空白』の解説、考察をしています!

鬱展開が続いて中々しんどい作品ですが、ラストの良い意味のギャップで涙腺崩壊した素晴らしい作品です。

タイトルの意味や主要人物の行動理由を主に考察しています。

鑑賞済みの方向けの解説考察記事です。
まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。

 

映画『空白』概要紹介

空白

制作年:2021年
本編時間:107分
制作国:日本
監督・脚本・原案:吉田恵輔
本作はPG-12の年齢制限があります。
理由は未成年の万引きシーンがあるためです。(映倫HP参照)

 

あらすじ

空白
©︎2021『空白』製作委員会

愛知県蒲生市で『スーパーアオヤギ』の店長を勤める青柳直人は、マニキュアを万引きしていた女子中学生の添田花音を捕まえました。
花音が突然逃亡したので青柳が追いかけると、彼女は道路を横切ろうとして軽自動車と大型トラックに連続で轢かれて死亡してしまいます。

花音は父親の添田充と二人暮らしでした。
元々パワハラ&クレーマー体質の添田は花音の万引きを認めず、青柳と中学校に次々に無理な要求をして花音の無念を晴らそうとします。

主要人物

添田充…古田新太
事故で死亡した中学生の父親の漁師。
仕事は出来るがパワハラとクレーマーの気質があり、家庭でも仕事でも恐れられている。

青柳直人…松坂桃李
スーパーアオヤギの店長34歳。
お店は他界した両親から継いでいる。
ネガティブな発言が目立つ。

添田花音…伊東蒼
事故で亡くなった中学生。
家では常に充の顔色を窺い、学校でも自己主張が全く出来ず空気扱いされていた気弱な女の子。
実母の翔子にだけは懐いていた。

草加部麻子…寺島しのぶ
スーパーアオヤギのパート店員。
青柳に好意を抱いている。
態度がどこか押しつけがましく「正しいか正しくないか」に執着する傾向がある。

野木龍馬…藤原季節
添田の弟子。添田の仕事ぶりは認めているが、添田の厳し過ぎる指導について行けず辞めようか悩んでいる。

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解説・考察

それぞれの『空白』

タイトルの『空白』と関連づく内容で最初に思いつくのは、添田が花音に無関心だったことを自覚して、花音について知らなかった空白部分を埋める作業を始めることです。

花音の学校での他の生徒からの印象が無いに等しかったことも『空白』を連想します。

青柳は自己評価が異常に低いタイプのようだったので、彼が今まで生きてきた人生そのものが空白だったように感じられました。
ラストの常連さんの言葉で救われて本当に良かったです。

野木の空白は実父との関係だったと感じます。

花音の母の翔子は花音を失ったことで空白が生まれたように思います。
主要人物の中では夫も子供もいて一番幸せな状況だったかもしれません。

草加部の空白は、彼女が信じる『正義』の中身が空っぽだったことや、独身で寂しさを抱えていた部分になるでしょうか。
でもどちらかというと空白ではなくドロドロした何かのような気もします。




入れ替わる被害者と加害者

誰もが被害者であり加害者でもあり、単純に善悪はっきり付けられないのが特徴というか、そういう描き方が吉田監督は得意なのかなとも思いました。

花音は事故の被害者でもあり、万引きの加害者でもありました。

添田は娘を失った親という被害者でもあるし、花音の人格形成に多大な影響を与えて万引きの原因を作っていた加害者でもあります。

青柳は店の万引き被害、マスコミから悪意ある情報操作を受けた被害者であると共に、花音をしつこく追いかけて事故に遭わせてしまった加害者でもあります。

学校はモンペ添田のしつこい追及を受けた被害者でもあり、責任逃れと責任転嫁に必死な加害者でもありました。

マスコミが受けた被害は特に思い当たらないので加害者オンリーかもしれません。

 

添田と翔子が離婚した理由

2人が離婚したのがいつ頃なのかはわかりませんが、翔子は現在の夫の子どもを身ごもるまでに不妊治療と人工授精で苦労していたようなので、花音が小学生か、もっと以前には離婚していたと思われます。

翔子が添田の家に線香を上げに来た時、添田は「鬱とか、もう大丈夫なのか?」と心配するそぶりを見せています。
恐らく彼女の鬱と離婚の原因は添田の素行が原因だったのではと思われますが、添田が彼女の鬱の原因を考えたことがあるかどうかは不明です。

花音のことで成長してからの添田なら、翔子との関係でも反省すべき点を考えるようになるかもしれません。

 

青柳は本当に悪くなかったのか

空白
(花音の手を掴む青柳 ©︎2021『空白』製作委員会)

ラストで添田と青柳が話をした時、添田は「お前に対する疑念が晴れない」と主張していました。

実際、青柳は保身のために小さな嘘をついていました。
添田に事故現場で事故を再現させられた時、青柳は事故の直前の2人の距離をかなり離れていたかのように説明していましたが、実際には手が届く程の距離にいました。
恐らく添田に「お前が突き飛ばして殺した」などいちゃもんを付けられることを恐れたのでしょう。

花音がスーパーに居た時を思い出してみると、花音が実際に商品をポケットやカバンに突っ込むシーンは一切無く、青柳が突然花音の手首を掴んだのが印象的でした。

実際に花音は部屋に化粧品を隠し持っていて、添田も「万引きしたかもしれない」ところまで認めているので、あのクマの中には花音のお小遣い以上の化粧品が詰まっていたのでしょう。

もしかしたら青柳は、過去に花音が店で万引きするのを目撃したものの何らかの理由で見逃してしまい、事故の日は、花音はまだ万引きしていなかったけれど、どうせするだろうと高を括って捕まえてしまい、問い詰めていたら花音が逃げた、という流れだったのではないでしょうか。

事務所での青柳と花音のやり取りが一切無かったのがモヤモヤしますが、青柳はそういう小さな罪を隠していたんじゃないかな~と思いました。




校長の対応と青柳の噂の真相


©︎2021『空白』製作委員会

校長が添田に青柳の痴漢疑惑をリークしたのは、モンペと化していた添田の意識を学校から逸らすためです。

痴漢疑惑のソースは、青柳が見ていた匿名掲示板に書かれていた内容『こいつ重度のロリコンらしいよ 近所のJKがスーパーで痴漢されたって』という書き込みです。
現実味を増すために、校長は匿名掲示板の情報だということも明かさず『この学校の生徒の姉が3年前に痴漢された』など、書かれていなかった情報まで付け加えていました。

青柳がロリコンであるかのような描写は私が見た限り無かったのでデマだと思いたいですが、彼の正体が実はロリコンの痴漢魔か、誤解されやすいだけで普通の真面目な人だったのかどうかは見た方の感じ方によって別れる所です。

 

美術部顧問の『ズルい』とは?


©︎2021『空白』製作委員会

※添田と教師達が花音の事件で初めて接した前提で書いてます。

花音の担任だった今井(趣里)は、花音を『やる気が見られない』などと何度も叱ったことを後悔するような発言をします。
すると、美術部顧問(和田聰宏)は「今になって理解者ぶるのはズルい」と批判しました。

恐らく今井は添田と接したことで花音の人格形成の過程を何となく察して、今井自身が今まで花音の家庭環境や性格を理解せずにただ叱り続けてきたことも、彼女の万引きの原因のひとつになってしまったのではと反省したのでしょう。

そんな今井を美術部顧問が『ズルい』と言うのは、彼女が偽善者のように見えたからです。
今井は花音にどう接してきたか真剣に振り返って教師としての在り方などを反省し、改めたつもりでしたが、美術部顧問は今井が思い至ったような、花音の家庭環境や万引きの原因について考える気は全くありません。

なので、顧問には『今井も今まで花音をよく思っておらず厳しく接していたくせに、死んだら態度をコロッと変えたズルいやつ』に見えたのではないでしょうか。
美術部顧問と校長にとっては『問題のあった生徒が問題を起こして勝手に死んだ』程度の事柄だったのです。

それに校長も美術部顧問も学校の責任逃れに必死なので、花音の死にも添田の気持ちにも寄り添う気は無さそうです。

次のページに続きます!

後半は『添田をよく知る人物とは?』、『野木が添田を気にする理由』、『添田が中山楓を無視した理由』、『添田が改心した理由』、『草加部について』、『青柳が土下座した理由』などです! 




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