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ヴァージャーの職業は?
ヴァージャーの生業は一切登場せず地味に気になっていたんですが、原作小説には彼について詳しく書かれていたので紹介します。
ヴァージャーは父親の代から食肉加工業で財を成した大富豪でした。
特に養豚に力を入れていたので、ヴァージャーが豚(イノシシ)にレクターを食べさせようとしていた理由もこれでスッキリしました。
腕のレントゲン写真の意味
ヴァージャーは、ハンニバルがかつて収容されていた医療刑務所の用務員だった黒人バーニーからハンニバルグッズ(噛みつき防止マスク)を購入していました。
ヴァージャーがクラリスにハンニバルの腕らしきレントゲン写真を見せたのは、バーニーがハンニバルに関する証拠品をたくさん持っていることを示し、証拠集めに活用させようとしていたと思われます。
バーニーは何をしていた?
クラリスがハンニバル・レクターに関する資料集めのために接触したバーニーは、レクターがボルティモア州立精神病院に収容されていた頃の様々なグッズをその手のコレクターに高値で売りさばいていました。
バーニーの行為は恐らく違法なので、彼は身元を隠すために売買する時は『カレン』と偽名を使っていたようですが、クラリスは事前にバーニーとカレンのサインを筆跡鑑定にかけてバーニー = カレンだと証拠をつかんだ上で会いに行っていました。
クラリスがカレンの名前や筆跡鑑定の結果を口にしたのは「調子に乗り過ぎると逮捕されるわよ」という忠告です。
しかし、クラリスはバーニーが証拠品を保管していてくれたおかげで当時の会話の録音、監視カメラの映像などを大量ゲットできました。
バーニーがなぜ転売していたのかはわかりませんが、彼自身が特に贅沢をしていたわけでもなく、鳩の死体を弔う優しい心の持ち主なので、何かやむをえない事情があるのでしょう。
それがクラリスにも分かったので、彼の罪について深く追求しませんでした。
ちなみに原作小説では、バーニーはレクターの影響でフェルメールのファンになり「フェルメールの絵を全部見るのが夢」とも語っていたので、単純に自分の夢のために貯金しているだけの可能性もあります。
ハンニバル・レクターはなぜ金持ちだった?
そういえば、レクター博士は長年にわたる収監と10年の逃亡生活をしてたのに、お金に困っている素振りは無かったですし、ボルティモアに来てからも高そうな銀食器を一式まとめ買いしていて、そのお金はどこから来るのか疑問でした。
原作小説には答えが書かれていて、レクターは精神科医として活動していた頃、数人の大富豪を患者に抱えていました。
レクターはその患者たちを言いくるめて巨額の財産を譲り受け、この時の金を逃亡資金にしています。
警察はレクターの元患者の法的手続きの履歴からこの情報を得たものの、レクターが財産をどこに隠しているのかはわかっていません。
ハンニバル・レクターはどんな人を食べるのか
レクターが人を食べるのは『礼儀に著しく欠ける人を侮辱するため』もしくは『人々への奉仕のため』と語られていました。
レクターは礼儀を重んじるため、礼儀に欠ける人が大嫌いです。
メイスン・ヴァージャーはレクターの嫌いなタイプそのものだったように思えたので、当時なぜ自分で食べずにあえて犬に食べさせたのか地味に疑問です。
また、レクターは芸術や音楽を愛していて、それを乱されることも嫌います。
レクターが以前調理した一人はオーケストラのフルート奏者でしたが、その奏者は演奏が下手で、彼がオーケストラにいる事で演奏が台無しになっていました。
レクターが彼を殺したことで新しいフルート奏者が入ると演奏は美しくなり、オーケストラは以前よりも人気になりました。
宙返り鳩
ターンには深い浅いがあって 両親とも深いターンをする鳩だと その子鳩は地面に激突して死ぬ
スターリングは深いターンをする 片親がそうでないことを
レクターは医療刑務所に収容されていた当時、クラリスを宙返り鳩に例えていました。
博士の感性が独特すぎて難しいですが『深いターン』とは、クラリスの1つの事に熱中しすぎる傾向だったり、正義感と良い意味での自己犠牲の強い性格を指していたのではないでしょうか。
言い換えると『クラリスが理想や信念を突き詰め過ぎて、いつか立ち直れなくなる程の大きな失敗をしたり、その性格が災いして若くして命を落とすことにならないか心配』という意味の例え話だったのではないかと解釈しています。
パッツィ刑事はなぜ花形部署から移動になった?
フィレンツェ警察のパッツィ刑事は元は出世街道に乗っていた殺人事件担当の刑事でしたが、何かがあって殺人事件から失踪人捜索担当に左遷されていたことがレクターの発言からわかるものの、その詳細は明かされませんでした。
こちらも原作小説には答えがあったので載せておきます。
パッツィは当時カップルばかりを狙う連続殺人犯『イル・モストロ事件』の捜査をしていて、世間からも上司からも犯人逮捕を急かされていましたが、手がかりはほぼ皆無でした。
パッツィは被害者の遺体の状態が とある絵画を模していることに気付き、同じ絵画を部屋に飾っていた強姦などの前科持ちの男を犯人と決めつけて逮捕しました。
パッツィは裁判で使う証拠を強引に作り上げて男を有罪に導き出世しますが、この男は犯人ではありませんでした。
数年後、逮捕された男の弁護人が再審請求したことでパッツィは証拠偽装、冤罪逮捕の容疑で断罪されます。
パッツィは世間からのバッシングを受け、日頃からパッツィを妬んでいた同僚からもここぞとばかりに反撃を受け、今の地位に落ち着きました。
パッツィが逮捕した男は冤罪が確定して釈放され、結局『イル・モストロ事件』の真犯人は未だ捕まっていません。
ちなみにイル・モストロ事件は『フィレンツェの怪物事件』とも呼ばれ、フィレンツェで実際に起きた未解決の連続殺人事件です。
Wikipedia:フィレンツェの怪物事件
伏線:フェル博士のプレゼンテーマ『強欲』
レクターはカッポーニ宮図書館の司書としての本採用をかけたプレゼンで、七つの大罪から『強欲』について取り上げました。
このプレゼン内容は、パッツィ刑事の末路を仄めかす伏線です。
パッツィ刑事に嗅ぎまわられていると気付いたレクターは、フィレンツェでの暮らしを捨てざるをえないと悟りますが、自分のために集まってくれる人たちのために、礼儀としてプレゼンはやり通すことにしました。
そしてそのテーマにパッツィの罪である『強欲』を選び、暗示的に警告していたのです。
レクターのプレゼンでの発言「中世では強欲の罰は縊死(首吊り)だった」「私は我が家を絞首台にした」は、レクターの我が家になるはずだったカッポーニ宮図書館を絞首台にして、パッツィを縊死により罰する犯行を暗示しています。
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次はサムソンの謎、ライオンの中の蜜、原作小説との違いなどです。
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