映画『アナザーラウンド』の解説・考察をしています!
体育教師トミーに何があった?本作テーマなどについて書いています。
鑑賞済みの方のための記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。
制作年:2020年
本編時間:117分
制作国:デンマーク
監督:トマス・ヴィンターベア
脚本:トビアス・リンホルム、トマス・ヴィンターベア
≪U-NEXT≫で『アナザーラウンド』が見られます! 31日間無料キャンペーン実施中。
※※このページの情報は2023年5月時点のものです。最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。
キャスト紹介
マーティン…マッツ・ミケルセン
デンマークに住む歴史の高校教師。
学校では生徒に軽視され家庭でも置いてけぼりで孤独を感じている。
同僚ニコライの提案でアルコールの心理学実験に参加する。
トミー…トマス・ボー・ラーセン
マーティンと同僚の体育教師。バツイチ独身。
アルコール実験に参加する。
ニコライ…マグナス・ミラン
マーティンと同僚の心理学教師。子持ちの既婚者。
マーティンたちにアルコールの実験を提案する。
ピーター…ラース・ランゼ
マーティンと同僚の音楽教師。独身。
アルコール実験に参加する。
アマリー(ニコライの妻)…ヘレン・レインガード・ニューマン
校長…スーセ・ウォルド ほか
あらすじ紹介
主人公のマーティン(マッツ・ミケルセン)は冴えない中年高校教師です。
高校では歴史を教えていますが、生徒たちはマーティンの授業に全く興味を示さないどころか「担当を変えろ」とまで言いだす始末です。
家庭でも、妻アニカは看護師で夜勤が多くすれ違いから関係は冷え切り、2人の息子たちも思春期に入ってからはろくに口をきいてくれなくなっています。
そんなマーティンは40歳の誕生日を迎え、同僚で同世代の教師ニコライ(マグナス・ミラン)、トミー(トマス・ボー・ラーセン)、ピーター(ラース・ランゼ)がレストランでお祝いしてくれることになりました。
レストランでニコライが「ノルウェー人の哲学者が『血中アルコール濃度は常に0.05%が理想で、そうすれば人生はうまく行く』と言っていた」と言い出し、マーティンは車で来たのでお酒を飲まないつもりでしたが、友人たちの強引な説得に負けてお酒を飲んでしまいます。
するとマーティンは開放的な気分になり、久しぶりに『楽しい』と思える時間を過ごしました。
数日後、マーティン、ニコライ、トミー、ピーターはノルウェー人哲学者ウィン・スコルドゥールが提唱していた『血中アルコール度は常に0.05%が理想』という仮説を検証するために『飲酒が心と言動に影響を及ぼすかどうか』『飲酒で仕事の効率と意欲が向上するかどうか』を検証してみることにします。
勤務中は常に血中アルコール度数を0.05%程度に保ち、夜8時以降と休日は禁酒することをルールにしました。
マーティンは初日こそ授業中にろれつが回らなくなりましたが、数日経つと饒舌になって歴史に関する面白い小話が出来るようになり、徐々に生徒たちから一目置かれるようになります。
他の3人も同様で、常にほろ酔い気分で仕事をするとリラックスでぉて全てが上手く行きました。
調子に乗った4人は血中アルコール度数を0.05%に留めるルールを廃止して、好きなだけお酒を飲んでも良いことにします。
すると、徐々にマーティン達の生活に悪い変化が起こり始めます。
解説・考察・感想など
主演のマッツ・ミケルセンはフォーマルやモダンコーデが似合い過ぎるせいか、授業の時のラフなチェックシャツ姿がびっくりするほど似合わないのが印象的でした(残念だったわけでないです)
テーマについて、トミーに何があったかについて考えます。
テーマは『お酒とのつきあい方』
原題の『Druk』は『酒飲み』という意味のデンマーク語です。
お酒との上手な付き合い方です。
デンマークに限らずヨーロッパ圏の人々は年間の飲酒量上位国をほぼヨーロッパの国々で埋め尽くすほどお酒が大好きです。
また、エンドロールに『デンマークでは16歳から飲酒が許されます』と注意書きが出ていたので、音楽教師のピーターが生徒に飲酒を勧めることは学校の規則や倫理的に問題はあっても法を犯してはいないのです。
彼らの重要な場面には常にお酒がありました。
普段はお酒を飲まなかったマーティンは飲酒で心が開放され、どちらかというと飲酒した時の方が本来のマーティンで居られていたようです。
妻アニカにも、良くも悪くも感情をぶつけて素直になるという行動が取れるようになりました。
感情をぶつけた結果離婚の危機に陥っていましたが、今まで通りお互いに避け続けて冷めきった結婚生活を続けるのとどっちがマシかを考えると、感情をぶつけて離婚の方が個人的には良かった気がします。
つまり、マーティンはお酒で人生が良いものになり救われた側の人間です。
音楽教師のピーターもお酒のおかげで明るくなれて彼女もゲットしていましたが、気になるのは試験前の生徒に飲酒を勧めた件です。
生徒は飲酒のおかげで試験にパスしていましたが、飲酒を勧めたことが後で仲間以外の教師陣にもしバレたら彼は恐らく職を失います。
さらに、あの生徒自身も飲酒による成功体験から後にアル中になったりしないかめちゃくちゃ心配です。
心理学者のニコライはお酒が原因で一時期家庭崩壊の危機にありましたが、その後は修復できていたようで何よりです。
ニコライは飲酒で良くも悪くもならずプラマイゼロな印象でした。
ニコライはこれから飲酒実験を論文にまとめると思われ、発表した後に校長から責められないかが心配ですが、根が明るいなので何があっても乗り越えられそうです。
一方、お酒で破滅の方向に進んでしまったのは体育教師トミーでした。
トミーは独身で孤独感も手伝って酒にのめり込み、アルコール依存症になってしまいました。
トミーは最終的に死んでしまい、マーティンたちはお酒の恐ろしさを知ります。
しかし、友人の死を慰めてくれたのもまた友人とお酒でした。
依存さえしなければ、お酒のある人生の方が楽しいと全体を通して訴えられていたような気がしました。
私はお酒は飲み会などのイベントでしか飲まないですが、このブログを書く時や映画を観る時に少し飲んでみようかなと好奇心が沸きました。
体育教師トミーに何が起きた?
トミーは船から落ちて亡くなってしまいましたが、具体的に何が起きたのかは明かされませんでした。
まず、トミーは船に乗る前に救命胴衣を着ようとしていたので、自殺目的で船に乗ったわけではありません。
恐らく愛犬と一緒に船に乗って酔い覚ましがしたかったのではないでしょうか。
ここでポイントになってくるのはアルコール依存症の離脱症状です。
離脱症状には体の震えや動悸など身体的な症状のほか、不安感やうつ状態といった精神的な症状も現れます。
トミーが後半ずっと泥酔状態だったのは、恐らく離脱症状による不安やうつから逃げるためにお酒を飲むという悪循環にハマっていたからです。
もしトミーが自殺したのだとしたら、離脱症状による鬱で衝動的に飛び込んでしまったのでしょう。
もし自殺ではないとしたら、船酔いなどで嘔吐しようとした時に誤って落ちてしまい、そのまま溺れ死んでしまったかのどちらかではないかと推測しています。
以上です。この記事がお役に立てていたらハートマークを押してもらえると嬉しいです(^ ^)
関連記事
参考サイト様一覧
感想などお気軽に(^^)