映画『ディア・エヴァン・ハンセン』のあらすじ紹介と解説考察をしています!
考察内容は『エヴァンはなぜ自分に手紙を書いていた?』
『コナーがキレやすかったのはなぜ?』『エヴァンはなぜ嘘をついた?』
『コナーがエヴァンの手紙を持ったまま死んだのは偶然なのか』
『ゾーイとラリーがコナーの死を悲しめなかった理由』
『アラナがりんご園の再開に執着した理由』
『エヴァンが木から落ちた本当の理由』です。
鑑賞後の考察記事のため、未鑑賞の方はネタバレにご注意ください(__)
制作年:2021年
本編時間:131分
制作国:アメリカ
監督:スティーブン・チョボスキー
脚本:スティーブン・レベンソン
エンディング曲:『YOU WILL BE FOUND』Sam Smith ft.Summer Walker
主要キャスト
エヴァン・ハンセン…ベン・プラット
社交不安とうつに苦しむ17歳。
人付き合いが苦手で自分から人を避けるが、本当は孤独に悩み友人や恋人を欲しがっている。
同じハイスクールに通う年下の女の子ゾーイに片思い中。
コナー・マーフィー…コルトン・ライアン
自殺したエヴァンの同級生。
情緒不安定でちょっとしたことで激高して周囲を困らせていたが、彼自身も悩んでいた。
感情的過ぎる性格が災いして友人ができず、いつもひとりだった。
ゾーイ・マーフィー…ケイトリン・デヴァー
コナーの妹。幼少時は特にコナーのわがままに振り回されて育ち、兄があまり好きではなかった。
ハイディ・ハンセン…ジュリアン・ムーア
エヴァンの母。母親としての責任を果たそうといつも必死。
多忙な看護師のためほとんど家におらず、エヴァンは孤独を抱えている。
ラリー(シンシアの再婚相手)…ダニエル・ピノ
アラナ(エヴァンの同級生)…アマンドラ・ステンバーグ
ジャレッド(エヴァンの家族の友人)…ニック・ドダニ
オリヴァー(ゾーイの友人)…ディマリアス・コープス
ジェマ(〃)…リズ・ケイト
リス(エヴァンの同級生)…アイザック・パウエル
スカイ(〃)…マーヴィン・レオン
チェリス(〃)…ハディヤ・エシェ ほか
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※このページの情報は2022年8月時点のものです。最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。
あらすじ紹介
あらすじ①:同級生の自殺
17歳のエヴァン・ハンセン(ベン・プラット)は社交不安障害とうつ病に苦しむハイスクール生です。
エヴァンは先日木から落ちて左腕を骨折してしまい、ギブスをしています。
エヴァンは最近、カウンセラーに勧められて自分宛てに手紙を書いていました。
不安で仕方がない時は、気持ちを手紙に吐き出すことで心を落ち着かせる効果がありました。
ある日、エヴァンは学校図書室のパソコンで自分宛の手紙を印刷した時、変わり者で有名な同級生コナー・マーフィー(コルトン・ライアン)に話しかけられます。
コナーはエヴァンのギブスにサインをしてくれますが、その直後にプリンタから出てきた手紙を読んでしまいます。
手紙にはエヴァンの片思い相手でコナーの妹でもあるゾーイ(ケイトリン・デヴァー)のことも書いていたので、コナーは「俺のことをからかってるのか」と怒り、手紙を持ち去ってしまいました。
その日からエヴァンはコナーに手紙をSNSで晒されないか心配で、ネット検索しまくって眠れぬ夜を過ごします。
コナーに手紙を取られて3日目の朝、エヴァンは学校に来ていたコナーの両親に呼ばれてコナーが自殺したと知らされました。
あらすじ②:勘違いされたエヴァン
コナーの両親シンシア(エイミー・アダムス)とラリー(ダニエル・ピノ)は、エヴァンの手紙がコナーの服のポケットに入っていたのを見て『コナーがエヴァンに宛てた遺書』だと勘違いしていました。
コナーは他に何も持っておらず、エヴァンの手紙が自殺の動機を探る唯一の手がかりでした。
エヴァンは何とか真実を説明しようとしますが、エヴァンのギブスには『コナーのサイン』が書かれていたこともあり、シンシアはエヴァンを『コナーの唯一の友達』と信じて疑いませんでした。
数日後、エヴァンはシンシアとラリーから夕食に招待され、今度こそ真実を言おうと決めて参加しますが、逆に「コナーの親友だった」と嘘をついて『リンゴ園に一緒に行った』という作り話までしてしまいました。
シンシアに「メールのやり取りがあれば見せて欲しい」と言われ、エヴァンはパソコンが得意な唯一の友人ジャレッドに頼んで『親友のやり取りっぽいメール文』を作成して偽装してもらいました。
エヴァンはコナーの死をきっかけにマーフィー一家と親密になり、密かに不安障害に苦しんでいた優等生のアラナとも仲良くなり、アラナが企画した『コナーの追悼会』で親友としてスピーチを引き受けてしまいます。
エヴァンは緊張のあまりステージで転んだりしてしまいますが、必死で『リンゴ園の思い出話』をしようとする姿が観客の心を掴み、エヴァンのスピーチは撮影されてSNSで拡散され、多くの共感を得て絶賛されました。
追悼会の後、アラナは現在廃園になっているそのリンゴ園を、クラウドファンディングで10万ドル集めて再開させることを目標に『コナー・プロジェクト』を立ち上げました。
エヴァンも運営メンバーになり、毎週開かれる集会に参加します。
スピーチに感動した人々が寄付をしてくれて、資金は順調に貯まっていきました。
あらすじ③:初めての恋人、信頼の崩壊
エヴァンはゾーイとも親しくなり、告白されて恋人になりました。
エヴァンはゾーイと付き合えたことで舞い上がり、彼女の「兄のことばかり話していたくない」という意向に沿ってデートに熱中し『コナー・プロジェクト』をおろそかにしてしまいます。
一方で、エヴァンは多忙な看護師の母ハイディ(ジュリアン・ムーア)にはマーフィー家のことを話しておらず、溝が深まります。
ある日、エヴァンがお金が原因で大学進学を悩んでいることを知ったシンシアとラリーは、エヴァンとハイディと会って「コナーのために貯めていた学費用のお金をエヴァンに使って欲しい」と提案しました。
ハイディは「家庭事情はそれぞれだから干渉しないで」「エヴァンに楽することを覚えさせたくない」と言って怒ってしまい、エヴァンと喧嘩になりました。
さらに『コナー・プロジェクト』の集会を数回すっぽかしたエヴァンに、アラナは「あなたは本当に親友だったの?」と怒りました。
焦ったエヴァンはアラナに『コナーが持っていたエヴァンの手紙の画像』を見せて疑いを晴らしました。
エヴァンはアラナに「この手紙はコナーの家族と僕しか知らないものだから、公表しないで」と約束していましたが、寄付が集まらず焦っていたアラナはエヴァンの手紙をSNSで公開して募金を募ってしまいました。
これで募金額はまた増えましたが、エヴァンの手紙には孤独に苦しむ内容も書かれていたため、今度はコナーの両親シンシアとラリーがネット上で『息子の鬱に気付かない毒親』『息子の死をネタに金儲けか』などと大バッシングされてしまいました。
エヴァンが慌ててマーフィー家に行くと、世間からの批判が原因でシンシアとラリーが大喧嘩していました。
エヴァンはこの時ようやくシンシア、ラリー、ゾーイに真実を打ち明けて喧嘩を止めて、暴露動画をSNSに投稿してマーフィー一家に対する攻撃を終息させましたが、エヴァンはゾーイと別れることになり、学校中の生徒からも白い目で見られ無視されてしまいます。
あらすじ➃:結末
エヴァンが自責の念でふさぎ込んでいると、母ハイディは、エヴァンに父がいないことや1人にさせてしまっていたことを謝り、「愛してる」「何があってもそばにいる」と言ってくれました。
エヴァンはママのおかげで少し元気になり、無視されるのも当然のことと受け入れて耐えつつ、コナーのエレメンタリースクール(≒小学校)時代の卒業文集を手に入れ、コナーの好きな本リストに書かれていた本を読み漁りました。
ある日、エヴァンはSNSでコナーの写真がアップされているのを見つけ、投稿者と連絡を取っていたらコナーが数年前に違法薬物で施設にいた頃の知り合いと繋がれて、コナーが施設で歌を披露している録画映像を手に入れました。
エヴァンはその動画を焼き増ししてマーフィー一家、アラナ、ジャレッドに送ります。
コナーが楽しそうに弾き語る様子を、シンシア、ラリー、ゾーイは嬉しそうに見つめました。
数週間後。クラウドファンディングの金額が目標達成し、アラナは無事にリンゴ園を『コナー・マーフィー果樹園』として復活させました。
エヴァンはゾーイに果樹園に呼ばれ、久しぶりに2人きりで話をします。
エヴァンはハイスクール卒業後はコミュニティ・カレッジ(公立の2年生大学)に進学し、アルバイトでお金を貯めて4年生大学に編入することにしたと打ち明けます。
エヴァンが改めて今までのことを深くお詫びすると、ゾーイは「あなたの行動で私たちは救われた」「このリンゴ園で、あなたと今日初めて出会っていたら良かった」と答えて帰りました。
エヴァンはゾーイと別れた後、りんご園に残ってコナーのこと、ゾーイ、シンシア、ラリーとの出来事を思い出しながら自分宛に手紙を書きました。
その顔に、不安な表情はもうありませんでした。
解説・考察・感想など
エヴァンはなぜ自分宛てに手紙を書いていた?
エヴァンはセラピストからの課題で自分宛に手紙を書いていましたが、セラピストがエヴァンにさせようとしていたのは『ライティング・キュア』と呼ばれる心理療法のひとつです。
脳や体で感じたことはとりとめもなく形に残らないため、思いや感情を言語化することで自分自身を理解して癒す効果があります。
ライティングキュアとは違うかもしれませんが、筆者もこのような記事を書いていると、映画を観ていたリアルタイムではなく文章を打ち込んでいる時に『映画を観て何を感じたか』を再発見することが非常に多いです。
コナーがキレやすかったのはなぜ?
コナーは変り者であることを理由にバカにされることが多い日々を送っていました。
ロッカーでコナーが同級生にバカにされた直後、エヴァンはコナーに微笑みかけました。
エヴァンはコナーに『友達のいない変り者』というちょっとした仲間意識を持っていたため、慰めや励ましの意味で笑いかけましたが、コナーは被害妄想が強く気が立っていたために、エヴァンの笑みを「嘲笑」と受け取りました。
その後、コナーがエヴァンに図書室で話しかけたのも、後になって考えてエヴァンの笑みが『嘲笑』ではなかったことに気付き反省したからです。
しかしその直後、コナーはエヴァンが印刷した手紙を読んでゾーイの名前が書かれていることに気付くと、また被害妄想が先回りしてカッとなってしまいます。
コナーの感情が高ぶりやすいのは、それだけメンタルが危うくなっていたことを意味します。
エヴァンはなぜ嘘をついてしまった?
エヴァンはシンシアとラリーから夕食に招かれた時、真実を言おうと決心してマーフィー家に行きますが、真実を告げられなかったどころかコナーの思い出のリンゴ園に一緒に行ったと嘘までついてしまいました。
エヴァンの父はエヴァンが幼い頃にハイディと離婚して離れ離れになりました。
エヴァンは父に定期的にメッセージを送りますが、父は無関心でまともな交流が持てませんでした。
一方ラリーは「コナーとキャッチボールしたかった」と語り、息子と交流を求めていました。
無関心な父を持つエヴァンにとって、ラリーの振る舞いは『理想の父』に見えたのです。
また、エヴァンの母ハイディは多忙でエヴァンとじっくり向き合う時間が持てませんでした。
それはハイディがエヴァンを愛していた子らこそ、母親として責任を果たそうと必死だったからにほかなりませんが、家でひとりぼっちにされたエヴァンは孤独を抱えていました。
そんなエヴァンにとって、専業主婦で毎日家に居て、凝った手料理を作ってくれて、天使のような笑顔と言葉をかけてくれるシンシアは『理想の母』でした。
さらに、ゾーイはエヴァンの片思いの相手で一番仲良くなりたい人物でした。
このように、マーフィー一家はエヴァンの理想が詰まった家族だったため、エヴァンは真実を言って関係が終わるのが惜しくなってしまったのです。
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