映画「騙し絵の牙」よくわからない部分解説考察、ラストの意味、速水の騙し、タイトルの意味など | 映画の解説考察ブログ

映画「騙し絵の牙」よくわからない部分解説考察、ラストの意味、速水の騙し、タイトルの意味など

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騙し絵の牙 ヒューマンドラマ
(C)2020「騙し絵の牙」製作委員会

映画「騙し絵の牙」のあらすじ紹介、解説考察を書いてます!
考察内容は「速水の行動と裏の目的」「タイトルの意味、騙し絵とは?」「ラストの意味」などについて書いています。

鑑賞済みの方のための考察記事です。まだ見ていない方はネタバレにご注意ください。

騙し絵の牙

制作年:2021年
本編時間:113分
制作国:日本
監督:吉田大八
脚本:吉田大八、植野一郎
原作小説:「騙し絵の牙」塩田武士 著

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キャスト紹介

速水 輝大泉洋
大手出版社『薫風社』で月間情報誌『トリニティ』の編集長を務める男。
新社長の話題性と収益性をとことん追求して廃刊寸前のトリニティを盛り上げようとする。
※大泉洋の他出演作…映画「探偵はBARにいる」シリーズ、映画「アイアムアヒーロー」ほか

高野 恵松岡茉優
『薫風社』の新人社員。社の顔とも言える文芸誌『小説薫風』のチームにいたが、小説家 二階堂への失言が原因で別部署への移動を言い渡された直後、速水にスカウトされてトリニティ編集部に移動する。
※松岡茉優の他出演作…映画「勝手にふるえてろ」、ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」ほか

東松 龍司佐藤浩市
『薫風社』の専務。先代社長の伊庭喜之助の死後、新社長の座につく。
先代と共に温めていた社の改革案『プロジェクトKIBA』を実行しようと画策する。
※佐藤浩市の他出演作…映画「ザ・マジックアワー」、映画「64 ロクヨン」シリーズほか

伊庭喜之助(薫風社元社長)…山本學
二階堂大作(有名作家)…國村隼
矢代聖(新人小説家)…宮沢氷魚
伊庭惟高(喜之助と前妻の息子)…中村倫也
宮藤和生(常務・惟高の後見人)…佐藤史郎
江波(小説薫風編集長、二階堂の担当編集者)…木村佳乃
久谷ありさ(文芸評論家)…小林聡美
柴咲(トリニティチーム)…坪倉由幸
中西(トリニティチーム)…石橋けい
綾子(喜之助の後妻)…赤間真理子
相沢(経営企画部長)中野秀樹
郡司一(外資系ファンド社長)…斎藤工
トリニティチーム…森優作
城島咲(モデル)…池田エライザ
城島咲のマネージャー…後藤剛範
神座詠一(消えた小説家)…リリー・フランキー
高野の父…塚本晋也
三村(江波の部下)…和田聰宏
新垣隆(音楽家)…本人
レディビアード(ミュージシャン、コスプレーヤー)…本人
折茂昌美(切断ヴィーナス)…本人 ほか

 

あらすじ紹介

大手出版社『薫風社』社長の伊庭喜之助(山本學)氏が急逝しました。
次期社長について様々な憶測が飛び交う中、喜之助の1人息子の伊庭惟高(中村倫也)は現在アメリカ留学中のため、専務で喜之助の右腕だった。東松龍二(佐藤浩市)が惟高が帰国するまでのつなぎとして新社長に就任しました。

薫風社は近年、ネット通販の普及や若者の本離れの影響で深刻な経営難に陥っています。
東松は社長になった途端に薫風社の顔である文芸誌『小説薫風』を月間から季刊(年4回の発行)に変更したり、主人公の速水輝(大泉洋)が担当する情報誌『トリニティ』を「このまま売れ行きが伸び悩めば廃刊にする」と脅しをかけました。

同時に、東松は長年温めていた改革案『プロジェクトKIBA』を外資系ファンド社長の郡司一(斎藤工)や喜之助の後妻 綾子らと共に本格始動します。
このプロジェクトは自社の巨大物流センターを作ることで外注費を抑えようという取り組みです。

速水は季刊化により小説薫風編集部を外された新人編集者の高野恵(松岡茉優)をトリニティ編集部の仲間に加え、ありとあらゆる手段でトリニティを盛り上げます。

 

解説・考察・感想など

主人公の速水の行動と目的をストーリー順に整理します。

タイトルの意味、騙し絵とは?

騙し絵の牙
(引用:https://hataraku.vivivit.com

騙し絵は見る距離や、色別に見た時などに見える物が変わる絵のことで、騙し絵を知らなくてもどこかでそういう絵だけは見たことがあるという方は多いと思います。

上に貼り付けた絵は、騙し絵の天才と言われたサルバトール・ダリの最も有名な騙し絵のひとつです。
この絵は全体を見ると老夫婦が向かい合っている絵に見えますが、よく見ると老夫婦の顔の部分にはメキシカンなハットを被った男性2人、耳の部分には扉にもたれかかる女性などの絵に変わります。

この騙し絵のように速水の行動の全てには裏があり、その裏には「K.IBA」(伊庭惟高)が関わっていたというのがタイトル「騙し絵の牙(K.IBA)」の意味です。

 

豆知識:雑誌販売と広告の関係

雑誌販売で利益が出る仕組みを知らないとついていけなくなる会話がちらほらあったので、ついでにおさらいします。
ご存じの方は読み飛ばしてくださいね。

雑誌販売は雑誌本体の売上金と、広告を出す企業から出版社に支払われる広告費で成り立ちます。
広告費は雑誌の売り上げ部数に関係なく一定の金額がもらえるので出版社としては大事な利益になりますが、例えば社会的に賛否両論別れるような内容を雑誌に掲載してしまうと、イメージダウンを恐れた企業は広告を出すのをやめてしまうので広告費がもらえず、雑誌の売り上げに頼るしかなくなります。

しかし雑誌本体の売り上げだけで成り立つような面白くて売れる雑誌を出し続けるのは至難の業なので、結局多くの雑誌は広告費に依存します。

城島咲の逮捕がわかった直後、速水が高野に「広告が全部飛んだとして、何部売れたら黒になるか計算して」と命じたのは、城島咲(犯罪者)の擁護とも見られかねない記事を掲載すると、世間体を気にする会社は広告を出さないので広告費はもらえなくなります。
なので、純粋に雑誌の売り上げだけで黒字になる部数を把握して可能かどうかの算段を付けるためです。

また、「広告費に依存する雑誌はいずれ破綻する」という説の意味は、広告出稿企業の目を気にすると可もなく不可もない、いわゆる「つまらない」雑誌になってしまい、つまらない雑誌は売れないので、売れない雑誌には企業も広告を出さなくなり、消えることになるという意味です。

 

騙し①:高野恵のスカウト

「小説薫風」が季刊になり、高野は小説薫風編集部から外された直後に速水から声をかけられてトリニティ編集部に移動しました。

速水が高野をトリニティの仲間に加えたのには当然目的があり、ひとつは小説薫風のお抱え作家だった二階堂大作をトリニティに引き込むためであり、もうひとつは高野が「バイバイを言うとちょっと死ぬ」の矢代聖に夢中だったため、自然な形で速水が雇った俳優を矢代として登場させられると考えたからです。




騙し②:二階堂大作の懐柔

騙し絵の牙

(C)2020「騙し絵の牙」製作委員会

速水は二階堂の過去の大ヒット小説を漫画化してトリニティに連載しようと提案し、「小説薫風」の季刊化で時間ができた二階堂は快諾します。

もともと二階堂は「小説薫風」の季刊化に「仕事が減る」と大反対して季刊化を発案した東松と敵対していましたが、過去作の漫画化が決まるとコロッと態度を変えて東松と和解しました。

これは速水にとってはトリニティの話題性を上げるためでもありますが、もうひとつは東松と二階堂の和解に速水が協力したことで、東松が速水に対して油断(信用)させるためでもあったと思われます。

 

騙し③:矢沢聖と神座詠一

矢沢聖という名前で薫風社に届いた小説「バイバイを言うとちょっと死ぬ」は、本当は神座詠一が書いたものでした。
神座は20年以上前に小説「おかえり、クリスタ・マコーリフ」を書いてから行方をくらましていて、自分の実力を確かめるためにわざと無名作家の名前で薫風社に送りました。

速水は「バイバイを言うとちょっと死ぬ」の作者が神座だといち早く気付きますが、無名作家になっていたことを利用して俳優志望の青年を雇い矢沢聖を実体化しました。

速水が俳優を雇った理由のひとつは別人の矢沢聖を登場させることで行方知れずの神座詠一をおびき出すことです。
速水は高野の調べで神座が日本にいることを知った直後にこの計画を思いついたと思われます。

もうひとつの理由は、矢沢聖を使って宮藤を失脚させることです。
記者会見で矢沢が「本物の作者ではない」と暴露するだけでも、それを見抜けなかった宮藤は責任を問われ追い込めたと思われますが、運よく(?)宮藤が記者の発言に激怒したためあっさり解任できました。

矢沢聖と城島咲のスキャンダルねつ造も、矢沢が速水のやり方に不満があるという雰囲気も、全ては小説薫風チームが矢沢を引き抜きやすい雰囲気作りのためのヤラセ・演出でした。

 

次のページに続きます!

2ページ目は「宮藤和生の失脚」「東松龍司の失脚」です。




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