『残酷で異常』解説考察|冒頭の木のシーン、老婆の正体、自殺理由、ラストのドヤ顔の意味など | 映画の解説考察ブログ

『残酷で異常』解説考察|冒頭の木のシーン、老婆の正体、自殺理由、ラストのドヤ顔の意味など

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残酷で異常 ダークファンタジー

映画「残酷で異常」の解説・考察をしています!
『施設の正体』『エドガーの罪』『既に何回かループしていた』『冒頭の木に反応する意味』『天井から行くループ』『自殺した理由』『老婆の正体』『ラスト考察』など書いています。

鑑賞済みの方向けの記事です。まだ見ていない方はネタバレにご注意ください。

残酷で異常

原題:CRUEL & UNUSUAL
制作年:2014年
本編時間:95分
制作国:カナダ
監督・脚本:マーリン・ダービズビック

 

キャスト・あらすじ紹介

キャスト紹介

エドガーデヴィッド・リッチモンド=ペック
異世界に閉じ込められた男。身に覚えのない「妻殺し」の罪で責められる。

メイロンベルナデッタ・サクイバル
エドガーの妻。

ドリスミシェル・ハリソン
自殺の罪でエドガーと同じ異世界にいた女性。

ゴーガン(メイロンの息子)…モンスール・カタクィズ
ランス(エドガーの弟)…カイル・カッシー
ジュリアン(異世界仲間)…マイケル・エクランド
ウィリアム(異世界仲間・学生)…リチャード・ハーモン
ファシリテーター(テレビの中の人)…メアリー・ブラック
カウンセラー(テレビの中の人)…アンディ・トンプソン ほか

あらすじ

夜間学校の教師エドガーは過去のある瞬間を転々とする不思議な現象に見舞われた後、自宅にいたはずが全く見覚えのない不気味な施設の中にいました。

エドガーは施設の広間で行われているグループセッションに参加させられ、画面の中にいる老婆に「あなたはなぜここにいるかわかるか」と聞かれますが、エドガーに心当たりはなくわけがわかりませんでした。

画面の中の老婆に「7734号室に行け」と言われて行ってみると、そこにもテレビ画面に映る男がエドガーに話しかけてきます。
エドガーは男から「君は妻を殺し、君自身も死んだ 来たばかりでまだ思い出せないだろうが、じきに全て思い出す」と告げられますが、エドガーは妻を愛しているし、暴力をふるったこともないので信じられませんでした。

その後、エドガーは指定された別の扉を通ってエドガーと妻メイロンが死んだ日の前後を繰り替えし体験させられて、少しずつエドガーの罪が暴かれます。

 

解説、考察や感想など

謎の施設の正体は?

残酷で異常

©️2014 Cruel & Unusual Productions Ltd.All Rights Reserved.

エドガーたちが閉じ込められていた謎の施設は「ハデス」と呼ばれる死者の魂がとどまる場所がモデルになっているのではないかと推測しています。
ハデスは新約聖書に登場する「不信仰な死者の魂が最後の審判を待つ場所」であり「天国or地獄と現世の中間」です。

キリスト教では、人間は死後イエス・キリストから生きていた時の行いを審査される「最後の審判」を受け、天国行きか地獄行きかを決められます。
不信仰な死者の魂(神の教えに背き罪を犯した魂)は基本的には地獄行きですが、最後の審判が行われるまでに罪を悔い改めていれば、慈悲深いイエス様は赦しを与え天国に行かせてくれるとヨハネの黙示録に書かれています。

また、エドガーが画面の老婆に行けと言われた7734号室だけは地下にあり、部屋もなんか黒くて不気味だったので地獄につながる部屋だったと思われます。
映画を見た方の感想を読んでいると、7734をデジタル数字にして逆さまにすると「hELL(地獄)」になる!という素晴らしい発見をされている方がいたので、やはり7734号室は地獄部屋で間違い無いと思います。

ただドリスは1972年に死亡してからずっと施設にいると言っていて、エドガーが施設に来たのが制作年の2014年ならドリスは長年閉じ込められていることになりハデスの特徴と完全に一致はしませんが、施設と地獄(7734号室)は階層が別れていたところを見ると、少なくともグループ活動していた場所は地獄とは言いきれないように思えます。

なので、施設は罪を反省しなければ永久に閉じ込められる地獄的な役割も果たす一方で、罪を悔い改めた魂には赦しが与えられて天国に行けるか生まれ変われるなどの新たなステージに進めるような魂の更生施設だったのではないでしょうか。(都合よすぎる解釈かもですが)

施設では死者の魂にグループ分けをされていて、エドガーのグループは「自殺または家族を殺した人」が集められていたと思われます。
別の罪を犯して死んだ人はまた別のグループに配属されるのでしょう。

 

エドガーの罪とは?

エドガーは一見 妻メイロンに毒殺された被害者ですが、メイロンがエドガーに殺意を抱く原因を作ったのもエドガー本人でしたし、メイロンを殺したのもエドガーでした。

エドガーはひとりよがりな愛情で過度な束縛、経済DV、メイロンの連れ子ゴーガンを邪魔者扱いするなどしてメイロンを苦しめ、精神的に追い詰めました。
7734号室にいた画面の男の「彼女を拘束しただろう 逃げようとする彼女を無理やり・・・」という発言は、エドガーがメイロンを殺した瞬間の説明ではなく束縛したことを言おうとしていたのでしょうが、エドガーは興奮していて話を聞きませんでした。

しかもエドガーはメイロンの死を「あれは事故だった」と言っていましたが、もみ合いの時はよく見ると明らかに故意に腕でメイロンの首を圧迫していたので、気絶させようとしてやったのかもしれませんが、結果として殺しています。

恐らくメイロンはエドガーを殺したいほど憎くなったというよりも、エドガーから解放されるには殺すしか無いと思うほど追い詰められてしまったのでしょう。
メイロンは恐らく離婚の準備のために銀行口座を作りますが、それもエドガーに見つかると怒られアルバイトも許されず、逃げ道を完全に封じられました。
メイロンはエドガーの言いなりになる人生よりも、殺人を犯してでも自由になることを望んだのでしょう。




エドガーは既に何度かループしてるらしい

エドガーが7734号室に降りたとき、画面の男は「君は来たばかりだ まだ記憶は弱いが徐々に強くなっていくだろう いずれグループのことも罪も思い出すようになる」と言います。

このセリフからエドガーが「グループのことを忘れている」ことがわかるので、エドガーはこの時点で既にグループとループ体験を最低2回以上経験しているということです。

 

冒頭の木の意味

映画の冒頭でエドガーが木を見て感慨深げにするシーンがあります。
この木はエドガー(とドリス)が首を吊る木だったことがラストでわかります。

これは筆者の個人的な憶測になりますが、エドガーは映画冒頭よりも前のループでドリスと協力して施設から逃げようとして、ドリスの世界に逃げ込んだもののドリスは出来事に沿ってあの木で自殺しまい、エドガーはその一部始終を目撃した(ドリスの自殺から子供たちがドリスを見つけるまでを目撃して強く心が痛んだ)上に逃亡に失敗したのではないでしょうか。

エドガーが冒頭で木を見つけた時はドリスの自殺を目撃した後だったので、理由は覚えていないけれど悲しくなったのではないか?と思っています。

また、ドリスがエドガーに椅子を渡した理由も、ドリスだけがエドガーを覚えていたからだと思えば納得できます。

 

7734号室の天井の上の世界

7734号室の天井から上がれる世界では、エドガー本人ではなくメイロンとゴーガンの置かれていた状況と、2人から見たエドガーを客観的に体験できました。

最初にエドガーが天井から出ようとした時に「まだ準備できてないから行くな」と言われるのは、恐らく自分の行動も振り返れていないのに、さらに家族視点で自分を見てしまうと情報過多になり心の整理が追いつかなくなるからまだその段階ではない という意味だったのでしょう。

 

エドガーはなぜ自殺した?

エドガーが自殺した理由を振り返ります。
エドガーはメイロンに毒を盛られ、救急車を呼ぶときに電話の奪い合いになってメイロンを殺してしまいます。

ループを繰り返して罪を理解したエドガーは、せめてもの罪滅ぼしでループを利用してメイロンが死なないように過去を変えようと思いつきます。
しかし、エドガーとメイロンがもみ合った時点ではエドガーの毒死は確定しているので、あのもみ合いでエドガーが死んでメイロンが生き残る状況を作るとメイロンは現実世界でも殺人犯として逮捕されてしまい、最悪死後もこの施設に召集されてしまうかもしれません。

メイロンに本当の自由をプレゼントしたかったエドガーはドリスの世界に入り込み、自殺しようとしていた生きているドリスを止めて、代わりにエドガーが首を吊りました。

エドガーがドリスの世界に行ったのは、他者の世界なら生きている自分に干渉されず自由に動き回れるのと、ドリスと子供たちを助けたい気持ちがあったからです。

 

メイロンとゴーガンが話していた老婆の正体

ラストでメイロンとゴーガンが木のある場所にお参りに行った時、老婆が現れます。
老婆はエドガーの遺言を覚えていた点と腕に残った「EGO」の刻印から、彼女は生き返って年をとったドリスだとわかります。

ドリスとエドガーは生きた時代が違い、エドガーは1972年にタイムスリップして自殺していて、メイロンとゴーガンがお参りに来た時はドリスが死を回避してから40年以上経っています。

 

ラストのエドガーのドヤ顔

ラスト、施設に新入りの男性が入ってきて、エドガーは部屋でドリスが座っていたように座り、堂々と自殺理由を発表します。

エドガーは妻を殺さない代わりに自分を殺したのでドリスと同じ自殺の罪で同じグループに舞い戻ってしまいましたが、エドガーはメイロンとドリス、ひいてはゴーガンとドリスの子どもたちを救ったため自殺を後悔せず、むしろ誇りに思っています。

エドガーが自殺の罪を悔い改めることはなさそうなので、永遠に施設にいるか地獄行きのどちらかになってしまいます。
自殺を誇りに思ってしまったエドガーと、施設からもう出られない状況がタイトル通り「残酷で異常」な状態だと感じました。

そんなエドガーをジュリアン(子殺し男)は冷たい目で見ています。
エドガーとジュリアンは最初は仲良さげでしたが、天井から出る時にジュリアンはエドガーを裏切ったのでそこで友情は終わったのでしょう。
さらにジュリアンは自殺者を見下す傾向があるので、ジュリアン的にはエドガーは格下なのです。

キリスト教には他人を殺すのも自分を殺すのも同じ罪であり序列はないはずですが、古くから自殺者は神に背いた者として格式高い墓地では埋葬を拒否する風習があるようなので、自分以外を殺すよりも自殺の方が重罪という価値観がある人もいるのかもしれません。

個人的には自殺より酔った勢いで子どもを殺す方がはるかに重罪な気がします。

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