映画『ベイビー・ブローカー』の解説考察をしています!
考察内容は『サンヒョンがベイビー・ブローカーをしていた理由』
『母ソヨンの正体』『ソヨンはなぜウソン(赤ちゃん)を捨てた?』
『ウソンを赤ちゃんポストに入れなかったのはなぜ?』
『ソヨンはなぜ里親探しに同行した?』
『殺された男の妻の目的は?』
2ページ目→『スジン刑事がソヨンに厳しい理由』
『ラスト、サンヒョンは何をしていた?』
『サンヒョンとマフィア男の関係』
『サンヒョンとドンスはどうなった?』です。
『ベイビー・ブローカー』概要紹介
原題:브로커/Broker
制作年:2022年
本編時間:129分
制作国:韓国
監督・脚本:是枝裕和
主要キャスト紹介
サンヒョン…ソン・ガンホ
クリーニング兼衣類修復屋を営む男。
捨てられた赤ちゃんを訳アリ夫婦に売りさばくベイビー・ブローカーの裏稼業をしている。
捨てられていた男児ウソンの新しい親を探す。
ドンス…カン・ドンウォン
サンヒョンの仲間。
赤ちゃんポストが設置されている教会で働き、サンヒョンの裏稼業に手を貸す。
彼自身も母親に捨てられて児童養護施設で育った。
ソヨン(ソナ)…IU
ウソンを教会に置き去りにした女性。
翌日教会に戻ってきて「赤ちゃんを返して欲しい」と言うが、サンヒョンとドンスが保護した後だった。
新しい親探しに同行する。
スジン刑事…ペ・ドゥナ
サンヒョンとドンスが赤ちゃんを人身売買していると情報を掴み、2人が赤ちゃんを売る瞬間を待って現行犯逮捕しようとする。
サンヒョンとドンスの尾行中に現れたスヨンと殺人事件の関係を知り、利用しようとする。
解説・考察
サンヒョンはなぜベイビー・ブローカーをしていた?
サンヒョンはドンスと共謀して施設から盗んだ赤ちゃんを、子供が欲しくても持てず、正攻法では養子を迎えられない夫婦に販売していました。
サンヒョンが裏稼業でベイビー・ブローカーをすることにしたのは、マフィアに借金して返済を迫られていたことも関係していました。
なぜ借金したのかは語られませんが、サンヒョンの別れた妻の塩対応、サンヒョンの申し訳なさそうな態度、『あの時は酔ってた』発言を見る限りギャンブルか女性関係なのかなと想像しています。
きっかけはお金のためだったのかもしれませんが、サンヒョンがウソン(赤ちゃん)のお世話を丁寧にしたり、熱が出れば病院に連れて行く様子から子どもに愛情を持っているのは明らかです。
サンヒョンは妻が娘を連れて出てしまい、娘と一緒に暮らせなかったのを強く後悔している雰囲気があったので、実の娘と過ごせなかった淋しさを捨てられた赤ちゃんたちと接することで埋めていたのかもしれません。
ソヨンの正体は?
ソヨンはウソンの父親を殺してしまった殺人犯でした。
ソヨン自身も児童養護施設出身で、施設を出た後はデリヘル的な売春で生計を立てていたようです。
ソヨンは彼女を買った男との間にウソンを身ごもりますが、男はソヨンに中絶を迫りました。
しかし、ソヨンは周囲の反対を押し切って産むことを決意し、ウソンが生まれます。
ソヨンが子どもを産んだことを怒った父親は、ソヨンからウソンを取り上げようとします。
ウソンの父は刑事の話で「首の骨が折れて死んでる」と発言があったたので、もしかしたらソヨンは殺そうとして殺したのではなく、もみ合いの末に男が死んでしまったのかもしれません。
ウソンが死んだときの状況を、ソヨンは「ウソンを取られそうになった」位しか喋ってくれなかった(と記憶してる)ので、詳しいことはよくわかりませんでした。
ソヨンはなぜ赤ちゃん(ウソン)を捨てた?
ソヨンがウソンを捨てた理由を、女刑事2人は『逃亡しようとして子どもが邪魔になったから捨てたに違いない』と予想していましたが、ソヨンは彼女なりに考えて、ウソンを守るために教会に預けたことがわかりました。
ソヨンはウソンを捨てた理由を「殺人犯の子にしたくなかった」と言いました。
ソヨンは逃げるつもりはなく自首しようと思っていたようですが、ウソンが気がかりで自首できずにいたのです。
普通ならウソンはソヨンの子どもとして法的にも登録されるべきですが、ソヨンは逮捕されたら殺人の前科が付くため、ソヨンが『戸籍上の母』になると、ウソンは『殺人犯の子』になり、社会で生きづらくなる可能性が高います。
それならいっそ赤ちゃんポストに預けて『親が誰だかわからない状態』にした方がウソンのためになるだろうとソヨンは考えて、ウソンを教会に預けました。
ウソンを赤ちゃんポストに入れなかったのはなぜ?
ソヨンはウソンを赤ちゃんポストに入れず、あえてポストの手前において立ち去りました。
ソヨンがウソンをポストの前に置く瞬間を見ていた女刑事2人は「あのまま誰にも気づかれず一晩経っていたら、赤ちゃんは死んでいたかもしれない」とソヨンを責めましたが、ソヨンがポストに入れなかったのにも理由がありました。
赤ちゃんポストは、日本のも同じだと思いますが、ポストに赤ちゃんが入れられたらすぐ保護できるように、職員にもすぐに伝わるようになっています。
あの教会の赤ちゃんポストも同じで、赤ちゃんを入れるとアラームが鳴って教会職員に伝わるようになっていました。
ソヨンの目的はウソンを身元不明で保護してもらうことなので、駆けつけた職員にソヨンが見つかって身バレしてしまうと意味がありません。
だからウソンをポストに入れられなかったのです。
個人的にはポストに入れれないなら、わざわざ大雨の日にしなくても天候を選んだり、地べたに置かずにカゴなど持参してカゴの中に置いたりすればよかったのにと思いました。
守るために手放そうとしたのなら、赤ちゃんにもう少し配慮があっても良かったような気がしてます。
ソヨンが里親探しに付き合った理由
翌日、ソヨンは結局ウソンが気になって教会に戻ってきてしまい、警察に通報しようとした所でソヨンを見張っていたドンスに声をかけられて、ウソンが売られかけていることを知りました。
ソヨンは一見お金目当てでサンヒョンとドンスに同行していたように見えましたが、実際には、ソヨンはウソンがまともな里親の手に渡るのを見守るために2人に同行していました。
最初にアポを取った里親候補にソヨンが罵声を浴びせて交渉決裂したのは、夫婦がウソンの容姿に文句を付けて値切ろうとするのを見て、ソヨンが『こんな人達に育てられたくない』と思ったからです。
そういえばウソンの眉毛が薄いと何度も話題に上がっていましたが、韓国の方は赤ちゃんの頃から眉毛の濃さを気にする習慣があるのでしょうか?
日本ではあまり聞かない発言で印象的でした。
殺された男の妻の目的は?
ホテルで殺されていた男の妻(キム・セビョク)は、死んだ夫のスマホを見てウソンの存在を知り、マフィアに頼んでウソンを手に入れようとしていました。
「夫の子だから私が育てる」と言っていましたが、夫に隠し子がいたことを知った時の表情や、マフィアに依頼するときの顔には憎しみがこもっていて、とてもウソンをちゃんと育ててくれそうな雰囲気は微塵も感じられませんでした。
男の妻がウソンをどうしようとしていたのか明確には示されませんでしたが、サンヒョンの発言を信じるなら、男の妻の狙いはウソンを殺すか、虐待しながら育てることで、死んだ夫への恨みを晴らそうとしていたのかもしれません。
この夫婦の正体は、妻がマフィアと接するのに慣れていた点、妻がウソンを手に入れるのに最初からマフィアを使った点、ソヨンの回想などから、男はマフィアの関係者だったと思われます。
お家も利用していたホテルも豪華だったので、それなりに権力のある男だったんでしょうね。
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