映画『クライ・マッチョ』の解説考察をしています!
1990年代後半頃から映画化の話が何度か上がっては消えを繰り返し、念願の実現を果たした本作。
一時期はアーノルド・シュワルツェネッガー氏が主演で確定していた時期もあったようです(隠し子が話題になってしまい白紙になった模様)
シュワファンの私としては少し残念ではありますが、91歳でも現役で頑張るイーストウッドさんが見れて感動したので、彼が主演するための作品だったということなのでしょう。
以下、本作についての疑問やあらすじに関わる謎など考察します。
映画『クライ・マッチョ』概要紹介
©2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
制作年:2021年
本編時間:104分
制作国:アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
脚本:N・リチャード・ナッシュ、ニック・シェンク
原作:『クライ・マッチョ 』N・リチャード・ナッシュ著
あらすじ
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1979年のアメリカ、テキサス。
主人公の老人マイクは若い頃はロデオ界のスター選手でしたが、落馬事故の怪我で選手引退して家族を失ってから変貌し、酒浸りで自堕落な日々を送ります。
長年雇ってもらっていた牧場も勤務態度の問題でクビになりました。
その後、マイクの前に元雇い主のハワードが現れて「一人息子のラフォを、元妻のリタから取り戻して欲しい」と依頼されました。
夫婦は5~6年前に離婚していて、ラフォはリタが引き取って彼女の故郷メキシコで育てていますが、現在13歳になるラフォはリタから虐待されているらしいのです。
「愛する息子を守ってまた一緒に暮らしたい。警察には諸事情で通報出来ないし、ラフォはロデオが大好きだからどうしても君に頼みたい」とハワードは語ります。
マイクはラフォとリタに会ったことが無いし、下手すると誘拐事件になりかねないので気が進みませんが、マイクは長年ハワードに雇ってもらい、今の家も彼が与えてくれたもので、言えばマイクはハワードに借りがあります。
報酬もハワードは十分用意してくれているので、マイクは引き受けることにしました。
数日かけてメキシコにあるリタの自宅に行ったマイクは、さっそくリタに事情を説明すると、リタは「あの子は家出してここにいない。今はすっかり不良化して手に負えなくなった。もし説得できるなら好きにすれば良い」と語り、おおよその居場所まで教えてくれました。
不穏な空気を感じつつ教えてもらった闘鶏場に行ってみると、中年男性ばかりの中に男の子が混じって試合しています。
この子だと確信したマイクはラフォに話しかけますが、ラフォはなぜか初対面のマイクを口汚くののしって追い返そうとします。
主要キャラ紹介
・マイク…クリント・イーストウッド
元ロデオ選手。元仕事仲間ハワードの息子ラフォを、メキシコからアメリカに連れて行く仕事を頼まれる。
・ラフォ…エドゥアルド・ミネット
13歳のハワードの1人息子。
母リタとその彼氏オーレリオに虐待されて家出中。
闘鶏の賞金で生計を立てようとしている。
雄鶏のマッチョが相棒。
・マルタ…ナタリア・ドナヴェン
マイクとラフォが寄り道した町で飲食店を営む女主人。
夫と娘を失くし、娘が残した孫を女手ひとつで育てている。
・ハワード…ドワイト・ヨーカム
マイクの元雇い主で牧場主。
一度はマイクを見放したものの、ラフォの件で再び接近する。
・リタ…フェルナンダ・ウレホラ
ハワードの元妻。離婚後は故郷メキシコで酒と男に依存する生活を送る。
ラフォに無関心で、彼女の周囲の男性がラフォに危害を加えても一切干渉しないが、マイクが連れて行こうとすると激怒した。
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タイトル『クライ・マッチョ』の意味
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『macho(マッチョ)』はスペイン語『強い』という意味で、ラフォは相棒の雄鶏にマッチョと名付けて可愛がっていました。
マッチョは元々は戦いから逃げるばかりの臆病な鶏でしたが、ラフォに世話してもらい懐いたことで強さを手に入れて、闘鶏で大活躍したとラフォが語っています。
また、マイクは真面目に生きることを放棄した自堕落老人でしたが、ラフォと過ごした日々で自堕落から抜け出し、今後の人生の伴侶となるマルタにも出会うことが出来て強さや自信を取り戻しました。
最後の方に敵のオーレリオを知恵と武力で撃退できたのも、マイクの中に衰えない強さと勇気が再び芽生えたことを象徴しています。
タイトル「クライ・マッチョ(cry macho)」は、そんな1人と1匹がマッチョ(強さ)を与えてくれた恩人のラフォとお別れする時に抱いた寂しさを象徴していたように思います。
ラフォはなぜ警察に追われていた?
ラフォはマイクと行動する前から警察の動向に怯え、警察官が近くに居ると一目散に逃げていました。
1つは、ラフォは家出少年だったのでお金が無く盗みを働いたことがあるので警察を恐れていたというのもありますが、もう1つは、ラフォが熱中していた闘鶏はギャンブルでもあるため、未成年は禁止されていた可能性が高いです。
メキシコでは当時も現在も闘鶏は合法です。
闘鶏は古くから娯楽の一種として親しまれてきた見世物でしたが、現在は先進国を中心に動物愛護の観点から違法になっていて、現在でも闘鶏が合法とされているのはメキシコ含む東南アジアの一部の国だけになっています。
ラフォはなぜハワードの元に行ったのか
ハワードがラフォを求めていたのは、過去にリタ名義で行った投資の分け前金をもらう交渉材料にするためでもあったと明かされていました。
そのことを知った時ラフォは怒っていたのに、ラストではいつの間にか父の所に行くことを了承していました。
この点はもう少し心理描写というか心境の変化を示して欲しいと感じましたが、そうは言ってもラフォはまだ13歳の少年で、親の愛情が必要な年代です。
母リタと決別した今、ラフォが無条件に頼れるのは肉親であるハワードだけです。
マイクから「投資のこともあるが、親としての愛情もあるはず」と言われたラフォは、ハワードに本当に親としての愛があるのかどうか確かめに行ったのかもしれません。
ハワードに本当にラフォへの愛情があれば、ラフォはそのまま彼と一緒に暮らすでしょうし、ハワードに愛が無いと判断したらマイクとマルタの居るメキシコのあの町に戻るのではないでしょうか。
マッチョを預けた意味
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当時、アメリカで闘鶏はまだ違法ではありませんでしたし、ハワードは牧場主なのでマッチョを飼育するには環境が整っていましたが、ラフォはあえてマッチョをマイクに託しました。
その理由は、宝物をプレゼントすることで親愛の印を示すことと、ペットを預けておくことでマイクとラフォとの繋がりを作る意味があったと思われます。
ラフォにとってハワードの所に行くのは大きな環境と心境の変化もあるので、メキシコ関連の物は全てメキシコに残してまっさらな状態で次のステップ(アメリカ)へ進む、という意味も含まれていたのかもしれません。
『アランに捧ぐ』とは?
(アラン・ロバート・マレー氏 引用:https://www.yahoo.com)
エンドクレジットの一番最後は『FOR ALAN(アランに捧ぐ)』という文章で締めくくられます。
アランという人物は、2021年2月にこの世を去った音響編集者のアラン・ロバート・マレー氏のことと思われます。
マレー氏は『硫黄島からの手紙(2006)』、『アメリカン・スナイパー(2014)』、『ハドソン川の奇跡(2016)』などを始め、多くのイーストウッド作品で音響を担当してきた人物です。
エンドクレジットをまじまじと見られなかったので、本作にマレー氏が関わったかどうかはわかりませんが、少なくとも関わる予定だったのではないでしょうか。
以上です!読んで頂きありがとうございました。
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