『もののけ姫』解説考察|アシタカが泣いた理由、神が呪いを解かない理由、ラスト考察など | 映画の解説考察ブログ

『もののけ姫』解説考察|アシタカが泣いた理由、神が呪いを解かない理由、ラスト考察など

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もののけ姫 ファンタジー

ジブリ映画『もののけ姫』の解説・考察をしています!
『アシタカはなぜ泣いた?』『ラスト考察』『サンが救えるかの意味』『唐傘連、師匠連はどういう組織?』『エボシとジコ坊と石火矢衆の関係』『タタラの村を襲ったのは誰?』『神が呪いを解かない理由』などについて書いています。

鑑賞済みの方のための記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。

もののけ姫

制作年:1997年
本編時間:135分
制作国:日本
監督・脚本・原案:宮崎駿

キャスト紹介

アシタカcv 松田洋治
エミシの村に住む青年。
タタリ神から呪いをもらってしまい、呪いを解くためタタラ場の村に行く。

サンcv 石田ゆり子
タタラ場の森でオオカミの群れと生きる人間の娘。
自然破壊するエボシを憎み、命を狙う。

エボシ御前cv 田中裕子
タタラ場の村の女村長。

ジコ坊cv 小林薫
シシ神の首を狙う男。神の祟りを避けるためエボシにシシ神殺しをさせようとする。

モロ…美輪明宏
乙事主/エミシの老人…森繁久彌
ゴンザ(エボシの側近)…上條恒彦
甲六…西村雅彦
トキ…島本須美
タタリ神(ナゴの守)…佐藤允
牛飼いの長…名古屋章
ヒイ様(エミシの村のまじない師)…森光子 ほか

あらすじ紹介

エミシの村の青年アシタカは、タタリ神になった巨大猪を倒した時に右腕に死の呪いをもらってしまいます。
アシタカは巨大イノシシが西の森から来たことを知り、呪いを解く方法を求めてアカシシのヤックルと一緒に西の森に旅立ちます。

アシタカは西の森で、人間でありながら森で狼と生きる少女サンを見かけ、ひと目で心を奪われました。
その後アシタカはタタラ場という村にたどり着き、巨大イノシシがタタリ神になった原因がタタラ場の村人たちによる自然破壊にあることや、タタラ場のリーダーのエボシは謎の組織「唐傘連」「石火矢衆」と組んで、森の神様であるシシ神の首を狙っていることを知りました。

アシタカは人間側にも森の主たちにも「争いをやめて共存する道を探すべきだ」と言いますが、どちらも争いをやめる気はありません。
どちらも助けたいアシタカは争いをやめさせるべく奮闘します。

 

解説・考察・感想など

ジコ坊と唐傘連、師匠連の関係

もののけ姫

©1997 Studio Ghibli.

ジコ坊とエボシの会話には師匠連、唐傘連、地バシリ、石火矢衆など組織名らしき名称が出てきますが、説明が少なくわかりにくいので整理します。

組織の上下関係を簡単に表すと
天皇 > 師匠連 > 唐傘連・石火矢衆 です。

天皇は作中では「帝(みかど)」または「天朝様」と呼ばれています。
師匠連は恐らく天皇の部下のトップ集団のようなもので、唐傘連と石火矢衆は師匠連から与えられた任務を遂行する実行部隊です。
ジコ坊は唐傘連のリーダーで、ジコ坊が天皇の名前を使って雇ったのが地バシリ(狩りのプロ集団)です。

天皇はシシ神の首を食べるかなんかすると永遠の命が得られるらしいとどこからか聞きつけて、師匠連に「シシ神の首が欲しい」と言い、師匠連は天皇の望みを唐傘連と石火矢衆に伝えて実行するよう命じました。

さらに師匠連はシシ神を知るエボシにも協力を要請すると、エボシは「石火矢衆を護衛として貸してくれるなら協力する」と答え、シシ神狩りに参加しました。

この辺の説明が作中で詳しくされないのは、宮崎監督が「子供向け」を意識して大人のいざこざの説明を最低限に抑えたからのようです。

 

エボシはなぜ石火矢衆を借りていた?

エボシが師匠連から石火矢衆を借りていたのは、タタラ場の質の良い鉄がアサノと呼ばれる侍集団に狙われていて、いつ村が襲われてもおかしくなかったからです。

アシタカが遭遇した戦や殺してしまった侍、タタラ場を訪ねてきた公方様の使者と名乗る男たちは、恐らくみんなアサノの集団です。
アサノの集団は恐らく地方豪族のようなもので、西の地を支配するためにすべての村を制圧しようとしていたと思われます。

タタラ場で作られる鉄はとても質が高く、アサノたちに狙われていました。
エボシはアサノの侍たちから「鉄を半分よこせ」と脅されていて、エボシがアサノを無視していたのが分かるのは、おトキさんたちが公方の使者を追い払ったときです。
余談ですがエボシの「丁重にもてなせ」という掛け声で おトキたちが使者を鉄砲で追い払うシーンは、エボシと村の女性陣の団結力の強さとユーモアを感じるので大好きです。

恐らくエボシは村人に自分の守り方や戦い方を教えて村だけで戦に耐えられるようになるまで石火矢衆を借りたくて、シシ神殺しを遅らせて時間稼ぎをしていましたが、ジコ坊は師匠連に急かされて、エボシが動かざるをえなくなった頃がアシタカがタタラ場に来た時です。




エボシと男たちがいない間に村を襲ったのは誰?

エボシと村の男たち、唐傘連、石火矢衆がシシ神狩りに行っている最中、タタラ場の村は侍たちに襲われました。
タタラ場を襲ったのはアサノの侍たちで、おトキが追い返していた公方様の使者を名乗る男たちもアサノの一味です。
彼らは恐らく『この村を襲わないであげるから鉄砲を献上しろ』と脅しに来ていましたが、エボシに無視されおトキに追い返されたので、村を制圧して無理やり武器(鉄)を奪おうと、男たちが出払ったタイミングで襲ってきたのです。

 

サンがアシタカをシシ神の池に連れてきた理由

もののけ姫

©1997 Studio Ghibli.

アシタカはサンとエボシの戦いをやめさせた時、銃で撃たれて致命傷を負います。
サンはアシタカを一度は殺そうとしましたが、シシ神の住処のお池に連れてきました。

サンがアシタカをシシ神の池に連れてきたのは、サンにはアシタカが悪い人間ではなさそうに見えたものの確信が持てず、助けるか殺すか迷ったからです。
サンがアシタカの命をシシ神に託すと、シシ神はアシタカを生かしたので、サンも神様の意思に従ってアシタカを助けることにしました。

 

アシタカはなぜ泣いた?

もののけ姫

©1997 Studio Ghibli.

アシタカはサンとシシ神に命を助けてもらったときに泣いています。
アシタカが泣いた理由は私が思いつく限り3つあります。

①瀕死状態から奇跡的に生還して緊張がほぐれた涙
事故に遭いそうになるなど恐ろしいことが起きた直後、助かった安心感と極度の緊張状態から解放された反動で動けなくなったり涙が出たりした経験はありませんか?
身近な例だと、例えば迷子になった子どもが親を見つけた直後に大泣きする現象です。

アシタカにも同じ現象が起きていたように見えます。
アシタカは胸を撃たれ、サンや山犬に殺されかけて3回位死の恐怖を味わい、最後はシシ神様に傷を癒されて生き残ります。
アシタカは生きていたと実感した時に緊張から解き放たれて涙が出てしまったのでしょう。

②シシ神が傷は癒やしても呪いは解いてくれなかったことを知り、神の厳しさに泣いた
アシタカは表には出しませんが、内心は呪いに苦しめられることを恐れています。
呪いで死ぬよりも、胸を撃たれて失血死した方が死に方としては楽です。

シシ神はアシタカを生かしましたが、呪いを残したことを踏まえると失血死を許さなかったとも言えます。
これはシシ神からの『死にものぐるいで生きろ』というメッセージでもあるので、アシタカは神の厳しさに泣いたようにも見えました。

③弱い者の気持ちや助けてくれる人がいる有難さが身に染みて泣いた
アシタカ自身は今までずっと「助ける側」でしたが、恐らくこの時初めて「助けられる側」になりました。
アシタカは助けられる側になったことで、手を差し伸べてくれる人がいることのありがたみを実感したうれし涙でもあったのではないでしょうか。

また、アシタカは常に強く立派であることを求められてきて弱さを見せられる相手はいなかったと思われるので、弱い自分でも受け入れてくれる大自然とサンに安心した涙もあったような気がします。

次のページに続きます!

2ページ目は『シシ神が呪いを解かないのはなぜ?』『乙事主がシシ神の森に来た理由』『お前にサンが救えるかの意味』『ラスト考察』です!




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