「夢売るふたり」ネタバレ解説|ラストの意味、貫也と里子に関する8の考察 | 映画の解説考察ブログ - Part 2

「夢売るふたり」ネタバレ解説|ラストの意味、貫也と里子に関する8の考察

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クライムドラマ

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里子がねずみを見つけたときの心境は?


(引用:https://unsplash.com

貫也が滝子と過ごす間、里子は1人で店を切り盛りしていて厨房でネズミと出くわします。
いつの間にか家に忍び込み、こっそりと生きているネズミ。
里子は貫也に結婚詐欺をさせて、新しい店をオープンしようとしています。
この方法を考えたのは里子ですが、実際に行動してうまいこと金を引っ張っているのは全て貫也です。
里子はサポートのみで、自分も行動して男性を騙そうとはしません。
このとき里子はこのネズミと自分自身を重ね合わせて、卑劣さやずるさに気が付いたのではないかと感じました。

 

恵太を見て表情が変わる里子

里子は滝子の住まいに繋がる階段で足を滑らせて盛大にしりもちをついてしまいます。
その直後、滝子の息子の恵太が「大丈夫?」と声をかけると、里子は恵太を見て固まりました。

このとき里子が固まった理由は、貫也の心が滝子に向いているのが恵太(子ども)の存在が大きな理由を占めていることに気づいたからです。
里子の目からは怒りが消え、意気消沈してその場を離れます。

里子からしてみれば、貫也には『里子と貫也の子どもを授かる方法(不妊治療など)』に目を向けて欲しいですよね。
それなのに、貫也は里子との子作りや不妊治療には意識がいかず、子持ちの女性に目を向けてしまいました。
貫也は夢売る詐欺で里子の冷酷さを垣間見て心が離れてしまったのが大きな理由だとは思います。

貫也が見つけてきたのは『金づる』ではなく『貫也の欲しいものが揃っている新しい家族』です。
そうなると、里子が捨てられる未来は容易に想像できます。
しかし、貫也が他の女性に目移りする環境を作ったのは里子自身なので、諦めて立ち去ることしかできなかったのかもしれません。




貫也だけが逮捕された理由

恵太が貫也を助けようとして探偵の男(笑福亭鶴瓶)を包丁で刺した結果、貫也だけが服役しています。
里子が捕まっていないことや、唯一行動を起こした被害者の咲月も「訴えて大っぴらにして家族や親戚に知られたくない」と探偵に語っていたので、貫也は殺人未遂だけで服役していていて、今までの詐欺は隠し通せたのでしょう。

 

カモメを見て何かを思う貫也

刑務所に入った貫也が仕事の合間に窓を見るシーンがあります。
貫也の視線の後、画面には2羽のカモメが映し出されます。
空を飛ぶ鳥からは『自由』を連想します。
貫也は『店をやり直したい』という夢をまだ諦めておらず、出所したら「またイチから出直そう」と考えているのではないかと感じました。

ただ、貫也が出所後に会いたいと思っているのが里子なのか、滝子と恵太なのかは難しいところですが、空を飛ぶカモメからの里子だったので、貫也はやはり里子とお店を持つ未来を想像していたような気はします。

 

ラスト、カメラ目線になる里子

貫也が見たカモメの後、漁港で働いている里子が映ります。
里子はカメラを不機嫌そうな顔でじっと見つめたあと、プイっとそっぽを向いて仕事に戻っていきました。
これは、里子はもう貫也と一緒にやっていく気がないことを表しているのではと感じました。

今まで里子は貫也の夢が自分の夢と思い、文句ひとつ言わずに頑張り続けてきましたが、本当は、最初の浮気も、それからの『仕事』という名目での浮気も許しておらず、怒りを抱えたままなのでしょう。
そして滝子との浮気で里子のコンプレックスも刺激され、怒りを通り越して愛想を尽かしたのではないでしょうか。

本当は里子は夢売る詐欺を貫也に命じたのは、「里子を愛しているからそんなことはできない」と貫也が拒否することを期待していた(愛情を示して欲しかった)からだと思います。
しかし、貫也は拒否するどころか次第に女遊びを楽しむようになり、ついには子持ちの滝子を見つけてきて里子との約束も守らなくなっていました。
滝子を標的にしたことは、貫也なりの里子への仕返しという意味合いもあったのでしょう。
「自分は大事にされていない」、「こんなはずじゃなかった」と里子は感じていたはずです。

 

その他感想

軽快なテンポや音楽で始まっていきますが、次第に内容が重く、心理描写も増えてヘビーになっていきます。
結婚詐欺を始めて、徐々に2人の罪悪感や絆が崩れていく過程が繊細に描かれています。
まあでも「他の女と親しくなれ」と夫に命じてる時点で関係が崩れるのは目に見えますけどね。。
死人が出ていないのが唯一の救いのような感じです。

阿部サダヲ、松たか子、その他俳優さんたちの演技はとてもナチュラルで素晴らしかったです。
特に松たか子の演技は必見です。
目や表情だけで感情を表す多くの場面もですが、特に、浮気したサダヲちゃんをお風呂場で問い詰めるシーンが良かったです。
パンをむさぼるシーンは、パンがヤマザキかどうか確認したくなりました笑
香川照之さんが一人二役してらしたのもツボでした。

どん底に落ちた夫婦が詐欺を始めて、里子はどんどん元気がなくなっていき、逆に貫也はどんどん元の明るさを取り戻し、生き生きしていく…
この反比例な2人の様子(特に里子の)も細やかに描かれています。

疑問に思ったのは、恵太の罪が闇に葬られているのはそれで良かったのか?です。
探偵を刺した恵太は貫也にかばってもらって、その後は幸せそうに生活している場面だけでした。
まるごと無かったことになっていたので違和感がありました。
というか、刺すのをあえてあの子にやらせなくても良かったのではとも思います。

本作は言葉で語られないことが多く、理解するのが難しかったり、捉え方を観客にゆだねるような、曖昧な点も多い作品でした。
これは西川監督の作風ですが、もう少しヒントを与えてくれると妄想がさらにはかどりそうです。

以上です!読んで頂きありがとうございました。
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  1. 匿名 より:

    いまAmazonプライムでこの作品を見終え、
    このシーンはどういうことだったんだろう、
    最後終わり方がよく分からなくてネット検索で
    こちらのサイトに辿り着きました。
    めちゃくちゃスッキリしましたし、
    そういうことだったのか!とまた作品の面白さにきちんと触れた気がします。
    ありがとうございます。

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