映画「ゼロの焦点(2009)」あらすじ結末ネタバレ・感想評価・解説あり | 映画鑑賞中。

映画「ゼロの焦点(2009)」あらすじ結末ネタバレ・感想評価・解説あり

ミステリー

(出典:楽天市場

ゼロの焦点

原題:
制作年:2009年
本編時間:131分
制作国:日本
監督:犬童一心
脚本:犬童一心、中園健司
原作:小説/松本清張『ゼロの焦点

ゼロの焦点(2009)|概要紹介

昭和32年。東京の広告会社に勤める鵜原憲一(西島秀俊)とお見合い結婚を決めた禎子(広末涼子)は、婚儀を終えた一週間後、憲一が約2年間出張していた金沢に後輩の本多(野間口徹)が行くことになり、憲一は引継ぎのため金沢へ旅立った。
憲一は帰省予定日を過ぎても帰ってこず、不安に駆られた禎子は単身、金沢へ憲一を探す旅に出た。

ゼロの焦点(2009)|出演者・キャスト

鵜原禎子(広末涼子) 室田佐知子/社長夫人(中谷美紀) 田沼久子/室田の会社の受付(木村多江) 鵜原憲一/禎子の夫(西島秀俊) 鵜原宗太郎/憲一の兄(杉本哲太) 宗太郎の妻(長野里美) 鳴海享/佐知子の弟(崎本大海) 本多良雄/憲一の後輩(野間口徹) 金沢警察署の米田警部(モロ師岡) 羽咋駐在の警察官(江藤漢斉) 立川署の葉山警部補(小木茂光) 山室刑事(本田大輔) 上条保子/金沢市長候補(黒田福美) 大隈ハウスの女性(左時枝) 鵜原憲一夫婦の仲人(小泉博) 青木所長/憲一の上司(本田博太郎) 板根絹江/禎子の母(市毛良枝) 室田儀作/佐知子の夫、憲一の得意先会社の社長(鹿賀丈史

ゼロの焦点(2009)|みんなの感想・評価(5点満点)

 

HONEYの感想・評価|4.3 (出典:Filmarks
結婚相手の事は、昔の事も含めよく調べましょう(笑)

 

miporinzouの感想・評価|3.5 (出典:Filmarks
これは本当にやるせない。
胸に重さが残る。

 

lipの感想・評価|3.0 (出典:Filmarks
中谷美紀と木村多江あっての映画だった。
ただ、世間知らずな役柄の広末涼子が謎を追うからこそ逆に良かったような気もする。

 

あやっぺさんの感想・評価|3.0 (出典:Filmarks
ミステリーとして普通に面白かった。
映像もストーリーも含め、ザ・松本清張作品という感じ。

 

以降はあらすじ詳細でネタバレ含みます。

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あらすじ詳細①起

昭和32年8月 商事会社に勤める禎子/ていこ(広末涼子)は、東京の広告会社に勤める、金沢出張所に赴任して2年目の鵜原憲一(西島秀俊)とお見合いで結婚が決まった。
禎子の母親は10歳という年の差を気にしたが、禎子は物腰柔らかな憲一の態度に安心感を覚えたことと、自分のことをあまり話したがらない憲一に、『この人のことをもっと知りたい』と思ったのが結婚を決めた要因だった。

婚儀の1週間後の同年12月1日。東京に戻った憲一に変わって、後輩の本多良雄(野間口徹)が金沢に出張することになった。
憲一は本多に業務の引き継ぎをするため1週間金沢に行くことになり、本多と一緒に上野駅から出発するのを禎子は駅で見送った。
憲一は「一週間なんてすぐさ」と禎子にキャラメルを一つ渡して微笑み、列車は出発した。
禎子が憲一の姿を見たのはこれが最後になった。

1週間後の12月8日㈰。禎子はすき焼きの準備をして憲一を待ったが、家には憲一の荷物は届いているものの、本人は帰ってこなかった。
電報もなく不安になった禎子は近所の店で電話を借りて会社に連絡したが、会社は何も知らなかった。

9日㈪。届いていた荷物を開けると憲一からの手紙が入っていたが、そこにも『予定通りにそちらに戻ります』としか書かれていなかった。
禎子は憲一の荷物を元に戻していたところ、荷物に入っていた一冊の辞書が落ち、間に挟まれていた写真が2枚出て来た。
1枚は古い和風の小さな一軒家、もう1枚は立派な洋風の屋敷の写真だった。
禎子にはどちらの家も見覚えがなかった。

夜。自宅に憲一の会社の人間が来て、憲一は7日に金沢出張所から出た記録が残っていると報告して帰っていった。
禎子は心配になって憲一の兄 宗太郎(杉本哲太)の家を訪ねた。
宗太郎もその妻(長野里美)も「きっとどこかで所用が出来たんだ。そのうち何でもない顔をして帰って来るさ」と禎子を励ました。
宗太郎は禎子があまり気に病まないように「憲一が子どもの頃にも何度かフラッとどこかに行ってしまったことがあった」と陽気に話したが、宗太郎の話は禎子の知らない話ばかりで余計に心配になり、単身金沢に行くことにした。

金沢行きの列車の中で、禎子は憲一と一緒に本州へ旅行に行った時のことを思い出した。
楽しかった旅行だったが思い返せば、憲一の言動全てが自分と誰かを比べているように感じられた。
旅行先で初めて結ばれた時、禎子は憲一の右肩に戦争で負った大きな傷が残っているのを触って確かめた。

翌朝。列車の中で目が覚めた禎子が外の景色を見てみると、一面の雪景色が広がっていた。
金沢駅で降りると、後輩の本多と金沢所所長の青木(本多博太郎)がホームで待ってくれていた。
本多と青木はその場でさっそく禎子に今朝、羽咋(はくい)の海岸で、30代半ばで茶色の背広を着た男性の死体があがったと話した。
禎子が最後に憲一を見た時、憲一は確かに茶色の背広を着ていた。
3人は死体を確かめるために羽咋の海岸へ向かった。
車で海岸線を走っている途中、青木はこの辺一帯の海岸線を能登金剛(のとこんごう)と言って、切り立った断崖が続いているため自殺の名所になっていると話し、禎子の不安は大きくなった。
海岸に着くと警官が死体を安置している場所に案内してくれて、そこはひどいにおいがした。
警官は「岩に何度もぶつかったようで、あんまり人に見せられる状態ではないけど」と言いながら死体の覆いをとった。
死体はひどく腐敗していたが、禎子は警官に夫ではないと伝えた。
禎子は本多と青木に、憲一の金沢での下宿先と聞いていた津幡(つはた)の宿に行ってみたいと言ったが、本多と青木は「津幡は1年半前にすでに引き払っている」と返した。
憲一は2年間金沢にいたはずなので、じゃあ1年半もの間どこに住んでいたのかと聞いたが、それは誰も知らないと本多が答えた。

夜。雪おこしの雷の音が響く部屋で不安に駆られながら禎子は、自分が憲一について何も知らなかったことを噛みしめながら眠りについた。
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翌朝。憲一の兄の宗太郎から宿に電話があり、宗太郎は現在京都に出張で来ていて、仕事が終わり次第、禎子のところに行くとのことだった。
電話を切った後、本多と青木も禎子の様子を見に来てくれており、本多が「鵜原が懇意にしていた得意先である室田耐火煉瓦株式会社の社長、室田儀作氏に話を聞いてみてはどうか」と提案してくれた。
禎子も同意し、室田氏の元へ行くことになったが、青木は本多に「お前は同席するな。これはあくまでも”奥さんの個人的なこと”にしてもらわないと困る」と言い、青木とは宿で別れた。
青木は鵜原憲一の失踪の責任が会社にふりかかる事を恐れていた。

室田耐火煉瓦株式会社は、今までの営業が苦戦していた取引先だったが、鵜原が金沢で営業についてから、室田社長とその妻 佐知子に気に入られ、会社の得意先となったそうだ。
室田社長は九州の炭鉱町から流れてきて一代で会社を築き大きくした人物だった。
室田社長は本多いわく、アクが強い人らしい。
妻の佐知子とは約3年前に再婚したとのことだった。

禎子と本多は電車で室田氏の会社の最寄り駅まで行き、そこから歩いて会社へ向かった。
会社の前では市長選挙の演説が行われようとしていた。
壇上に上がるのは上条保子(黒田福美)という日本で初めての女性市長候補で、室田氏の妻 佐知子は、上条保子を目に見えない形で応援しているらしいと本多は禎子に説明した。

受付の女性(木村多江)が面会の場所を指示してくれたとき、禎子と本多は、受付の女性が受付にしては手荒れがひどいことと、さらに禎子はその女性が受付で外国人に対応していた時の、女性の話す英語に違和感を感じた。
受付を済ませた後で本多と別れ、禎子は室田氏のいる事務所へ向かう途中、工場の中を通った。
なにやら騒ぎ声が聞こえたので禎子が近づいてみると、従業員たちが「これで勘弁してください!」と叫び、その中央に居たのが室田社長(鹿賀丈史)だった。
どうやらレンガの出来が社長の気に入るものではなかったようだ。
室田社長は従業員の1人をレンガで殴って怒鳴り付け、従業員たちは皆困り果てた様子で泣きついていた。

室田社長は禎子を事務所に招き入れ「男が突然消えると言ったら、大概は女が理由だろう」と笑った。
禎子が悲しそうな顔をすると社長は「でも大丈夫。あんたなら絶対に帰ってくるさ」と言った。
そこに社長の妻の佐知子(中谷美紀)が工場の事務所には似つかないお洒落な衣装で入ってきて、会社の用事を忘れていた社長をしかりつた。
社長はうなずきながら佐知子に禎子を紹介すると、禎子と佐知子は明日、上条保子の事務所で改めて話をすることになった。
社長は「鵜原の私生活のことなら佐知子の方がよく知っている。佐知子のお気に入りだったからな」と禎子に真顔で言った。
禎子は佐知子がとても美しく、また自分にはない強さを感じる女性だったこともあり、不安にかられた。

宿に帰ってきた禎子は、宿のすぐ近くの道路からタクシーに乗り込む憲一の兄 宗太郎を見かけた。
禎子は不思議に思ったが、追いかけはしなかった。
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あらすじ詳細②承

翌日。新聞には上条保子に関する記事が載っており、そのタイトルは『街の声は否定的』だった。
この記事を掲載させたのは、上条保子とライバルになる男性市長候補の仕業だった。
禎子が事務所に入った時、事務所内には不安の声が飛び交っていたが、佐知子が上条を含めて全員に喝を入れると、皆が落ち着きを取り戻して笑顔になった。
そのとき突然窓から石が投げ込まれ、事務所内はざわめいた。佐知子は石を拾ってすぐに割れた窓から外をのぞいたが、外に犯人らしき人物は見えなかった。

禎子は車に乗せられて佐知子の運転で室田邸に着き、禎子はこの屋敷が憲一の辞書に挟まっていた写真の家だということに気が付いた。
家に入り、佐知子は「憲一と6日の夜に室田社長と3人でここで夕食をとったが、それ以降のことは知らない」と話した。
禎子は佐知子と憲一の関係を問い詰めたが、佐知子は「夫が大げさに言っただけよ。あの人こそ、鵜原さんが大好きだったんだから。『鵜原の目は人が死んだのをちゃんと見てきた目だ。そういう奴は信頼できる』って言って」と笑って話した。
部屋には画材道具と絵がたくさん置かれていて、それは佐知子の弟で画家の鳴海享(崎本大海)のものだった。
鳴海享は芸大を卒業してから画家になり、画廊などに出店したりしてそれなりに売れていると佐知子は禎子に話した。
禎子が黙って聞いていると、佐知子は突然思い出したように、6日の晩に憲一が口ずさんでいた歌が、プラターズの”Only you”だったと禎子に話した。

夜、禎子が宿に帰ってきて母親と電話していると、母親も憲一の情報をつかもうと親戚などに電話をして、憲一の前の職業は警察の巡査で、以前勤めていたのは立川署だったとわかったと話した。
禎子も母も、今まで憲一からそんな話は聞いていなかったため驚いた。

12月16日㈪。昼間に憲一の兄の宗太郎が禎子の部屋を訪れて「さっき金沢に着いたところです」と言いながらコートを脱いだ。
禎子は数日前に確かに宗太郎を見かけていたので違和感を感じた。
禎子は「手がかりは何もつかめておらず警察に捜索願いを出した」と話すと、宗太郎は「気が早い気もしますがね」と苦笑いした。
憲一が以前、警察官だったことを宗太郎に聞くと、宗太郎は禎子が知らなかったことに驚き、彼が知っていることを話してくれた。
憲一は戦争から帰ってきてすぐに警察に就職したが、働いた期間は1年もなかったという。
宗太郎は「そんなに心配しなくても、きっと帰ってきますよ。今頃どこかでポカーンと海でも眺めているんでしょう。大丈夫。私が必ず探し出します」と笑った。
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その日の夜。宗太郎は石川県の鶴来にある茶屋に入った。
人と会う約束をしていたが、しばらくして宗太郎は毒を盛られて倒れ、仲居が部屋から赤いコートを来てサングラスをかけ頭にはネッカチーフを巻いた女が逃げるように茶屋から出ていくのを目撃していた。

宗太郎の遺体は警察に調べられ、青酸カリが致死量盛られていたことがわかった。
さらに警部(モロ師岡)の調べによると、宗太郎は出張のついでに金沢に来たのではなく、会社には3日前から休暇願を出していたことがわかった。
移動時間を考えても、禎子に会いに来る丸1日前にはすでに金沢にいたことになるが、詳しいことは誰も知らなかった。
知らせを受けて本多も警察署に駆けつけてくれ、禎子は宗太郎の妻に電話をして亡くなったことを告げると、妻はショックで泣き叫んだ。
電話を切った直後、禎子は上条保子のガードを警察に頼みに来ていた佐知子と偶然会った。
禎子が憲一の兄が亡くなったことを告げると、佐知子は驚いていた。

佐知子が車で禎子と本多を送ってくれることになった。
車の中で本多が佐知子に事件の概要と、仲居が見た犯人らしき女は、まるでパンパン(アメリカ兵士相手に春を売る女性)のようだったらしいと説明していたとき、禎子は不安とストレスから車酔いをしてしまった。
佐知子はすぐに道路わきに車を停車して禎子を下ろし、外の風に当たらせてくれた。
やがて落ち着いた禎子は、佐知子と本多に自分の推測を話した。
宗太郎は赤いコートの女に「憲一と会わせる」という類のことを言われて待ち合わせしたのではないか、そこで理由はわからないがその女に殺されてしまい、憲一ももうこの世にいないのではないか、と。
佐知子と本多は「憲一のことと宗太郎の事件は関係があるのかまだわからないから、そんな風に考えるな」と励ました。
禎子は「今回のことで憲一さんのことを何も知らないことが分かった。この事件を乗り越えれば本当の夫婦になれる気がする、けど一方で、何もわからない今の状況が耐えられず、最悪の結果だったとしても早く真実を知りたいと思っている自分もいる。私はひどい人間です」と本音を明かした。
佐知子は禎子の手を握り「そう思うのも当然よ。結婚が本当にあなたの夢だったのなら、そんなに簡単にあきらめてはだめよ」と優しくしかった。

禎子たちと別れた佐知子が家に帰ると、夫の室田儀作が家に呼んでいた飲み屋の女性たちが帰るところだった。
佐知子は気にも留めない様子で女性たちを送り出してコートを脱いでいると、酔っぱらっている儀作は鵜原憲一の兄が殺されたことを青木所長から聞いて知っていて、佐知子に話してきた。
佐知子がそつなく返していると、儀作は気を悪くしたのか「鵜原とは本当に何もなかったのか?」と詰め寄ってきた。
佐知子は「バカなこと言わないでください」とソファから立ち上がったが、儀作は佐知子の腕を掴んでソファに押し倒した。
儀作は嫌がる佐知子に強引にキスをし、佐知子は無表情でじっとしていた。
儀作はキスをやめて佐知子の顔をまじまじと見ながら「本当はどんな女なんだ?」と問いかけた。

翌日。禎子は宗太郎の葬儀のために一度、東京へ戻ろうとしていた。
駅には本多が見送りに来てくれており、禎子は「葬儀が終わったらすぐに戻ってきます」と伝えて列車に乗った。
禎子が列車に乗ったとき、受付の女性のことを想いだした禎子は、本多を引き留めて「室田の会社の受付にいた手の荒れた女性の話していた英語が、まるでパンパンが使うような現地のスラングだったのを思い出した」と話すと、本多は受付の女性のことを調べておくと約束してくれた。
受付の女性の英語に違和感を感じた理由がこのとき分かったのだ。
禎子は語学が堪能で、結婚する前に勤めていた会社でも英語を使う仕事をしていたため、英語については人並み以上に知識があったのだ。
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あらすじ詳細③転

日本初の女性市長候補の上条保子のことは東京でも話題になっていた。
宗太郎の葬儀が終わったころ、禎子あてに本多から電話があった。
受付の女性は田沼久子という名前で、宗太郎が殺された16日から会社を休んでいるという。
先日、田沼の旦那は能登金剛から身投げして亡くなってしまい、久子を不憫に思った室田社長が受付として彼女を雇ったのだそうだ。
ただ、亡くなった田沼の夫と室田社長の関係は社内の人間は誰も知らないという。
社内では、田沼久子は室田社長の愛人なのではないかという噂も出ているそうだ。
佐知子に関しても、室田は前妻が亡くなる前から、別の会社で働いていた佐知子を室田が見初め、室田の会社に引き入れていたそうだ。
本多はこのあと田沼久子と会う約束をしており、真相を確かめに行くと禎子に伝えた。
本多は「事件記者みたいで楽しくなってきました」と嬉しそうに電話を切った。

同日の夜。田沼の自宅を訪ねた本多は玄関前で挨拶をしたが返事はなく、玄関を開けてみても中は静かだった。
本多が家に上がり込み中の様子をうかがっていたとき、赤いコートにネッカチーフの女が突然現れ、本多の背中を包丁で一突きにした。

数日後、禎子と青木所長は被害者の確認のため警察に呼ばれ、米田警部は宗太郎と本多を殺害した犯人が田沼久子で間違いないと読み、田沼久子を指名手配したことを2人に伝えた。
本多が殺された夜、夜更かししていた中学生が田沼の家の近所のバス停で、赤いコートにネッカチーフの女が立っていたのを見たと証言もあった。
田沼には親族もおらず、田沼が内縁関係だった旦那 曽根益三郎36歳は、8日に海から遺体が上がっていたそうだ。
禎子は、憲一が帰って来る予定の日も8日だったことを思い出して嫌な予感がした。

禎子は警察から出てすぐに田沼久子の家の近所で、田沼久子と曽根益三郎の話を聞いて回った。
近所の住民たちの話によると、田沼久子は戦後からここに住み着いており、田沼が派手な格好をしていたため近所では噂になっていたという。
曽根益三郎は金沢と東京を行ったり来たりしていたらしく、性格はとても無口で、田沼久子は益三郎によく尽くしていたという。
禎子は住民から話を聞けば聞くほど、曽根益三郎が鵜原憲一だったのではないかという疑惑が膨らむばかりだった。
田沼久子の家にたどり着いた時、その家が憲一の持っていた2枚目の写真の家だと言うことに気が付いた。
家の中に入ると中に物はあまりなかったが、居間には遺骨と線香がぽつんと置かれていた。
建付けの悪い家で風が吹くたびに隙間風が家に吹き込み、禎子の足元に何かが転がってきた。
禎子が良く見ると、それは憲一が金沢に出発する直前、禎子に渡したキャラメルの入っていた箱だった。
禎子はそれを見て、疑惑が確信に変わった。
鵜原憲一は1年半の間、ここで”曽根益三郎”と言う名前で田沼久子と暮らしていたのだ。

禎子は曽根益三郎(憲一)が身を投げたという能登金剛の崖に立ち、荒れている海を見ながら1人涙を流した。
禎子にはここが海原に広がる墓場にしか見えなかった。
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禎子は警察に行き、別れ話をされて憲一を恨んだ田沼久子が、崖に憲一を呼び出して突き落としたのだという推測を米田警部に話した。
米田警部は困った顔をして「でも遺書がね・・・」と言い、米田の部下が田沼久子の家から押収したという曽根(憲一)の遺書を禎子に渡した。
遺書のことを知らなかった禎子は驚き、緊張しながら遺書を開いた。
『久子へ 色々と思うところがあって、生きていくのが辛くなった。詳しい事情はお前に知らせたくない。ただ僕は、この※煩悶を抱いて永遠に消えることにする。これまでありがとう。 益三郎』
※煩悶:悩み苦しむこと
曽根益三郎が残したこの遺書と、会社に残っていた鵜原憲一が書いた書類とを筆跡鑑定にかけたが、筆跡は一致していたと米田警部は禎子に伝えた。

禎子は佐知子に会いに上条保子の事務所へ行き、思いの丈を語った。
禎子にはどうしても憲一が自殺をするような人間には思えないこと、久子には遺書が残されていて、自分には何も残されていなかった理由もわからず、もし自分がどうでもいい存在だったのなら憲一が許せないと、感情をあらわに佐知子に訴えた。
佐知子は優しく禎子を抱きしめて「あなたはもう十分にがんばった。まだ冷静に考えることが出来ないのよ。後のことは警察に任せて、東京に戻ってしばらくゆっくり休まれた方がいいわ」と慰め、禎子に別れを告げた。
選挙の日が直前に迫っていた事務所内では、だれも禎子と佐知子の様子を気に留める様子もなく皆が忙しそうにしていた。

東京に戻った禎子は、憲一が勤めていたという立川警察署へ出向き、憲一のことを覚えていると言う交通課の葉山警部補(小木茂光)に話を聞いた。
葉山と鵜原は当時、風紀係を務めていた。
その当時はまだ日本がアメリカに占領されていた頃で、アメリカ軍人は街中にいくらでもおり、彼らの金目当てにパンパンもどこにでもいて軍人を口説いていたそうだ。
米軍は風紀の乱れを嫌ってパンパンの狩り込みを行っていたが、それをやらされたのが日本警察の風紀係だった。
鵜原と葉山は米軍の車で彼女たちが集まっている場所に行っては、逃げる女性たちを追いかけて逮捕することを繰り返し、米軍の者が時に女性たちを殴ったりしても日本警察は文句ひとつ言えなかった。
「そんなあり方を鵜原は悩んでいたようだった」と葉山は禎子に語った。
禎子は葉山に、田沼久子の顔が写っている新聞の切り抜きを見せて、風紀係をしていた頃、この女性を見たことがないかと尋ねた。
すると葉山は「この女性に見覚えは無いが、おとといもこの女性のことを聞きたいとたずねてきた人がいた」と言った。
禎子がそれは誰かと聞くと、葉山はその人物からもらった名刺を取り出して「ひどく思いつめた表情をしていました」と禎子に渡した。
それは室田儀作氏の名刺だった。
葉山は、中神にこの種の仕事をしていた女性たちが集まる”大隈ハウス”という下宿があるから、そこで聞いてみるといいと教えてくれた。

大隈ハウスにいた管理人らしき初老の女性(左時枝)に田沼久子の話を聞くと、女性は『またか』という顔で、田沼久子は内気だったが、アメリカ兵たちからは大人気だったと話し「ここに居た子たちは全員が、あんたたちが思っているような子たちじゃない」と付け加えた。
また、田沼久子はここでは”エミー”という名前で商売をしていたらしい。
そして女性は「おととい来た人にも見せたから」と、当時の写真を見せてくれた。
そこには華やかなドレスを着た十数名の女性たちが写っており、田沼久子もドレス姿で楽しそうに笑っていた。
禎子が写真に写っている顔を1人ずつ見ていると、その中になんと室田佐知子も写っているのを発見した。
禎子が驚いていると、女性は「あんたも”マリー”のこと知ってんのかい」と言い、マリー(佐知子)の身の上話を始めた。
佐知子は空襲で両親をなくし、肺病を患っている弟の治療費のために働いており、大隈ハウスからいなくなる前は将校の※オンリーをしていたという。
※オンリー:特定の人物しか相手にしないこと。この場合は将校。
田沼久子と室田佐知子は同じころに足を洗って大隈ハウスから出ていったと言う。
2人の関係が分かった禎子は血相を変えて駅まで走り、金沢行の列車に飛び乗った。

同じころ、久子と佐知子は車で山道を走っていた。
久子「マリー、私ほんと嬉しかったんだよ。あんな小さな新聞記事で私のこと思い出してくれるなんて。喪主 田沼久子なんて縁起でもないけどさ」
佐知子「困ってるのがあんたってわかれば、当然よ」
久子「でもやっぱり、これ以上あんたに迷惑かけられんわ。あんな立派なお屋敷に住んで、良いご身分なんだからさ。殺した人はちゃんと警察が探し出してくれるよ」
佐知子「だめよ!昔のことがわかったら、ろくに調べもしないであんたがやったことにされるわ。それが心配で隠れてもらったんだから。皆、私たちみたいな人間は捨てられるもんなら捨てちまいたくてウズウズしてるのよ」
久子「でも・・・」
佐知子「金沢は固められてるけど、高岡から東京へ向かえばきっと大丈夫だから」

田村久子は鵜原宗太郎と本多を殺した犯人ではなかったのだ。
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あらすじ詳細④結

久子は佐知子に、益三郎の本名が鵜原憲一だということ、東京で益三郎(憲一)が結婚していたことを憲一の兄という男から聞かされたが、いまだに信じられないし、事実だとしても何か事情があったはずと話していた時、佐知子は道路のすぐ横が崖になっている場所で車を止めて突然笑いだした。
佐知子「あんたって昔から本当にお人よしね。あんたより若くていい女がいたから乗り換えただけよ。鵜原憲一が結婚していたのは本当よ。東京で結婚式も挙げてる」
久子「・・・ウソよ」
佐知子「ウソなもんですか。あいつはね、その若い女と『一緒になりたい』なんてしゃあしゃあと言ってたのよ?『東京に行って生まれ変わりたい』なんて、本当にひどい人」

佐知子は車が動かなくなったフリをして外に出て、修理をする素振りでボンネットを開けて中をのぞき込んでいる間、久子も外に出てきて真っ暗な崖を眺めながら昔話を始めた。
それは佐知子と久子が憲一と初めて会った時のことだった。
パンパン狩りが行われた冬の日の夜、久子と佐知子は近くの学校の中に逃げ込んだ。
教室に入って身を潜めていると、黒板に”この道”の歌詞が書かれていた。
学校に行っておらず、文字が読めない久子は何が書いてあるのか聞くと、佐知子は”この道”を歌い始めた。
2人で歌を口ずさんでいたとき、2人を追って学校に入っていた憲一は、歌声が聞こえる教室の外に座って2人の歌声に耳を傾けていた。
歌い終わると、佐知子は「文字なら今から覚えればいい」と、久子に文字を教える約束をした。
そしていつか女の子も皆学校に行けて、私たちみたいな仕事なんてしなくていい時代がきっと来ると久子に話した。
そのとき、米軍の※MPが学校内に2人を探しに入ってきたが、久子と佐知子に裏口を教えて逃がしてくれたのが憲一だったのだ。
※MP:military police 軍警察

久子が佐知子の方に向き直ると、佐知子は手にナイフを持って久子の前に立っていた。
久子はおびえながらも佐知子に、この一年半、憲一とどこで会っていたのか聞いた。
佐知子は偶然会社で憲一と再会して、室田社長が憲一を自宅に呼んでたまたま2人きりになったとき、憲一は佐知子に立川時代の話を持ち出してきたことを明かした。
佐知子はそれを脅しだと捉えて、過去の仕事のことが憲一から室田社長に伝わるのを恐れてお金で解決しようとしたが、憲一の要求は『1人の女性の仕事を世話してやってほしい』ということだった。
憲一はその女性が久子であることは伏せながら話した。2人が再会してしまうのを防ぐためだ。
憲一「僕は禎子と会うまで、誰とも結婚する気はありませんでした。だから今まで一緒に住んでいた女性にも本名は明かさず、”曽根益三郎”という戦士した友人の名前を使っていました。
でも本当は、僕も奥さんと一緒なんです。生まれ変わりたい。生まれ変わって新しい時代を生きて行きたい。禎子となら、それが出来るかもしれない」
佐知子「もう一人の女がかわいそう。せめてもの罪滅ぼしにもう一人の女には仕事の世話がしたい?そんな簡単なことじゃないわ!下手したらその人、死にかねないわよ?あなたのような男がいつも女を苦しめてきたのよ!」
憲一は返す言葉がなかった。
佐知子は考えながら歩き回り、何か思いついた。
佐知子「あなたが死ねばいい。あなたが一度死ねばいいのよ。”曽根益三郎”はこの世から消してしまえばいい。自殺を偽装するの。」

そして憲一は”曽根益三郎”の名前で遺書を書き、佐知子と一緒に断崖に行って遺書や靴を置いた。
憲一は、断崖で仕事を世話してほしい女性の名前と住所を書いた紙を渡し、佐知子は、その女性を室田の会社に入れてもらうことを約束して紙を受け取った。
断崖の下を見下ろしている憲一の背中を見ながら、佐知子は思った。
『この人だけが、私がパンパンをしていたことを知っている。この人さえいなくなれば・・・』
佐知子は憲一の背中を突き飛ばし、崖から落とした。

真相を知った久子は「どうして?あの人は、あんたの過去のことでどうこうしようとする人じゃないのに・・・」と泣き崩れた。
佐知子「まさか一緒に暮らしてたのがあんただったなんて知らなかったから・・・。困ってたのがあんたじゃなきゃ、そもそも連絡なんてしなかった」
久子「そして次は私かいね・・・『寒いからこれ(真っ赤なコート)を着ていけ』なんて優しいこと言って、みんな私がやったことにするつもりだったんだ。
なんでよ?私はもういつ死んでも・・・。”益三郎さん”なんて人はいなかった。憲一っていう、本当は私の知らない人だったんだ。私はもう何も信じられないよ・・・」
佐知子のナイフを持つ手は震え、目には涙が溜まっていた。
佐知子「エミー・・・」
久子「マリー、笑ってよ。あんたは生き延びて、私の分まで生きればいい。・・・またいつか、会おうね」
久子は後ずさり、そのまま崖に落ちていった。
佐知子は無意識にナイフを落として久子を助けようと手を伸ばしたがもう遅かった。
佐知子は震えながら久子の荷物を取り出して崖に投げようとしたとき、転んでカバンの中身が散らばった。
荷物の中に母子手帳が入っていたのを見て、佐知子はむせび泣いた。
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禎子は列車の中で考えを整理していた。
宗太郎は誰にも内緒で金沢に来て憲一のことを調べているうちに、久子と佐知子の関係に気が付いた。
宗太郎は佐知子に連絡を取り、宗太郎が過去を知ったことが分かった佐知子は「憲一と久子と合わせる」と言い茶屋に呼び出し、佐知子は赤いコートで茶屋に来て宗太郎を毒殺した。
本多も同様で、本多が久子について調べ回っていたことに気が付いた佐知子は、久子を装って本多を久子の家に呼び出し、そこで殺害した。
その後、殺害時に使用した赤いコートを久子に渡して着させたのだ。
犯人は室田佐知子だった。

崖から自宅に戻った佐知子は壊れてしまっていた。
部屋で窓ガラスをたたき割り、つぶやきながら頭を何度も柱にぶつけた。
騒ぎにいち早く気が付いた弟の享は姉を止めに入り、夫の儀作は部屋に近づこうとする従業員たちを部屋に戻してから、享を押しのけて佐知子を止めようとした。
佐知子は血だらけの姿で「私は殺してない・・・たった1人の友達を殺すわけない。殺してない!」と叫び、儀作は「その通りだ。お前は何もやってない。あいつらが勝手に死んだんだ!」と佐知子を抱きしめた。

後日、金沢市長選挙が行われ、会場には多くの記者が全国から集まって上条保子が当選するかしないかで賭けをしたりと盛り上がっていた。
金沢に着いた禎子はタクシーに乗っているとき、車内のラジオで『田沼久子と思われる遺体が海からあがった』と聞いて驚いた。
ラジオでは、この件は自殺とみられており、遺体は金沢警察署に収容されたと流れた。

金沢市の会館で、上条保子たちは会見を開くための準備に追われていた。
佐知子は享に連れられて会館に来ており、一番後ろの席に座って女性たちが歌っている”婦選の歌”を一緒に口ずさんでいた。
佐知子は両手には包帯を巻き、大きめのサングラスをしていたが、部屋で暴れた時に出来た大量の傷は隠しきれていなかった。

同じ頃、警察は室田の会社に向かい、室田儀作氏を逮捕した。
室田儀作は佐知子を守るために自主したのだ。
室田氏は『愛人の田沼久子と共謀して、内縁の夫だった曽根益三郎、鵜原憲一を殺害し、それに気づいた鵜原の兄と本多も殺害した』と警察は読んでいた。
室田氏は警察に連行されるとき、隙をみて警官から銃を奪い、自分の頭に撃ち自殺した。

禎子が会館に到着するとほぼ同時に、上条保子が見事当選したことが全員に伝えられ、記者たちが会見で良い席をとろうと押し合いながら会館になだれ込んだ。
会見が始まり、佐知子は上条の様子を壇上の後ろで拍手しながら見守っていた。
禎子は享と会い、会見部屋から離れた廊下で話を聞いた。
佐知子は両親を亡くしてからずっと享の親代わりをしてくれ、享には気丈な笑顔しか見せてこなかった。
「それから姉は必死で休まず働いてきたが、心には少しずつ傷が増えていたのだろう」と禎子に語った。
「姉を許してくれというわけではないが、姉さんはもう人を殺したことを忘れてる」と言い、返事がないので振り返ると、もう享のそばに禎子はいなかった。

会場では、佐知子が上条保子から言葉を求められ、サングラスを外してゆっくりとマイクの前に立った。
同時に禎子は会場に入り、佐知子を見つめながらゆっくりと壇上の方に近づいていった。
佐知子は「ずっと待ち焦がれていた、私たちの時代が来たのです!」と力強く会見を終え、会場には大きな拍手が沸き起こった。
禎子はその時、※大きな声で「マリー!!」と叫んだ。
誰も聞いていなかったが、佐知子にはその声が聞こえて表情が変わり、会場にいた全員が佐知子を眺めた。
佐知子がゆっくりと声のした方を見ると、そこには禎子が立っており、佐知子はそのまま壇上で倒れて控室に運ばれた。
※佐知子が起こした事件は、自分がパンパンをしていた過去が明るみになるのを恐れてしたことだった。
それが分かった禎子は、佐知子にとって大事な場面でパンパン時代の呼び名だった”マリー”という名前を叫ぶことで、佐知子へのせめてもの仕返しと、過去はどんなにあがいても消せないのだということをわからせようとした。

控室で意識を取り戻した佐知子はマスコミを避け、抜け出して帰ろうとしていた。
禎子は佐知子に呼ばれ、外にいる佐知子の元へ行くと、佐知子に強烈なビンタを食らわせた。
佐知子は「これだけは伝えておかなくてはと思ったの。鵜原さんは『あの人となら生まれ変わることができる。新しい時代を一緒に生きていくことが出来る』そう言っていたわ。あの時、鵜原さんは間違いなくあなたのことを愛していた」と禎子をまっすぐ見て伝え、禎子は鵜原憲一を最後に見た時の笑顔が思い出され、涙があふれだした。
佐知子は足早に車に乗り去っていき、禎子は佐知子を追いかけようとしたが享に止められて動くことが出来ず、車が見えなくなるとその場に泣き崩れた。
やがて、室田儀作が死んだことを佐知子に伝えるため、米田警部たちが会館に来たがすでに佐知子はおらず、会館前で泣き崩れている禎子に米田警部らは混乱した。

一週間後、室田佐知子の遺体が海で発見された。

禎子は東京の実家に帰り、供養もかねて憲一の私物を焼いた。
禎子は、憲一が2人のことを忘れないようにするために撮影したに違いないと考えながら、2枚の家の写真が燃え尽きるのを見つめた。

主題歌:中島みゆき『愛だけを残せ

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