映画「何者」あらすじ結末ネタバレ・感想・解説

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日本アカデミー賞を受賞した映画「桐島、部活やめるってよ」の原作者として有名な新井リョウの小説が原作。
メインキャストにはいずれも主役級の若手俳優たちが集まっている。
5人が就活と仲間たちを通して抱くさまざまな思いや心境の変化を繊細に描いた作品。

制作年:2016年
本編時間:97分
制作国:日本
監督:三浦大輔
脚本:三浦大輔
原作:小説/新井リョウ『何者

何者|出演者・キャスト

佐藤健(二宮拓人) 有村架純(田名部瑞月) 菅田将暉(神谷光太郎) 二階堂ふみ(小早川理香) 岡田将生(宮本隆良) 山田孝之(サワ先輩) ほか

 

何者|みんなの感想・評価(5点満点)

 

YojiTakatoの感想・評価|4.5
最初から最後まで、あーわかるわかる、でもやめてー!って感じで、他人事とは思えなかった。
宇多丸さんの言葉を借りるならば、学生の終わりは自由の終わりではなく、本当の意味で自分の可能性が広がることなんだと、感じられた映画だった。
(ただそれも年を重ねるごとに狭まってくのだろうけど、、) (出典:Filmarks

 

なりぴこの感想・評価|2.5
就職活動やSNSにスポットを当てた物語設定と、登場する俳優陣はすごく良かったが、演出が俳優に負けてしまっていたような感覚。
登場人物一人一人の感情の流れや関係性をいかに滑らかに捉えるかで受け取り方が変わる映画。良い意味でミステリー作品。 (出典:Filmarks

 

hatsukiの感想・評価|3.5
原作も含めて、良い。
本読んだ時も衝撃だったけど、映画は役者さんの表情や話し方、音楽もあるから、再度衝撃でゾワゾワした。
見てて苦しくもなるけど、同時に救われるというか、私だけじゃないんだって思える人は、ハマる気がする。
『青春が終わる。人生が始まる。』
これはとてもとてもしっくりくるーー。 (出典:Filmarks

 

マッガイヤの感想・評価|3.0
試写会で観ました。想像以上に気持ちの悪い作品でした。
就活によって滲み出る人間の嫌な部分がリアルですごーく気持ちが悪い。
かと思いきや謎の演出に「?」となったり良くも悪くも怪作だと思います。
これを観て就活に対するイメージがさらに悪くなる可能性は0ではないと思うのでご注意を。 (出典:Filmarks

 

以降はあらすじ詳細でネタバレ含みます。

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あらすじ詳細①起

二宮拓人(にのみやたくと/佐藤健)は社会学部の大学生で、現在は就活2年目の就活生。
演劇サークル”劇団プラネット”に所属しており、演技というよりは脚本を書きたくて入った。
人間観察や分析が得意で、ついついしてしまうことは知り合いのツイッターなどの書き込みを見ること。
密かに瑞月に思いを寄せている。

神谷光太郎(かみやこうたろう/菅田将暉)は拓人と同じ大学、学部の友人で、現在は拓人とルームシェアして一緒に住んでいる。
明るい性格で、所属している音楽バンドのサークルの関係から知り合いも多く、コミュニケーション能力が高い。
大学では音楽活動ばかりしていた。
卒業ライブの後きっぱりとバンド活動をやめ、就職活動を始める。
瑞月とは以前交際していたが、光太郎の方から別れを告げた。

田名部瑞月(たなべみずき/有村架純)も拓人と同じ大学、学部で拓人光太郎とは入学後すぐに仲良くなった。
インターンシップのため海外へ留学しており、最近帰国した。
就職先には安定している大企業を志望していて、別れた今でも光太郎を想い続けている。

小早川理香(こばやかわりか/二階堂ふみ)は瑞月の友人で、外国語学部の国際教育学科。
3人の通う大学よりは偏差値の高い大学に通っている。
彼女も留学を経験しており、瑞月とは留学関係の集まりで知り合った。
性格はいわゆる”意識高い系”で、留学中も人脈づくりに精を出していた。

宮本隆良(みやもとたかよし/岡田将生)は理香の彼氏で、彼と理香は同棲して3週間位。
拓人たちと同じ大学で、一年間休学していた。
文章を書くことを仕事にしたいと考えている。
彼は就職活動自体に疑問を感じており、できれば就活はせずに自分個人の力やアイディアでお金を生み出すようなことをしたいと考えていた。
だが実際には、まだ進みたい道は見つかっていない。

偶然がかさなり出会った5人は、理香の提案で理香の部屋を好きな時に集まって情報交換ができる”就活対策本部”にすることになった。
拓人と光太郎は初対面の理香にこの申し出をされて少し引いたものの、2人の部屋のプリンタが壊れていたこともあり、半分はプリンタ目当てでよく理香の部屋に集まるようになった。

サワ先輩(山田孝之)は、拓人と同大学の先輩で”劇団プラネット”の元団長であり理系学科の院生だ。
また、拓人のアルバイト先の先輩でもあった。彼はSNSは一切利用していない。
拓人は先輩を慕っており、プライベートでもちょくちょく話をする仲だった。

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エントリーシートを光太郎たちに見られたくなかった拓人は、サワ先輩の部屋でシートを書いていた。
その特技の欄には”演劇”と書かれていた。
その時サワ先輩から、拓人と同期で演劇サークルに所属している烏丸ギンジが、個人の劇団”毒とビスケット”を立ち上げていたことを知る。
拓人が後でネットで検索してみると、その活動の様子は逐一ブログなどに書かれていた。
毎月公演を行っているその宣伝や、稽古の様子などがそれっぽく掲載されている。
拓人は”頑張っている自分”だらけのギンジの投稿を見て『イタイ投稿ばかり』だと思った。

就活対策本部(以下、本部)では拓人、光太郎、瑞月、理香が集まり話していた。
理香は光太郎に模擬エントリーシートを「こういうの便利だよ」と見せた。
「俺は音楽しかしてこなかったから、就活に使えそうな武器がない」と嘆く光太郎に、拓人は「就活ってダウトみたいなもんでさ、自分のカードをどれだけ強く見せれるかが勝負だと思う。光太郎のバンド活動は強みになると思うよ」とアドバイスした。
理香は「まぁ、戦い方は人それぞれだよね」と、拓人の意見を肯定も否定もせず、そっと自分のエントリーシートを裏返した。

別日、皆で集まっていた時の話。
理香「英語を生かせて、入社してすぐに即戦力としてバリバリ働けるような会社に行きたい。」
拓人「じゃあ、大企業には行く気ないんだ?」
理香「というよりも、会社と自分の理念が合っていることが大事で、それを探るために今はまだ会社を受けたりはせずに、OB訪問をいっぱいするつもり」

拓人は理香の話を聞きながら、仕切りの無い別室で読書している隆良のツイッターを見ていた。
拓人たちの交流の様子を、隆良は「興味深い」とツイートしていた。
「私は企業の知名度は気にしてしまう」と言う瑞月の発言で、隆良が会話に入って来た。
隆良は「企業に頼っていると、会社がなくては生きられなくなってしまう。
今の時代、団体に所属することにメリットを感じないし、”就職活動”と言う時代の流れに乗るようなこともしたくない」と批判的な発言をして4人を黙らせた。

光太郎は自宅で拓人に手伝ってもらいながらウェブテストを受けた。いわゆる不正行為だ。
テストが終わった後、光太郎が隆良から「理香がウェブテストに受からなくて苦労しているらしい」と聞いたことを拓人に話した。
理香は英語は大得意だが、数学が苦手なため苦戦しているのだという。
光太郎は「誰かに手伝ってもらえばいいのに。友達いないのかな」と言いつつ、雨が降り始めたので急いでベランダの洗濯物をとり込み始めた。
拓人は光太郎を横目に、2チャンネルの”アマチュア劇団批判板”の”毒ビス”のスレを見ていた。
そこには「質の低いものを量産している」などと批判がたくさん書かれていた。

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あらすじ詳細②承

ある日の午前中、拓人は大手広告代理店の全日通信の試験を受けた。
試験終わりに偶然 瑞月と出会い、受けた会社が被ったことを知った。
さらに、ふたりは社内で隆良を発見した。
隆良はスーツ姿の大学生たちの群れの中、1人だけ私服だったので良く目立っていた。
午後の試験を受けに来たようだ。
だが午後の試験まではあと数時間もあり、拓人は、一応”服装自由”だからとスーツではなく私服で来て、律儀に数時間前から会場で待つという隆良の姿勢にどことなく矛盾を感じた。

拓人と瑞月は会場近くのラーメン屋でお昼を食べることにした。
瑞月は拓人に「光太郎がなぜ出版社ばっかり受けてるか知ってる?」と聞いた。
拓人は「この間聞いたけど、なんか文句ある?って教えてくれなかった」と答えた。
その時2人は、試験開始時間ギリギリに走って会場に入っていく理香を目撃した。
理香を見た瑞月は「一緒に来たりしないんだね」とつぶやいた。

店を出て、拓人と瑞月は同じ地下鉄に乗った。
車内で瑞月は拓人に「父親の浮気が原因で母親と一緒に住むことになった。
理香はあぁ言ってたけど、やっぱり安定した会社に就かなきゃ」と、”安定”にこだわる理由を話した。
拓人はかける言葉が見つからなかった。
瑞月は「午後も試験があるから」と途中で電車を降りていった。

拓人と光太郎は、理香の部屋にプリンタを借りに来ていた。
光太郎がパソコンを使おうとしたとき、突然理香が光太郎を止めた。
理香は開きっぱなしにしていた何通かの”不採用メール”を閉じてから、光太郎にプリンタを使うことを許した。

拓人は理香の作った名刺を見ていた。
表にはたくさんの肩書が並べられている。
就活でこれから関わり合いになりそうな人に渡しているのだという。
「OB訪問20人目達成!」と自慢する理香に、光太郎がどうやって人脈を広げているのか聞いた。
理香は「知り合いのアドレスや番号からフェイスブックやツイッターを検索すれば大体ヒットするし、さらに知り合いの知り合いをフォローすれば、直接話さなくても企業の情報がわかったりするよ」とアドバイスした。
そのとき光太郎に非通知の着信があり「面接の結果だ」と急いで外に出ていった。
同じく、拓人にもメールが入った。
先日受けた全日通信からの”不採用通知”だった。

拓人はプリンタを使おうパソコンに近づくと、光太郎の印刷した書類が置かれていた。
それは成績証明書で、最終面接のときに必要な書類だった。
理香もそれを見て驚いていた。
光太郎は拓人よりも一年遅く就活を始めたのに、着実に内定に近づいていた。
拓人は焦りを感じつつ、無言で作業を始めた。

夜中、拓人は烏丸ギンジのブログを見ていた。
そこには名前も知らない人たちとの打ち合わせやらの投稿がいくつも並んでいる。
イラついていた拓人は、ギンジに「頑張ってるアピールしたって何にもならない。
頭の中にあるうちは何でも傑作で、お前はその中から出られないんだ」と攻撃的なラインを送った。
だがそれに対してのギンジからの反応は無く、返ってきた文章には「もうすぐ劇団プラネットも大学も辞める。
就職もしないし、舞台で生きていく」と書かれていた。

拓人は大学の喫煙所に居た。
煙草を吸いながらギンジのツイッターを見ていると、関連ツイートに隆良の書き込みがあった。
ギンジと隆良は同じアフターパーティに参加していて出会ったらしい。
隆良は、ギンジについて「面白い人に出会った」とツイートしていた。
そこに偶然、隆良が来た。

拓人「理香さんから聞いたんだけど(←嘘)広告会社とか受けてるんでしょ?」
隆良は気まずい表情で「あぁ…」と小さく答えた。
拓人「広告会社に就職してもほとんど営業系だし、クリエイティブな仕事は出来ないと思うけど?」
隆良「…広告は、見るのが好きだから」

拓人はギンジについても聞いてみた。
隆良は名刺を見てようやくギンジを思い出し「今度一緒に仕事しようってなった。なかなか良いセンスしてると思うんだよね」と言った。
拓人は隆良の名刺とギンジの名刺も見せてもらった。
2人とも肩書は英語で書いてあり、個性的な名刺だった。
名刺を持つことは、隆良が理香に薦めたのだという。
そこにサワ先輩が現れた。
お互いに自己紹介すると、隆良は「理系の院生なんですね…」とバカにした表情でサワ先輩に言った。
拓人から話を聞いて隆良を知っていたサワ先輩は、隆良をしばらく真顔で見つめ、理由をつけて隆良を残して拓人と喫煙所を出た。

2人になったあと、拓人は「ギンジと隆良は想像力の無いところが似てる」と批判したが、先輩は「あいつらは全然違う。お前こそもっと想像力あると思ってたよ」と言い、拓人と別れて図書館に入っていった。
同意してもらえると思っていた拓人は、先輩の言ったことが理解出来ず固まった。

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光太郎は最終面接で落ちてしまった。
理香の部屋で酒を飲みながら、落選したことを開けっぴろげに拓人と理香に話す。
光太郎が落ちたと聞いて、拓人と理香は内心安心していた。
理香「別に行きたくないとこだったんでしょ?」
光太郎「そうだけど~。行く気は無かったけど、他の面接のときに『すでに内定をもらってる会社があります』って言ってみたかった!」
光太郎の欲望を聞きながら、拓人は会社からのメールを見直した。
『合格の方には7月24日の20時までに電話連絡をします』と書かれていた。今日がその日だった。
光太郎は「終わったことはしょうがない」とい自分に言い聞かせ、瑞月が来ないのか理香に聞いた。
理香「瑞月は忙しいらしくて、来れたら行くって言ってけど、そういうときって大体来ないよね」

理香が思い出したように拓人に話を振った。
理香「烏丸くんて、拓人の友達なんでしょ。隆良から聞いた」
拓人「…友だちっていうか…」
理香「隆良と烏丸君が今度、一緒に公演することになったんだって。劇団の名前、なんだっけ?」
拓人「…毒とビスケット」
理香「そうそう。来月に”ビスケットと毒”っていう個展を企画してるんだって。
上手くいくと思うんだ。
2人のツイッターとか見てると、信念とか似てる気がする。
拓人もそう思うでしょ?」

拓人は先輩に言われたことを思い出し、口ごもった。
そこで光太郎が突拍子もなく、理香にお酒がもっと欲しいと要求すると、理香は「もらったお酒があるから」と部屋を出ていった。

理香が出ていった後。
光太郎「こないだ理香ちゃんが言ってた、アドレスでアカウント検索するやつ、あれやばくね?」
拓人「あぁ…」
光太郎「だって、OB訪問してきた子がツイッターで話しかけてくるとか、俺だったら絶対ヤダ!」
拓人「まぁ、そうだよな」
光太郎「あれ、絶対仲間内でネタにされてるだろ」
拓人「理香ちゃんは学級委員長がそのまま大学生になったって感じだよね」
光太郎「それそれ!さすが拓人。いつもの分析が冴えますな!」

笑う光太郎。拓人が時計を見ると、20時を回っていた。
会社から電話はかかってこなかった。
落ち込んでいる拓人に電話がかかって来た。
瑞月からだった。

瑞月「私、内定もらった。こんなの初めてだよ。どうしよう!」
拓人は何も言えなかった。
光太郎「拓人、どしたの?」
瑞月「光太郎、そこにいるの?」

拓人は黙って光太郎に携帯を渡した。

光太郎「…そっか。おめでとう。よかったね。なんか、ちゃんと話すの久しぶりだね」

拓人は瑞月におめでとうも言えず、そのまま部屋を出た。

拓人は演劇関係の会社のグループディスカッションに来ていた。
部屋に入ると、メンバーの中には理香がいた。
理香に苦手意識を感じていた拓人は、最悪だと思った。

ディスカッションが始まり、題材は”日本でミュージカルが受け入れられるようにするには”だった。
拓人が意見を言おうと喋り始めると、すぐに理香に横入りされ持って行かれてしまった。

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あらすじ詳細③転

理香の部屋で瑞月の内定お祝い会が開かれた。
部屋には隆良もおり、5人で会が始まった。
瑞月が内定をもらったのは全日通信だった。
光太郎、拓人、隆良は「倍率高かったのにすごいね!」と褒め、理香は「私もそこの説明会は行ったんだ。もし私も受けてたら今頃、瑞月と同期になってたかもね」と笑った。
だが本当は、理香も全日通信を受けたが落ちていた。

瑞月「全然すごくないよ。
私が配属になったのは総合職じゃなくてエリア職で、総合職は転勤もあって昇進が望めるんだけど、エリア職は転勤はないけど、昇進とか全然望めなそうなんだ。」
理香「総合職とエリア職って全然違うんだね」
隆良「瑞月ちゃんってもっとグローバル思考じゃなかった?」
瑞月「…そうなんだけど、色々あって。方向変えたんだ」

理香が今日のことに話題を変えた。

理香「今日のグルディス、拓人くんと一緒だったの!演劇関係の会社だったから、もしかしてとは思ってたんだけど!」
光太郎「まじで!この世にそんな気まずいことあるの!?」
拓人「理香さんが仕切り役になって頑張ってたから、理香さんは絶対受かってるよ」
理香「そんなことないよ~。でも、拓人君やっぱり好きなんだね、演劇?」

拓人は理香にイライラしたので、少し微笑んで言葉は返さなかった。
瑞月が隆良にギンジとのコラボのことを聞いたが、隆良はその話はなくなったと言った。

理香「え?なにそれ聞いてないよ?隆良、初めてキュレーターとして仕事できるって喜んでたじゃん」
拓人「なんでなくなったの?」
隆良「俺は企画についてじっくり考えたいから、時期をずらしたいって提案したんだけど、烏丸が公演は必ず月に1回したいから無理だって…」
隆良「周りの演劇ファンに聞いたらさ、あの劇団、質の低いものを量産してるって叩かれてるんだって。
『数打ちゃ当たる』とか、『学生劇団の枠から出られてない』とか。」

それは、拓人が以前に見た2ちゃんの劇団批判スレに書いてあった内容そのままだった。

隆良「まぁそれを考えたら、ほんとに俺は就職向いてないなと思った」
瑞月「…どうして?」
隆良「だって、会社って結局合わない人とも仕事しなくちゃいけないだろ。
無理して向こうに合わせても、作品の価値が落ちるだけじゃん。
10点20点の作品を見てもらうなんて、俺には出来ない」

隆良はそのまま「コンビニに行く」と出ていこうとしたが、瑞月が隆良を引き留めた。

瑞月「隆良くんのその考えはさ、たくさん考え抜いた上で生まれたんだったらそれでいい。
でもそうじゃないなら聞いてほしい。
・・・10点20点のものでいいから自分の中から出しなよ。
じゃないと点数さえつかないんだよ!」

止める光太郎を無視して瑞月は言い続けた。

瑞月「自分を何だと思ってるの?どうせ、自分は人より感受性が豊かで繊細だから生きづらいとか思ってるんでしょ。
でもあなたのことをあなたと同じ目線で見てくれる人なんてもういないんだよ!
作品を100点になるまで煮詰めたって、そんな過程 誰も追ってない。
私たちはもうそういうとこまで来たんだよ!」

瑞月は部屋から出ていった。
拓人は瑞月を追いかけようと立ち上がり、固まっている隆良に言った。
拓人「頭の中にあるうちは何でも傑作なんだよ。お前はその中から出られないんだよ」

瑞月はアパートのすぐ外にいた。
そこで「もうあの部屋行けないね」と言う瑞月を慰めた。
そこで瑞月は拓人に、光太郎に告白して振られたことを打ち明けた。
驚く拓人に瑞月は続けて、光太郎が出版社ばかり受けていた理由を話した。
光太郎には忘れられない女性がいて、その人は翻訳家になるために海外に行ったそうだ。
出版社に入れば、いつか仕事でその子と再会できるかもしれないと、出版社だけに絞って受けていたのだ。

瑞月「光太郎は人生の中にドラマを見付けて、その主人公になれるんだよ。
だから、現実を考えなきゃいけない私なんかが邪魔しちゃいけないんだ」

拓人は瑞月にかける言葉が思い浮かばなかった。

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光太郎も見事、総文書院という出版社の内定を手に入れ、拓人のアルバイト先で2人で祝賀会をあげた。
そこでは、拓人の紹介で瑞月がアルバイトを始めていた。
瑞月が光太郎にお祝いを言っていたところに、サワ先輩が現れた。
光太郎はサワ先輩に会ったことはなかったが、拓人から話は聞いていた。
光太郎はサワ先輩だとわかると、先輩を座らせて「拓人が世話になってます」とお礼を言い始めた。
サワ先輩は光太郎の就職先を聞いて、嬉しそうに「あそこは中堅だけど、面白い本いっぱい出してるよね」と褒めた。

そこに、この店でバイトしている拓人たちと同じ大学の女の子が、光太郎のバンドのファンだったらしく、こっちにやって来た。
この子はサワ先輩が演劇に来るよう何度か誘っていたが、結局先輩が卒業するまで一度も見に来たことはなかった。
人気の光太郎を見て拓人は少し落ち込んでしまい、いったん席を離れた。
そんな拓人の様子にサワ先輩は気付いていた。
拓人がギンジのツイッターを見ながらカフェの喫煙所にいると、先輩もやって来た。
拓人はそこで、前に言われた”ギンジと隆良が似てない”と言われたことについて聞くと、先輩は答えた。

先輩「俺はツイッターとかやってないけど、たった140字で勝手に人を束ねたりするな。
どっちかっていうと、ギンジはお前に似てるよ」
拓人「え?」
先輩「お前がひらがなだったら、あいつはカタカナみたいな。どっか違うんだろうけどさ。
次のギンジの公演の日程、メモしとけよ」

先輩は店内に戻っていった。

帰りのタクシーの中で、酔っぱらっていた光太郎は拓人に本音を言った。

光太郎「内定って不思議だよな。自分が丸ごと肯定された気がする。
俺は結局、就活が得意だっただけだ。
就活は終わったけど、何にも成れた気がしない。
…俺、拓人になんで内定が出ないのか本気でわからない。嫌味じゃなくて」
拓人「ありがとう」

その日の夜中、拓人は理香の部屋にプリンタを借りに来た。
隆良は、理香が公園に携帯を忘れたかもしれず、代わりに探しに行ってくれていた。
理香は光太郎が内定をもらったことを知っていて、どこに受かったのか拓人に聞いた。
拓人が教えると、理香は「中堅の出版社か」と言っただけだった。

拓人が理香のパソコンで印刷準備をしていると、理香が自分の番号にかけたいから拓人の携帯を借してほしいと言ってきた。
拓人は理香の番号を知らなかったので、携帯を渡した。
作業を再開し、拓人がパソコンでネット検索をしようとすると、検索履歴が出てきた。
”全日通信 エリア職 ブラック”で検索されていた。
理香も拓人の携帯を開くと、ネットが開きっぱなしになっていた。
拓人が検索していたのは”総文書院 2ちゃんねる 批判”だった。

理香「総文書院てさ、光太郎が行く会社だよね」
拓人「全日通信て、瑞月さんが行く会社だよね」
理香「拓人くんは本当は、誰のことも応援してないんじゃない?誰が成功してもつまらないんでしょ」
拓人「それなら理香さんだって一緒じゃん」

理香「私はあんたとは違う。だって、あんたみんなのこと笑ってるでしょ。
私知ってるよ、拓人のもう一つのツイッターのアカウント。
アドレスで検索したらすぐに出てきた。
※拓人が今まで必死に頑張っても内定がもらえなかったのは、受けた会社も拓人のアドレスでSNSを検索して、このアカウントを知っていたからだろう。

私、あんたがそれにロックかけたりツイート削除しない理由わかるよ。
…自分のツイート大好きだもんね!
自分の分析が最高に鋭いって思ってるもんね!
どうせたまに読み返したりしてるんでしょ。
誰かがリツイートしてくれたり、お気に入りに登録してくれたり、フォロー数よりフォロワー数が上回ると嬉しくてしょうがないでしょ。
ツイッターには書いてなかったけど、瑞月のことも笑ってたんでしょ」

拓人「・・・それは違う」
理香「違わない。いい加減気付こうよ。観察者ぶったって何にもならない。
それを皆わかってるから、イタくても今の自分を少しでも理想の自分に近づけようと頑張るんだよ。
それが出来ないあんたの姿はみんなに伝わってる。
そんな人、どこの会社も欲しいと思うわけないじゃん。
私、そのツイッターのアカウント名見て悲しくなった。
とにかく、自分じゃない誰かになれる場所が欲しいんだよね。
…でも、私も内定出てないし、同じようなもんか。
だって…ツイッターで自分の努力を実況中継してないと、立ってられないから…」

理香は崩れて泣き出した。
拓人が黙って帰ろうとすると隆良が帰って来た。
理香の携帯はコンビニのトイレにあったらしい。

隆良「拓人…俺、散々偉そうなこと言っちゃったけど、本気で就活しようと思った。
だから、色々教えてくれよ。
お前が一番詳しいだろ、就活2年目なんだから。」

拓人は返事をせずに部屋から出ていった。

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あらすじ詳細④結

拓人のもう一つのツイッターにはこんなことが書かれていた。

光太郎の引退ライブの日のツイート
「同居人のサークル引退ライブ。3人そろって単位が足りず留年したバンド。
サークルの人に愛されているのはわかるが、内輪の空気に酔っているような印象。
他人の思い出作りの場を見せつけられても、という感じ」

理香の部屋を就活対策本部にしようと決まった日のツイート
「一つ上の階の子が友達の友達だった。
友達もその子も、留学で5年は決定している人たちばかりだからか、就活に対して不気味な結束力が芽生えている。
とても気持ち悪い」

理香が光太郎に模擬エントリーシートを見せてアドバイスしたとき
「俺が就活をダウとに例えると、あの子は模擬エントリーシートを裏返して隠した。
自分がやっていることが気に入らなかったんだろう。
この子は相当プライドが高い」

烏丸ギンジについて
「演劇仲間だったあいつは、伝えなくていい段階のことを、この世で一番熱い言葉をかき集めて世界中に伝えようとしている。
確かに、自分の劇団を立ち上げたのはすごいことだけど、こんな伝え方をしてしまったら全てが台無しになる。」

理香宅で理香がきれいに盛り付けられた料理を出してくれたとき
「宅飲みなのに、きれいな食器しか出てこなかった。割りばしとか、適当でいいのに。
それはこの2人が恰好つけたまま暮らし始めたからだ。
男は家に居るのにチノパンとニット帽姿だ。」

再びギンジについて
「素敵な言葉で溢れているオフィシャルブログとは反比例するように、アマチュア演劇批判版があの劇団の批判で荒れている。
観に行かなくて正解。
就職もせず、彼は一体何をしているんだろう。」

隆良と理香を全日通信の試験で見かけた時
「就活しないと決めながら、スーツを着ない主義を貫き、あいつは1時間も余裕を持って試験会場に来た。
就活に熱心なあの子は寝坊でもしたのか、時間ギリギリに会場に走って向かった(笑)」

以降、同じシーンだが、部屋に舞台のセットのようなものが見える。

拓人が理香の名刺を見つけたとき
「上の階のあの子は、ついに自分の名刺を作った。
学生特有の肩書でいっぱい。肝心の名前に目がいかない。
名前や肩書ではない何かを振りまいているようにしか見えない。
恥ずかしげもなく、よくこんなもの配って歩けるな。」

以降、カメラが後ろに下がり、観客のような人たちが見える。

拓人が隆良に、隆良とギンジの名刺を見せてもらったとき
「自分のやっていることを”仕事”と言うあいつはやっぱり名刺を持っていた。
英字の肩書は詐欺だと思う。その名刺が外国人に行くことはない。
名刺でさえ同じセンスをしているあいつらはやっぱり、とてもサムイ」

以降、同場面に出ていたメンバー以外の人間が張りぼてに変わっている。

拓人と理香がグルディスで一緒になってしまったとき
「まさかグループディスカッションで一緒になるとは。
彼女は議論中も相変わらずだった。彼女の内面から出てきた言葉は一つもない。
それにしても、人の発言を遮るなんて。あの子はどうかしてしまったのか?」

光太郎の内定祝いでバイトの後輩が光太郎にファンだと声をかけたとき
「今日は同居人の内定祝い。
第一志望はダメで、中堅の出版社に決めたらしい。
無理やり出版社に入社して、思い出の人に会おうなんて。
自分がドラマの主人公?どれだけ勘違いしているのだろう。」

拓人は舞台のセットから出てきて、観客たちが拍手する中、舞台の前に出た。
舞台のカーテンが閉まり、拓人だけが観客の前に残り、深々とお辞儀をする。拍手は鳴りやまない。
同時に、バックサウンドでiPhoneを操作するときに出るカチカチという音が鳴り響く。

拓人は観客の中に瑞月を見付けて動揺し、舞台から飛び降りて観客の間を抜けて走り出した。

拓人のもう一つのツイッターのアカウント名は”何者(@_NANIMONO)”だった。
何者『今年も内定が出ない。理由がわからない。とりあえず明日の受験票、印刷しないと』

拓人は走ってアルバイト先にたどり着いた。
セットは舞台のセットのままだ。
そこでは瑞月が”何者”のツイートを見ていた。
拓人に気が付いた瑞月は話しかけた。

瑞月「拓人君。全日通信の試験の時ね、私、斜め後ろの席だったから、拓人君が居たの気付いてたんだ。
拓人君の問題に悩む姿がさ、懐かしいなって思っちゃって。
授業中、いつも脚本書いてたでしょ。
拓人君て、なにか考え事してる時、寝てるの?て思うくらい、首を前に落とすんだよ。
私、拓人君が考える話、好きだったよ。」

泣き出す拓人。

拓人「舞台、いつも観に来てくれたもんね」
瑞月「うん。だって拓人君の舞台、いつも面白かったもん」
拓人は泣きながらソファに座り込んだ。

ある会社の面接会場。

試験管「あなたを1分間で表現してください。どんな方法でも構いません。どうぞ」
拓人は話し始めた。
烏丸ギンジと1年の時に意気投合して「いつか2人で劇団を立ち上げて、将来は演劇で食べていこう」と話していたこと
そんな自分の夢を客観的に見て無理だろうと思い始めたこと
客観的な自分をどうしても捨てられず、ギンジとは決別してしまったこと
そのギンジが今では1人で劇団を始めて毎月公演を行っていること
先日、拓人は初めて烏丸ギンジの劇団を観に行ったこと…。

拓人は「すいません。1分間では話しきれません。ありがとうございました。」と面接の途中で試験会場から出て、外へと歩き出した。

エンドロール:中田ヤスタカ『NANIMONO(feat.米津玄師)

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