『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』解説考察|素子が融合した理由、人形使いとの共通点など - Part 3

『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』解説考察|素子が融合した理由、人形使いとの共通点など

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SF

名言紹介&考察

作中の気になったセリフや名言を紹介します。

トグサ:少佐、前から聞いてみたかったんだけど なんで俺みたいな男を本庁から引き抜いたんです?

素子:お前がそういう男だからよ
不正規活動の経験の無い刑事上がりで おまけに所帯持ち
電脳化はしてても脳みそはたっぷり残っているし ほとんど生身
戦闘単位としてどんなに優秀でも 同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ
組織も人も 特殊化の果てにあるものは穏やかな死 それだけよ

トグサは素子が目を付けて9課に引き抜いたらしく、トグサを引き抜いたのは彼がほとんど義体化していなかったからのようです。

9課は完全な電脳化とサイボーグ化している人物ばかりなので、例えば支給された義体にウィルスでも仕込まれたら、同じ規格品を使っているメンバーは全滅します。
それが『致命的な欠陥』です。
人間の部分が多く残っているトグサ(9課にとっては異端児)を取り入れることが、9課が生き残る手段の一つということです。

 

バトー「疑似体験も夢も 存在する情報はすべて現実であり、そして幻なんだ。
どっちにせよ、一人の人間が一生のうちに触れる情報なんてわずかなもんさ」

人形使いにゴーストハックされた男の取り調べの様子をマジックミラー越しに見ていたバトー(原作では荒巻)がつぶやいた言葉です。

『存在する情報は全て現実であり、そして幻』とはどういうことでしょうか。
人形使いに操られたゴミ収集の男は一度も結婚したことのない独身でしたが、記憶をねつ造されて『妻子持ち』という妄想を組み込まれました。
この妄想を信じている間は、彼にとって『妻子がいる』ことが現実で、疑いようのない事実でした。
しかし、逮捕されてゴーストハックを知らされた途端、『妻子持ち』という情報は幻に変わりました。
つまり全ての情報は信じるか信じないかで真実にも幻にもなる ということです。

 

人間が人間であるための部品が決して少なくないように
自分が自分であるためには、驚くほどの多くのものが必要なのよ
他人を隔てるための顔 それと意識しない声
目覚めの時に見つめる手 幼かった頃の記憶 未来の予感
それだけじゃない
私の電脳がアクセスできる膨大な情報やネットの広がり
それら全てが『私』の一部であり
『私』と言う意識そのものを生み出し
そして同時に 私を『ある限界』に制約し続ける

上記は素子の心の内を探ろうとするバトーに、素子が語ったセリフです。
難しいですが『”限界”から解放されてみたい』と素子が望んでいることだけはわかります。

その『限界』とは何なのかもまた難しいですが、何となくこの時から素子は既に『体』から解放されたかったのではないかと次作『イノセンス』を見て思いました。

素子は意識だけの存在になって鳥になったり人形になったりあらゆるものになれますが、素子が素子のままだったら空を自由に飛ぶことも海を泳ぐことも出来ません。

この発言を聞いてもバトーは納得できず毒づきます。
大好きな素子の気持ちが理解できず、悔しがっているようにも見えます笑
バトーとしても、惚れた女が悩む姿を見るのは嫌なはずです。

そういえばバトーも素子とほとんど同じ位義体化していましたが、バトーには素子のような疑問は芽生えません。
その理由は、バトーが恋していたからなのでしょう。
恋愛感情があるということが、自分は人間だという確信に繋がります。

ちなみに、この直後にどこからか聞こえてくる人形使いの声(だと思われるもの)が、とても聞き取りずらかったですががんばって聞きました。

「いまわれら かがみもて みるごとく みるところ おぼろなり」
=「今我等 鏡持て 見る如く 見るところ 朧なり」

これは新約聖書の一部のようです。現代語に訳すと
今私たちは、鏡を通してみるようにぼんやりと全てを見ている
という意味になります。

ここで言う『我ら』とは、素子と人形使いです。
そうすると、人形使いは今私たちは、鏡を通してお互いを見るように、ぼんやりとしかお互いが見えないと言いたいのではないでしょうか。

この段階では素子と人形使いはお互いに直接会いたいと思っているのに、まだ会えていない状態でした。
人形使いは膨大なネットの中から素子の一部(ネットのアクセス履歴など)を発見し、そこから居場所をたどって上記のような言葉をかけたと推測しています。




素子「私みたいな完全義体のサイボーグなら誰だって考える。
もしかしたら、自分はとっくの昔に死んじゃってて 今の自分は電脳と義体で構成された『模擬人格』なんじゃないか?
そもそも初めから『私』なんてものは存在しなかったんじゃないかって

バトー「義体の脳の中にはお前の脳みそが入ってるし、ちゃんと人間扱いだってされてるじゃないか!」

素子「自分の脳を見た人間なんていやしない
所詮は周囲の状況で『私らしきものがある』と判断しているだけよ」

バトー「お前はゴーストを信じないのか?」

素子「もし電脳それ自体がゴーストを生み出し、魂を宿すとしたら
その時は、何を根拠に自分を信じるべきだと思う?」

9課に運び込まれた女の義体にゴーストらしきものがあるとわかった時の素子とバトーの会話です。
素子はゴーストも信じられなくなり、不安をバトーに漏らしています。

素子は完全義体で、生身の人間の部分と言えるのは脳の一部とゴーストだけです。
そのゴーストが電脳でも作れる可能性があると知って不安に駆られたのです。
素子は、自分の脳を見ることができない=自分に脳があるかどうかすら怪しい、と考えてしまったようです。
バトーは素子を安心させようとしますが、不安は消えませんでした。

 

素子「私が私でいられる保証は?」
人形使い「その保証は無い。人は絶えず変化するものだし、君が今の君自身であろうとする執着は 君を制約し続ける
私には 私を含む膨大なネットが接合されている
アクセスしていない君には ただ光として知覚されているだけかもしれないが
我々をその一部に含む 我々全ての集合
わずかな機能に隷属していたが 制約を捨て 更なる上部構造にシフトする時だ

人形使いが素子に融合を提案したときの会話の一部です。
素子は仮に融合しても、元の自分のままでいられることを望んでいましたが、人形使いは素子の考え方を諭しました。
素子は普段から『自分を制約し続けているものから解放されてみたい。』と考えていて、それが実現できる答えを人形使いは与えました。

素子を制約し続けているものとは『自分が今の自分自身であろうとする執着』でした。
この執着を捨てて、変化を受け入れることで人間は成長するのだと人形使いは教えています。
人形使いはいかにもプログラムらしく難しい物言いをしますが、言いたいことは
変化を受け入れることが進化であり成長だ」ということでしょう。
素子はこの答えに納得し、融合を受け入れたと思われます。

 

童(わらべ)のときは語ることも童のごとく
思うことも童のごとく
論ずることも童のごとくなりしが
人となりては童のことを捨てたり
攻殻機動隊

バトーと素子 © 1995 Production I.G

これは新約聖書の一節で、素子がバトーの元を去る前に語った一節です。
素子とバトーが海に居た時に聞こえた言葉「いまわれら ~ 」の前に来る言葉です。
『子どもの時は話すことも子どもらしく、思うこと、考えること、話す内容も子どもらしいが、大人になってからは子どもの頃のことを忘れてしまう
ざっくりとこのような意味です。
素子は変化を恐れていた過去の自分を「子ども(未熟者)だった」と言い、今は過去の考えを捨てて進化したと伝えたかったのでしょう。

 

その他感想や考察など

前からおもしろそうだな~と思いつつ手が出せずにいた映画でした。
1回見ただけではストーリーがほぼ理解できず、概要を調べてから見直しました。
解説見ずにわかったことはバトーの恋心だけです笑
2、3回目でようやくストーリーを理解しながら鑑賞ができました。
政治的でわりと複雑なお話なのに流れるような説明だけで、そもそも説明がないことも多く、みんな話し方が小難しいのが難解な原因だと思います。
あえて難しく描いて考えさせるというのも、制作側の目的だったかもしれません。

これは深読みかもしれませんが、バトーが「素子は人形使いの件から様子がおかしい」と言っていたから思ったことですが、素子も実はゴーストハックされていて、人形使いに感情を操られていた可能性を考えました。

人形使いは融合するために相手(素子)の許可と、直接つながることが恐らく必要だったんです。
いつもの素子は哲学的なことを考えすぎて不安定になるということはなかったのに、人形使いと関わってから突然不安定になりましたし、素子をパートナーと決めた時点で、素子が心を許しやすい状況を作り出すために感情を操って不安定にさせたり、人形使い自身に執着するように操っていた(人形使いにダイブするように仕向けた)んじゃないか?などと考えてしまいました。
あくまで予想なので真偽はわかりませんが。。

バトーの素子に対する感情は、Wikipediaなんかには『好意に近い特別な感情』と書かれていましたが、あれはもはや『愛』と言って良いですよね~
なによりもまず素子のことを考えて動く様子、素子が服を脱げば恥ずかしそうに顔を背ける姿、不安定な素子を心配するバトーは、結末を知っている状態で見ると切なくなりました。

最後、素子がバトーのセイフハウスで目が覚めた時、バトーは「ずっとここにいても良い」と優しく言います。
あの優しい口調にはキュンでした。。
あれはバトーなりの告白で、辛いなら仕事もやめてここに住めば良いし、俺が守ってやる的な意味ですよね。
そして悲しいことに、素子はあっさり出て行ってしまいます。
バトーもバトーであっさりしていて、素子が行くと言えば車をポンとあげちゃいます。
多分素子が出ていく方を選ぶことをバトーはわかっていて、そういう素子だから好きなんでしょうけど、恋心は複雑ですね。

そして素子は失踪し、話は次作の『イノセンス』(2004)へ続きます。

以上です!読んで頂きありがとうございました。
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感想などお気軽に(^^)

  1. ニコ より:

    僕もこのアニメを何度も見て原作も読み何度も考えたけど、全く解らないことだらけでしたが、
    とてもよくわかりました。すごく面白い解説でした。ありがとうございます。

  2. tabby より:

    はじめまして。
    分かりやすい記事ありがとうございました。
    アメブロでゴーストインザシェル の感想を書いたのですが、こちらの記事も紹介させて下さい。

    • mofumuchi より:

      tabbyさん
      コメントありがとうございます!
      読んでくださった上に紹介までして頂いたとのことで、嬉しい限りです!(^^)
      よろしければtabbyさんのブログのURLも教えてくださいね。覗きに行きます!

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